日程 9月12日(金) 16:30 - 18:30
ポスターセッション1 (P1)
会場:国際会議場3F第1-第2会議室
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P1-1本研究は,話者の自己接触が,メッセージと話者に対する印象に与える影響を実験的に調査した.卒業試験導入を主張する話者が映った動画を参加者に視聴させ,話者とメッセージの印象を評定させた.動画は,話者の自己接触(くつろぎ型・神経質型・なし)と論拠(強・弱)の2要因を操作して作成した.その結果,自己接触はその種類にかかわらず,話者の信頼性評価を低め,メッセージの印象には影響しないことが明らかになった.
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P1-2玩具の中には電子音声を発するものがある。本研究では,現実の幼児とその家族がそうした電子玩具とどのように関与するのかを明らかにする準備として,通信教育講座のダイレクトメールに付属したマンガの中での電子玩具の描かれ方を分析した。その結果,機械からの音声は幼児が1人で遊ぶことを可能にするとともに,家族がそのことを利用して家事の遂行を行っている様子が描かれていた。
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P1-3本研究では人物についてのセレブリティ情報、具体的にはその人物の大きな成果や実績の情報を新たに知ることで、その人物に対するパーソナルスペースにどのような影響があるかを検討した。実験の結果、対象の人物がセレブリティであることを予め知らない場合には、セレブリティであることを知ることで無自覚に相手との距離を取るようになることが示唆された。
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P1-4本研究の目的は,6歳と76歳の創造性の特徴を比較検討したうえで,両者の協働活動で創造性がどのように変化するかを探ることである.幼児と高齢者の協働活動で創造性がどのように変化するかをテーマにした論文は,管見の限りみあたらない.本研究では,6歳児と76歳の創造性を測定するために,新たな幼児用の描画テストを創り,さらに新たな指標として「奇抜性」と「魅力性」の2軸を採用した.その結果, 協働 > 6歳 ・ 76歳,という傾向がみられた.
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P1-5本研究は,心理専門職養成の「科学者―実践家モデル」にもとづき,科学的な心理学の方法論が心理臨床の実践力を高めるために,いかに貢献できるかを検討した。心理専門職を目指す大学院生17名が,演習授業を利用した実験に参加した。参加者は,質的分析ソフトMAXQDAを活用し自身のカウンセリング・ロールプレイを詳細に分析した。こうした分析作業を通して,学習者のセラピー技能をより精緻に客観化、相対化できる効果を示した。
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P1-6本稿では、SNS上の情報探索を通じたユーザの信念形成過程、特に確証バイアスを、能動的推論としてモデル化する。モデルは、投稿の観測による信念更新量と信念に適合する投稿の観測で得られる満足のバランスとして、確証バイアスを定量的に説明する。仮想SNSを用いたユーザ実験では、参加者が確証バイアスにより信念を維持・強化する傾向が確認された。さらに、仮想SNSにモデルを適用した結果、初期信念の偏りと学習率が確証バイアスを再現する可能性が示唆された。
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P1-7全身連動性は,野生動物などにも見られるものであるが,舞踊の動きの質的な側面に着目してみると,こうした独特の滑らかな全身連動性の動きを伴うものが多い. 本研究では,介入前後で行った3次元動作解析の結果から,「全身連動性ムーブメント・アプローチ」体験は,被験者の柔軟性や心理的側面を高め,パフォーマンスの向上を促進する可能性があることが示唆された.
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P1-8ハイブリッドインテリジェンスにおけるAI生成情報の開発者に対して、遠隔探索促進効果があることを明らかにした。その確認のためAI生成情報の開発者の選択背景を把握する8区分の基準を設計した。そして、AI生成情報が開発者にとって「意外な関係」の気づきを得るきっかけとなり、普段活用できていない「すぐに思いつかない知識」との関連づけを促すことを確認した。
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P1-9敵対的操作とは,人の意思に反する決定を誘導するために,外的要因を操作する行為である.本研究では,ヒト行動実験による調査と,ヒト参加者の回答傾向をリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いてモデル化することで,敵対的操作が人の行動に与える長期的な影響を明らかにすることを目指した.実験の結果,敵対的操作を受けると参加者やRNNモデルがその操作に対して耐性を獲得し,正答率が向上する可能性が示唆された.
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P1-11アンカリング効果は,最初に提示された数値(アンカー)が後の推定に影響を与える現象である。Mussweiler & Strack (2000) は,低気温のアンカーが冬に関連する語への反応を速めることを示し,アンカリング効果が意味プライミングに類似したプロセスであることを支持した。本研究は複数の追試とメタ分析によりこの理論を検討したが,アンカーが関連語の反応を速める効果は一貫して認められず,理論の一般性に疑問が残った。
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P1-12本研究ではアイデア発想を必要とする職業の人々の創造性向上を目的にひらめきタイミングと「寝かせ時間」を検証。自己観察実験(25名)からひらめきの多い場面と時間帯を抽出、次に介入実験(60名)で、アイデア発想を要する課題を出し、即時着手・1週間寝かせ・初日着手後寝かせの3条件で追跡調査を実施。結果「1週間寝かせ」チームがアイデアの質と量共に最も良い結果であった。これは、課題を計画的に「寝かせる」ことが創造性向上の鍵になることを示唆している。
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P1-13本発表では,注視情報提示による衝突回避における相手の役割選択の誘導,すなわち注視ナッジを提案し,その妥当性を検証する実験悔過について報告する.実験では,衝突回避における役割(先行・後行)に一致した注視パターンを提示することで,先行後行判断を誘導する可能性が示された.
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P1-14本稿は、PTによる「揺すり運動」の指導を通じて、身体の帰属が相互行為の中でどのように構成されるかを分析する。PTは発話・動作・接触を用いて動作を段階的に提示・調整し、状況に応じて主導と補助を使い分けることで、患者の自律的な動作生成を支援していた。身体の動きの帰属先は固定的でなく、相互行為的に動的に構成されていた。リハビリにおける身体の操作と学習を相互行為的達成として捉える視点を提案する。
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P1-15インタビュアーと対象者の関係性は,デプスインタビューの成功に影響を与える.本研究は社員を対象とした社員によるデプスインタビュー手法を,企業内での関係性の継続を考慮した制約の下,構成的に開発した.発話を分類する項目の定義付け,発話整理シートの作成,手法の改善,分類項目の見直しによって,インタビュアーのメタ認知の促進や負担軽減,認識の更新に寄与し,対象者の感情の表出を促し,質の高い情報取得に貢献した.
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P1-16大髙(2024)はティッシュ配りの観察研究により、受け手が誰かが不確定で受け手に複数の行為選択が可能な状況での受け渡しの達成が➀視線交絡による受け手特定と不確定性の縮減②適切な位置やタイミングによる差出・受取行為の連鎖を経て実現されるとした。本研究は仮説中の「視線交絡の前提となる視線送り」と「差出のタイミング」が受け渡しの実現に寄与する変数かを実験的に検証した。受け渡しが最も成功しやすい差出のタイミングが受取の2秒弱前であると推定した。
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P1-17本研究では、政策が効果を持つに至るメカニズムについて説明する前後で、当該政策に対する主観的知識や態度がどのように変容するかを検討した。Web実験を行った結果、自力でメカニズムを説明した場合には説明前後で当該政策及び政策一般に対する主観的知識は変わらなかった。一方、ChatGPTやGoogleを用いて説明した場合には説明後に主観的知識が上昇した。政策に対する態度に関しては、説明を行う政策によって結果が異なり、一貫した結果は得られなかった。
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P1-18身体を覆うように着用する「着ぐるみ」は、広報活動等に幅広く利用されてきた。本研究は、着ぐるみに対する恐怖の生起因について調べるために、着ぐるみ恐怖に影響を及ぼす特徴、他の恐怖や個人特性との関連について検証した。実験の結果、特に顔部分の隠蔽や対象の動作性が着ぐるみに対する恐怖を促進している可能性が示された。今後の研究では、顔と身体の動きの不一致と着ぐるみ恐怖との関連について検証する必要がある。
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P1-19日本の伝統芸能のひとつである雅楽では,まず楽器を持たずに擬音化した曲の旋律を声に出す「唱歌」(しょうが)を通じて,師匠から弟子に楽曲および楽器の演奏技能が伝えられる。なぜ音楽や楽器の演奏技能が主に唱歌によって習得されるのか、唱歌でなければ伝えられないものとは何なのかについて明らかにすることを本研究は目的としている。
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P1-20本研究ではマイサイドバイアスの抑制方法として誤びゅうに着目し,誤びゅう教材の閲覧の有無によるマイサイドバイアスの低減効果について実証的に検討した.テキストアニメーションでの解説を実装したオンライン教材,およびネットコメント風の実験用の刺激課題を用意し,介入実験を実施した(非ランダム化比較試験).実験の結果,誤びゅうの学習によってマイサイドバイアスに対する一定の低減効果がみられた(全体効果量-0.72).
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P1-21本研究では,ザイガルニク効果と心理的リアクタンス理論を活用し,課題の先延ばしを軽減する新しい介入法の効果を検証した.時間制限を設けて課題への着手を促し,課題が中途半端である状態を作り出す実験群とそのような促しのない統制群を設定し,課題の提出率を比較した.その結果,実験群の参加者の方が提出率が高く,先延ばしの軽減に対する介入の有効性が示唆された.
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P1-22医療診断などの実社会の判断場面において、AIによる意思決定支援の導入が進んでいる。本研究では、人とAIのバイアスの相互作用(e.g., 過大評価か過小評価か) に着目し、人のバイアスの程度によってAIが持つべき特性が異なる可能性を検証した。実験の結果、人と逆方向のバイアスをもつAIは、人の判断精度を高める一方で、人が抱く信頼度は低いことが示された。本研究は、正確で信頼できるAIが常に良いとは限らないという実用的示唆を提供する。
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P1-23高齢者の否定文の理解については一貫した結果が得られておらず,未だ明らかになっていない.本研究では若者を対象としたKinjo & Saito (2025)を参考に,否定の命題を含む単純な2種類の真偽判断課題を用いて,高齢者に同じ課題を10回実施してもらい,否定条件の成績を肯定条件に対して同程度まで向上させることができるのかについて検討した.得られた結果と先行研究を比較し,高齢者は若者よりも否定命題の理解が難しいのかについて議論する.
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P1-24本研究は,著者自身の検索行動を対象とし,購買意思決定に至る過程の思考を明らかにすることを目的とする.検索画面録画への注釈を分析した結果,著者は検索を通じ求める製品仕様を明確化しつつ,製品の外見への関心,製品が求める仕様を充足しているかについての関心,特別な製品への関心,想定以上の活用方法への関心,製品販売元への関心の5つを,ネット上の製品情報と実物との齟齬の可能性を検討しながら認識の調整を重ね,購買の決定に至っていることが示唆された.
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P1-25近年, ロボットやバーチャルアバターなどの人工エージェントの外見や挙動を人間に近づける試みが多くされている。本研究では, 人工エージェントの顔に人間由来の脈拍情報に伴う皮膚色の変化を実装した刺激と実装しなかった刺激に対する人間らしさ評価の違いについて検討した。その結果, 人間に近い外見を持つERICAにおいて, 脈拍情報に伴う皮膚色の変化を実装したことにより知覚される人間らしさが増幅された。
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P1-26本研究において実施したプライミング課題では,先行する聴覚刺激と後続の視覚刺激との間に直接的な意味的関係がある場合,直接的な意味的関係がないが間接的に意味的な結びつきがある場合,意味的な関係がほとんどまたは全くない場合の3条件について比較を行った.その結果,先行刺激と後続刺激との間に直接的な関係がある場合のみならず,間接的な結びつきのみがある場合においても反応が一定促進されることが示唆された.
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P1-27視線要因のみを統制した動画刺激を作成し,他者からの視線が自身の加減速行動の意思決定に与える影響を実験的に検証した。実験の結果,他者から視線を向けられることより自身は加速行動を選択する割合が高くなることが明らかになった。ただし,加速して他者に先行することに対する消極性も観察された。
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P1-28本研究では、VRプレゼンテーションにおける自身のVRアバターの表情が緊張緩和に与える影響を検証した。ポジティブ表情アバターを提示された群は、ネガティブ表情アバター群と比較して心拍間隔(RRI)の有意な増大を示し、よりリラックスした状態にあることが示唆された。この結果は、VRアバターの表情操作がプレゼンテーション時の生理的緊張を緩和する可能性を示しており、今後のVRを用いたコミュニケーション支援への応用が期待される。
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P1-29本研究は,特定の職業場面における比喩選好の個人差を測定するための比喩選好課題 (職業比喩課題)を作成し,その内的整合性とパーソナリティ尺度との関連の予備的検討を目的とした.参加者 (N = 224)は,今回開発した職業比喩課題,曖昧さ耐性尺度 (今川, 1981),そしてTIPI-J (小塩他, 2012)に回答した.結果,職業比喩課題は高い内的整合性を持ち,外向性と負の相関関係, 協調性と正の相関関係にあることが示唆された.
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P1-30シェアハウスの共用空間において, 居住者の私物が他者と共同使用される過程をエスノグラフィにより記述した. ストリーミングデバイスとこたつの二事例を分析した結果, 空間への配置を起点に一時的な共同使用が成立し, その後, モノの使用に関する規範のズレの顕在化を経て, シェアが維持, 変容, 解消する過程が明らかになった. この過程では, 提供者の私物に対する裁量, 複数の規範, 物理的環境が複雑に関係していた.
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P1-31本稿では,Twitterにおける出会いの場面において,ユーザがどのような活動を「場面にかかわりのある活動」として選択しているのかを明らかにした.企業アカウントの挨拶ツイートとそのリプライ計105件を対象に分析を行い,特に挨拶と会話という2つの活動に着目した.ゴフマンの「関与」概念に基づく分析から,Twitterにおいては挨拶活動が支配的関与として位置付けられ,関与は投稿者ではなく受け手側によって選択されることが示唆された.
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P1-32本研究では,共在状態においてそれまでの相互行為とは無関係に産出される発話が,どのように発話者自身によって独り言として構成され,共在している他者によって独り言として扱われるかを,相互行為分析を用いて明らかにする.分析の結果,発話者は,自身の発話が独り言であることを,発話の連鎖上の位置や身体の志向性によって示していた.共在している他者は,その発話が独り言であることを理解し,反応を示さないか,反応を示すとしても最小限に留めていた.
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P1-33人々が「考慮する選択肢の数を増やすこと」と「所与の選択肢セットを適切に評価すること」の間のトレードオフにどう対処しているのかを行動実験により検討した.結果,人々は最適値が異なる環境において,選択肢の数を適応的に調整することに失敗していた.一方,選択に伴う後悔感情は選択肢の数の調整と関連しており,主観的な感情経験が意思決定の制御プロセスにおいて機能的な役割を果たしている可能性が示された.
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P1-34本研究は選択者が選択肢数を能動的に決定する場面に着目し、選択肢過多状況で生じる後悔が次の探索を抑制するかを検討した。選択の判断軸となる、参照基準の調整効果にも着目した。大学生22名に対し、初回選択の選択肢数と参照基準の有無を操作し、初回選択後の後悔と次回選択の探索数を測定した。媒介分析の結果、初回の選択肢数は次回選択の探索数に直接影響しなかったが、後悔が探索数を有意に負に予測し、後悔が探索調整メカニズムとして機能する可能性が示唆された。
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P1-35日本を代表する企業の経営理念について,テキストマイニングの手法を使用して時系列変化を分析し,それらの経営理念が企業活動の成果にどのように表れているかを検証した.その結果,現代の日本企業に必要な志向性は「価値」志向であり,「世界」志向であることが明らかとなった.経営理念を構築する際,自社が①どのような「価値」をどのように創造するか,②市場,企業活動の展開エリアとして「世界」とどう対峙するか,の2つの要素が最も重要となる.
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P1-36痒みという感覚は、個人的な現象だと考えられがちであるが、痒みに伴う発話や掻き行動を始めとする緩和行動によって痒みは会話の中で顕在化し、社会相互行為を引き起こす可能性がある。本論では日本語日常会話コーパスから痒み発話が発せられた例を抽出し、発話と緩和行動のタイミングを調べるとともに、それらが話題の進行を妨げない形で会話にタイミングよく埋め込まれている例を示し、痒みが相互行為に用いられる可能性を示した。
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P1-37不安は,将来的に生じる危険を予測し,回避するうえで重要な役割を果たす.不安による環境への適応は,時間認知などの個別の認知機能への作用によって実現されると考える.本研究では,ACT-Rを用いて,時間の経過に伴う不安の増幅を組み入れたモデルを構築した.そのモデルを利用したシミュレーションにより,現実よりも過大な接近の知覚が生じるルーミング(looming)が発生する条件が明らかになった.
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P1-38先行研究では, アンカーの単位や大きさの違いがアンカリング効果に及ぼす影響に焦点が当てられてきた. 本研究では,「90人」と「九十人」という同義の数値を異なる表記で提示し,数値の提示形式(漢数字, アラビア数字)と回答形式(漢数字, アラビア数字)の一致・不一致がアンカリング効果に及ぼす影響を検討した. 結果,提示形式と回答形式を漢数字で一致させた群では, それらを一致させなかった群よりも, 強いアンカリング効果が確認された.
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P1-39ジェスチャーが発話産出を促進させる神経基盤についてはよくわかっていない.本研究では日本語母語話者を対象に,ジェスチャー産出と抑制の条件下で30秒間のアニメーションを説明させ,MEG(脳磁図)で計測を行った.ジェスチャー使用条件よりも,ジェスチャー抑制条件において,発話開始直前に脳活動(RMS値)が上昇し,両側前側頭葉の強い活動がみられた.この結果からは,ジェスチャーが発話処理の負荷を軽減させていることが示唆された.
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P1-40人口のq(%)を占めるマイノリティがn人の集団に1人でも含まれる確率Pは大幅に過小視されることが報告されている.教員や管理職がこのような過小視をする場合,教育環境・職場環境の改善を妨げる可能性がある.そこで本研究は,qやnの情報提示方法を工夫することで,nが増えるとPも増える関係に気づきやすくしPの過小視を緩和できるか検討した.しかし,本研究の手法ではPの過小視傾向は変化しなかった.Pの理解には独特の困難が存在することが示唆される.
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P1-41本研究では,美術館でフィールド調査を実施し,どのように芸術作品を鑑賞する個人が鑑賞において美的体験するのかを検討した。その結果,芸術鑑賞時にメタ認知的知識(自分自身や他者の鑑賞・作品・鑑賞方略に関する知識)をもつ個人ほど作品を理解し,好きになる傾向があることが示された。本研究は,美的体験における鑑賞のメタ認知の重要性を強調し,教育的介入の開発に資する基礎的知見を提供するものである。
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P1-42身振り研究において三次元計測は重要であるが、モーションキャプチャ(MoCap)には限界がある。本研究では、4つの人物姿勢推定手法(HPE)を、MoCapと比較することで身振りの三次元推定精度を検証した。結果、2台のカメラとHPEによる手法がもっとも高精度であり、誤差は50mm程度であった。また、クラウド上で利用可能な三次元解析ツールも提案する。本手法はMoCapの代替手段として有望である。
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P1-43制作プロセスと道具の関係,多重時間スケールの概念,この2つの観点から1名の木工作家がヘラを制作するプロセスを数年にわたってどのように探索しているのか,検討した.2018年,2019年の制作の様子を分析した結果,各年で削りの工程の手順が異なるだけでなく,同じ年であっても1~2日の間に削りの手順を変えていることが示された.マクロ,メゾなタイムスケールの中での工程の変化が見られ,それらが入れ子になっていた.
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P1-44本発表は、現在執筆中の修士論文の一部に基づき、地域的音環境に対する記憶想起と語りにおける意味構成プロセスを検討するものである。2024年10月に愛知県A市J町で実施した山車祭りワークショップを対象に、参加者の語りを質的に分析し、特に囃子(音)の知覚がいかに記憶・情動・身体性と結びつき、語りの中で再構成・意味づけされるのかを明らかにすることを目指す。音経験の記憶的・語用的機能を通じて、文化継承における認知的過程を考察する。
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P1-45本研究では,生物でない対象の動きに生物らしさを見出す現象であるアニマシー知覚の個人差が,動きの観察時に想起する生物種の違いに起因するとの仮説を検証した.点の動きが「アリ」「ヘビ」であると事前に参加者に教示する2つの条件を設定し,点の進行方向の変化の角度の大きさとアニマシーの強さの評価の関係を条件間で比較した.その結果,仮説通りの結果は得られなかったものの,教示によってアニマシーの評価の傾向に違いが生まれている可能性が確認できた.
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P1-46内面的な類似性が友人関係に影響を与えるということが先行研究より示されている一方で,外見の類似性が友人関係に与える影響についてはまだ検証されていない.本研究では,友人同士の顔の類似性の有無を検証した.その結果,友人同士には有意な顔の類似性が存在することが示された.また,内面的な類似性が顔の類似判断に有意な正の影響を与えることが明らかになった.さらに,怒りと嫌悪の表情の不一致が顔の類似度を上昇させる傾向が見られた.
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P1-47本研究は、文学授業における学習者の対話に着目し、集団的な読解がどのように生成・変容するかを質的に明らかにすることを目的とする。中学校の文学授業の映像記録を談話分析し、「わからなさ」の共有が読解の方向性に及ぼす影響を分析した。その結果、学習者は曖昧さを受け入れ、問いを保留しながら解釈可能性を開くという生成的・応答的な解釈戦略を共有していたことが示された。本研究は、読解の認知的・社会的構成プロセスに対する理解を深めるものである。
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P1-48本研究では,陰謀論信念と合理的思考に関わる認知要因との関連を調査したStanovich & Toplak(2024)の結果を追試した.クラウドソーシングサイトにて募集した290名が陰謀論信念,超常的思考,開放的思考,確率的推論の尺度に加えてSNSの利用時間や陰謀論についての知識について回答した.重回帰分析の結果,陰謀論的信念と超常的思考との間に正の関連が,開放的思考との間に負の関連が見られたが,確率的推論との関連は見られなかった.
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P1-50本研究は,AIが与える情報と人間の専門家が与える情報の解釈の相違を検討した.実験では,参加者は“企業の株価が上昇する見込み”に関する情報として様々な確率値を与えられ,それらの確率値が情報としてどの程度参考になるかを,情報がAIから与えられた場合と人間の専門家から与えられた場合のいずれかで評価した.分析の結果,AIの与える情報の評価の際,人間の専門家が与える場合よりも低い事前確率が見込まれる点,情報自体の影響も弱い点が明らかになった.
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P1-51本研究は,複数の原因候補が存在する状況で,人がどのように主要な原因を判断するのかを説明する反実仮想的因果モデルの妥当性を検討する.日本語話者を対象とした追試実験の結果,必ずしも生起確率が極端な要因だけでなく,反実仮想シミュレーション内で結果との相関が強い要因が重視されることを確認した.熟慮性の個人差が判断の明瞭さに影響することも示唆された.また, 結果事象の感情価によって,因果モデルの適切なパラメータ設計が必要になることが示唆された.
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P1-52黙読時に主観的に経験される内なる声(IRV)について,413名へのアンケート調査をもとに,個人差を測定する尺度を試作した.会話文と説明文各3文ずつへのIRV経験を5段階で回答させることで,個人差と刺激差を測定することができた.また,数式という他刺激でのIRV経験と正の相関が確認された.この個人差と認知スタイルとの関係を探索したが,明確な関係は見られなかった.採用した刺激文に偏りがあるため再検討は必要であるが,尺度の作成は可能と考える.
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P1-53芸術経験は認知や感情を変容させるものであり,芸術を鑑賞することは作品と鑑賞者の日常経験をつなぐイマジネーションのやりとりとして捉えられる.対話型鑑賞は,鑑賞者間の協働的理解を促す手法として注目されているが,現代アート展での実践例は多くない.本研究では,現代アート展「FAYM2024」での対話型鑑賞場面のプロトコル分析を通じて,芸術と日常認知の架橋を探った.作家自身も他の鑑賞者と同じ立場で関わり,作品を中心とする対話が成立していた.
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P1-55本研究は,表意作用を記号間のマニピュラビリティとして形式化し,Prologを用いて意味の流れの場を可視化する.表意作用はある対象の集まりの順序の対(プロフィール)の集合をドメイン(定義域)から対象の離散的な勾配,すなわち各順序に対応するエージェント最適反応が恒等写像でない場合である.Gibbar-Satterthwaite定理は独裁的ドメインでの意味の発生を保証する.つまり非独裁かつ全射的であればマニピュラブルなプロフィールが存在する.
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P1-56縦格子を通して,制御されたドット平面や地面を自然に両眼視すると,立体縞模様,トーラス,波打った地面などの立体錯視像が得られる. 本研究では,上記以外の図形を錯視像として得られるように,制御ドット平面を設計するための支援プログラムを設計した.さらにこれを用いて,いくつか今までに知られていない錯視像を得ることができた.
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P1-57強化学習の応用例であるバンディット問題を解くアルゴリズムでは,事前分布など事前知識を与えることがある.その中でも人の試行錯誤の一種である満足化を再現した Risk-sensitive Satisficing (RS) では,最適な目標値を事前知識として与えた場合に高い性能が確認されていた.本研究では最適な目標値が未知の実数値になりうる場合でも,エージェントがオンライン情報から自律的に推定する方法を検討した.
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P1-58植込型補助人工心臓装着患者が術後に行う機器学習の場面において,不可視・非操作の埋込機器をどのように知覚しようとするのかを,語りの分析から明らかにした.逐語データを「未分化」「仮の同調」「構成」の3フェーズに分類し,知覚が感覚的に成立するのではなく仮構えを通じて語りに支えられている様子を記述した.プロジェクション科学とDiscursive Psychologyの視点から語りによって「そこにあること」が構成され続けるプロセスを明らかにする.
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P1-59本研究では,情報処理速度の向上と時間知覚の変調の関連性を解明するための実験課題を開発する.その課題は,情報処理速度が適度に向上した,フロー状態に準ずる状態を誘発するものである必要がある.課題では,難易度を操作可能なシステムを構築し,モデルから個々人に最適な難易度を推定する.実験では,難易度変化のパターンと情報処理能力の関係を調査した.
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P1-61画像分類逆相関法によって生成された,日本人の政治家へのふさわしさのステレオタイプを反映した顔の特徴を明らかにし,その特徴の政治的意思決定への影響と個人特性との関連を調べた.政治家にふさわしいとされた顔は,親しみやすく,若々しく魅力的で,支配的であると評価された.この評価は総理大臣顔と防衛大臣顔の間で異なり,役職特異性が見られた.また,政治家にふさわしいとされた顔は選挙で有利と判断され,この傾向は政治関心が低い人で見られやすかった.
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P1-62本研究では、無向グラフの枠組みに対して「因果の対称性」と「事象の稀少性」を組み込むことで、人間の因果帰納推論を記述するモデルを導出した。メタ分析の結果は、提案モデルが高い記述性能を有することを示し、新たに実施した認知実験の結果は、参加者の回答が無向モデル型と有向モデル型に二分されることを示した。これらの結果は、人間の因果推論の認知モデリングにおいて「規範モデル」と「記述モデル」が相互排他的な仮説ではない可能性を示唆している。
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P1-63本研究は、AIベースの表情分析技術であるDeepFaceを活用し、他者の感情表情を観察中の観察者自身の微細な表情変化が性格特性とどのように関連するかを検証した。その結果、協調性および神経質性が高い人ほど、怒り、嫌悪、喜び、驚きといった感情の表情強度が抑制されることが明らかになった。この現象は、協調性の高い人が対人関係における調和を維持するため、また神経質性の高い人が否定的な評価を回避するために、自身の情動表出を調整していると解釈できる。
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P1-64本研究では視覚探索課題を2回実施し,その間に幼くてかわいい刺激、幼くはないがかわいい刺激、かわいいとも幼いとも喚起されない刺激を提示して成績を比較した。その結果幼くてかわいい刺激を提示した場合だけでなく幼くはないがかわいい刺激を提示した場合でも2回の課題間に有意な成績の向上がみられた。かわいいと感じる刺激だけでなく幼さのないかわいいと感じる刺激でも視覚的注意課題の成績を上げる効果があることがわかった。
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P1-65運転日記と車載映像を手がかりに,筆者自身が運転中に何を見て何を考えているのかを一人称研究の手法で分析した.得られた気づきを生タグにまとめ六つのカテゴリで整理し,定量化では捉え切れない運転体験の細部を浮かび上がらせた.また,視界外の車体情報を心的に補完し,車を身体の延長として操る過程を分析した.
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P1-66自己接触行動とは,自分の手で自分自身の体に触れる行動のことである。本研究では,幼児の遅延性課題中における自己接触行動の発達的変化を検討した。3~5歳児を対象に,遅延性課題中に行われた自己接触行動の接触時間や接触部位を分析した結果,接触時間の割合に年齢による有意差はなく3歳の時点で多くの自己接触行動がみられた。特に手や顔への接触が多く,自己接触行動を行うことで,目の前の報酬から注意を逸らしていたのではないかと考えられる。
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P1-67本研究では,高齢化社会における冷凍食品パッケージの調理法表示のユーザビリティを検討した.実験1では高齢者と大学生を対象に認知的ユーザビリティテストを実施し,マニュアルの理解困難点や調理エラーの発生を確認した.これに基づき表示デザインを改善し,実験2で再評価したところ,エラーの減少など一定の効果が認められた.また,既存ユーザーと新規ユーザーの反応差も明らかになり,特に高齢者既存ユーザーには変更点を肯定的に伝える必要性が示唆された.
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P1-68本研究は、特定の場所に対して人々が連想する語を大規模に収集・分析し、連想表現からの場所推定に資するデータを構築することを目的とする。関東地方の7都県を対象に、「おすすめの場所」に関する連想表現を収集した。また、得られた語から場所を推定する実験を実施し、どのような語が推定に有効かを検証した。さらに、人手によるラベル付けを通して語の分類と傾向を分析した。これにより、場所に関する語の認知的特徴と、場所同定に寄与する語の性質を明らかにした。
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P1-69発話に内包された意味を解釈することは、円滑なコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす。参加者は、消火器の点検に関するシナリオを提示され、情報アクセスの程度および点検時期(1週間前/1年前)を操作した条件下で場面を観察した。その後、良好な状態であった消火器の本数を推測する課題に回答した。その結果、情報アクセスが制限されている場合や、点検がより最近に実施された場合に、「すべてではない」と解釈する傾向が高まることが示された。
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P1-70京都独自の言語文化である京ことばは、京都に馴染みのない観光客などにはその真意が伝わりにくいと考えられる。本稿では、京ことばを分かりやすい表現にし、京ことばの持つ意味を補足することで京ことばの理解及び円滑なコミュニケーションを支援し、更に補足情報も付加することで京ことばへの理解を深めることを目的としたアプリケーションの開発について述べる。
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P1-71本稿では、身体性に着目したナレーション技術の向上支援について提案する。本稿執筆時点では構想の域を出ないが、従来余り注目されたなかった身体性や認知的な側面からナレーション技術を捉えてみたい。研究手法としては、主にフィールドワークと行動実験を併用する事を計画している。最終的に、ナレーション技術を定量的・定性的に記述する事と、プロの技術を参照しながらアマチュアの技術を向上させる事が目標である。