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日本認知科学会

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『認知科学』(第34巻 第1号)特集論文募集のお知らせ

『認知科学』(第34巻 第1号)特集論文募集のお知らせ


特集タイトル:共在と共生の認知科学
掲載予定巻号:第34巻 第1号(2027年3月)
担当編集者:坂井田瑠衣(公立はこだて未来大学)・秋谷直矩(山口大学)

企画趣旨:

 共生社会の実現が叫ばれて久しい.多様性や包摂性といった概念をキーワードとして,あらゆる属性や特性をもつ人々が,自由かつ平等に参画できる社会がめざされている.認知科学の関連分野においても,さまざまなフィールド,コミュニティにおける共生の現状を分析したり,そうした研究的知見をもとに今日的な共生社会のあり方を示唆したりする研究も増えつつある.
 人が他者と共に生きていく,そのプロセスにおける最も原初的な基盤として考えることができるのが,人が物理的空間に居合わせている「共在(co-presence)」の状態である.人々が公共空間で共在し,さまざまな形で相互作用しながら社会生活を営んでいるさまを鮮やかに記述した社会学者のゴフマンは,いかに個人の認知が他者にとって観察可能にされており,個人も他者に対して自らの認知が観察されうることを前提としたふるまいをしているかという,いわば「認知の社会性」を生々しく描き出している.そこでは,見知らぬ者どうしが互いに必要以上に干渉しないように儀礼的無関心を装うといった,多様な「他人」同士が共に社会を生きるために用いている共在の技法が明らかにされている.共生社会の実現においては,自分とは異なる様々な属性や特性をもつ他者を「理解」することが重要とされることも多いが,そうした「他者理解」の原初的な場所が,共在という物理的接近状態における人々のかかわりにあると言ってよいだろう.
 昨今,共在をめぐる技術的・社会的な状況はめまぐるしく変化している.オンライン会議システムの発展やコロナ禍などの社会情勢を背景として,人々が物理的には共在していないにもかかわらず,擬似的な「共在」の感覚を得ることができる機会が増えている.また,ソーシャルメディアなどの非対面的な状況においても,これまでにないような「誰かと共にいる」感覚が共有され,新しい価値観や規範が生み出されるとともに,ヘイトスピーチやハラスメントといった社会問題のあり方にも影響を与えている.そうした社会の劇的な変化を経験する時代においては,古典的な相互行為論が前提としてきた「共在」の概念も改めて問い直す必要があるだろう.
 本特集号では,多様な人々が互いへの理解を積み重ね,ときに折り合いをつけながら生きていく,といった「共生」のプロセスにおける「共在」のあり方に焦点を当てた論文を募集する.人々が(擬似的なものも含めて)空間的に,あるいは心理的に「共在」しているという状態や,そこで共在を積み重ねていくプロセスが,いかにして人々の「共生」を生み出す基盤となっているか,あるいは,ときに「共生」を生み出すことを妨げうるのか,といった観点から議論し,「共生」における「共在」の意義を捉え直す機会としたい.

募集する論文の例(これらに限らず,広く関連する論文を募集する):

  • 医療,看護,介護,福祉,教育,保育,地域社会,都市社会,異文化接触,震災復興といった,共生社会に関連深いフィールドを対象とした「共在」に関する論考

  • 障害,ジェンダー/セクシャリティ,宗教,多文化,多言語,多世代,インターセクショナリティ,経済格差といった,共生社会に関連深いイシューと「共在」のかかわりに関する論考

  • 差別,ヘイトスピーチ,ルッキズム,ハラスメント,いじめ,マイクロアグレッション,バックラッシュ,ディスコミュニケーションといった,共生社会を阻むと考えられうる社会現象と「共在」のかかわりに関する論考

  • オンライン会議,ソーシャルメディア,バーチャルリアリティといった,擬似的な「共在」や非対面的相互行為がもたらす共生のあり方に関する論考

投稿資格:

認知科学の研究者であれば,誰でも投稿できる(査読・掲載に関わる費用等について,詳しくは『認知科学』の投稿規程を参照する).

応募方法:

本特集では,プロポーザル方式で原稿を募集する.執筆を希望する場合,プロポーザル投稿をすませた上,期日までに論文原稿を送付すること.プロポーザル投稿は,2026年3月20日(金)までに,論文タイトル,論文種別(研究論文,展望論文,短報論文,あるいは資料論文),著者氏名・所属・連絡先(住所,電話番号,e-mailアドレス),800字程度のアブストラクト,キーワード(5個程度)を電子メールにて提出する.投稿する論文は,「認知科学」の投稿規程と執筆要領に従うものとする.
 提出後,10日以内に受領確認のメールを著者に送付する.論文投稿は電子投稿システムで行う.投稿方法の詳細はプロポーザル採択者にメールで通知する.

プロポーザル提出先:

プロポーザル投稿は以下のアドレスに提出するものとする。
 cstokusyu34-1[at]jcss.gr.jp
 [at]を@に置き換えること

スケジュール:

おおむね下記のスケジュールを予定している.
・2025年10月中旬:CFP配布開始
・2026年3月20日:プロポーザル投稿締切
・2026年3月末:プロポーザル採択通知(執筆依頼)
・2026年5月20日:論文投稿締切
・2026年7月中旬:第一回査読結果返送
・2026年10月上旬:第二回査読結果返送
・2026年11月15日:最終稿提出締切(これより遅れた原稿は次号以降の一般号掲載となる)
・2027年3月1日:第34巻第1号掲載