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思考・知識

  • O1-4
    日高昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    人工知能(AI)の研究のひとつの到達目標は、自律的にものごとを「理解」する”強いAI”を作ることである。Searle(1980)は、こうした強いAIに対して懐疑的な立場をとり、「中国語の部屋」と呼ばれる思考実験によりその実現可能性への疑義を示した。本稿は、中国語の部屋を再考し、それが情報伝達と同型であることを示す。すなわち、理解を定式化する鍵は、情報伝達の本質的な拡張にあると本研究は主張し、これを軸として理解の定式化の研究方針を論じる。
  • O3-3
    中田龍三郎 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    川合伸幸 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
     鏡に映る自分の姿を見ながら食べると、実際には孤食であっても、共食のように食品をおいしく感じ、摂取量は増加する。事前に撮影した食事場面の静止画像を見ながら食べても、鏡を見ながらの食事と同様の効果が生じた。鏡映自己像には食事を行う対象の動的情報が含まれていたが、これらの情報はおいしさの向上や食品摂取量の増加に必ずしも影響するわけではないようだ。「擬似的な共食」は孤食時の食事の質の向上に役立つかもしれない。
  • O3-4
    中村國則 (成城大学社会イノベーション学部)
    本研究の目的は,情報という財に対しても同じものであっても他人が持っているより自分が持っている方がそのものの価値を高く見積もるという所有効果が生じるかを検討することである.この目的のため,同じ情報に対する価値づけを自分が有して他人に伝える状況と他人が有して自分に伝える状況で比較することを様々な場面で検討した.実験の結果,一部先行研究と異なるパタンを得たものの,情報のやり取りにおける所有効果を確認した.
  • OS03-5
    竹田陽子 (横浜国立大学)
    企業におけるイノベーションにおいては、技術者が内的な表象を人工物等によって外部に投射することで自らの思考を深める一方で、他者とのインタラクションを促し、担当者相互の認識を一致させていくプロセスが広く見られる。本研究は、製造業の技術者の思考やコミュニケーションにおける表象投射の実態を調査票調査の結果(N=400)に基づき把握し、表象投射多様性が技術と技術者の特性、所属企業の組織特性にどのように関わっているかを分析する。
  • OS05-2
    小田切史士 (青山学院大学社会情報学研究科博士課程後期)
    鈴木宏昭 (青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授 博士)
    人間が潜在情報をワーキングメモリなどの何らかの貯蔵庫に保持し,洞察問題解決時に参照している可能性があることを踏まえ,正解画像を閾下呈する際にワーキングメモリに負荷をかけた場合の影響を検討した.先行研究はタッピングによる負荷をかけると解決が促進されていたが,本研究では変化検出課題を用いたところ,関係制約緩和率において閾下情報の保持に干渉が見られた.このことから潜在情報の保持にワーキングメモリのリソースが用いられている可能性が示された.
  • OS05-4
    山川真由 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    清河幸子 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    新しいアイデアを生み出す時には,事物を新たな視点から捉える必要がある。本研究では,そのために有効な方法として2つの対象間の共通点の探索に着目し,その過程について発話プロトコル分析を用いて検討した。その結果,活性化した属性を照合するだけではなく,共通点となるように表現を言い換えることで独自で面白い共通点が発見されること,関連性が高い対象間での共通点の探索に比べ,低い対象間での共通点の探索において,より言い換えが用いられることが示された。
  • OS05-5
    福田玄明 (東京大学大学院 総合文化研究科 助教)
    北田萌香 (東京大学)
    植田一博 (東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
    創造性は認知科学における大きな問題の一つです。しかし、これまでの多くの先行研究は定性的な記述がされており、創造性の基礎となる認知プロセスについては、まだあまりわかっていません。 本研究では、定量的な評価のため、創造性と計算モデルを用いて推定された意思決定における行動特性との関係を調べました。結果は、情報探索傾向が創造性と相関することを示しています。この結果は、創造性が情報探探索傾向の認知プロセスと共通基盤をもつことを示唆しています。
  • OS05-7
    新谷嘉朗 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    寺井仁 (近畿大学産業理工学部情報学科)
    三輪和久 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    創造性の先行研究では「発明先行構造」の重要性が明らかにされてきた.同様に漫画家らは事前のキャラクター設定の重要性を指摘している.本研究では,事前のキャラクター設定が,作品上にどのように反映され,最終的に作品の質につながるのかを漫画作成課題を用いて媒介モデルによって検討した.その結果、主人公の社会的な記述とストーリーの質との関係を外向性が媒介し,また,主人公の内在的な記述と表現の質との関係を漫画的な記号が媒介することが明らかになった.
  • OS06-3
    山内保典 (東北大学)
    意思決定にかかわった経験や調査結果に基づき,気候変動問題において,(1)関連情報に関する十分なリテラシーを習得し,(2)リテラシーに基づいて情報の真偽判断や取捨選択を行った上で,(3)適切に思考・判断することの難しさを列挙した.その上で,市民が持つべきリテラシーや、達成すべき合理性自体を見直し,民主主義的な社会的決定における倫理という観点から,市民参加の可能性を論じた.
  • OS06-5
    白砂大 (東京大学)
    松香敏彦 (千葉大学文学部)
    二者択一の推論場面において,これまでは選択肢に対する「再認」や「熟知性」の面が注目された。本研究では,選択肢のみならず問題文に対する熟知性にも注目した。行動実験から問題文の熟知性が低い場合はより熟知性の低い選択肢が多く選ばれることが,またメディアを利用した実験からその方略が一定程度の生態学的合理性を持つことが,それぞれ示された。ゆえに,「熟知していない」こと自体も推論手がかりとして有益になりうることが示唆された。
  • OS06-7
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    松香敏彦 (千葉大学文学部)
    植田一博 (東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
    本研究では、人間が実世界の事象に対して持つ、記憶に基づく誤った信念が推論に与える影響について検討を行った。直感的には誤った信念は推論に対して負の影響を与えるように思える。つまり、信念の誤りの大小によって推論パフォーマンスの個人差が予測できるように思われる。しかしながら本研究では、人間の誤った信念は系統的な性質を持つために、推論パフォーマンスの個人差には寄与しないことを、計算機シミュレーションならびに行動実験を通じて示した。
  • OS09-7
    藤井晴行 (東京工業大学 環境・社会理工学院 )
    篠崎健一 (日本大学生産工学部建築工学科)
    空間図式の概念に基づき,居住空間の構成と住まい方の関係の持続と変容から居住者による空間の認識の仕方を捉える方法とそれを表現する言語を構築して,空間の認識の仕方,居住空間の実体的な構成,具体的な使い方の間の関係などについて合理的に議論するための基盤の構築を視野に入れ,写真日記を用いて空間図式を構成する方法を提案し,その構成的方法によってこれまでに得られている空間図式や気づきについて報告・考察する.
  • OS09-8
    西中美和 (総合研究大学院大学)
    加藤鴻介 (金沢工業大学)
    本稿は,市民マラソンにおける走者と観客の価値共創の構造を明らかにする.市民マラソンにおける「盛り上がり」が走者と観客の応援による一体感でもたらされる価値共創であることを示す.研究手法としては事例研究を採用し,定量的手法により分析する.学術的には,知識科学的観点から見た社会的認知研究における事例研究の提示として貢献する.実務的には,市民マラソン大会の成功要因の1つを示し,今後のマラソン大会における施策作成の基礎理論とする.
  • OS11-2-1
    永井香 (東京 桜美林中学校・高等学校)
    高校数学において,式や用語の意味理解が曖昧な生徒,試験を受けて初めて「分かっていなかった」ことに気づく生徒は多い.本研究では,生徒同士が説明し合う協調的な学習(知識構成型ジグソー法)および自らの学習について日常的に振り返りを記述する活動を通して,思考の外化を促すことを試みた.これらの活動によって,式や用語の意味理解が深まること,学習内容やその理解度に関する意識が高まることが示唆された.
  • P1-12
    Radoslaw Komuda (北海道大学)
    Michal Ptaszynski (北見工業大学)
    Rafal Rzepka (北海道大学)
    荒木健治 (北海道大学)
  • P1-13
    光田基郎 (大阪教育保育専門学校)
    5歳児に電算画面で絵本を読み聞かせ,理解が困難な 文(古い家の雨漏りは泥棒や狼より怖いとの話を泥棒 と狼が立ち聞きして,お互いを未知の「ふるやのもり」 と誤解して恐れて逃げる話)と, 理解が容易な例(偽 坊主が老婆にネズミがちょろちょろと出鱈目なお経を 唱えさせたらこれを聞いた泥棒が老婆に監視されたと 誤解して逃げる話,光田,’15 日教心)の各々の理解と 下位技能得点を主成分分析して,パス図を対比する.
  • P1-14
    福岡未紗 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    三輪和久 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    前東晃礼 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
     人は様々な外的表象を取り込み,解釈や意味づけを行うことで判断を下している。その際,信念は解釈や意味づけにバイアスをかける。本研究では,外的表象にグラフを用い,グラフの理解と判断,信念の関連について実験的に検討した。その結果,先行する信念のない場合,条件間の差異の受容などグラフ理解は解釈に影響し,解釈は最終的な判断に影響した。一方で,強い信念のある場合,グラフ理解は解釈に影響するものの,最終的な判断は信念から強い影響を受けた。
  • P1-24
    髙岸悟 (放送大学大学院)
    洞察問題解決の研究を進めることは、その認知過程が同じであるといわれる創造性を高めることにつながる。本研究の目的は、洞察問題解決の特徴であるインパスをもたらす制約を取り除く方法の開発である。題材は、1997年以来洞察問題研究で最も多く用いられているTパズルとした。だれもが同じ間違いを繰り返す行き詰り状態に陥ることなく問題を解決すれば、その問題はもはや洞察問題とはいえない。しかし、結果は失敗に終わった。
  • P1-25
    池永将和 (筑波大学大学院 人間総合科学研究科心理専攻)
    原田悦子 (筑波大学人間系)
    企業の異なる部署間のコミュニケーションには葛藤が生じると言われている。谷川・鈴木・加藤・福住・原田(2015)は、その背景にHiggins(1997)の制御焦点 理論における異なる制御焦点があるという仮説を示唆している。そのため本研究では、実験的に二者の制御焦点を操作し、制御焦点が同質(異質)ペアによる協同問題解決を行った。結果、コミュニケーションの主観的評価における制御焦点の影響や、課題評価に対するペアの同質・異質の影響が見られた。
  • P1-30
    南部美砂子 (公立はこだて未来大学)
    村田友香 (株式会社アイ・エム・ジェイ)
    批判的思考態度とウェブ情報探索プロセスの関係を明らかにするため,心理学実験を実施した.ある意見について,ウェブ上で情報探索を行ったうえで,自らの意見を決定しその理由を述べるという課題を設定した.量的・質的分析の結果,批判的思考態度の高い人は,もとの信念にとらわれることなく,より客観的な視点から「批判的な情報探索」を行っていた.しかしその一方で,態度の高低にかかわらず,情報を誤解したり独自に解釈する傾向も示された.
  • P1-33
    鈴木栄幸 (茨城大学)
    加藤浩 (放送大学)
    福住伸一 (NEC)
    原田悦子 (筑波大学人間系)
    情報システムベンダーのソフトウェア技術者(SE)とユーザビリティ専門家(UE)に,仕事の経験や環境,仕事に対する認識をインタビューし,開発プロジェクト参画におけるUEの認知プロセスに焦点をあてて分析した.その結果,プロジェクト参画は,顧客の業務実施プロセス(使いやすさ)向上,UE自身のリスク回避,使いやすさ向上活動に適したSEの組織づくり,の3目標のバランス見極めの過程であり,SEのUEとの協業への意識が判断のキーとなることがわかった.
  • P1-36
    髙木紀久子 (東京大学大学院学際情報学府)
    横地早和子 (東京未来大学こども心理学部)
    岡田猛 (東京大学大学院教育学研究科・学際情報学環)
    本研究では現代美術家が作品コンセプトの生成を行う初期段階について,実際の創作過程に関わる制約の変更を検討した.結果から,アイデア生成のための概念操作による連続的なドローイング過程で,美術家は何度か「そもそも自分は何をしたいんだろう」といった,制作活動そのものの省察が起きていた.また,創作行為の制約の変更を伴う連続的なドローイング過程では,外化したドローイングのフィードバックを利用し,美術家の内的基準に基づく新しい図像の探索が起きていた.
  • P1-37
    田中吉史 (金沢工業大学情報フロンティア学部心理情報学科)
    絵画鑑賞初心者が持つ写実性制約の緩和に対して解説文が与える効果と絵画に対する反応のタイムコースを、絵画鑑賞中の発話の分析を通して検討した。48人の一般大学生が2人一組で2種類の具象画を5分ずつ鑑賞し、自由に会話した。発話内容の分析から、絵画の構図や技法に関する解説文は、鑑賞の初期から絵画の形式的側面への注目を促すこと、絵画に描かれた対象物についての解説文は写実性制約を強める可能性が示唆された。
  • P1-39
    寺朱美 (北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 永井研究室)
    深見友 (北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 永井研究室)
    永井由佳里 (北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科)
    本研究で,デザインを選択するという課題に対し受け手がデザインをどのように眺めどのように選択するかを,視線追跡装置を利用して観察する実験を行った.広い場面を一瞬で把握する場合,両目が左右で異なる眼球運動を行う現象(輻輳:ふくそう)が生じる.この眼球運動機能を利用して,デザインを選択する際に被験者がどのように視覚的な情報をとらえるかを,視線データから分析した.
  • P2-1
    西田豊 (大阪大学大学院基礎工学研究科)
    概念学習におけるプロトタイプモデルと事例モデルは,混合モデルにおける混合要素数の違いとして統一的に表現できる.しかし,一般的に混合要素数は与えられないため推定が必要になる.DP-meansは混合要素数を推定するのに適したアルゴリズムであるが,事例がカテゴリに所属するかしないかの2値的な判断となってしまう.認知モデルとして考えたとき所属度はファジィさを持って表現されたほうが望ましい.そこで,ファジィ所属度を推定できるように拡張を行った.
  • P2-17
    福永征夫 (アブダクション研究会 )
     21世紀に生きるわれわれが直面する地球規模の難題群に主体的かつ能動的に対処するためには,人間の営みのパラダイムを自然の系の基本的なルールとよりよく適合するものに転換し,環境の淘汰圧に対する自由度の高い,環境に中立的な認知,思考と行動,評価・感情を自己完結的に実現しなければならない.その条件は, 部分/全体, 深さ/拡がり, 斥け合う/引き合う, 競争/協調, という相補的なベクトルの間に融合という臨界性を実現して行くことであろう.
  • P2-22
    菅谷友亮 (京都大学大学院)
    本発表では形容詞の意味論及び語用論的分析を基に価値付与 (evaluation) の認知プロセスについて議論する。価値付与には比較対象と基準値の関係で判断される『相対的価値付与』と判断基準のみを判断理由とする『絶対的価値付与』があるが、日常的な価値付与はどちらか一方に分類されるのではなく、それらが混合し二重基準により価値付与される事が自然だと考えられる。又、その前提に於いて複雑な様相を呈する認知プロセスの全体象を提示する。
  • P2-23
    犬童健良 (関東学園大学)
    This article applies the "games in mind" modeling to the lottery comparison. By translating experimental cross-attention into potential games, the Allais paradox can be clearly explained by congestion avoidance.
  • P2-24
    下嶋篤 (同志社大学文化情報学部)
    濱田勇輝 (同志社大学文化情報学研究科)
    福治菜摘美 (同志社大学文化情報学部)
    日常的な図読解の場面では、図の従う意味規則の判定が読解タスクの大きな部分を占める。本研究では、こうした判定プロセスの認知的研究の前提として、現実に利用される図に帰属可能な様々な意味規則の体系を、福島原発事故後1ヶ月間の朝日・読売の新聞報道で使用された823の図表現をサンプルとして調査している。本発表ではとくに、単一の図表現に対して競合する意味規則の体系が帰属可能であるために、表示される情報の網羅性が曖昧となるケースに焦点をあてる。
  • P2-25
    猪原敬介 (電気通信大学大学院情報理工学研究科(日本学術振興会))
    内海彰 (電気通信大学大学院情報理工学研究科)
    本研究は,物語文・説明文・Webテキストの読書習慣と単語連想の関連についてのコーパス分析を行ったものである。予測として,コーパスに対応するテキストタイプの読書経験の多い群の連想強度分布は,そのテキストタイプのコーパスから計算されたLSA類似度分布との相関が高い」という結果が得られると考えた。その結果,一部を除き,必ずしも予測どおりの結果を得ることができなかった。本研究から得られる示唆と,今後の改善点について議論した。
  • P2-27
    中村太戯留 (慶應義塾大学 / 東京工科大学)
    隠喩的表現の面白さには「何かが間違っている」という感覚が重要と考えられる.本研究では,21名の大学生に,面白さはその感覚を伴うのか,それは論理的説明は可能かについて調査した.結果,過半数が面白いと回答した表現では,約半数の参加者は間違いの関与を支持する一方,残りは支持しなかった.論理的説明に関しても同様であった.従って,面白さの判断には間違いの発見のみではなく他の要因も関与する可能性が示唆された.
  • P2-45
    島田英昭 (信州大学)
    森下美帆 (信州大学)
    荷方邦夫 (金沢美術工芸大学 一般教育等)
    人間の情報処理プロセスが直観的なシステム1と理性的なシステム2により構成されていると考える二重過程理論の枠組みで,デザイン評価のプロセスを調べた.参加者は文房具とその文房具に対する口コミのペアを見てそれらの好意度を評価し,理性-直観情報処理スタイル尺度に回答した.その結果,直観的スタイル得点は本能的タイプおよび行動的タイプの口コミに対する得点と有意な相関があったが,内省的タイプの口コミに対する得点とは有意な相関はなかった.