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日本認知科学会

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入会のご案内

サマースクール2017

開催要領


箱根湯本富士屋ホテル
日時:2017年8月29日(火)13:00 ~
8月31日(木)15:30
場所:神奈川県箱根市
箱根湯本富士屋ホテル
小田急線箱根湯本駅より徒歩可能

定員:60名(若手研究者を優先します)
対象:広く認知科学に興味を持つ学生・研究者。日本認知科学会の会員には限りません。
参加費:25000円(一日あるいは二日の部分参加の場合は15000円)
宿泊費:14000円(3名~5名での相部屋)
28000円(シングル)
*宿泊費には夕食および朝食が含まれます。
*学生の参加者には日本認知科学会から10000円の参加費の補助があります。
*学生補助の定員は併せて30名です。
*相部屋の部屋割りは事務局にお任せいただきますが、ご要望があれば下記問い合わせ先までメールでお知らせ下さい。
* 宿泊は東武トップツアーズ(株)の実施する募集型企画旅行となります。お申込みはこちらから
問合せ先:日本認知科学会事務局 jcss@jcss.gr.jp
主催:日本認知科学会

開催の趣旨


認知科学会のサマースクールは2011年から始まり,今年で第7回となりました。これまで,安西先生のレクチャーをはじめ,シニアの先生方の解説、若手研究者の発表とシニアの方々とのディスカッション,学生・若手・中堅・シニアの方々の忌憚のない交流,などが実現されてきました。シニアの先生方の長い経験に培われた深い事象の理解や考え方がこのような交流を通じて伝えられることは,若手の方々の研究のスタートに極めて有用であり,それを組織的に行うことをサマースクールは目指しています。研究者は往々にして先端的な知識を得ることこそが,より発展した研究につながると考えます。しかし実際には,先端的な知識もまた基礎的な知識の延長であり,基礎的な事象の深い理解がなければ先端に行きつくことはできません。また,他分野の研究者との深い議論は,私達の頭をゆさぶり,一人ではローカルミニマムにはまっていた思考を新しい領域に引き出してくれます。実際には,このような議論や交流が,先端を切り開く新しい発想につながるのだと思います。
異分野についての学習,特に深い理解は心的な負担が大きいのは事実です。本サマースクールの参加者には,そのような壁を乗り越え,多くの方々との深い議論を通じて,新しい研究分野を開拓してほしい。認知科学会はそのようなチャレンジを積極的に支援します.


日本認知科学会・会長
三輪和久

サマースクール2017への期待


世界的に見て優れた研究の多くが、多様な背景(研究方法、研究分野、文化、国籍、その他)を持つ研究者同士が対話を重ね、刺激しあう場から生まれるようになってきたように思います。
行動実験、脳機能研究、ビッグデータ処理などの方法に通じた研究者の共同研究が増えていることはご存じの通り、被引用回数の多い論文が国際共同研究から生まれる割合も急速に高くなっています(文科省科学技術政策研究所調査)。最近では、複数の研究方法をマスターした一人の研究者が、世界に先駆けた成果を次々と挙げることも目につくようになりました。
しかし、とくに日本の国内では、いまだに若手研究者や院生の多くが、何年も同じような人たちと過ごし、限られた所属分野、お仕着せの研究方法、自分の周囲の先生や学会の狭い研究人脈といった、「多様性のない研究の場」に生きているように見えます。
世界の研究環境の変化と無縁のガラパゴス的生活をしていれば、ストレスもそれほど感じなくて済み、表面的には有意義な研究をしている気になれるのかもしれません。しかし、研究の方法や考え方の似た者同士からは、世界の第一線から見ると重箱の隅をつついた結果しか出てこない、世界はすでにそういう時代に入っているのです。
認知科学に関心を持つ若い研究者や院生には、内輪に籠った分野ごとの研究文化や各分野の伝統的な研究法に囚われず、新しい研究方法を開拓していってほしい。そして、多様な研究者と刺激しあって、ワクワクするような学術の世界を創り出してほしい。とくに、世界の第一線に飛び込んで力いっぱい頑張ってほしい。それが私の願いです。
サマースクールの創設に尽力された横澤一彦元会長は、自らの研究として視覚の「科学」を標榜しておられます。また、鈴木宏昭元会長は、本学会が「対話」の場であってほしいと言っておられます。7回目になるサマースクールが、世界の学術動向にも沿った、多様性に基づく開かれた研究へのステップになること、「科学」の方法論を開拓しつつ「対話」を通して新しい学術の世界を創り上げていくエネルギー源になることを、心から期待しています。

独立行政法人日本学術振興会
安西祐一郎

スケジュール

8月29日(火)

12:30受付開始
13:00サマースクール開講挨拶 
13:10セッション(1)
「良い理論を見極め、適切な仮説を生成するレッスン」
企画:川合伸幸、鈴木宏昭、岡田浩之、他
(1部:良い理論とは)
認知科学の研究には、実験や観察、調査がつきものですが、何の理論や仮説もなくデータを収集することはできません。それらは、必ず何らかの仮説(理論)に基づいて取得されます。しかし理論や仮説には「良い理論」と「あまりよくない理論」があります。良い理論(仮説)とはどのようなものか、まず物理学の理論をモデルに説明します。いくつかの練習問題を通じ、良い理論とはどのようなものかを理解してもらうことを目指します。
(2部:仮説の検証方法)
良い理論はよい仮説を生成します。しかし、認知科学の仮説や説明は、物理学や生物学のように物質や細胞などに還元できるものは多くありません。認知過程や心の働きを説明するためには、媒介変数や隠れた前提を仮定したり、いくつかの仮説(前提)をつなげる必要が生じることがあります。帰納法に演繹法を組み合わせることで、天王星の軌道の動きを説明できなかった当時のニュートン力学が海王星の存在を予測し実際に発見されたように、これまでの多くの事象を説明するとともに、新たな予測(仮説)を生成するもあります。
このような推論をアブダクション(仮説推論)といい、認知科学や多くの科学分野では、アブダクション(仮説推論)を一般的に行っています。しかしなかには、「風が吹けば桶屋が儲かる」ほどではないにしても、後づけの説明が塗り重ねられ、とても論理的な説明になっていない、と思えるようなものもあります。
仮説は実験や観察によって検証されねばなりませんが、認知科学の研究では仮説そのものの真偽を直接観察できないこともあります。そこで、アブダクション(仮説推論)によって仮説が正しいかを検証することになります。仮説推論は、非演繹的な推論の1つですが、演繹法とも組合わさっているので、まず帰納法と演繹法、さらに仮説推論との相違を説明します。そして、仮説推論で生成された仮説が妥当なものとして受け入れられるためには、「検証」だけでなく「反証条件」も与えている必要があるということを説明します。実際にいくつかの例題で、隠れた前提などを考えてもらいます。これらを通じて、正しい(科学的に妥当な)仮説の生成方法を理解してもらいます。
(3部:人間や動物行動に関する「よくない理論」と「良い理論」)
認知科学に近づけて考えるために、人間や動物行動に関する「よくない理論」と「良い理論」を紹介します。良い理論は適切な仮説を生成する原動力となりますが、なかにはまったく仮説を生成できない「理論」もあります。いっぽうで、直感と反する仮説を生成し、実際にそれが確かめられるような理論もあります。それらの例として「バイオリズム理論」と「連合学習理論」を取り上げ、良い理論や仮説に必要な条件(検証(反証)可能性、簡潔性、普遍性、多産性、データとの整合性)について整理します。そしてその「良い理論」がDavid Marrの3つの水準とどのように対応するかや、「強化学習理論」とどのように対応しているかを確認します。
そして、強化学習と脳機能画像に関する2ページほどの学術論文(邦訳済み)を読み、そこではどのような仮説が提示され、どのような事実でもってそれが検証されたか、前提はなにか、反証条件は与えられているか、などを読み解いてもらいます。また、その研究は、Marrの3つの水準とどのように対応しているかを考えてもらいます。これらの作業は、3−4人でグループで議論することを想定していますが、なるべく領域が重ならないほうが、領域固有の知識を補いあい、創発的な発想が生まれるようです。そのために、事前にご自身の専門領域(複数可)をお聞きし、これらの基づいて翌日の午前中のワークショップの班分けを行います。
19:00夕食・懇親会
20:00−イブニングセッション(1)
Tobiiジャパンによる視線計測装置のデモンストレーション
若手講演
講師氏名:米田英嗣
所属:京都大学白眉センター
講演のタイトル:「物語理解における共感:定型発達者と非定型発達者に基づく検討」
講演の概要:
物語に書かれた情報を理解する際に、主人公への感情移入や、登場人物への共感といった反応が生ずることがある。こうした反応は、物語に書かれた出来事があたかも現実に起こっていることであるかのように疑似的に体験されるシミュレーションによって生起すると考えられる。本プレゼンテーションでは、第一に、定型発達者を対象とした、自分と性格が似ている他者に対する理解の促進、共感の生起についての研究を紹介する。第二に、非定型発達者として自閉スペクトラム症の方々を対象とした物語における登場人物の心情理解および援助動機についての研究と、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging、機能的磁気共鳴画像法)を用いた、自閉スペクトラム症者による自閉スペクトラム症者に対する共感的反応についての研究を紹介する。最後に、物語に記述された世界がどのように現実世界に拡張していくのか、物語を読むことを通じて共感性を育成することは可能か、について議論したい。
※翌日のセッションの予習を行います

8月30日(水)

9:00-セッション(1)の続き
12:00「仮説を読み解くレッスン」
講師:川合伸幸、鈴木宏昭、岡田浩之、他
認知科学会で発表賞を受賞すると、その要旨が「認知科学」誌に掲載されます。それらの論文要旨(発表概要?)を読み、これまでのセッションで学んだことをもとに、その研究での仮説はなにか、どのような仮定(仮説)にもとづいて分析が行われているか、その仮説には反証可能性は与えられているか、総じて適切な仮説や説明であるかなど、を読み解いてもらいます。3−4人でグループで意見を出し合いながら、仮説を読み解いてください。各班ごとに別々の論文(要旨)を読みますが、それぞれの班にシニア研究者がチューターとしてつきます。班内で議論をまとめて、その研究での仮説はどのようなものであり、そしてどのように支持された(されなかった)のか、などこちらで用意する設問に答えながら、研究を紹介してもらいます。
このような作業を通じて、無自覚に受入れていた「もっともらしい仮説や説明」を批判的に咀嚼し、自身の研究で生成する仮説をより高いレベルのものにしてもらうことを期待しています。これらの準備があれば、安西先生によるレクチャーがより深く理解できると考えています。
12:00-
13:30昼食休憩
13:30セッション(2)
18:00「認知研究の革新はいかにして起こるか~帰納と理論/データと概念/観察と説明/機能主義と構造主義~」
講師:安西祐一郎(日本学術振興会)
概要
認知に関わる幾多の研究の中で、「時代を画した研究」はどんな特徴を持っているのだろうか?
それ以前に、認知研究におけるデータ、仮説、理論とは何だろうか? また、心理学や医学を源とするさまざまな実験方法論は常に妥当なのだろうか?
特に、多くの研究者が関心を持っている(ようにみえる)「心のプロセス」に関わる研究について、データ、仮説、理論とはいったい何を指しているのだろうか?
これらの設問は、多くの認知研究にあてはまる設問と考えられるが、そのうえで、時代を画する認知研究は、どんな特徴を持ち、どのようにして革新を引き起こしたのだろうか?
この講演では、演者が30歳のころに行った認知方略の学習に関する研究(Y.Anzai and H.A.Simon,The Theory of Learning by Doing, Psychological Review, 86(2), 124-140, 1979)を中心として、(1)経験科学における帰納と理論の関係、(2)「心」の研究におけるデータと概念および観察と説明の関係、(4)「心」の研究における機能主義と構造主義の相克の克服などについて述べる。(この論文は、当時の心理学的研究ではほとんど受け入れられていなかった発話プロトコール分析とコンピュータシミュレーションを併用し、認知スキルの研究に新しい時代を拓いただけでなく、人工知能から臨床研究に至る多様な分野に影響を与えた。講演ではさらに、この論文で述べた理論を船の操舵に適用した研究(Y.Anzai, Cognitive Control of Real-Time Event-Driven Systems,Cognitive Science, 8(3),221-254, 1984) も参考にする。)
講演の内容は、サマースクール初日(8月29日)および8月30日(2日目)午前中のセッション1の内容に深く関係しており、また、夜のセッションにもつながる。
19:00夕食
20:00−イブニングセッション
「認知研究における理論・仮説・データとは~時代を画す認知科学方法論を創り出そう」
講師:安西祐一郎(日本学術振興会)
概要
夜のセッションは、2日間の議論を総括しながら、「時代を画す認知科学方法論」を参加者一人ひとりが自ら創り出すためのきっかけとしたい。
重要なことは、参加者が
(1)従来の学問分野に囚われない自由闊達な心を持つこと
(2)分野・学会・研究室などによって固定されがちな研究方法や実験方法などに囚われない自由闊達な心を持つこと、ただし
(3)「心」という対象が、古今東西の俊秀を吸い寄せ、また撥ねつけてきた、興味深いがきわめて複雑な研究対象であることを自覚すること、そして
(4)そのような対象に対して、大雑把な演繹的かつ素人的推論でなく、多様な現象から帰納的かつ緻密に推論したプロフェッショナルな理論を提示し、理論と現実のギャップを体験することで現実を深く理解していく営為には、簡単ではないがワクワクする面白さがあることなどを理解し共有することである。
知覚、記憶、情動、イメージ、思考、言語、社会性、インタラクション、学習、発達、進化、その他、参加者が関心を持つテーマを中心に、多様な分野における理論・仮説・データの問題について、「時代を画す認知科学方法論」の創造を目標に、活発な議論できればと考えている。

8月31日(木)

9:00-セッション(3)
12:00「世界理解の新しい試み -質感の科学から-」
講師
小松英彦(玉川大学脳科学研究所)
山口真美(中央大学文学部)
佐藤いまり(国立情報学研究所)
概要
質感認知は感覚情報をもとに、物の素材や状態を推定する機能である。外界の事物の生物的な意味の判断をする上で質感認知は欠かせない。また物を握ったり持ち上げたり運動系を介して相互作用する時にも質感認知は重要な働きをする。更に物の価値や美醜の判断の基礎には質感認知の働きがある。
世界を構成するすべての事物が固有の質感を持つので、質感は極めて多次元で複雑な情動である。質感がどのように生み出され、それをヒトがどのように認知しているかを理解することは簡単ではない。しかし、そのようなプロセスの理解抜きには、ヒトが世界を認識する働きの理解には本質的な欠落が伴うだろう。近年、工学と心理物理学と脳科学の接点で、質感認知の科学的理解が進み始めている。その一旦を紹介し、世界を理解する知の働きについてあらためて考えるきっかけとしたい。
12:00-昼食休憩
13:30
13:30セッション(3)の続き
15:00
15:00クロージング
15:30終了