特集タイトル:価値に向き合う認知科学:対話・身体・記述
掲載予定巻号:第31巻 第3号(2024年9月)
担当編集者:新原将義(武蔵大学),伊藤崇(北海道大学),青山征彦(成城大学)
企画趣旨:
「対話」は人文科学の諸領域において,単なる意思疎通やコミュニケーションとは異なる重要概念として位置づいている.例えばバフチンの対話主義はオープン・ダイアローグや哲学対話の理論的視座としても実践的な活用が為されるなど,理論面でも実践面でも強い影響力を持ち続けている.認知科学においても,コミュニティの境界線上で生起する対話や相互行為は、学習の水平的次元や越境,ノットワーキングなど,様々な形で概念化されてきた.さらに人と人との関係性だけでなく,ロボットやAIと人とのインタラクションを対象とするHuman-Agent Interactionの分野においても,対話は重要な観点となるであろう.
しかしそうした対話がどのような「価値」をめぐるものなのか,あるいはどのような「価値」を生成することを目指したものなのかといった問題を,近年の認知科学は十分に議論できているだろうか.対話の場には,常に当事者たちにとっての,ある価値に関する葛藤や闘争,摩擦,模索が生じている.特に近年の我々の生活空間には,平和とはなにか,民主主義とはなにか,法はどうあるべきかといった,政治的・社会的な価値をめぐる問題が日々報じられ,テクストやインターネット上での発信を含めた様々な次元での対話が巻き起こっている.こうした対話において,当事者がどのような価値をめぐって対話をし,葛藤しているのか,どのような過程で価値が 生成されていくのかという問題に対して,今日の認知科学は十分な貢献をなし得ているだろうか.
また近年の科学的対話において生起している重要な変化の一つが、「身体」にまつわる価値をめぐる議論である.オンラインの仮想空間が一般化すればするほど,我々の身体がもつ価値とはなんなのかという問題が益々重要性を帯びていくだろう.あるいはフェミニズムは,身体性を重要な論点とし,生物学的身体と社会的身体の関係についての議論を先導してきた.こうした様々な文脈において議論されてきた身体の持つ価値,あるいは価値と身体の関わりを、認知科学はどのように扱うことができるだろうか.
本特集ではこうした,ある価値をめぐる対話の実践やそこでの身体の重要性にフォーカスする論文を広く募集する.具体的には,幼児教育を含む教育現場,医療や福祉の現場,NPOや市民団体といった市民活動の現場におけるフィールドワークやアクションリサーチにおける対話のプロセス,フェミニズムをはじめとした身体やジェンダーをめぐる論考,身体と人工物のインタラクションにおける価値の問題などを取り上げた研究を想定している.
募集する論文:
様々な実践現場において生起する価値をめぐる対話のプロセス,身体の重要性に関する交渉過程にフォーカスする認知科学について,広く研究を募集する.例えば,以下のような領域が考えられる.
・幼児教育を含む教育現場
・医療や福祉の現場
・NPOや市民団体といった市民活動の現場におけるフィールドワーク
・アクションリサーチにおける対話のプロセス
・フェミニズムをはじめとした身体やジェンダーをめぐる論考
・身体と人工物のインタラクションにおける価値の問題
など.
応募方法:
本特集では,事前エントリー方式で原稿を募集する.執筆を希望する場合は,事前エントリーをすませた上,期日までに論文原稿を送付する必要がある.事前エントリーは,2023年7月10日(月)までに,論文タイトル,論文種別(研究論文,展望論文,短報論文,資料論文),著者氏名・所属・連絡先(住所,電話番号,e-mailアドレス),1000字程度のアブストラクト,キーワード(5個程度)を電子メールにて提出する.件名は「認知科学31-3事前エントリー」とする.論文原稿の投稿時には,『認知科学』の投稿規定,執筆要領にしたがうものとする.
プロポーザル提出先:
事前エントリー,問い合わせ等は,以下のアドレスに送付する.
アドレス:jcss313special[at]gmail.com : [at]を@に置き換えること.
・事前エントリー後,1週間以内にエントリー受付の返信がある.返信がない場合は,編集事務局に問い合わせること.
・論文の投稿方法は,エントリー提出者に個別に連絡する.
スケジュール:
投稿から査読,掲載に至るまでのスケジュールはおおむね下記のスケジュールを予定しています.諸事情により変更の可能性があります.
2023年7月10日(月) プロポーザル投稿締切
2023年8月7日(月) プロポーザル採択通知(執筆依頼)
2023年12月8日(金) 論文投稿締切
2024年2月中旬 第1回査読結果返送
2024年4月末 第2回査読結果返送
2024年5月17日(金) 最終稿提出締切
2024年9月初旬 第31巻第3号掲載