定員: | 60名(若手研究者を優先します) |
対象: | 広く認知科学に興味を持つ学生・研究者。日本認知科学会の会員には限りません。 |
費用: | 一般参加者:参加費 22000円(打ち合わせ用に会議室利用の場合は38500円) +宿泊費 24000円の合計46000円(会議室利用参加者は62500円) |
| 若手参加者:参加費 16000円 +宿泊費 24000円の合計40000円 |
| (若手参加者には30名限定で認知科学会から補助があり30000円) |
| *宿泊は2名~4名での相部屋です。 |
| *相部屋の部屋割りは事務局にお任せいただきます。 |
| *宿泊費には二泊分の夕食および朝食が含まれます。 |
| *シングル部屋利用は要相談. |
| *若手参加者には日本認知科学会から10000円の参加費の補助があり,合計3万円となります。 |
| *若手補助の定員は先着30名です。 |
| *若手とは「年間研究費・グラント(学振員科研費含む)を得ていない学部生、大学院生、任期付きの研究職・技術職に従事する者。 |
| (ただし、定員に余裕がある場合はグラントを得ている学部生、大学院生も対象に含める) |
| * 参加者には自己紹介を含む簡単なポジションペーパーを提出いただきます。 |
問合せ先: | 日本認知科学会事務局 jcss@jcss.gr.jp |
主催: | 日本認知科学会 |
協賛: | トビー・テクノロジー株式会社 |
| 共立出版株式会社 |
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参加申し込み
参加申込書に記入の上,メールあるいはFAXで送付願います.
先着順に受付します,申込みは早めにお願いします.
申込書のダウンロード
【お問い合わせ】
日本認知科学会 若手支援室
y-support[@]jcss.gr.jp
※[@]を@に変えてください。
※申込書の送付先とは異なります。
開催の趣旨
日本認知科学会・会長
川合伸幸
ようやく対面でのシンポジウムや学会が再開されるようになりました。オンライン会議は便利ではありますが、オンラインでのブレインストーミングはうまくいかない、という研究結果がNature誌に発表されるなど、対面で議論することの重要性があらためて認識されるようになってきました。先日、サマースクールをはじめ認知科学に多大な貢献をされた鈴木宏昭さんを追悼するシンポジウムを開催しましたが、そこでも場を共有することの重要性を再認識しました。
サマースクールも久しぶりに寝食を共にしながら開催することになりました。サマースクールの目的は、たんに立派な研究発表を聞いて「お勉強」するのではなく、認知科学に関心をもつ若手研究者が相互作用することで、お互いのモチベーションを高め、人脈を築き、次代の認知科学を担う人材となることを目指す場を提供することです。ただし、互いに情報交換すればそのような有為な人材になれるわけではなりません。科学としてのリテラシーを身につける必要があります。
認知科学は、言語学、哲学、心理学、工学、神経科学など、多様な領域の研究者が参入しています。それぞれの領域で、固有のトレーニングを受けていると思いますが、逆に領域を架橋するような方法論や思考が培われていないように思えます。そのことが、大きな問いを立てられない、ということにつながっているのだと思います。研究室の伝統的な実験方法に少しだけパラメータを変えた研究、20年以上も前の古くさい研究をいつまでも先行研究としてあがめた研究、目新しく興味深い研究の問題設定を縦のものを横にしたくらいの目新しさのない研究が跋扈するのは、大きな視点で問題を設定できないことによるのでしょう。
日本発の認知科学研究が、あまり海外で引用されていない(ように見える)のは、こうしたことに問題があるのだと思います。そこで本年は、よい問題を設定するために必要な論理と考え方を講じ、演習として架空(自身で研究のアイデアのある人はそのアイデア)の問題を設定し、序論を書いてもらいます。グループに分かれ、グループ内で他人の意見を建設的に批判し合うことで、自身の研究を建設的かつ批判的に見る態度を涵養します。これらのことを通じて、海外の雑誌で引用される研究を計画・推敲できる人材を育成することを目指します。
また、認知科学が誕生したときに同時に生まれたAIと認知科学の未来について、日本のAI研究を先導する安西祐一郎先生から提言を聞きます。これからの社会では、プログラミングや英文校正の補助といった些細なレベルから、論文の執筆さらには計画までもAIの助けを借りることになるかもしれません。そのときに、認知科学にどのようなことができるかを考えてもらいたいと思います。
サマースクール2023への期待
安西祐一郎
世界的に見て優れた研究の多くが、多様な背景(研究方法、研究分野、文化、国籍、その他)を持つ研究者同士が対話を重ね、刺激しあう場から生まれるようになってきたように思います。
行動実験、脳機能研究、ビッグデータ処理などの方法に通じた研究者の共同研究が増えていることはご存じの通り、被引用回数の多い論文が国際共同研究から生まれる割合も急速に高くなっています(文科省科学技術政策研究所調査)。最近では、複数の研究方法をマスターした一人の研究者が、世界に先駆けた成果を次々と挙げることも目につくようになりました。
しかし、とくに日本の国内では、いまだに若手研究者や院生の多くが、何年も同じような人たちと過ごし、限られた所属分野、お仕着せの研究方法、自分の周囲の先生や学会の狭い研究人脈といった、「多様性のない研究の場」に生きているように見えます。
世界の研究環境の変化と無縁のガラパゴス的生活をしていれば、ストレスもそれほど感じなくて済み、表面的には有意義な研究をしている気になれるのかもしれません。しかし、研究の方法や考え方の似た者同士からは、世界の第一線から見ると重箱の隅をつついた結果しか出てこない、世界はすでにそういう時代に入っているのです。
認知科学に関心を持つ若い研究者や院生には、内輪に籠った分野ごとの研究文化や各分野の伝統的な研究法に囚われず、新しい研究方法を開拓していってほしい。そして、多様な研究者と刺激しあって、ワクワクするような学術の世界を創り出してほしい。とくに、世界の第一線に飛び込んで力いっぱい頑張ってほしい。それが私の願いです。
サマースクールの創設に尽力された横澤一彦元会長は、自らの研究として視覚の「科学」を標榜しておられます。また、鈴木宏昭元会長は、本学会が「対話」の場であってほしいと言っておられました。10回目になるサマースクールが、世界の学術動向にも沿った、多様性に基づく開かれた研究へのステップになること、「科学」の方法論を開拓しつつ「対話」を通して新しい学術の世界を創り上げていくエネルギー源になることを、心から期待しています。