研究分野
その他
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OS1-1-2公募発表グループ・ダイナミックスに基づくフィールド研究において,研究者は価値とどのように向き合い,価値をどのように扱っているのか.この価値という視点からみたとき,グループ・ダイナミックスと認知科学はどのような接点を持ちうるのか.本発表では,筆者が取り組んできた,医療的ケア児のインクルーシブ保育と,幼稚園でのエピソード研修に関するフィールド研究をもとに,上記の問いについて考える.
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OS1-1-4公募発表本稿では,『認知科学』への投稿論文執筆を含む,LGBT活動に連帯しない当事者を対象とした研究を行っているなかでおきた,著者自身の価値観や立場の変化を自己再帰的に記述し考察する.対象者の実践に対して中立的な見方をしていた研究者が,いかにして脱中立的な見方をし,その実践のなかにある対立構造に巻き込まれていったのかについて,対象者とのかかわりの変化や査読者,担当編集委員とのやりとりをふまえながら論じる.
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OS2-3-5公募発表心理学研究コミュニティ「あいまいと」では,研究者と市民が持つ些細な好奇心である「研究のたね」を起点に対話が広がり,研究プロジェクトに発展している。2025年7月で3件の研究が進行し,うち1件は査読付き国際雑誌に採択。本稿では設立背景,クラファンやDiscordの活用,研究内容を紹介し,コミュニティサイエンスの効果・課題・解決案を議論する。また,あいまいとの特性(ファンコミュニティが基盤にある研究コミュニティ)を考察し展望を論じる。
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OS3-1-1公募発表本稿では世代断絶した和菓子の復活を通じて生み出される制作物に対してモノの物語的アイデンティティの代替的な再構築という観点から作り手の創造性を捉える.上記目的を捉えるために三人の和菓子職人へのライフストーリー・インタビューを行った.その結果,継承リソースと創発リソースを組み込み,新たなモノを生み出す過程が示された.最後に作り手の創造性を「触媒的生成」という観点から考察した.
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O2-1本研究は,同一の製品を異なる観点で捉えることで製品の創造性評価が変化するプロセスを実証した.操作可能な3Dオブジェクトを評価刺激とし,参加者に観点の記述と新奇性・有用性の評価を2回,最後に各規準の総合的な評価を求めた.その結果,観点が異なるほど評価は変化し,2回目の評価が1回目の評価よりも総合評価に影響することを示した.このことは,観点の発見に伴い,製品の創造性評価が更新される可能性を示唆している.
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O3-1あらゆる経験は「経路」の概念で理解でき,我々の生は多数の経路の織りなすメッシュワークとして捉えられる.経験の全体性を経路として読み解くためのケーススタディとして,筆者の長男を対象とした二人称研究を構想する.研究方法は,長男の日常的な成長や変化を簡単に記録する「Kuya Diary」と,街歩きにおける発話や行動を多面的に記録する「Kuya Stroll」から成る.本稿では2025年6月末時点での研究の進捗を報じ,その方法について検証する.
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O3-2本研究は,日常的な感覚・行為である「痒み」,そして「掻くこと」(掻破行為)について,痒みという発話や掻破行為がいつ・どのように行われているかについてデータ分析を行った.その結果,掻いている当人が他者の注意が向けられていない「隙」を突いて掻くことで,他者に痒みについて発話させないことを日常的に行っており、掻いている当人が発話した場合を除いて痒みに関する会話をすることは少なく,会話をしたとしても長くは続かないことが明らかになった.
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O3-3本研究では,ダンスを専門としない大学生が,自然とダンス表現を創作してしまうような教育プログラムのデザイン原則を明らかにするために,熟達者の近藤良平氏の授業実践を対象に,近藤氏の授業展開を分析した.その結果明らかになったデザイン原則は,講師も参加者も童心で向き合い,人と人が接触により動く活動を中心に,身体が持つ物質的側面と社会的側面を使い分けながら他者とやりとりする中で,探索中心の活動から徐々に発信を見据えるようにすることであった.
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O3-4本研究は, 映画『ラジオ下神白』の音声描写検討会を通じて, 視覚障害者の映画体験を分析する. 視覚障害者がどのように音から映像空間を構築し, 主体的に鑑賞しているかを, 会話・ジェスチャー分析から明らかにした. 本発表では, 視覚障害者の映画体験が視覚中心の認知とどのように異なるかを示す. その上で, 視覚障害者と晴眼者による検討会が, 映像の意味を再構築する創造的・批評的場であることを提起する.
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P1-3本研究では人物についてのセレブリティ情報、具体的にはその人物の大きな成果や実績の情報を新たに知ることで、その人物に対するパーソナルスペースにどのような影響があるかを検討した。実験の結果、対象の人物がセレブリティであることを予め知らない場合には、セレブリティであることを知ることで無自覚に相手との距離を取るようになることが示唆された。
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P1-5本研究は,心理専門職養成の「科学者―実践家モデル」にもとづき,科学的な心理学の方法論が心理臨床の実践力を高めるために,いかに貢献できるかを検討した。心理専門職を目指す大学院生17名が,演習授業を利用した実験に参加した。参加者は,質的分析ソフトMAXQDAを活用し自身のカウンセリング・ロールプレイを詳細に分析した。こうした分析作業を通して,学習者のセラピー技能をより精緻に客観化、相対化できる効果を示した。
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P1-16大髙(2024)はティッシュ配りの観察研究により、受け手が誰かが不確定で受け手に複数の行為選択が可能な状況での受け渡しの達成が➀視線交絡による受け手特定と不確定性の縮減②適切な位置やタイミングによる差出・受取行為の連鎖を経て実現されるとした。本研究は仮説中の「視線交絡の前提となる視線送り」と「差出のタイミング」が受け渡しの実現に寄与する変数かを実験的に検証した。受け渡しが最も成功しやすい差出のタイミングが受取の2秒弱前であると推定した。
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P1-18身体を覆うように着用する「着ぐるみ」は、広報活動等に幅広く利用されてきた。本研究は、着ぐるみに対する恐怖の生起因について調べるために、着ぐるみ恐怖に影響を及ぼす特徴、他の恐怖や個人特性との関連について検証した。実験の結果、特に顔部分の隠蔽や対象の動作性が着ぐるみに対する恐怖を促進している可能性が示された。今後の研究では、顔と身体の動きの不一致と着ぐるみ恐怖との関連について検証する必要がある。
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P1-28本研究では、VRプレゼンテーションにおける自身のVRアバターの表情が緊張緩和に与える影響を検証した。ポジティブ表情アバターを提示された群は、ネガティブ表情アバター群と比較して心拍間隔(RRI)の有意な増大を示し、よりリラックスした状態にあることが示唆された。この結果は、VRアバターの表情操作がプレゼンテーション時の生理的緊張を緩和する可能性を示しており、今後のVRを用いたコミュニケーション支援への応用が期待される。
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P1-58植込型補助人工心臓装着患者が術後に行う機器学習の場面において,不可視・非操作の埋込機器をどのように知覚しようとするのかを,語りの分析から明らかにした.逐語データを「未分化」「仮の同調」「構成」の3フェーズに分類し,知覚が感覚的に成立するのではなく仮構えを通じて語りに支えられている様子を記述した.プロジェクション科学とDiscursive Psychologyの視点から語りによって「そこにあること」が構成され続けるプロセスを明らかにする.
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P1-65運転日記と車載映像を手がかりに,筆者自身が運転中に何を見て何を考えているのかを一人称研究の手法で分析した.得られた気づきを生タグにまとめ六つのカテゴリで整理し,定量化では捉え切れない運転体験の細部を浮かび上がらせた.また,視界外の車体情報を心的に補完し,車を身体の延長として操る過程を分析した.
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P2-20著者らの研究グループでは,コミック作品において「登場人物の身体のパーツを拡大して描写されているコマ」,「サイズ自体の大きいコマ」,「丁寧で繊細な描写が施されているコマ」の三種類のコマでオノマトペが使われていないと報告した.しかし,これは主観的な分類が行われた定性的な調査だった.そこでこの知見を定量的に調査した結果,オノマトペは「身体拡大」コマでは使われず,「サイズ大」コマ,「繊細」コマではむしろよく使われていることが明らかとなった.
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P2-23本研究は、ネガティブ感情とリスク推定の有無がリスクテイクに与える影響を検討した。成人128名が4条件に割り当てられ、ギャンブル課題を実施した。予測では、ネガティブ感情はリスク推定がない場合にリスク追求を促し、推定がある場合には回避的になるとされたが、一致する結果は得られなかった。一方、序盤ではネガティブ感情が一時的にリスク追求的行動を促す傾向が示唆された。
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P2-36初めて町ですれ違う人々であっても, 我々はその人々の立ち振る舞いから彼らの関係性を知覚することがある. 我々はどのような情報からこのような関係性を知覚するのであろうか. 研究1では, 観察者は, 観察している対象者たちの関係性をどのように知覚するのかを探索的に調査した. 研究2では, 研究1の観察者が報告した内容の1つに着目し, その報告内容に含まれるどのような情報が, 観察対象者たちの関係性の特定に寄与しているのかについて検討した.
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P2-40本稿では,日常における心の豊かさと関連しうる「道草」について,人文学的に考察を行って見出した要素を踏まえて,人々にちいさな「ハテナ」を提供できるプロダクトを生み出しているデザインの取り組みを紹介する.プロダクトを購入して所有している方々へのインタビュー調査を通じて「ハテナ」の体験に関する理解を深めつつ,そのような体験と認知科学における概念との関連について考察することで,「デザインによる認知科学研究」の可能性を探索する.
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P2-44身体表象とは,人間が自身の身体について持つイメージである.本研究では, 個人内での感覚モダリティの確からしさと身体表象との関係を,視覚と固有受容感覚に着目し検討した.実験では, 身体部位を視覚的にずらして表示したときの身体表象の変化と,個人の固有受容感覚の正確性を測定した.その結果,固有受容感覚が正確でない個人ほど身体表象が変化し,個人内での相対的な確からしさが身体表象変化に影響することを示した.
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P2-46本研究では、マインドフルネス瞑想の手法である呼吸の瞑想と慈悲の瞑想が社会的意思決定に及ぼす影響の違いを明らかにするために、両瞑想法のトレーニング前後における最後通牒ゲーム遂行中の事象関連電位(P200)を比較した。その結果、正中前頭部におけるP200の振幅が慈悲の瞑想群でのみトレーニング後に減少していた。この結果は、瞑想の手法によって社会的意思決定に関する脳活動に異なる影響を与える可能性を示唆している。
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P2-56本研究では、歌舞伎の女形の女らしさはどのように演出しているのかを現役の歌舞伎役者1名を実験対象者としてモーションキャプチャとインタビューを用いて実験を行った。実験結果をインタビューで得た演技の意識とモーションキャプチャで得たデータを比較し、インタビューで言及された基本姿勢、「振り」、「内股」のそれぞれについて仮説形成を目指した。
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P2-57本研究では,「概念」推し活におけるぬいぐるみの服を製作する現場を対象に,1)コミュニケーションの特徴,2)「概念(推しを連想させる要素)」を具現化する過程について,探索的に検討した.結果,1)では相互支援的なコミュニケーション,2)では推しのイラストとの比較からより近似する素材を選択することがみられた.以上から,「概念」推し活における創作の場が学び合いの機能を有し,創作は自分なりの推しらしさを表現する創造的実践である可能性が示唆された.
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P2-61本研究は、ASD者の行動や認知特性の理解を深める手段として、生成AIによるシミュレーションを試みた。具体的には、当事者のエピソードと、特定の状況下におけるASD者の行動を入力とし、生成AI(Gemini)にその行動の理由を出力させることで、ASD理解の促進という観点からシミュレーションの有効性を検証した。一方で、慣習といった限定的な文脈は、生成AIによる適切な理解が難しいという課題も明らかにした。
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P3-5本研究は楕円と長方形を組み合わせて作成された複合図形(横長群・縦長群)を用いて黄金比の評価実験を行った。評価実験の結果、横長群では、カテゴリー名の有無関係なく正方形と円の複合図形の評価が高かった。縦長群では好み条件と好みの手の爪条件で黄金比を持つ複合図形の評価が高かった。最近の黄金比研究の牟田(2017)と比べ、横長群は牟田に近く、縦長群は好み条件を除いて牟田と異なる結果となった。
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P3-15本研究はサブプライムローン金融危機が発生したにもかかわらずそれに気づくことができなかった人々やCOVID-19に感染したにもかかわらず症状が出なかったためにそれに気づくことができなかった人々の認知的状況を表す数理モデルの提案を行う。通常の可能性対応モデルでは「気づかない」を適切に解釈できるようなモデルを作れないので、本研究では新たに認知対応のモデルを提案した。そして認知対応モデルに基づいた不可知の数理的特徴づけについても検討を行った。
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P3-17本研究では,一直線上にない左右の指への同期的接触が,身体所有感や位置感覚に与える影響を,主観評価および行動指標の両面から検討した.その結果,左右の指が接合・整列したような感覚が主観的に報告された.また,実際の指位置にも前後方向へのドリフトが確認された.さらに,錯覚の強さと行動指標との相関は認められなかったことから,両者は独立したプロセスである可能性が示唆された.
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P3-28本研究は,オーダー・コール・システムを備えた飲食店において,大学生グループによる注文決定の過程を映像データ6本を用いて分析した.注文前には「決まった?」などの決定確認発話が平均4回以上交わされ,ベルスターを押す直前には押下の意思を明示する発話が確認された.注文決定に至るまでの反復的な確認は,不可逆な注文プロセスの直前における,参与者どうしの慎重なすり合わせとして機能していた.
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P3-37政治集団による個人をターゲットとした攻撃の仮想的状況を設定し、SNS上での偽情報物語の生成‐拡散現象をシミュレーションする実験システムを実装し、その結果を示した上で議論する。システムは、共感度、認知状態、閾値、ラベリング、偽情報等の概念によって構成され、実際に物語を生成し、その累積から偽情報物語が浮上するプロセスをモデル化する。
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P3-47本研究は,部下の成長を促進する「環境設計」の視点から,営業組織におけるOJT経験の構造と,営業スキルとの関連を探索的に検討した.1041名を対象に質問紙調査を実施し,因子分析を行った結果,過去のOJT経験について「強みが活きる経験」「試行錯誤の経験」「内省と学習の支援」「やる気への刺激」の4因子が得られた.4因子に基づいて算出した尺度得点と営業スキル得点は中程度の相関を示し,これらのOJT経験が営業スキルの高さと関連することが示された.
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P3-49本研究では成人が身体部位や空間上の対象を定位する際の手の伸ばし方(リーチング方略)を系統的に調査した。動きを確認しつつ定位するフィードバック制御の出現頻度と体性感覚利用可能性との関係を明らかにし、幼児での検討の指標確立を目指す。身体・空間指し課題で、定位時間とリーチング方略を分析したところ、対象部位が身体の中心軸に近いほど予測的なフィードフォワード制御を使用し、距離や身体の中心軸から離れるほどフィードバック制御を使用する傾向がみられた。
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P3-65本研究では、合成音声による五十音の音読と説明文の音読に対する印象評価実験の結果の比較を通じて、授業動画や動画教材における教師役アバターの音声に対する印象評価を五十音の読み上げのみで簡易に実施する方法の有効性を検討した。実験結果から、通常の授業動画が扱う類の内容であれば、音読内容によって合成音声の印象が大きく変化することはなく、五十音の読み上げ音声を利用してアバター音声の印象を簡易的に測定することは有効であると考えられる。