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日本認知科学会

入会のご案内

サマースクール2011


開催要領


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日時:2011年9月4日(日)13:00 ~ 9月6日(火)15:30
場所:神奈川県箱根市 箱根湯本富士屋ホテル
小田急線箱根湯本駅より徒歩可能

定員:50名(その内、学生・PDの定員を30名とし若手研究者を優先します)
対象:広く認知科学に興味を持つ学生・研究者。日本認知科学会の会員には限りません。
参加費:15000円
宿泊費:11500円(3名~5名での相部屋)
シングル・ツインは 22050円
*宿泊費には夕食および朝食が含まれます。
*学生の参加者には日本認知科学会から10000円の参加費の補助があります。
*学生の参加定員は併せて30名です。
*相部屋の部屋割りは事務局にお任せいただきますが、ご要望があれば下記問い合わせ先までメールでお知らせ下さい。
主催:日本認知科学会
協賛:玉川大学グローバルCOE「社会に生きる心の創成-知情意の科学の再構成-」
慶應義塾大学グローバルCOE「論理と感性の先端的教育研究拠点」

開催の趣旨

1983年に設立された日本認知科学会は、文理にまたがる様々な背景を持った会員が知の本質を解明するために必要な研究交流の場を30年近くに渡って提供してきました。様々な背景を持った会員がいるということは、革新的な研究を生み出す、大きな可能性を秘めている反面、認知科学独自の歴史的な潮流の中で個別研究の発展も位置づけられることを知ることが比較的難しいのかもしれません。今回、特に大学院生、ポスドク、若手研究者の皆さんに認知科学の原点、潮流、将来について体系だって学んで頂く機会として、日本認知科学会サマースクールを企画することにしました。講師として、本学会の元会長でもある慶應義塾大学の安西祐一郎先生がお引き受け下さいました。合宿形式で実施される本サマースクールは、認知科学全般について広く深く学ぶことができる絶好の機会になるはずです。更に、受講生の皆さんに主体的に参加して頂くことで、挑戦的な研究のヒントを得て頂き、それを発展させるための闊達な議論の場になることを期待しています。

日本認知科学会・会長
横澤一彦(東京大学)

日本認知科学会サマースクールへの期待

心、脳、人間、社会の謎に挑み、これからの世に貢献すべき認知科学に、タテ割りの壁や境界はないはずです。認知科学の対象は、既存学問の隅にあるのではなく、人間や社会そのものにあるからです。ところが、この常識が最近通用しなくなっているように思います。とくに、若手研究者、ポスドク、院生など、若い世代の方々にとっては、伝統的な学問領域に分かれたタテ割りの研究組織、短期に成果を求められる競争資金の体制、世界の最先端で語られている情報を知らず二番煎じのテーマを未解決だと思い込む情報不足など、暗黙の縛りがあって、本当の目標がどこにあるのか、そのことを考える場さえ少ないように見えます。こうした折に、学会からサマースクール講師の依頼がありましたので、喜んでお引き受けすることにしました。認知科学の大きな歴史の流れとこれからの研究テーマを中心として、世界の内幕話も含めてお話しします。東日本大震災の被災地に伺う機会があり、学問のありかたについても思うところがありましたが、そのことにも触れるつもりです。皆様が自分の研究を、認知科学の未来潮流に向けてあらためて考える機会にしていただければ幸いです。サマースクールで皆様にお会いし、語り合えることを楽しみにしております。

安西祐一郎(慶應義塾大学)

スケジュール

9月4日(日)

12:30集合・受付
12:50-サマースクール開講挨拶 横澤一彦
13:00-レクチャー(1)安西祐一郎
14:30認知科学の現在をどう捉えるか?
19世紀の半ばから今日に至る心の研究を俯瞰して、認知科学の現在と未来をどう捉えればよいかを探る。
14:40-レクチャー(2)安西祐一郎
15:4030年間影響を与える研究とは?
認知科学研究の中からいくつかの例を取り上げ、フロンティアの空気、時代、方法論、場所など、影響力のある研究が生れた経緯を探る。
16:00-レクチャー(3)安西祐一郎
16:50認知研究の用語は妥当か
知覚、感情、記憶、知識、意図、注意、その他、認知科学で使われている用語の意味をあらためて探る。
17:00-総合討論(1) コーディネータ:今井むつみ(慶應大学)、岡田浩之(玉川大学)
18:00シニア研究者からの問題提起によるディスカッション
19:00-懇親会
参加者全員の自己紹介(ポジションペーパー発表)
参加者とのフリーディスカッション

9月5日(月)

若手研究者プレゼンテーションでは新進気鋭の研究者の発表(30分)、および参加者とのインタラクティブディスカッションを行います。
単なる研究発表ではなく、ディスカッションを通じてすべての参加者がこれからの研究スタイルや新しい研究方向を考える時間にしたいと思っています。
9:00-若手研究者プレゼンテーション(音声認識・ロボティクス)
10:20杉浦孔明(NICT)
「ロボット対話研究の最前線」
生物や機械の知能は、人工知能、ロボティクス、認知科学に共通する興味であろう。本講演では、我々がエンジニアとしての立場から取り組んできた機械の知能について概説する。高齢化社会の到来とともに、生活環境で人間を支援するロボットへの期待が高まっているが、ロボットのコミュニケーション機能は必要なレベルにまったく到達していない。例えば「コップ持ってきて」という命令を聞いて、食器棚に向かうのか、目の前のテーブルに手をのばすのか、など適切な行動を選択することは、現状の対話処理技術にとって難しい問題である。我々は、このような問題に対し、学習した音声・動作・視覚信念を用いてユーザの音声発話を解釈する手法LCoreを開発してきた。本講演では、まずLCoreについて説明し、生活支援ロボットの競技であるロボカップ@ホームにおけるLCoreの適用例について述べる。
10:40-若手研究者プレゼンテーション(言語学)
12:00秋田喜美(東京大学・学振)
「小さな窓から見る大きめの世界 ―オノマトペの形態的随意性への構文論的アプローチ―」
オノマトペ(擬音・擬態語)は、形式(表すもの)と意味(表されるもの)の間に恣意性を越えた有縁的関係が見出される言語記号である。そのためオノマトペの言語学では、しばしば形式と意味の両方の考察が同時に必要となる。本発表では、特に日本語におけるオノマトペと助詞の共起(例:ぶらぶら歩くvs.ぶらぶらと歩く)というミクロな言語現象からその一例を提示する。今回採用する構文論的アプローチは、理論的・方法論的意義に加えて通言語的示唆を有するものである。
13:00-レクチャー(4)安西祐一郎
14:30方法論の将来は?
実験心理学的方法の課題、脳活動計測法の課題、情報処理モデルの課題、タスク分析の課題、意識下のメカニズム分析の課題、新しい方法論などについて、将来の方向を探る。
14:40-レクチャー(5)安西祐一郎
15:40応用の時代は来るか?
認知科学の知見は現実の問題に応用可能かどうかを検討し、医療、コミュニケーション、教育、デザイン、その他の分野への応用の将来性について探る。
16:00-レクチャー(6)安西祐一郎
16:50認知科学の未来を探る
21世紀の認知科学を飛躍的に発展させるブレークスルーは、どこで、どのようにして、誰によって起こるか、あるいはすでに起こっているか、認知科学の未来を探る。
17:00-総合討論(2) コーディネータ:今井むつみ(慶應大学)、岡田浩之(玉川大学)
18:00シニア研究者からの問題提起によるディスカッション
19:00-懇親会
参加者とのフリーディスカッション

9月6日(火)

9:00-若手研究者プレゼンテーション(心理学)
10:20浅野倫子(慶應大学・学振)
「言語発達の第一歩を助ける音と概念の感覚統合」
ことばは単なる音の羅列ではなく何らかの指示内容を持つという気付きを得ることは、乳幼児の語意学習の重要な第一歩である。本研究ではその第一歩を助けうる要因として、言語音と非言語的な概念との間にしばしばみられる恣意的ではない結びつき(「きぴ」という言語音に尖った形状をイメージしやすいなど)、すなわち音象徴に注目し、語意学習の開始以前から音象徴に対する感受性が存在するかどうかを調べた。脳波測定実験の結果、言葉を話し始める前である11-12ヶ月児が音象徴を検出可能であることが明らかになった。本講演では脳波の事象関連電位と位相同期解析の結果から推測される神経基盤を含め、音象徴が言語発達の最初期において果たす役割について論じる。
10:40-若手研究者プレゼンテーション(社会心理)
12:00高岸治人(学振・東京大学)
「向社会的行動の発達的変化とその認知的基盤」
遺伝的に関係のない他者への向社会的行動(利他行動や資源分配行動)は、人間社会において顕著に見られる。 本発表では、3歳から12歳までの幼稚園児・小学生を対象に経済ゲーム(最後通告ゲーム、独裁者ゲーム)を行うことで向社会的行動の発達的変化を明らかにし、心の理論(Theory of Mind)という他者の心的状態を推測する認知能力の発達が向社会的行動にどのような影響を与えているかについての議論を行う。
12:00サマースクールの講評 安西祐一郎