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思考・知識

  • O1-1
    寺井あすか (公立はこだて未来大学)
    楠見孝 (京都大学)
    地村弘二 (慶應義塾大学)
    本研究の目的は異なる2つの概念が融合することでひらめき・創造が生じ,新たな概念・意味を創発する際の認知メカニズムを解明することである.本研究では,単語対(A, B)による創造的特徴生成における視覚的注意の変遷を調べる実験を行った.その結果,比喩(AはBだ)に関わる先行研究の知見と比較し,比喩文脈により喩えられる語への視覚的注意の促進されることが示され,特徴が喩えられる語の属性として適切であるか否かの評価メカニズムの存在が示唆された.
  • O1-2
    服部郁子 (立命館大学 文学部)
    服部雅史 (立命館大学 総合心理学部)
    本研究では,ワーキングメモリーに対する負荷と課題の性質(否定の形式)が,因果帰納とそれに基づく判断にどのような影響を及ぼすのかについて,思考の二つのフレームの切り替えという観点から検討を行った.実験の結果から,ワーキングメモリーへの負荷および課題の性質(否定の形式)はそれぞれ,二つのフレームの切り替えに対する抑制と促進として働き,判断に影響を及ぼすという仮説が支持された.
  • O2-4
    西中美和 (総合研究大学院大学)
    白肌邦生 (北陸先端科学技術大学院大学)
    神田陽治 (北陸先端科学技術大学院大学)
    本稿においては,実験的ワークショップ授業を事例にとり,定量および定性調査と分析を行った.その結果より,自然発生した触媒的参与者の集団機能に焦点を当て,それが意識的ではない主導的機能として働き,他の集団機能に働きかけ,集団のアウトプットに自分の意思を反映させるという影響力を考察した.また,暗黙的な影響力の行使を行う触媒的機能は主導的機能であると定義した.
  • O3-4
    河端健司 (北九州市立大学マネジメント研究科2年)
    武田諭志 (北九州市立大学マネジメント研究科2年)
    川原大幸 (北九州市立大学マネジメント研究科2年)
    松田憲 (北九州市立大学マネジメント研究科教授)
    現状維持バイアスとは,現状維持できる可能性があるなら,現状を維持しようとすることである.奥田(2004)は,大学生を対象としたアンケート調査によって,二つの選択肢の中から一方を選択する決定場面において,決定が困難になるほど現状維持バイアスが生じやすいことを示した.本研究では,社会人に対して同様の決定場面を用いたアンケート調査を行い,現状維持バイアスが年齢や情動状態,ストレスの程度にどのような影響を受けるかを検討した.
  • OS01-3
    冨澤晶 (電気通信大学)
    水戸和幸 (電気通信大学)
    板倉直明 (電気通信大学)
    水野統太 (電気通信大学)
    点図ディスプレイを用いてカタカナ文字の呈示条件と触識別特性の関係について調べた。順次および筆跡呈示において正答率、自信度、文字の分かりやすさが同時、移動パターン呈示よりも高い値を示し、識別時間が短くなった。また、正答率は、文字要素数が増えることで同時および移動パターン呈示で低下するが、順次、筆跡呈示では高い値で安定していたことから一度に呈示する情報量が文字識別に影響することが明らかとなった。
  • OS02-1I
    依頼講演
    服部雅史 (立命館大学総合心理学部)
    従来,タイプ2過程がタイプ1過程のエラーを正すとされてきたが,近年では,タイプ1過程は,規範と適応,いずれの観点からも合理的であるとされることもある。本研究は,課題が複合目標を持つこと,合理性は目標多重性の中でを考える必要があることを主張する。また,タイプ1は習慣限定合理性を満たし,タイプ2は規範的合理性とメタ合理性を持ち合わせていることを指摘する。
  • OS02-2I
    依頼講演
    山祐嗣 (大阪市立大学)
    二重過程理論は、進化的に古いシステムと新しいシステムを想定している。前者は進化的合理性を、後者は規範的合理性を示す。古いシステムの出力が新しいシステムによって修正されるか否かという点で、両者には3種の関係がある。それらは、新しいシステムによる修正、両システムの出力が併存、新しいシステムによる古いシステムからの出力の合理化である。意思決定の歴史的記録の分析がこの問題に示唆を与えることが提案される。
  • OS02-5
    松室美紀 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    三輪和久 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    寺井仁 (近畿大学 産業理工学部)
    二重過程理論においては,思考は直観的で自動的なタイプ1と論理的で注意を要するタイプ2の2種類のプロセスにより行われているとされている。本研究は数の推定におけるタイプ2のプロセスに焦点を当てている。2つの実験を通し,以下の点を明らかとした。第1に,推定プロセスは,推定対象である変数の分解,値の想起,計算の適用からなっていることを明らかとした。第2に,タイプ2による推定はタイプ1のプロセスにより生じたバイアスを緩和可能であることが示された。
  • OS03-7
    横山拓 (青山学院大学社会情報学研究科)
    鈴木宏昭 (青山学院大学)
    本論文はマイケル・ポランニーによる暗黙的認識と投射の概念を援用しながら,熟達の過程とメカニズムをプロジェクション科学の観点からとらえ直すことを目指す.この観点からすると,熟達者とはある領域においてより多くのものを近位項として機能させることができる存在であり,熟達化は世界に対する投射能力の拡張として考えることができる.本論文では投射による熟達の暫定的なモデルを示した上で,伝統芸能やボクシングの熟達化に関する事例にアプローチする.
  • OS04-5
    藤井晴行 (東京工業大学 環境・社会理工学院)
    篠原健一 (日本大学 生産工学部)
    写真日記という媒体を用いて環境との関係の理解を方向づける空間図式を探究している.この探究方法は固定した様式をもつものではなく,実践を通して構成され続ける探究方法である.ものごとの探究を通してものごとの探究方法の実践と探究を同時に行なっている.人工物の創生や使用における人と環境の関わり方を探究する認知科学の方法のひとつとして,写真日記の作成と構造化によって空間図式を探究する方法の意義と実践における気づきを議論する.
  • OS04-8
    名塩征史 (静岡大学)
    本研究では、統率された枠組みの中で行われる空手の基本動作の練習場面を取り上げ,そうした統率を自らその場に要請しながらも,その統率の枠を超えて自由に動き,各練習生が抱える問題に個別に対応する師範の指導行為を分析・記述する.また、この教授と練習の場が,師範−指導者−練習生の多様な組み替えと重複を含む三者間相互行為によって共創される様相を具体的な事例をもって示す。
  • OS05-5
    日高昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    我々は、ものごとを個々の特徴の断片のリストとしてではなく、一体としての“オブジェクト”としてみることが多い。こうした認知過程を説明するためには、特徴の統合の情報処理を明確に定式化する必要がある。本研究では、特徴の統合によって構成される“オブジェクト”認知の計算理論を目指し、その基礎理論の構築を行う。情報理論を拡張して情報の合成を扱う理論の定式化を行い、その応用により身体運動など複雑な力学系から“オブジェクト”を同定する方法を論じる。
  • OS08-1I
    依頼講演
    佐藤有理 (University of Brighton)
    下嶋篤 (同志社大学)
    本発表では、情報視覚化の認知研究に関する背景説明を提供する。まず、Shimojima (2015) に基づき、図形表現における認知的に利用可能な特性を紹介する。次に、情報視覚化の認知研究の最近の動向を紹介する。データ可視化グラフィックスにおけるトップダウン的なグローバル認知処理、オントロジーとして記述されるような複雑な抽象情報の視覚化、情報視覚化のデザイン選択のレベル分類などに焦点を当てる。
  • OS08-4
    片桐恭弘 (公立はこだて未来大学)
    A model is proposed of understanding rhetoric, consisting of operations on conceptual spatial representations: structuring, spatial operation and embedding, and analyses of satirical joke examples are presented.
  • OS08-5
    佐藤有理 (University of Brighton)
    Gem Stapleton (University of Brighton)
    Mateja Jamnik (University of Cambridge)
    Zohreh Shams (University of Cambridge)
    Andrew Blake (University of Brighton)
    オントロジーは概念間の単項の階層関係と二項述語関係からなる。このような複雑な知識を人間が効率的に使用するには、 それはどのように表現されているとよいのだろうか。この研究では、階層関係を集合論的関係として視覚化しそれを拡張した空間的表現(コンセプト図)と、二項述語関係としての意味連携をリンクとして視覚化しそれを拡張したネットワーク表現(SOVA)とを実験的に比較した。無矛盾判定課題において、SOVAを用いた群の成績が優れていた。
  • OS08-6I
    依頼講演
    杉尾武志 (同志社大学文化情報学部)
    図的表現を用いて効果的に判断をおこなうためには,図的表現を構成する要素間の目標に関連した空間関係に対して注意を向ける必要がある.図的表現の理解におけるトップダウンおよびボトムアップ処理についてこれまで多くのモデルが提案されてきたが,両処理の相互作用についてはあまり十分な実験的検討がされてこなかった.この点に関して階層図を用いた視覚認知実験をおこない,図的表現の慣習的知識が視覚的注意の割り当てにどのように影響しているかについて検討した.
  • OS09-1
    布山美慕 (玉川大学)
    日高昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    読者の物語理解と熱中状態の関係性が近年注目されている.本論文では,物語展開の予測方法構築時の認知負荷が熱中状態と関係するとする「予測—熱中モデル」を提案する.このモデルでは,読み始めの新規予測方法構築時,予測方法の継続使用時,予測方法再構築時がそれぞれ,非熱中,安定した熱中,混乱を伴う熱中の状態に対応すると考える.モデルの提示に加えて,先行研究や著者らのこれまでの研究との関連や今後の本モデルの精緻化や実証可能性について議論を行う.
  • OS09-2
    岡隆之介 (京都大学大学院教育学研究科)
    楠見孝 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究では直喩表現における主題-喩辞の類似性と産出される解釈の数の関係性を検討した.研究1において,参加者(N = 50)は中本・楠見(2004)で収集された120個の直喩表現に対して,それぞれ最大3つまで解釈を産出することが求められた.その結果,直喩表現に対する主題-喩辞の類似性と,産出された解釈の数に有意な正の相関関係が見られた.この結果は,直喩表現において主題-喩辞の類似性が産出される解釈の数に影響している傾向を示した.
  • OS09-3
    加藤龍彦 (北陸先端科学技術大学院大学知識科学系)
    Systematicity Argumentによれば,心的表象は構成素と規則によって作動する.そのため認知の説明を与えられるのは計算主義だけである.この議論に対して多くの論者はその経験的な前提を批判し,二重過程理論が認知の説明理論として適切であるとしてきた.本稿ではこれを批判する.認知は異なる2つのメカニズムに依存してはいない.Predictive Processingはこの点で,二重過程理論に代わって認知のより良い説明を提供し得る.
  • OS10-1I
    依頼講演
    小俣貴宣 (ソニー株式会社R&Dプラットフォーム)
    黒嶋智美 (玉川大学ELFセンター)
    萱場豊 (東京大学大学院経済学研究科)
    制約は創造的認知に関する先行研究において、制約は重要な役割を果たすと考えられている。製品開発における創造活動においても制約は重要な要因であり、企業にとってより望ましい産出物を創出するためには、適切な制約条件を見出し選択することが肝要である。更に言えば、そのような適切な制約条件を抽出するためには、多様な制約の本質的な理解が大事である。本発表では、創造行為における制約の理解という観点から分析を行った2つの事例を紹介する。
  • OS10-5
    須藤明人 (静岡大学)
    藤原直哉 (東京大学空間情報科学研究センター)
    徳田慶太 (東京大学医学部付属病院薬剤部)
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    植田一博 (東京大学大学院総合文化研究科)
    創造性を自動化する上で,生成した情報の評価指標を定めることが困難のひとつである.本研究では,情報を物理的な実体のある系と結びつけて考え,情報を得ることで系から取り出せる仕事の上限が増えることをその情報の価値としてとらえることを提案する.情報を系の状態を表現するものに限定し,取り出せる仕事の価値を認め,無限の価値を有する情報が存在しないという仮定のもとで,提案する指標が情報の価値として必要十分性を有することを論証できる.
  • OS14-4I
    依頼講演
    新国佳祐 (東北大学)
    矢野雅貴 (東北大学/日本学術振興会)
    本研究では,VOS語順を基本語順とするタロコ語を対象として,主に語順の違い(VOS対SVO)が文理解の際の処理負荷に及ぼす影響を検討するため,ERPおよび瞳孔反応を指標とする実験を行った。実験の結果,VOS語順文よりもSVO語順文の処理負荷が大きくなることが示され,文理解における語順の選好性は言語個別的な要因(基本語順)によって規定されるという個別文法仮説が支持された一方で,結果の一部は人間の普遍的認知特性もまた語順の選好性に寄与している可能性を示唆した。
  • OS14-5I
    依頼講演
    里麻奈美 (沖縄国際大学)
    本研究はVOS語順を持つタロコ語母語話者とSVO語順を持つ英語母語話者によるジェスチャー実験の比較を通し、(i) 「動作主-対象−動作」という事象認知の普遍性を唱える、これまでのSO言語を対象とした先行研究とは整合しないこと, (ii)動詞先行型のタロコ語話者は事象の動作情報を英語話者よりも早い段階で認知することがわかった。これは、言語が持つ語順や特性がヒトの思考に影響を及ぼしていることを反映している。
  • OS15-1I
    依頼講演
    有賀三夏 (東北芸術工科大学 創造性開発研究センター)
    本研究の目的は芸術・デザイン系学生を対象に、社会的参加を目指すための教育方法を開発することである。学生が可及的速やかに社会的参加に興味を持ち、「地域社会へ貢献できる人間の生き方」を意識するきっかけとなるアクティブ・ラーニング型キャリア形成カリキュラムの作成を考察する。地域環境改善に関わるアート活動に学生たちを従事させることで、主体的な問題解決能力の育成に寄与する活動モデルを提案する。
  • OS15-5
    寺朱美 (北陸先端科学技術大学院大学)
    安藤裕 (北陸先端科学技術大学院大学)
    藤波努 (北陸先端科学技術大学院大学)
    永井由佳里 (北陸先端科学技術大学院大学)
    視線追跡装置を利用して,好きな絵画を見る時の眼球運動を観察する実験を行った.実験はデザイン関係者と一般人を対象とし,静物画,風景画,人物画,抽象画,合計32点の画像を 7秒間ディスプレイに表示し,1000Hz/secで眼球運動を計測した.その結果,左右両目のX軸とY軸の差分(輻輳)で,デザイン関係者はY軸方向の差分の値が有意に高いことがわかった.また,左右両目のX軸方向とY軸方向の差分と画像の縦横比で相関が低いことがわかった.
  • OS15-6
    田中吉史 (金沢工業大学情報フロンティア学部心理情報学科)
    美術初心者は、絵画鑑賞時に描かれた対象物の特定に固執する傾向(写実性制約)があることが知られている。本研究では、抽象絵画の鑑賞において、写実性制約がどのように作用しているかを検討した。美術初心者である一般大学生が2人一組で、2点の抽象画を5分ずつ観賞しながら行った自由会話を分析した。その結果、抽象絵画においても具体的な対象物を同定しようとする傾向が強く見られ、また絵画のスタイルや題名によって反応が変化した。
  • OS17-1I
    依頼講演
    長谷部陽一郎 (同志社大学)
    本発表では自然言語における再帰性と志向性について,いわゆる思考動詞(think, believeなど)と報告動詞(say, tellなど)の補文構造を多重的に含む文の分析を通じて検討する.伝統的に生成文法ではヒトの言語器官の最も重要な性質は原理的に無限の埋め込みを含んだ構造を再帰的に処理できる点にあると論じてきた.しかし,実際の発話においては,思考・報告動詞の多重的な埋め込みを含む文は容認可能性および解釈可能性の点で問題を生じやすい.そこで本発表では,認知言語学の観点から多重的な思考・報告動詞構文の階層的概念構造を分析し,その展開と抑制がどのようなメカニズムで生じているかを明らかにする.
  • OS17-4
    外谷弦太 (北陸先端科学技術大学院大学)
    浅野莉絵 (Institute of Musicology, University of Cologne)
    橋本敬 (北陸先端科学技術大学院大学)
    再帰の解釈には,構造としての「階層的埋め込み」と,操作としての「ある関数の自己参照・自己呼び出し」という二種類が考えられる.言語文における「再帰」論争やヒトと動物との比較認知実験において,二つの再帰は混同や誤解を招いてきた.本発表では,再帰的操作の概念的な本質は,ある階層的埋め込み構造の存在やその生成ではなく,新たな埋め込み構造を無限に創り出せることにあり,ヒトの生態学的環境は後者を適応的にするものであった可能性が高いことを主張する.
  • OS17-6I
    依頼講演
    時田真美乃 (信州大学)
    平石界 (慶應義塾大学)
    心の状態についての再帰的事象を認識する能力には,論理-数学的知能が関連するだろうか.本研究では,金額当てゲームを開発し,3次および5次の志向意識水準を用いた回答の割合と,論理-数学的課題(for 文)の 5次までの多重ループ課題との正答の割合の関係性を分析した.結果は,論理-数学的課題において,5次までの多重ループ課題を正答するグループは,金額当てゲームにおける3次および5次の志向意識水準を用いた回答においても,正答率が高かった.またこの正答率とマキャベリア二ズム尺度についても関連が見られた.
  • OS18-6I
    依頼講演
    廣田章光 (近畿大学)
    問題解決に注目した研究に対して、近年、問題が明確でない状況におけるイノベーションの発生が示されている(石井1993,2009,2014, Lester and Piore 2004,Von Hippel and Von Krogh 2016)。本研究は問題が明確でない状況におけるイノベーションを取り扱う。 スーパートップアスリート向けの製品開発事例を通じて、 開発焦点の収束と拡散の要因を考察し、価値創造との関連を考察した。 さらに、ユーザー、開発者、ユーザーと開発者の3つの対話の存在を指摘した。同時に、それらの対話における開発焦点の同期が収束に、非同期が拡散につながることを提示した。
  • OS18-9I
    依頼講演
    清野絵 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    榎本容子 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    宮澤史穂 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    本研究は、発達障害の学生の就労支援上の困り感についての自由記述文を分析することで、支援者が体験する課題の把握と課題解決に向けた示唆を得ることをねらいとした。また、本研究は、様々な側面に渡る「物語現象」全体を有機的に統合する包括的枠組みである「物語生成システム」を背景に持つ。したがって、本研究の分析の過程で、副次的成果として物語生成に関して何らかの示唆を得られる可能性を持つ。
  • OS18-10
    福島宙輝 (慶應義塾大学)
    本研究では,味覚と形の感覚間象徴対応関係において従来行われてきた,選択式の課題に対して,生成課題を試みた.言語表象,描画(非言語)表象,そして身体という多面的な表象の分析から,従来はAngular図形として表象されると考えられてきた旨味,酸味に関して,これまでの定説とは逆にRoundnessとして表象される可能性を示した.また辛味,渋味などの刺激としての味が描画表象によって象徴的に角張った形に対して記述される可能性を示した.
  • P1-1F
    小田切史士 (青山学院大学 社会情報学研究科)
    小出諒 (東京大学 学際情報学府)
    鈴木宏昭 (青山学院大学 人間科学部)
    洞察問題解決時にワーキングメモリに負荷をかけると,パフォーマンスが改善する可能性が考えられる.本研究は被験者を三条件に分け,それぞれワーキングメモリに対して異なる負荷を与えた際の,洞察問題解決時の影響を検討した.結果は、解決率に対して促進的な効果は見られなかったものの、ワーキングメモリへの負荷によって制約の緩和を促すことが示唆された.また負荷のかかる部位が異なると,促進される制約緩和のパターンに差異がみられた.
  • P1-3F
    光田基郎 (大阪教育福祉専門学校)
    「情報の量と分析の必要性」を述べた31文を専門学校生51名に画面で 閲読させて、対面での小集団討議を求めた際、集団内の司会者群は「閲読中の視点変更の程度」の評定値と内容理解成績とが負相関、「集団内のリーダーシップの評定値」とは正相関を得るが、それ以外の参加者役、役割を決めない対等群は逆の相関を示す。以上より類推による既知感促進とメタ認知制御の抑制を示唆した。
  • P1-4F
    宇野正明 (代々木ゼミナール)
    本研究の目的は、習熟による学習方略の質的変化から学びの全体構造を明らかにすることにある。まず学びの全体性を3層構造と仮定した調査項目を作成し、習熟の進行によって層を超えた意識づけが生じることを検証した。次に実際の学習場面におけるノートや作文を取り上げ、習熟による表現の変化を分析した。両者の研究から、同じ学習方略を用いても習熟の違いで異なる意味付けがなされること、それは上層が下層を組み込みながら活用する包含関係で進行することを確認した。
  • P1-7F
    白砂大 (東京大学大学院総合文化研究科)
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    松香敏彦 (千葉大学文学部認知情報科学講座)
    植田一博 (東京大学大学院総合文化研究科)
    二者択一課題において,問題文で提示された対象と選択肢との双方のfamiliarityの類似性に基づく推論方略「familiarity-matching」,および具体的な知識を利用したと考えられる複数の推論方略について,各推論プロセスをモデル化し,参加者の選択をどの程度予測できるかを検証した。結果,familiarity-matchingが広く利用されること,また主観的困難度の高い問題では多数の属性が考慮されやすいことが示唆された。
  • P1-9F
    髙岸悟 (放送大学)
    本研究の目的は、① 学習者・保護者・研究者の協調により学習者がより賢くなれる型を作ること、② その型を用いて学習者が自らの学習上の問題解決を主体的に行えるようになること、の2点である。また、今回は3つのケースを取り上げたが、まだ始めたばかりの研究で、思うような結果を出せていない。今後は、問題設定、三者の話し合いの場、またその前後のスタイルを改善していく予定である。
  • P1-15F
    大貫祐大郎 (東京大学 大学院)
    本田秀仁 (東京大学 大学院)
    松香敏彦 (千葉大学)
    植田一博 (東京大学 大学院)
    意思決定時の確率情報に対する主観的な重みづけであるリスク態度が、ギャンブル課題に対して単独評価をするか、あるいは並列評価をするのかの違いで変化するのかを検証した。そして,評価法の違いによって生じる認知プロセスの変化を行動実験データ、“仮想的”な実験参加者シミュレーション、認知モデリングによって検証した。その結果、評価法によりリスク態度は変化し、その変化は不確実性事象に対して人が持つ信念の変化から捉えられる可能性が示された。
  • P1-17F
    北原由絵 (名古屋大学 情報科学研究科 メディア科学専攻)
    三輪和久 (名古屋大学 情報学研究科 心理・認知科学専攻)
    反実仮想の研究は,上向きと下向き2つの反事実の概念を取り扱ってきた.これは,後悔などのネガティブ感情を伴うと言われている.また,後悔感情が未来改善のモチベーションに繋がることも,先行研究によって明らかとなっている.本研究は,目的をふり返ることの有無が,反実仮想における未来改善機能にどのように影響するのかを明らかにすること,および反実仮想によって喚起される後悔と未来改善機能の関係を検討した.
  • P1-22F
    松本一樹 (東京大学大学院教育学研究科)
    Tomasz Rutkowski (BCI Lab)
    岡田猛 (東京大学大学院教育学研究科)
    本研究では、芸術鑑賞において、鑑賞者が作品の創作経験を有していることで、そうでない場合と比べどのような変化が生じるか検証する実験を行った。結果として、実験中に作品創作を経験した参加者は、そうでない参加者と比べ、作品をポジティブに評価する傾向を示した。さらにこの認知メカニズムを検討するため、同時に測定した脳波と心理指標を併せて分析したところ、作品の背後にある創作プロセスの認識が作品の印象形成に関わる重要な要素であることが示唆された。
  • P1-23F
    森山信也 (東京電機大学大学院理工学研究科)
    安田哲也 (十文字学園女子大学人間発達心理学科)
    小林春美 (東京電機大学理工学部)
    指示詞「これ・それ・あれ」の使い分けについては、単に対象物との距離だけでなく、可触性や可視性、所有権等も影響することが過去の研究から示されている。本研究では、レーザーポインターを使用することによって、人が自分の視点からの見えに基づいて指示詞を使用するのか、自分と他者両方の視点からの見えに基づいて指示詞を使用するのかを検討した。今回の実験の結果からは、指示詞の使用は自分の視点からの見えに基づいたものであると考えられた。
  • P1-24F
    山川真由 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    清河幸子 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    本研究では共通点の探索がアイデア生成に及ぼす影響を検討した。「タオルの通常とは異なる使用法」を考える課題に取り組む前に,タオルと関連性の低い語との共通点を探索する条件(共通点探索条件)と,タオルからの連想語を列挙する条件(連想語列挙条件)を設定した。共通点探索条件において,タオルの顕在的でない特徴の活性化が促進されることが確認されたものの,アイデアの質に及ぼす影響は見られなかった。
  • P1-26F
    杉本磨美 (電気通信大学 情報理工学研究科)
    伊藤毅志 (電気通信大学 情報理工学研究科)
    人狼は、近年注目を集める不確定情報ゲームである。しかし、認知科学的にプレイヤの思考過程を調べた研究はまだ少ない。本研究では、5人人狼を対象に、役職としての情報を得られない村人を対象に、どのように意思決定を行っているのかを調べて、その意思決定過程のモデルを提案する。
  • P1-29F
    福田将人 (慶応義塾大学)
    諏訪正樹 (慶応義塾大学)
    人間にとって「食」は非常に豊かな「体験」であり、「食体験」は様々なものごと(変数)で彩られている。本研究は第一著者の生活上での体験をもとに、「豊かな食体験」とは如何なるものごとかを一人称研究[4]として探究することである。生活領域の「食における身体性」を探るため、食体験はどのような変数で彩られており、それに留意できた時どのような体感、そして解釈/意味付けが得られるのかを詳細に探究する。
  • P1-30F
    今村新 (JAIST 北陸先端技術大学院大学)
    永井由佳里 (JAIST)
    谷口俊平 (JAIST)
    市場経済を前提する先進国の多くでUberやAirBnBに代表されるシェアリングエコノミーが進展し、市場経済における既存の商習慣へ徐々に影響を与えている。従来の商習慣を介さずにユーザー自身の再発明が他者へ伝播する消費プロセスはエコノミー環境に変容を迫る。本研究では、ユーザーイノベーション研究に関する研究を整理しながら、最終消費者によるイノベーションに注目した研究の可能性と課題を論じる
  • P1-36F
    寺井仁 (近畿大学)
    横山翔 (近畿大学)
    三輪和久 (名古屋大学)
    藤村聡太 (近畿大学)
    中山剛太郎 (近畿大学)
    本研究では,大局的な構造(上位規則)への認知が,局所的な規則(下位規則)の発見とそれに基づく現象の説明的理解に及ぼす影響について,ライフゲーム(Conway’s Game of Life)を規則発見課題とした実験的な検討を行った.その結果,(1)上位規則を含まない条件であっても,上位規則に類する構造を積極的に見出すこと,また,(2)上位規則を生み出している下位規則の探求に進むことが困難であることが明らかとなった.
  • P1-38F
    谷川由紀子 (NEC/筑波大学大学院)
    原田悦子 (筑波大学人間系)
    工学系と人文系の学生を対象とする質問紙調査を行い,使いにくい情報システムの利用場面での感じ方や行動,使いにくさに対する認識,さらにICT利用スキルやモノづくりへの意識を分析した.また各学部の1年生と3年生以上の比較を行った.その結果,使いやすさの主要因に対する認識は不変だが,使いにくさに直面した場合の感情,使いにくさの評価基準,使いやすさに向けた改善項目の優先順位づけに違いが確認され,違いの発生に工学教育が影響する可能性が示唆された.
  • P1-46
    犬童健良 (関東学園大学経済学部)
    プロスペクト理論に代表されるリスク選択の記述的意思決定モデルの問題点は,参照点に依拠していながら,「参照する」という認知過程の理解が貧弱であることにあると思われる.このためアレの背理のような古典的アノマリーについても実は系統的に説明できていない.本論文は,クジの結果ペアの気になる程度を数値化したポテンシャル値に基づき,参照点を推論する手続きを提案し,アレの背理にかんする先行研究のアンケート調査実験データを用いて検証する.
  • P1-51
    藤木大介 (広島大学大学院教育学研究科)
    二宮由樹 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    堀井順平 (愛知教育大学大学院教育学研究科)
    外尾恵美子 (愛知教育大学大学院教育学研究科)
    課題への集中はパフォーマンスに影響する。一方,注意に問題があっても自己評価が正確な場合パフォーマンスが低下しないことも示されている。したがって,集中力の劣る者でもそれを自覚化させた場合,補償的に思考状態を変化させ,課題成績が高くなる可能性がある.そこで,持続的注意に関する検査の結果をフィードバックすることが思考状態や読解成績に影響を及ぼすか検討した結果,課題に関連する思考が増え,持続的注意の劣る参加者は読解成績が向上することが示された.
  • P2-7
    神原一帆 (京都大学)
    井上拓也 (京都大学)
    生態学的な視点においては,ある語彙の使用は,それが使用される言語コミュニティー内において適応的な価値を反映していると言える.本研究は,Gries (2010)による挙動分析 (behavioral profile) をベースに,上下関係 (hyponymy) にあるとされる語彙の分析,考察を行うことで,言語研究に生態学的な視点を導入することの意義,すなわち現象の説明妥当性を示す.
  • P2-11
    Nani Barorah Nasution (金沢大学人間社会環境研究科)
    谷内通 (金沢大学人間社会環境研究科)
    This study evaluated effectiveness of case study and concept map on improving CT skills and CT disposition in Indonesian college students. It was shown that case study was effective if it was combined with concept map.
  • P2-26
    福丸歩実 (千葉工業大学大学院)
    山崎治 (千葉工業大学)
    本研究では、文章理解を促進する方法について調査することを目的とし、文章に図を添え実験を行った。実験では、3種類の未完成図(用語ぬき・関係ぬき・例ぬき)を利用した。実験参加者は、文章に付与する図の種類により5条件に分けられた。未完成図条件の実験参加者には、未完成図を完成させることを要求した。その後、理解課題を行ったところ、用語ぬき条件より例ぬき条件の平均点のほうが高く、また用語ぬき条件より図なし条件の平均点が高いという結果が得られた。
  • P2-27
    永井香 (東京 桜美林中学校・高等学校)
    数学で新しい内容や公式を学ぶとき,教師によって説明された例題と少しでも形式が異なる問題には対処できない生徒は多い.本研究では,生徒が新しい内容を学習するとき,教師が説明をするより前に生徒たちが試行錯誤しながら協調的に学習する形式の授業(知識構成型ジグソー法)を試みた.協調的に学習することで,初めて学ぶ内容であっても,教師の説明がなくても様々な形式の問題にも公式が適用できるようになり,学習内容の定着度も上がることが示唆された.
  • P2-29
    中村太戯留 (慶應義塾大学)
    隠喩的表現の面白さには,価値の低下(優越理論),何かが放出される感じ(エネルギー理論),そして何かが間違っている感じや新たな関係性の発見(不調和解消理論)という感覚の関与が予想された. 19名の大学生を対象に,これらの感覚を調査した.結果,何かが放出される感じと,新たな関係性の発見の主効果が認められた.従って,面白さの判断には,これらの感覚が関与する可能性が示唆された.
  • P2-31
    福永征夫 (アブダクション研究会)
    地球規模の難題群に対処するためには,人間の営みのパラダイムを自然の循環の論理と適合するものに転換し,環境の淘汰圧に対する自由度の高い,環境の変化に中立的な,高深度で広域的な高次の認知,思考と行動,評価・感情を自己完結的に実現しなければならない.その条件は, 部分/全体, 深さ/拡がり, 斥け合う/引き合う, 競争/協調,などの一見矛盾し二項対立する相補的なベクトルの間に,融合という臨界性を実現して行くことであろう.
  • P2-53
    高橋康介 (中京大学)
    日高昇平 (JAIST)
    小川奈美 (東京大学)
    西尾慶之 (東北大学)
    パレイドリア、アニマシー知覚、身体所有感・行為主体感など、人の認知には「過剰に意味を創り出す」という性質が備わっているようである。本稿では知覚から思考、推論に至るまでこれまではバラバラに捉えられてきたさまざまな現象を、「過剰に意味を創り出す」という一貫した枠組みの中で理解すること、そしてこの人間観を「ホモ・クオリタス」と呼び、認知の基本的な原理として位置づけることを提案したい。