研究分野別一覧

思考・知識

  • OS07-4
    公募発表
    岩井 優介 (東京大学教育学研究科)
    岡田 猛 (東京大学大学院教育学研究科)
    触発と社会的比較の理論に基づき,他者の小説作品を推敲することが読解する場合と比べて創造的な創作を促進するかを,心理実験によって検討した.48人の大学生・大学院生の実験参加者が4条件のもとで掌編小説を創作し、大学生・大学院生6名が創造性を評定した.分析の結果,他者作品を推敲することで,読解する場合と比べて創造が促進されることが明らかになった.
  • OS07-5
    公募発表
    松本 一樹 (東京大学大学院教育学研究科)
    岡田 猛 (東京大学大学院教育学研究科)
    芸術に関する知識や経験は作品鑑賞行為に影響することが知られている。熟達者が鑑賞時に注意を向ける点を特定した上で、初心者に対して同様の点に注意を向けるように支援することで、有効な鑑賞の支援となる可能性がある。著者らの実験結果(N = 103)では、専門家の提唱する形で作品創作プロセスの認識に注意を向けた参加者は作品への感嘆等が促進される結果となった。本発表では実験の紹介と共に、鑑賞支援に向けてどのような基礎研究が可能か考察する。
  • OS10-1
    公募発表
    岩橋 直人 (岡山県立大学)
    岡田 浩之 (玉川大学)
    船越 孝太郎 (東京工業大学)
    Cooperation is one of the most fundamental human characteristics, and several interdisciplinary studies have been conducted to understand this aspect. However, despite the numerous studies conducted on the subject, a comprehensive theory regarding cooperation remains elusive. In this study, the theoretical and practical aspects of human--human, human--machine, and machine--machine cooperation are explored. Cooperation is theoretically analyzed from behavioral, mathematical, and cognitive viewpoints. The theoretical principles were applied to certain unsolved problems. Furthermore, it is demonstrated that such cooperative machines can be used to investigate the human capabilities of cooperation. The developed versatile interactive software RoCoCo, which can be used as a research tool, is presented. Finally, the possibilities and prospects of this research framework, which is termed the {\em theory of cooperation}, are discussed.
  • OS10-3
    公募発表
    浅野 旬吾 (電気通信大学)
    本研究では,正体隠匿型の非言語的コミュニケーションゲーム「DREAMS」を用いて,人間の相手モデル形成過程に関する認知科学的実験を行った.その結果,対戦を繰り返す中で相手から同じ意図を持った行動が繰り返され,その行動に関する推測が行われ,その結果を確かめる過程を経ることで,徐々に相手モデルが構築されていく様子が観察された.
  • OS11-4
    公募発表
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    藤崎 樹 (東京大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    植田 一博 (東京大学)
    本研究では,記憶の制約がヒューリスティックに基づく判断に与える影響について分析を行った.具体的には,人間の記憶が持つ制約とヒューリスティックの合理性の関係について,計算機シミュレーションに基づく分析を行った.結果として,記憶の制約はヒューリスティックの合理性を妨げるものではなく,合理的活用を促進するということが明らかになった.
  • O3-3
    犬童 健良 (関東学園大学)
    本論文は,文理解の認知モデル化に経済メカニズムデザインを適用することを試みた.文中の単語をエージェントのメッセージとみなし,文の意味は残余のゲームフォームに代入されて計算されると仮定された.具体的に総記のガや対比のハの解釈の切替え戦略に着目し,WordNetを用いて述部の静と動の示唆的特徴語の分布を調べ,ブロッキングシステムとして定式化した.また戦略的操作可能性から総記や対比の発生の具体的なモデルを提案した.
  • P-5
    岡 隆之介 (三菱電機株式会社)
    柳岡 開地 (東京大学大学院教育学研究科)
    楠見 孝 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究では主題に付与された特徴の数が名詞比喩表現の産出に与える影響を検討する。2つの実験で、参加者は呈示される文の言い換え課題に取り組んだ。呈示される文の主題に付与される特徴の数が操作された。結果、2つの実験のどちらでも、主題に付与される特徴の数が増えるにつれて名詞比喩表現の回答割合が増えた。私たちの結果は主題に付与される特徴の数が比喩表現の使用に影響することを示唆した。比喩の産出と選好に関する先行研究に基づいて結果を議論した。
  • P-6
    下條 朝也 (名古屋大学情報学研究科)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    寺井 仁 (近畿大学)
    人間は、ある出来事に直面したときその因果に関する説明を求める。説明は複数考えられることが多く、それらを比較することで最も良い説明を決定する。本研究では、説明を単独で評価したときの満足度と、別の説明と比較しながら評価したときの満足度を比較することで、比較によって説明の満足度がどのように変化するのかを検討する。
  • P-9
    林 美都子 (北海道教育大学)
    一戸 涼史 (北海道教育大学)
    本研究では、時間割引率の視点から、現在あるいは将来の報酬におけるメリットを考えることが先延ばしを防ぐか検討した。報酬メリット考察課題の前後で時間割引率を測定し、分散分析を行ったが変化はなく、報酬メリットを考察することで先延ばしが防げるという本研究の仮説は支持されなかった。しかし即時小報酬群群は遅延大報酬群よりも時間割引率が高く先延ばししやすい可能性が高いことや、変化人数で分析すると、報酬メリットの考察に効果のある可能性が示唆された。
  • P-11
    伊藤 創 (関西国際大学)
    言語獲得初期において,animacyの高い参与者に焦点をあて事態を把握・描写する日英語母語幼児は,成長に伴い,前者はempathyの高い参与者に,後者はaction chainの開始点に焦点をあて,それらを主語として描くという違いを見せるようになる.本研究では,この違いが既に3歳児で現れること,更にempathyの高い参与者を主語とする際に重要な受身表現についても日本語母語幼児は3歳児の時点で一定の使用を見せることが明らかになった.
  • P-13
    原田 悦子 (筑波大学)
    鷹阪 龍太 (東洋大学・筑波大学)
    田中 伸之輔 (筑波大学)
    水浪 田鶴 (筑波大学)
    須藤 智 (静岡大学)
    Suzuki(2018)は,投資ゲーム(顔写真に示された人物を信頼して投資を行うかどうかを判断する課題)を繰り返し行う中で,高齢者は若年成人と異なり,信頼性判断の成績が向上しないことを示した.こうした高齢者の判断特性が真であるならば,それをいかに支援するかを検討する必要があり,本研究では若年成人との相互作用,例えば子や各種窓口担当者との相談が高齢者の意思決定過程に対して影響を与えうるか否かを検討するために,実験的検討を行った.
  • P-14
    苗村 伸夫 (株式会社日立製作所)
    長谷部 達也 (株式会社日立製作所)
    本研究では,遠隔地の多数の参加者による大規模オンラインアイデア創造を実現するための手法「アイデア進化」を提案する.アイデア進化では,ユーザがアイデアの提案と同時に他者のアイデアを評価し,進化計算手法がアイデアの評価に基づいて次のユーザがヒントとすべき良案を選択することで,アイデアの質を効率的に高められる.アイデア進化を30人規模でのオンラインアイデア創造に適用した結果,安定してアイデアの質が向上した.
  • P-15
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    寺井 仁 (近畿大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    知識や経験の制約から脱却し,新しいアイデアの発見を可能とする創造的認知は,洞察研究を通して検討されてきた.本研究では,次善解によって問題解決が可能な負のフィードバックがない状況で生じる,より良い解への転換について扱う.このような状況では負のフィードバック以外の要因が転換を促進すると考えられる.意思決定研究では判断の流暢性が,回答の変更を促すことが知られている.そこで本研究では,問題解決の流暢性を操作する実験を行う.
  • P-27
    田村 昌彦 (立命館大学)
    稲津 康弘 (農研機構)
    江渡 浩一郎 (国立研究開発法人産業技術総合研究所)
    松原 和也 (立命館大学)
    天野 祥吾 (立命館大学)
    野中 朋美 (立命館大学)
    松村 耕平 (立命館大学)
    永井 聖剛 (立命館大学)
    サトウ タツヤ (立命館大学)
    井上 紗奈 (立命館大学)
    堀口 逸子 (東京理科大学)
    和田 有史 (立命館大学)
    本研究では食品安全に関する知識について,食品と添加物,一般的知識と安全性に関する知識に分類し,尺度を作成した.この尺度を用いて高校生とそれより年齢が高い世代の知識量を測定し,両者を比較することで獲得する知識の違いを検討した.その結果,添加物に関する知識が食品に関する知識よりも獲得される知識が少ないことが明らかになった.本研究はその原因を探るための調査研究である.
  • P-28
    得丸 久文 (著述業)
    66千年前に南アフリカで生まれた言語的人類は喉頭降下によって音節を獲得すると,音節の音素性が無限の語彙を,モーラ性がや文法的修飾を可能にした.5千年前に文字が発明されると,知識は時空を超えて共有できるようになり連続的な発展をとげる文明が生まれ,言葉を群として操作する概念が生まれた.今日,言語情報は電子化し,有史以来の人類の知的営為をキーワード検索の対象とするようになった.これから言語的人類の 知能はどのように進化していくのか
  • P-29
    森下 美和 (神戸学院大学)
    有賀 三夏 (東北芸術工科大学)
    阪井 和男 (明治大学)
    富田 英司 (愛媛大学)
    原田 康也 (早稲田大学)
    大学生活における留学,ゼミ,インターンシップ,ボランティアなどの活動は,学習ならびに日常生活における行動変容をもたらすと予想できるが,これらについての調査は発展段階にあり,認知科学的な観点からの検証が必要である(森下・有賀・原田・阪井・富田,2018).本稿では,多重知能理論にもとづく多重知能分析シートならびにTIPI-J(小塩・阿部・カトローニ,2012)を使用したアンケート調査およびそれらの相関分析の結果について報告する.
  • P-30
    光田 基郎 (ノースアジア大学・経済学部)
    概要 大学生に,題材が 誤信念理解 の民 話を画面で読み聞かせ , 2肢 又は 4肢選択の誤信念理解検査成績 ,類推 及び作業記憶 と 絵本の内容理解 を関連付けた 実験 の一環 である。聞き手の作業記憶での 誤信念内容 の 選択 ,聞き手自身の視点又は 真実 の 抑制 と 類推に よる理解促進 を 述べた 。
  • P-33
    犬塚 美輪 (東京学芸大学)
    田中 優子 (名古屋工業大学)
    本研究では,差を強調する効果を付けたグラフが量的な差の解釈に与える影響に注目し,批判的思考スキルと態度との交互作用が見られるかを検討した.参加者225名に表・非強調グラフ・強調グラフのいずれかを附置した広告文章を提示し,質問項目で差の解釈を測定した.その結果,強調グラフ提示群の参加者が,表提示群よりも,差をより大きいものと捉えることが示された.重回帰分析では,視覚化の有無とCRT得点,教育レベルの効果が有意であった.
  • P-42
    原田 康也 (早稲田大学)
    坪田 康 (早稲田大学情報教育研究所)
    赤塚 祐哉 (早稲田大学情報教育研究所)
    鍋井 理沙 (早稲田大学情報教育研究所)
    森下 美和 (神戸学院大学)
    COVID-19感染拡大のためオンライン・オンデマンド授業で対面授業を代替する動きが盛んであるが、教員と学生・学生同士の対面でのインタラクションと言語的・非言語的コミュニケーションが欠落した場における教育・学習の難しさは教員・学生が実感しているところであろう。オンラインで教員学生間・学生同士間のインタラクションを可能な限り実現する努力をどのように進めるか、課題内容によって全人的な交流を促進するかの方策について多様な観点から検討する。
  • P-51
    中村 國則 (成城大学)
    現実の人間が“大きな見返りを得ることは稀である”,といった確率と効用の間に負の相関を見出して判断に結び付けている可能性がこれまで様々な研究によって明らかにされてきた。しかしながらそれらの先行研究には限定的な値のみを用いてきたという問題点があった。そこで本研究では現実の宝くじで想定されるような極端に低い確率・極端に高い金額を用いて,確率と効用の関係を検討し,そのような場合でも確率と効用の負の相関が見出されることを明らかにした。
  • P-55
    古藤 陽 (東京大学大学院学際情報学府)
    清水 大地 (東京大学)
    岡田 猛 (東京大学大学院教育学研究科)
    今日の博物館教育においては,博物館内での体験から得られた学びが来館者の日常へと活かされることは重要な目的の一つである.本研究では,特に美術館教育を念頭に置き,日常的に身の回りにある対象への知覚や理解の変化を促す美術鑑賞のワークショップ実践と,その効果検証を行う.特に効果については,事前・事後調査により測定することに加え,ワークショップ中のプロセスに関しても多様な側面から検討を行う.
  • P-62
    白砂 大 (東京大学)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    植田 一博 (東京大学)
    「前傾体勢が,特に楽しさを媒介として,目標達成動機を向上させる」という先行研究の知見に基づき,本研究では,推論課題を用いて「体勢が前傾であるほど,また楽しさを感じているほど,目標達成動機が向上し,より正答(目標)に近づこうとする」という仮説を検証した。行動実験からこの仮説は一定程度支持され,正確な推論を促すには,課題環境の操作や楽しさの誘発が効果的であることが示唆された。本研究の知見は,実世界における環境設計などへの応用も期待される。
  • P-64
    秋元 泰介 (九州工業大学大学院情報工学研究院)
    本発表では,ストーリーの創造性の計算原理を探求する研究の一環として,FauconnierとTurnerによるConceptual Blending理論に示唆を得た,事象融合の計算モデルを示す.このモデルは,二つの入力事象を構造的に組み合わせて,一つの融合事象を生成する.発表及び予稿では,その仕組みを詳しく説明する.また,本モデルと人による事象融合を比較する実験を通して,本モデルの創造性の程度や性質に関する分析的な検証も行う.
  • P-68
    西田 勇樹 (立命館大学)
    服部 雅史 (立命館大学)
    織田 涼 (東亜大学)
    本研究は,織田・服部・西田 (2018) が開発した日本語版遠隔連想課題 (RAT) が洞察を測定する課題として妥当かどうか検討した。実験の結果,(a) RATと洞察課題の間に弱い正の相関があること,(b) RATと創造性課題の成績に相関が認められないこと,(c) RATと語彙量に強い正の相関があることがわかった。本研究では,RAT の洞察問題としての妥当性を確認することができなかった。
  • P-70
    Ze YANG (Nagoya University)
    松林 翔太 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    Xin Yao (Nagoya University)
    This paper proposed two approaches to explain the processes of building and developing mental model applied to smartphone applications. Firstly, we developed two versions of money manager smartphone application. And we did empirical studies to collect user behaviors data and built their mental maps to explain how the users build and change their mental model. Secondly, this research tries to describe the underlying mechanism of the development of mental model based on ACT-R cognitive architecture. The proposed simulation model consists of two sub-functions: declarative function and perceptual function.
  • P-71
    清水 佑輔 (東京大学人文社会系研究科)
    岡田 謙介 (東京大学教育学研究科)
    唐沢 かおり (東京大学人文社会系研究科)
    ギャンブル依存者と愛好家からなるギャンブラーに対して,少なからず否定的態度が存在する.そこで本研究では,シナリオ実験を行い,一般的に受容されやすい愛好家というサブカテゴリーを顕現化することで,ギャンブラーに対する潜在的態度が肯定化するか検討した.結果,愛好家のシナリオを読んだ群ではギャンブラーに対する潜在的態度が肯定化した.依存者に対する態度変容を促す研究への,知見の応用などについて論じた.
  • P-74
    布山 美慕 (早稲田大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    物語読解では,単語や文といった局所的意味の理解と,物語全体の意図といった大局的意図の理解が相互依存的になされる.この物語における局所/大局的理解の関係性を調べるため,本研究では,布山・日高(2019)で提案された2つの課題を用い,オンラインでの認知心理実験を行なった.その結果,両課題の成績(正答や参加者間相関)に正の相関傾向が示唆され,局所/大局的理解の関係が示唆された.
  • P-75
    山本 希 (京都大学大学院)
    今井 むつみ (慶應義塾大学)
    本研究では,仮説形成に関わる類推能力の発達を扱った。4-6歳児を対象に作成した課題を用いて,この能力は幼児期に存在するのか,存在するとすれば,具体的に,どのような関係性の類推が可能になり,何が発達するのか検討した。その結果,①仮説形成に関わる類推能力は幼児期から発達がみられること,②特に「大小に注目した関係」を扱った類推が,年中から年長にかけて発達が見られることが示唆された。
  • P-79
    黒田 都雲 (立命館大学)
    西田 勇樹 (立命館大学)
    服部 雅史 (立命館大学)
    読みにくい文字は記憶成績を高めるが,その効果(非流暢性効果)は頑健ではない。その要因として,非流暢性の程度やワーキングメモリ容量(WMC)が考えられる。そこで本研究は,文字の流暢性のレベル(4段階)とWMCが単語記憶に与える影響を調べた。実験の結果,非流暢性効果は確認できなかった。この結果は,一つの刺激リストの中に特徴的(非流暢)/非特徴的な文字を混ぜて呈示した場合に非流暢性効果が発生しやすいこと(対比効果仮説)を示唆する。
  • P-80
    菅井 篤 (開智望小学校)
    本研究では,小学校の算数の授業における,アクティブ・ラーニングとして導入されたグループ活動での児童の対話を対象とした.学校文脈での学びを日常経験文脈に照らしながら児童がどのように思考を広げ,深めていくのかという対話的展開過程を明らかにすることを目的とし,実証的に検討した.それらの結果から,学校と日常の非対称性が,対話という相互行為の文脈で,いかにして児童に捉えられ,教授・学習が実現されているのかが明らかになった.
  • P-87
    荒井 武蔵 (千葉工業大学大学院)
    山崎 治 (千葉工業大学)
    本研究は,呈示する他者の意見に含まれる意見の多様性に着目し,多様性の違いが自身の意見変化に与える影響の調査を目的とする.そこで,「教育における新しいメディアの利用」に関する意見を求める課題を設定し,多様性の異なる他者の意見を呈示する前後において,自身の意見変化に与える影響を検証するための実験を行った.結果として,多様性の高い他者の意見の呈示が意見変化における文章内容の質の向上を促す効果が見られた.
  • P-88
    清水 千加 (立命館大学大学院人間科学研究科)
    服部 雅史 (立命館大学)
    モンティ・ホール問題は確率推論課題であるが,問題文中に登場する人物と回答者との間に社会的相互作用が想定されている。本研究は,司会者に対する信頼が,この問題の正解率を左右することを実験により明らかにした。司会者に対して不信感を抱くと,司会者の裏切りに対する防衛のため,ドアを変えないという現状維持行動をとる傾向があることが示唆された。
  • P-92
    村越 真 (静岡大学教育学部)
    満下 健太 (愛知教育大学静岡大学共同大学院)
    南極観測隊員延74人を対象に,自然環境内のリスク特定・評価の特徴と経験による変化把握のため,課題1(リスク特定課題)と課題2(リスク評価課題)が実施された.南極観測経験によるリスク評価の違いは限定的ながら,経験無群>経験有群の有意差が得られたものが見られた.また,経験無群での南極滞在前後のリスク評価では,事後のリスク評価の低下が広範に見られた.結果から,経験によりリスク発現場所について弁別的なリスク知覚がなされることが示唆された.
  • P-93
    中村 太戯留 (武蔵野大学)
    ユーモア理解において不調和の感知段階と解消段階という過程が関与し,ユーモアを生じる要の解消段階において扁桃体が重要な役割を果たすことが示唆されている.扁桃体は,一見すると明示的ではない隠れた敵意や社会的な脅威などの関連性感知に関与する神経基盤と考えられている.また,保護されているという認識を伴った遊び状態の重要性が指摘されていることも合わせて考えると,ユーモア理解は扁桃体のこのような役割を利用した一種の遊びと考えられる.
  • P-97
    池田 駿介 (東京電機大学)
    布山 美慕 (早稲田大学)
    西郷 甲矢人 (長浜バイオ大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    意味の創造過程としての動的な比喩理解のため提案として,圏論の概念を用いて構築された不定自然変換理論 (TINT, 布山 & 西郷, 2019 ; Fuyama & Saigo & Takahashi, 2020) に基づき,2つのシミュレーションを実施する.また,実験によって,人間の比喩解釈となる対応づけデータを収集し,これをシミュレーション結果と比較することで,TINTがどこまで人間に近い判断を行うことができるのかを検証する.
  • P-109
    山川 真由 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    清河 幸子 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    本研究では,関連性の低い2つの対象間で共通点を探索する際のプロセスを明らかにすることを目的として,共通点探索課題と,類似したプロセスの関与が想定されるテゴリ判断課題との関連を検討した。いずれの課題においても,対象のもつ「目立たない」特徴に関する知識を活性化させることが必要となることから,課題間に正の関連が見られると予測していたが,課題間に有意な関連はみられなかった。このことから,両課題には異なるプロセスが関与していることが示唆された。
  • P-111
    髙橋 麻衣子 (東京大学 先端科学技術研究センター)
    平林 ルミ (東京大学先端科学技術研究センター)
    福本 理恵 (東京大学 先端科学技術研究センター)
    中邑 賢龍 (東京大学先端科学技術研究センター)
    教室での教科書を使った学習になじめない児童・生徒に対して,活動をベースにした学び(ABL:Activity Based Learning)を実施した。参加児童・生徒が在住している地域の大通りの長さを限られた道具で測定するミッションを提示し,参加者それぞれが作戦を立て測定を行わせた。活動を通して,共通の場から各自の学習の習熟度や興味関心に沿った個別化された学びを達成し,さらに,発展的達成型ゴールを設定して次の学びへ向かう姿勢が観察された。
  • P-119
    小堀 旺河 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    小林 春美 (東京電機大学理工学部情報システムデザイン学系)
    安田 哲也 (東京電機大学理工学部)
    可触性と事物配置に注目し、それら要因がどのように語用論的解釈への影響を及ぼすのかを部分名称獲得課題を利用し調べた。実験は実験者が無意味語を教示し、あらかじめ作成した選択肢を用い、成人参加者に該当する選択肢を選ばせるというものであった。その結果、指示した名称の全体/部分の解釈は、事物の配置により異なっていた。また予想とは異なり、透明な可視性のある障害物を介す/介さないといういずれの場合においても、指示範囲が変化することはなかった。
  • P-133
    小波津 豪 (沖縄国際大学)
    大嶺 明李 (沖縄国際大学)
    赤嶺 奨 (California State University Fresno)
    新国 佳祐 (新潟青陵大学)
    里 麻奈美 (沖縄国際大学)
    先行研究では言語によって時間の言語表現が異なるだけではなく、時間の捉え方自体も異なると述べている。本研究では、時間を量概念を用いて表現する傾向が強い日本語話者を対象に、「線の長さ」または「量の多さ」のプライミングが速度が曖昧な時間事象の捉え方に与える影響を検証した。反応時間に有意な差は見られなかったが、正答率の結果から、線概念よりも量概念の活性化が、日本語母語話者の速度が曖昧な事象の解釈(時間の捉えやすさ)を容易にしたと考えられる。
  • P-138
    大森 玲子 (宇都宮大学地域デザイン科学部)
    上原 秀一 (宇都宮大学共同教育学部)
    久保 元芳 (宇都宮大学共同教育学部)
    宮代 こずゑ (宇都宮大学共同教育学部)
    本研究は,フランスにてPuisais, J. が1975年に始めた味覚教育の理論を援用し,味覚教育の実践を行ったものである。イメージマップに着目して効果の検討を行った結果,「おいしさ」という刺激語から連想される語の数およびリンク階層数のいずれについても活動後に増加していることが示された。また活動後の連想語の内容から,「あじ」は味覚を含めた五感のいずれからも生じ得るという学習が味覚教育によって促進されている可能性が示唆された。
  • P-139
    藤堂 健世 (東京工業大学情報理工学院)
    吉川 厚 (東京工業大学、立教大学)
    山村 雅幸 (東京工業大学)
    知覚と概念の関係性についてまだ解決された問題ではないとされている.本研究では,視覚情報から概念形成するときに,文脈によって被験者の認識変化にどのような影響を与えるのか,知覚と認識との間の関係から概念形成のメカニズムを探る.機械のパタンの認識問題の1つであるボンガルド問題から,様々な認識が可能な問題を用意し,被験者に回答させた.その結果,一度形成した概念が図形の知覚情報により,容易に再構築されない場合とされる場合が生じた.
  • P-141
    赤嶺 奨 (California State University Fresno)
    大嶺 明李 (沖縄国際大学)
    小波津 豪 (沖縄国際大学)
    新国 佳祐 (新潟青陵大学)
    里 麻奈美 (沖縄国際大学)
    Japanese speakers prefer non-agentive expressions when describing events that equally allow agentive (e.g., ‘I dropped the keys’) and non-agentive (e.g., ‘The keys dropped’) descriptions (Choi, 2009; Teramura, 1976). However, they are more likely to use agentive expressions when describing intentional events (Fausey, Long, & Boroditsky, 2009). This study examined how native Japanese speakers comprehend and construe the agents of unintentional and intentional events in sentences with unspecified agents of blamable acts. The results support that listeners flexibly adopt an agent’s or observer’s perspective given explicit grammatical pronouns (“I” or “the other”) in Japanese, and they consider another person to be the agent of negative events.
  • P-151
    樋口 滉規 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    pARIs (proportion of Assumed to be Rare instances) は人間の因果的判断と高い適合を示す観察的因果帰納モデルである.先行研究では,pARIsを含む因果帰納モデルの計算論的な目標として相関検出が想定され,その枠組みの中で性能や合理性の分析が行われてきた.この論文では因果帰納モデルの計算論的な目標を稀少性仮定下での非独立性の検出と見なした上で,適応的合理性の観点から分析を行った.
  • P-154
    服部 郁子 (立命館大学総合心理学部)
    不確実性の考慮には,何らかの確率計算を必要とする.本研究では,道徳的ジレンマ課題を使って,他からの援助的介入の可能性という不確実性情報が,行動選択とその行動の道徳的評価に対してどのように影響するのかを調べた.実験の結果,少数犠牲の道徳的容認評価と,その行動の実行可能性判断の間には乖離がみられた.一方,不確実性情報は人の行動選択だけでなく,容認性評価にも影響した.この結果を道徳判断の二重過程理論の観点から議論する.