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  • O1-1
    寺井あすか (公立はこだて未来大学)
    楠見孝 (京都大学)
    地村弘二 (慶應義塾大学)
    本研究の目的は異なる2つの概念が融合することでひらめき・創造が生じ,新たな概念・意味を創発する際の認知メカニズムを解明することである.本研究では,単語対(A, B)による創造的特徴生成における視覚的注意の変遷を調べる実験を行った.その結果,比喩(AはBだ)に関わる先行研究の知見と比較し,比喩文脈により喩えられる語への視覚的注意の促進されることが示され,特徴が喩えられる語の属性として適切であるか否かの評価メカニズムの存在が示唆された.
  • O1-4
    原田悦子 (筑波大学人間系)
    浅野昭祐 ((株)イデアラボ)
    Lynn Hasher (トロント大学心理学部)
    認知的加齢の現象とされるディストラクタの記憶と,文化的情報処理様式の相違による「より広範な文脈処理の記憶」との関係性を明らかにするため,日本人サンプルを対象として,ディストラクタ記憶の年齢群間比較を行う4つの実験を実施した.その結果は英語圏での先行研究の結果と大きく異なり,文化的処理様式の効果と加齢の効果の独立性と,そこに関与する言語の効果を含め,複雑な関係性について考察を行った.
  • OS01-4
    郷原皓彦 (九州大学大学院人間環境学府・日本学術振興会)
    山田祐樹 (九州大学基幹教育院)
    オノマトペ (擬音語・擬態語) は身体の行動や体験に根ざした豊富なイメージ喚起力を有する語として,多くの分野で注目されている。しかしながら,オノマトペの認知処理が人の視覚処理とどのように関連しているかについては未だ解明されていない。本発表では発表者のグループが行った,オノマトペと運動事象知覚,空間定位,視覚的嫌悪感に関する研究について述べ,それらの研究成果からオノマトペと視覚処理とを結びつける心的メカニズムについて議論する。
  • OS04-3
    榎本美香 (東京工科大学)
    高梨克也 (京都大学)
    本研究では、現場指示の「これ」と「それ」のフィールド場面における使用をみる。野沢温泉道祖神祭りの準備活動6年分を対象とし、以下の3点を事例により示す。(1)話し手と聞き手が同一の共同行為に従事しているときには「これ」、(2)話し手が聞き手が異なる行為に従事しており、聞き手の操作する対象物は「それ」、(3)同一作業中に複数の参照物があるときには、話し手と聞き手と対象物との相対的距離によって「それ」と「これ」が使われる。
  • OS04-10
    川端良子 (国立国語研究所、千葉大学)
    伝康晴 (千葉大学、国立国語研究所)
    複数の人々が協力して,特定の目標の達成を目指す共同的活動では,活動を円滑に行うために,将来の行為に関する情報を共有するということがよく行われる.この共有される情報のことを「共有プラン」と呼ぶことにする.本研究では,日常会話コーパス(CEJE)を用いて,共有プランがどのように会話を通じて構築されるか,その構築過程の分析を行う.そして,従来のモデルとは異なる共有プランの構築過程について,その要因を検討する.
  • OS06-1I
    依頼講演
    細馬宏通 (滋賀県立大学)
    Rock, Paper, Scissors is a not only a competitive game for winning and losing, but also a collaborative work for participants to synchronize their hand movements. In the last stroke that delivers Rock, Paper, Scissors, "releaseing too late (ato-dashi)" is forbidden, and participants must stroke each other's hands simultaneously with a shout. In spite of this difficulty, most participants can achieve synchronization without arranging how and when to swing fists together. In this presentation, we will discuss how participants accomplish synchronization with clues in just a few seconds, and what kind of improvised interaction is working there.
  • OS06-4
    深田智 (京都工芸繊維大学)
    来田宣幸 (京都工芸繊維大学)
    小島隆次 (滋賀医科大学)
    北尾浩和 (京都工芸繊維大学)
    萩原広道 (京都大学)
    本研究では,運動指導・指示時の言葉とそれによって引き起こされる実際のパフォーマンスとの関係を探索的に検討した.具体的には,垂直方向へのジャンプ動作を取り上げ,これを獲得済みの成人を対象に,どのような指示の言葉がどのようなパフォーマンスを実現させる可能性が高いかを検討した.言語学・運動学の観点からジャンプ動作指示の言葉の分類の枠組みを提案するとともに,指示の言葉と実現されるパフォーマンスとの間に,ある一定の法則が認められることを示した.
  • OS08-4
    片桐恭弘 (公立はこだて未来大学)
    A model is proposed of understanding rhetoric, consisting of operations on conceptual spatial representations: structuring, spatial operation and embedding, and analyses of satirical joke examples are presented.
  • OS09-1
    布山美慕 (玉川大学)
    日高昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    読者の物語理解と熱中状態の関係性が近年注目されている.本論文では,物語展開の予測方法構築時の認知負荷が熱中状態と関係するとする「予測—熱中モデル」を提案する.このモデルでは,読み始めの新規予測方法構築時,予測方法の継続使用時,予測方法再構築時がそれぞれ,非熱中,安定した熱中,混乱を伴う熱中の状態に対応すると考える.モデルの提示に加えて,先行研究や著者らのこれまでの研究との関連や今後の本モデルの精緻化や実証可能性について議論を行う.
  • OS09-2
    岡隆之介 (京都大学大学院教育学研究科)
    楠見孝 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究では直喩表現における主題-喩辞の類似性と産出される解釈の数の関係性を検討した.研究1において,参加者(N = 50)は中本・楠見(2004)で収集された120個の直喩表現に対して,それぞれ最大3つまで解釈を産出することが求められた.その結果,直喩表現に対する主題-喩辞の類似性と,産出された解釈の数に有意な正の相関関係が見られた.この結果は,直喩表現において主題-喩辞の類似性が産出される解釈の数に影響している傾向を示した.
  • OS09-3
    加藤龍彦 (北陸先端科学技術大学院大学知識科学系)
    Systematicity Argumentによれば,心的表象は構成素と規則によって作動する.そのため認知の説明を与えられるのは計算主義だけである.この議論に対して多くの論者はその経験的な前提を批判し,二重過程理論が認知の説明理論として適切であるとしてきた.本稿ではこれを批判する.認知は異なる2つのメカニズムに依存してはいない.Predictive Processingはこの点で,二重過程理論に代わって認知のより良い説明を提供し得る.
  • OS11-12I
    依頼講演
    西脇裕作 (豊橋技術科学大学 情報・知能工学系)
    吉見健太 (豊橋技術科学大学 情報・知能工学系)
    岡田美智男 (豊橋技術科学大学 情報・知能工学系)
    「誰が来るの?」この質問はどう引き出せるだろうか.ロボットは人に情報を正しく効率よく伝えることを求められてきたため,その話はわかりやすく「うんうん」と聞いていられる.しかしそれはある意味一方的であり,人からの関わりを引き出そうとするときにはこれまでの完結した発話をやめて,少し不完結な発話をしてもいいかもしれない.本研究は〈弱いロボット〉の概念を援用し,ロボットの発話に不完結さを備えさせ,人を対話に引き込む方略について議論する.
  • OS12-3
    山田雅敏 (常葉大学)
    里大輔 (SATO SPEED Inc.)
    坂本勝信 (常葉大学)
    砂子岳彦 (常葉大学)
    竹内勇剛 (静岡大学創造科学技術大学院)
    本研究では,コーチングにおける集団語が,ラグビー高校日本代表選手の身体意識へシンボルグラウンディングしていく認知的過程を解明することを目的とする.その結果,起き上がりの動作と走る準備の意識に関する集団語の分類は,指導された内容に影響を受けていることが示された.また,起き上がりと集まる動作に関する集団語に強い関係が明らかとなり,さらに,集団語の内容がチームレベルの場合、意識と動作では認知的過程に差異がある可能性が示唆された。
  • OS14-1I
    依頼講演
    安永大地 (金沢大学 歴史言語文化学系)
    本研究ではカクチケル語の基本語順が動詞-目的語-主語(VOS)なのか主語-動詞-目的語(SVO)なのかという問題に取り組んだ。2つのERP実験を行ったところ、SVO語順がVOS語順よりも処理負荷が大きいという結果が得られた。この結果は、カクチケル語の基本語順がVOSであることを示すものだと解釈できる。また、多様な語順の処理負荷は人間の認知特性に基づくというよりも個別言語の文法の特徴に基づくと考えたほうがよいということを示唆する。
  • OS14-2I
    依頼講演
    金情浩 (京都女子大学)
     カクチケル語の2つの語順の文理解の際の処理負荷を検証するため、カクチケル語の母語話者を対象にfMRIによる検証を行った。その結果、SVO語順とVOS語順の直接比較で下前頭回の賦活が有意に上昇することが分かった。これは、カクチケル・マヤ語の統語的基本語順は、他の多くのマヤ諸語同様にVOSである、ことを示すものでもある。このことから、SO 語順選好は普遍的なものではなく、個別言語の文法が文理解時の処理負荷に大きな影響を与えることが分かった。
  • OS14-3I
    依頼講演
    小野創 (津田塾大学)
    世界の言語の中で類型的に大多数を占めるSO言語(主語が目的語に先行する言語)では、目的語が主語に先行する語順で文が呈示された場合に処理負荷が増えることが観察されている。台湾の先住民族の言語の一つであるタロコ語(オースロトネシア語族)は、SVO語順に加えてVOS語順も可能であり、VOS語順が統語的基本語順とされている。タロコ語のようなOS言語(目的語が主語に先行する言語)において、どのような語順に対する選好性が見られるのかを調べることは、人間言語の文理解における処理負荷がどこまで言語システムの特性なのか、それともより一般的な認知特性によるものなのかを明らかにする上で非常に興味深い。
  • OS14-4I
    依頼講演
    新国佳祐 (東北大学)
    矢野雅貴 (東北大学/日本学術振興会)
    本研究では,VOS語順を基本語順とするタロコ語を対象として,主に語順の違い(VOS対SVO)が文理解の際の処理負荷に及ぼす影響を検討するため,ERPおよび瞳孔反応を指標とする実験を行った。実験の結果,VOS語順文よりもSVO語順文の処理負荷が大きくなることが示され,文理解における語順の選好性は言語個別的な要因(基本語順)によって規定されるという個別文法仮説が支持された一方で,結果の一部は人間の普遍的認知特性もまた語順の選好性に寄与している可能性を示唆した。
  • OS14-5I
    依頼講演
    里麻奈美 (沖縄国際大学)
    本研究はVOS語順を持つタロコ語母語話者とSVO語順を持つ英語母語話者によるジェスチャー実験の比較を通し、(i) 「動作主-対象−動作」という事象認知の普遍性を唱える、これまでのSO言語を対象とした先行研究とは整合しないこと, (ii)動詞先行型のタロコ語話者は事象の動作情報を英語話者よりも早い段階で認知することがわかった。これは、言語が持つ語順や特性がヒトの思考に影響を及ぼしていることを反映している。
  • OS16-4
    天谷晴香 (国立国語研究所)
    他者への化粧行為において,行為者は予想外の出来の悪さに悩まされる.素人の行為者が自分の母親に化粧をしているデータから,試行錯誤や偶然のチャンスを通じて,望ましくない出来を回復していく事例を分析する.途中,出来について被行為者に伝達できない様子や,あるきっかけで回復への糸口が見つかる瞬間が分析によって明らかにされた.この事例を用いて,複合活動における会話と行為の境界の不一致と,行為者による境界の調整について論じる.
  • OS16-6
    西澤弘行 (常磐大学 人間科学部 コミュニケーション学科)
    坂井田瑠衣 (日本学術振興会/慶應義塾大学環境情報学部)
    川嶋明子 (西武学園医学技術専門学校 東京池袋校 言語聴覚学科)
    失語症のある人の生活場面をエスノメソドロジー・会話分析の立場から観察・分析し,行為と間主観的理解が協働的に達成されていることを,次の4つの現象に注目して示す:1)副詞(+身振り)の単独での使用,2)(反応の遅延「う::ん」+)「まあね」の使用,3)連鎖を閉じる笑い,4)理解を適切な位置で示すこと.このことを観察可能なデータとして見出すことが可能であることが,EMCAと認知科学の接点として重要である.
  • OS17-1I
    依頼講演
    長谷部陽一郎 (同志社大学)
    本発表では自然言語における再帰性と志向性について,いわゆる思考動詞(think, believeなど)と報告動詞(say, tellなど)の補文構造を多重的に含む文の分析を通じて検討する.伝統的に生成文法ではヒトの言語器官の最も重要な性質は原理的に無限の埋め込みを含んだ構造を再帰的に処理できる点にあると論じてきた.しかし,実際の発話においては,思考・報告動詞の多重的な埋め込みを含む文は容認可能性および解釈可能性の点で問題を生じやすい.そこで本発表では,認知言語学の観点から多重的な思考・報告動詞構文の階層的概念構造を分析し,その展開と抑制がどのようなメカニズムで生じているかを明らかにする.
  • OS18-2I
    依頼講演
    新田義彦 (言語研究アソシエーション/日本大学)
    小方孝 (岩手県立大学)
     認知科学の主要分野である言語生成・言語理解の分野においては,近時,統計的アプローチが隆盛を極めている.手作りベースの古典的人工知能のアプローチは,自然言語表現の多様性に対処できないというのが,主な理由のようである.  本論文では,日本の古典的芸術文というべき「俳句」を例に採り,統計ベースの大量コーパス処理にはできない機能的強み,特にメッセージの組み込みと読み解きについて考察した結果を報告する.
  • OS18-4I
    依頼講演
    浅川伸一 (東京女子大学)
    ニューラルネットワークによる短文対話生成モデルの概説を試みた。取り上げたモデルは再帰型ニューラルネットワークに基づく言語モデル,ベクトル埋め込みモデル,系列対系列モデル,及び,変分自動符号化モデルである。大域潜在変数を導入することで変分自動符号化モデルはターゲット文を抽象化し,表現が柔軟になることが期待される。この特徴は通常の言語モデルは持たない。定量的な評価を含めて対話文,物語生成に対する貢献を評価していく手法の確立が求められている。
  • OS18-9I
    依頼講演
    清野絵 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    榎本容子 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    宮澤史穂 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
    本研究は、発達障害の学生の就労支援上の困り感についての自由記述文を分析することで、支援者が体験する課題の把握と課題解決に向けた示唆を得ることをねらいとした。また、本研究は、様々な側面に渡る「物語現象」全体を有機的に統合する包括的枠組みである「物語生成システム」を背景に持つ。したがって、本研究の分析の過程で、副次的成果として物語生成に関して何らかの示唆を得られる可能性を持つ。
  • OS18-10
    福島宙輝 (慶應義塾大学)
    本研究では,味覚と形の感覚間象徴対応関係において従来行われてきた,選択式の課題に対して,生成課題を試みた.言語表象,描画(非言語)表象,そして身体という多面的な表象の分析から,従来はAngular図形として表象されると考えられてきた旨味,酸味に関して,これまでの定説とは逆にRoundnessとして表象される可能性を示した.また辛味,渋味などの刺激としての味が描画表象によって象徴的に角張った形に対して記述される可能性を示した.
  • P1-3F
    光田基郎 (大阪教育福祉専門学校)
    「情報の量と分析の必要性」を述べた31文を専門学校生51名に画面で 閲読させて、対面での小集団討議を求めた際、集団内の司会者群は「閲読中の視点変更の程度」の評定値と内容理解成績とが負相関、「集団内のリーダーシップの評定値」とは正相関を得るが、それ以外の参加者役、役割を決めない対等群は逆の相関を示す。以上より類推による既知感促進とメタ認知制御の抑制を示唆した。
  • P1-10F
    河上章太郎 (金沢工業大学 工学部 電子情報通信工学科)
    金野武司 (金沢工業大学 工学部 電子情報通信工学科)
    人は,記号に字義通りの意味と言外の意味を割り当て,互いにコミュニケーションをする.我々は,人と計算モデルによる記号コミュニケーションによる実験を行なった.先行研究では,計算モデルどうしのシミュレーションでは協調課題を解けることが確認された.しかし,本稿ではそれと同じ仕組みが,人との間ではうまく機能しなかったことを報告する.また,その原因は計算モデルが失敗事例を学習する仕組みがないからではないかと示唆する.
  • P1-13F
    浅原正幸 (人間文化研究機構 国立国語研究所)
    加藤祥 (人間文化研究機構 国立国語研究所)
    本研究では『現代日本語書き言葉均衡コーパス』に対して付与された、読み時間と分類語彙表番号に基づく統語・意味分類の対照を行う。線形混合モデルに基づく統計分析では、統語分類において動詞文節がほかの文節より有意に読み時間が短くなる傾向と、意味分類において関係を表す文節がほかの文節より有意によみじかんが短くなる傾向が確認された。
  • P1-19F
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    藤崎樹 (東京大学大学院総合文化研究科)
    植田一博 (東京大学大学院総合文化研究科)
    本研究では,日本語の表記法が食品認知に与える影響について検討を行った.具体的には,レモンとキウイの表記を漢字またはカタカナで呈示して, その果物の購買意欲, 高級感, また美味しそうに感じるかを尋ねた. 結果として,日本語の表記は食品認知に影響を与えることが明らかになった.特に表記の希少性と可読性が相互に影響を与え,希少でありかつ可読な表記は商品の購買意欲を高める効果があることを示した.
  • P1-23F
    森山信也 (東京電機大学大学院理工学研究科)
    安田哲也 (十文字学園女子大学人間発達心理学科)
    小林春美 (東京電機大学理工学部)
    指示詞「これ・それ・あれ」の使い分けについては、単に対象物との距離だけでなく、可触性や可視性、所有権等も影響することが過去の研究から示されている。本研究では、レーザーポインターを使用することによって、人が自分の視点からの見えに基づいて指示詞を使用するのか、自分と他者両方の視点からの見えに基づいて指示詞を使用するのかを検討した。今回の実験の結果からは、指示詞の使用は自分の視点からの見えに基づいたものであると考えられた。
  • P1-25F
    趙立翠 (金沢大学人間社会環境研究科)
    安永大地 (金沢大学歴史言語文化学系)
    入江浩司 (金沢大学歴史言語文化学系)
    小島治幸 (金沢大学人間科学系)
    本研究は,統語処理優位性仮説を検証した。刺激として,意味逸脱句,統語逸脱句,統制句の3種類を用いた。参加者は,刺激を黙読し再認した。課題遂行中の参加者の脳内酸化ヘモグロビン(Oxy-Hb)濃度の変化を近赤外分光法(NIRS)を用いて測定した。分析の結果,意味逸脱句のとき,左下前頭回と左中側頭回が活性化した。統語逸脱句のとき,左中側頭回は活性化しなかった。これらの結果によって,日本語においても統語処理の優位性があることが示唆された。
  • P1-31F
    平田佐智子 (株式会社イデアラボ)
    宇野良子 (東京農工大学)
    大海悠太 (東京工芸大学)
    林淑克 (Reading大学)
    オノマトペ(擬音語・擬態語)の性質として、「パワン」などの新しい形の臨時オノマトペも自由に創作できる点があげられる。本研究では、臨時オノマトペがどのような状況で生成されるのかを検討するため、仮想的な触覚テクスチャにオノマトペ表現を付与する実験を行った。その結果、物理的テクスチャにはより慣習的なオノマトペが使用され、より新奇である反応遅延テクスチャには、より臨時オノマトペが多く使用されることがわかった。
  • P1-32F
    馬田一郎 (株式会社KDDI総合研究所)
    伊集院幸輝 (同志社大学)
    山本誠一 (同志社大学)
    3人会話における発話中の視線行動について比較分析を進めている。母語と比較して言語能力の劣る第2言語では、その不足を補うために視覚的情報を用いている可能性があり、母語の場合とは違う視線行動をとっていることが予測される。本研究では、(i)話者による聞き手への注視時間、(ii)聞き手による話者への注視時間、(iii)沈黙時の注視時間、について発話機能を考慮しつつ量的分析を行い、第2言語会話と母語会話での傾向の違いを検討する。
  • P1-43
    宿利由希子 (神戸大学大学院)
    本研究は,個人名の印象と人物像(年齢・職業)の整合性に注目し,キラキラネームと非キラキラネームの持ち主の印象評定を行った.その結果,日本語母語話者は特定の個人名からある程度共通した年齢や職業を連想し,ある程度共通した印象評価をすることがわかった.また,特定の非キラキラネームから連想した人物像と,実際の年齢・職業に整合性がないと,その個人名の持ち主への勤勉性に関する評価が下がる可能性が示唆された.
  • P1-45
    山森良枝 (同志社大学)
    In this paper we will be concerned with the adjectival interpretation of inflected tense morphemes –ta in Japanese predicates in Japanese adnominal clauses.
  • P1-47
    本多明子 (至学館大学健康科学部)
     本論文の目的は,認知言語学の用法基盤理論,構文文法論の考えの一つである構文間の「継承リンク(Inheritance Link)」について,言語獲得の側面から構文の継承モデルを示すことである.本論文で取り上げる構文は英語の動詞不変化詞構文である.本論文ではCHILDESの言語資料をもとに,こどもがどのような構文を使用しながら英語の動詞不変化詞構文を獲得していくのかその過程を考察することを通して上記モデルを提示する.
  • P1-50F
    趙曌 (広島大学)
    酒井弘 (早稲田大学)
    本研究では,他動詞文中で目的語を表示する格助詞の学習に有効であった高省略分の出現頻度を操作することで,インプット中にどれほどの項省略文が出現すればそれは格助詞の学習に効果を発揮するのかについて検討した.結果,実際のインプット中の出現頻度である80%の出現率,さらにはそれよりも少ない20%の出現率でも,項省略文はその効果を発揮し,子どもは格助詞の学習に成功していた.
  • P1-51
    藤木大介 (広島大学大学院教育学研究科)
    二宮由樹 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    堀井順平 (愛知教育大学大学院教育学研究科)
    外尾恵美子 (愛知教育大学大学院教育学研究科)
    課題への集中はパフォーマンスに影響する。一方,注意に問題があっても自己評価が正確な場合パフォーマンスが低下しないことも示されている。したがって,集中力の劣る者でもそれを自覚化させた場合,補償的に思考状態を変化させ,課題成績が高くなる可能性がある.そこで,持続的注意に関する検査の結果をフィードバックすることが思考状態や読解成績に影響を及ぼすか検討した結果,課題に関連する思考が増え,持続的注意の劣る参加者は読解成績が向上することが示された.
  • P2-1
    水野りか (中部大学人文学部)
    松井孝雄 (中部大学人文学部)
    同音異義語が聴覚呈示されても音韻から形態へのフィードバックが生じる証拠を得るために,その呈示直後にその出現頻度1位の仲間の第1文字と,漢字が同じ,漢字は異なるが音韻は同じ,漢字も音韻も異なる第1文字のターゲット語を視覚呈示して語彙判断時間と誤答率を測定した。その結果,語彙判断時間は漢字が同じ条件と音韻だけ同じ条件が両方異なる条件よりも長く,誤答率は漢字が同じ条件が他の2条件よりも高く,上のフィードバックが生じた支持的証拠が得られた。
  • P2-2
    粟津俊二 (実践女子大学)
    日本語行為文理解時に発生する運動シミュレーションに関する4実験を、メタ分析した。過去の実験で用いた127の手行為文を対象に、その文が意味する行為の方向、力、速度、大きさ、及び文の文字数、モーラ数、親密度、心象性が、有意性判断課題の反応時間に与える影響をい因子分析と重回帰分析により検討した。その結果、動作の大きさと速さが、反応時間に影響していた。運動シミュレーションには、動作の大きさや速さを制御する神経回路も含まれることが示唆される。
  • P2-4
    張寓杰 (東邦大学理学部情報科学科)
    寺井あすか (公立はこだて未来大学システム情報科学部)
    上西秀和 (獨協医科大学基本医学情報教育部門)
    菊地賢一 (東邦大学理学部情報科学科)
    中川正宣 (大妻女子大学人間生活文化研究所)
    本研究では,張ほか(2013)の研究で構築した日本語の計算モデルにおける,日本語の名詞と動詞の関係に名詞と形容詞の関係を加え,計算モデルを拡張し,心理学実験によりモデルの妥当性を検証した.また,今までの研究成果の発展的応用として,帰納的推論の検索システムをプログラミング言語PHPにより構成した.この検索システムは現在ローカル環境に限定されているが,今後WEB上での一般的利用を予定している.
  • P2-7
    神原一帆 (京都大学)
    井上拓也 (京都大学)
    生態学的な視点においては,ある語彙の使用は,それが使用される言語コミュニティー内において適応的な価値を反映していると言える.本研究は,Gries (2010)による挙動分析 (behavioral profile) をベースに,上下関係 (hyponymy) にあるとされる語彙の分析,考察を行うことで,言語研究に生態学的な視点を導入することの意義,すなわち現象の説明妥当性を示す.
  • P2-8
    小野創 (津田塾大学)
    柳野祥子 (株式会社ジャストシステム)
    小川萌子 (津田塾大学 ※研究実施時)
    大塚亜未 (津田塾大学)
    語彙頻度や親密度は、語彙判断に要する時間を変動させる代表的な要因である。本研究では、親密度ベースの個人の属性推定が、語彙判断に要する反応時間という指標からどの程度可能であるのかを検討することを目的とする。特定の大学に属する学生が日常頻繁に接する単語を選定し、それらを親密度の操作として用いた語彙判断実験を実施した。そして、そのような親密度指標が属性推定に一定程度有効であることを明らかにした。
  • P2-23
    森下美和 (神戸学院大学)
    原田康也 (早稲田大学)
    心理言語学的研究では,統語的プライミング(言語処理プロセスにおいて,直前に処理した文と同じ統語構造パターンを用いる傾向)が,学習者の言語産出における統語構造の学習や統語処理能力の向上に利用できる可能性が示されている。第一著者は,日本人英語学習者を対象とし,統語的プライミングを利用した一連の実験を行い,語彙・統語情報とその処理プロセスについての知見を得ている。本稿では,接触回数を操作して新たな実験を行った結果について報告する。
  • P2-29
    中村太戯留 (慶應義塾大学)
    隠喩的表現の面白さには,価値の低下(優越理論),何かが放出される感じ(エネルギー理論),そして何かが間違っている感じや新たな関係性の発見(不調和解消理論)という感覚の関与が予想された. 19名の大学生を対象に,これらの感覚を調査した.結果,何かが放出される感じと,新たな関係性の発見の主効果が認められた.従って,面白さの判断には,これらの感覚が関与する可能性が示唆された.
  • P2-33
    小島隆次 (滋賀医科大学医学部)
    井手菜月 (滋賀医科大学医学部)
     本研究では、劇作品における、セリフを介した登場人物の印象評価に及ぼす演者の性別の効果を、宝塚歌劇作品「エリザベート」を用いて検討した。実験結果から、セリフを介した劇中キャラクタの印象評価について、演者の性別の効果が生じるケースの存在が示された。特に、評価対象が男性キャラクタの場合において、女性が演じたと想定した条件では、男性性が高く評価されたり、女性性が低く評価されるケースが示された。
  • P2-34
    佐山公一 (小樽商科大学)
     目がストーリーの信ぴょう性に与える影響を調べた.信ぴょう性評定の後,話し手の性格の第一印象を評定した.分散分析の結果,目の形の主効果が認められた.性格印象の因子分析の結果,4因子が見出された.4因子に信ぴょう性を加え共分散構造分析を行った結果,知性因子が信ぴょう性に影響していた.多母集団の同時分析の結果,たれ目の人は,アーモンド形,半月の人よりも信ぴょう性を高めることが分かった.
  • P2-38
    原田康也 (早稲田大学)
    森下美和 (神戸学院大学)
    鈴木正紀 (ピアソン)
    大学生の英語学習到達度には大きな幅が見られる。中学・高校における英語学習経験は学校により複雑で、学校外の学修経験も英語運用能力に大きな影響を与えている。英語の学力が高い学生については、語彙・文法・連語などの英語に関する知識とリスニング・スピーキング・ライティングなどリアルタイム性を要求される課題での運用能力に大きな乖離があることが多い。同じく産出といっても、スピーキングとライティングでは一定の差が見られることが一般的である。
  • P2-39
    後藤靖宏 (北星学園大学文学部心理・応用コミュニケーション学科)
    電子書籍に感じる満足感の欠如や深く読み取れないといった“違和感”の実態を,文章の深層的な理解度を調べることによって明らかにした.短編小説の感想を書かせる問題と,文章には直接的に表現されていない事柄についての記述問題を作成し,電子書籍と通常書籍の読了後の点数を比較したところ,両者に差はなかった.この結果は,電子書籍に対する“違和感”は文章の理解度とは直接的な関係はなく,必ずしも合理的とはいえない先入観から発していると考えられる.
  • P2-41
    松井理直 (大阪保健医療大学)
    本研究は、「知覚的母音挿入 (perceptual vowel epenthesis, Dupoux et al. 1999, 2011)」の妥当性を、エレクトロパラトグラフィを用いた生理実験および知覚実験によって検討した。結論として、日本語には摩擦母音というべき母音変異音があり、これが一見子音連続に見える音響情報から母音を知覚する原因になっていることを導く。
  • P2-49
    程莉 ((中国)武漢大学)
    この発表では現代日本語共通語と現代中国語共通語の修飾構造における重複について,その自然さ~不自然さを文法的な観点から検討する.重複が必ずしも不自然なものではなく,名詞修飾型の重複の場合は「関係節の制限的用法か非制限的用法か」と「“这些”と「これら」の共起制限の違い」といった要因,また,動詞修飾型の重複の場合は「合成的表現の不透明性」と「スキャニング認知結果の利用の制限」といった要因によって自然さを変えることを具体的に示す.
  • P2-50
    平知宏 (大阪市立大学)
    本研究では文理解の過程における空間的な表象の生起過程に注目し,主体と目的語の関係性を上下前後の空間軸をもとに描画させる課題と,文意から想起される感情的評価を測定する評定課題から,感情的評価(快/不快)が実際の空間的な描画とどのように関連するかを検討すること目的とした.その結果,特に抽象的な動作を表す文において,快/不快評価が,描画課題での上/下と近/遠に表現されることが示された.