研究分野

意思決定

  • O1-1
    星野 匠映 (関西学院大学社会学研究科)
    清水 裕士 (関西学院大学社会学部)
    本研究では,非定常環境下の経験的意思決定を対象に,忘却ベイズ推論モデルと動的プロスペクト理論に基づいたモデルを構築した.実験では,参加者が報酬確率の変動する二択課題を繰り返し行い,その選択データを基にモデル比較を行った.その結果,直近の経験を重視する忘却ベイズ推論モデルが支持され,さらに経験によってリスク回避的なバイアスが低減し,ベイズ合理的な選択傾向へと変化する可能性が示唆された.
  • O1-2
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    浜野 淳 (筑波大学)
    香川 璃奈 (産業技術総合研究所)
    本研究では、医師による患者の余命推定課題を通じて、AIおよび集合知の活用によって人間の推定精度がいかに向上するかを検証した。認知実験の結果、AIの推定を参照することで医師の推定精度が向上する一方、その効果には個人差があった。さらに、計算機シミュレーションによって集合知の効果を検討した結果、AIの推定を参照した後の医師の判断を集約することで、AI単独を超える精度が得られる可能性が示された。
  • O2-3
    櫃割 仁平 (ヘルムートシュミット大学)
    Selina Weiler (ヘルムートシュミット大学)
    Maria Manolika (ヘルムートシュミット大学)
    Thomas Jacobsen (ヘルムートシュミット大学)
    本研究は,日本の伝統宮廷舞踊である舞楽の美的鑑賞における文化差を検証した初の実証研究である。質的・量的手法を用いて日本人とドイツ人参加者を比較した結果,日本人は選好,超越的体験,優美さ,調和と構造において一貫して高い評価を示した。この文化差は,日本の美的概念「間」と,東アジアの全体的認知処理対西洋の分析的認知処理の違いで説明される。文化特有の認知スキーマが複雑な美的刺激の受容を形成することが明らかになった。
  • P1-9
    内海 健介 (大阪大学大学院工学研究科)
    東 広志 (大阪大学大学院工学研究科)
    田中 雄一 (大阪大学大学院工学研究科)
    横田 陽樹 (大阪大学大学院工学研究科)
    敵対的操作とは,人の意思に反する決定を誘導するために,外的要因を操作する行為である.本研究では,ヒト行動実験による調査と,ヒト参加者の回答傾向をリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いてモデル化することで,敵対的操作が人の行動に与える長期的な影響を明らかにすることを目指した.実験の結果,敵対的操作を受けると参加者やRNNモデルがその操作に対して耐性を獲得し,正答率が向上する可能性が示唆された.
  • P1-13
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    松林 翔太 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    寺井 仁 (近畿大学)
    唐沢 穣 (名古屋大学)
    本発表では,注視情報提示による衝突回避における相手の役割選択の誘導,すなわち注視ナッジを提案し,その妥当性を検証する実験悔過について報告する.実験では,衝突回避における役割(先行・後行)に一致した注視パターンを提示することで,先行後行判断を誘導する可能性が示された.
  • P1-20
    山本 輝太郎 (金沢星稜大学)
    本研究ではマイサイドバイアスの抑制方法として誤びゅうに着目し,誤びゅう教材の閲覧の有無によるマイサイドバイアスの低減効果について実証的に検討した.テキストアニメーションでの解説を実装したオンライン教材,およびネットコメント風の実験用の刺激課題を用意し,介入実験を実施した(非ランダム化比較試験).実験の結果,誤びゅうの学習によってマイサイドバイアスに対する一定の低減効果がみられた(全体効果量-0.72).
  • P1-22
    白砂 大 (静岡大学)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    香川 璃奈 (産業技術総合研究所)
    医療診断などの実社会の判断場面において、AIによる意思決定支援の導入が進んでいる。本研究では、人とAIのバイアスの相互作用(e.g., 過大評価か過小評価か) に着目し、人のバイアスの程度によってAIが持つべき特性が異なる可能性を検証した。実験の結果、人と逆方向のバイアスをもつAIは、人の判断精度を高める一方で、人が抱く信頼度は低いことが示された。本研究は、正確で信頼できるAIが常に良いとは限らないという実用的示唆を提供する。
  • P1-24
    田畑 博之 (公立はこだて未来大学大学院)
    元木 環 (公立はこだて未来大学)
    本研究は,著者自身の検索行動を対象とし,購買意思決定に至る過程の思考を明らかにすることを目的とする.検索画面録画への注釈を分析した結果,著者は検索を通じ求める製品仕様を明確化しつつ,製品の外見への関心,製品が求める仕様を充足しているかについての関心,特別な製品への関心,想定以上の活用方法への関心,製品販売元への関心の5つを,ネット上の製品情報と実物との齟齬の可能性を検討しながら認識の調整を重ね,購買の決定に至っていることが示唆された.
  • P1-27
    松林 翔太 (名古屋大学)
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    寺井 仁 (近畿大学)
    唐沢 穣 (名古屋大学)
    視線要因のみを統制した動画刺激を作成し,他者からの視線が自身の加減速行動の意思決定に与える影響を実験的に検証した。実験の結果,他者から視線を向けられることより自身は加速行動を選択する割合が高くなることが明らかになった。ただし,加速して他者に先行することに対する消極性も観察された。
  • P1-33
    菅沼 秀蔵 (東京大学)
    隅田 莉央 (東京大学,日本学術振興会)
    森 隆太郎 (東京大学,日本学術振興会)
    人々が「考慮する選択肢の数を増やすこと」と「所与の選択肢セットを適切に評価すること」の間のトレードオフにどう対処しているのかを行動実験により検討した.結果,人々は最適値が異なる環境において,選択肢の数を適応的に調整することに失敗していた.一方,選択に伴う後悔感情は選択肢の数の調整と関連しており,主観的な感情経験が意思決定の制御プロセスにおいて機能的な役割を果たしている可能性が示された.
  • P1-34
    隅田 莉央 (東京大学,日本学術振興会)
    鈴木 啓太 (東京大学)
    村本 由紀子 (東京大学)
    本研究は選択者が選択肢数を能動的に決定する場面に着目し、選択肢過多状況で生じる後悔が次の探索を抑制するかを検討した。選択の判断軸となる、参照基準の調整効果にも着目した。大学生22名に対し、初回選択の選択肢数と参照基準の有無を操作し、初回選択後の後悔と次回選択の探索数を測定した。媒介分析の結果、初回の選択肢数は次回選択の探索数に直接影響しなかったが、後悔が探索数を有意に負に予測し、後悔が探索調整メカニズムとして機能する可能性が示唆された。
  • P1-35
    牧之内 洋和 (北九州市立大学大学院社会システム研究科博士後期課程)
    松田 憲 (北九州市立大学大学院社会システム研究科教授)
    日本を代表する企業の経営理念について,テキストマイニングの手法を使用して時系列変化を分析し,それらの経営理念が企業活動の成果にどのように表れているかを検証した.その結果,現代の日本企業に必要な志向性は「価値」志向であり,「世界」志向であることが明らかとなった.経営理念を構築する際,自社が①どのような「価値」をどのように創造するか,②市場,企業活動の展開エリアとして「世界」とどう対峙するか,の2つの要素が最も重要となる.
  • P1-37
    長島 一真 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    不安は,将来的に生じる危険を予測し,回避するうえで重要な役割を果たす.不安による環境への適応は,時間認知などの個別の認知機能への作用によって実現されると考える.本研究では,ACT-Rを用いて,時間の経過に伴う不安の増幅を組み入れたモデルを構築した.そのモデルを利用したシミュレーションにより,現実よりも過大な接近の知覚が生じるルーミング(looming)が発生する条件が明らかになった.
  • P1-38
    大貫 祐大郎 (成城大学, 一橋大学)
    大瀧 友里奈 (一橋大学)
    先行研究では, アンカーの単位や大きさの違いがアンカリング効果に及ぼす影響に焦点が当てられてきた. 本研究では,「90人」と「九十人」という同義の数値を異なる表記で提示し,数値の提示形式(漢数字, アラビア数字)と回答形式(漢数字, アラビア数字)の一致・不一致がアンカリング効果に及ぼす影響を検討した. 結果,提示形式と回答形式を漢数字で一致させた群では, それらを一致させなかった群よりも, 強いアンカリング効果が確認された.
  • P1-50
    中村 國則 (成城大学)
    木村 元優 (成城大学)
    本研究は,AIが与える情報と人間の専門家が与える情報の解釈の相違を検討した.実験では,参加者は“企業の株価が上昇する見込み”に関する情報として様々な確率値を与えられ,それらの確率値が情報としてどの程度参考になるかを,情報がAIから与えられた場合と人間の専門家から与えられた場合のいずれかで評価した.分析の結果,AIの与える情報の評価の際,人間の専門家が与える場合よりも低い事前確率が見込まれる点,情報自体の影響も弱い点が明らかになった.
  • P1-51
    鎌田 佑 (東京電機大学大学院)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (東京電機大学)
    本研究は,複数の原因候補が存在する状況で,人がどのように主要な原因を判断するのかを説明する反実仮想的因果モデルの妥当性を検討する.日本語話者を対象とした追試実験の結果,必ずしも生起確率が極端な要因だけでなく,反実仮想シミュレーション内で結果との相関が強い要因が重視されることを確認した.熟慮性の個人差が判断の明瞭さに影響することも示唆された.また, 結果事象の感情価によって,因果モデルの適切なパラメータ設計が必要になることが示唆された.
  • P1-55
    犬童 健良 (関東学園大学経済学部)
    本研究は,表意作用を記号間のマニピュラビリティとして形式化し,Prologを用いて意味の流れの場を可視化する.表意作用はある対象の集まりの順序の対(プロフィール)の集合をドメイン(定義域)から対象の離散的な勾配,すなわち各順序に対応するエージェント最適反応が恒等写像でない場合である.Gibbar-Satterthwaite定理は独裁的ドメインでの意味の発生を保証する.つまり非独裁かつ全射的であればマニピュラブルなプロフィールが存在する.
  • P1-57
    上野 誠弥 (東京電機大学 理工学部)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    甲野 佑 (東京電機大学 理工学部)
    強化学習の応用例であるバンディット問題を解くアルゴリズムでは,事前分布など事前知識を与えることがある.その中でも人の試行錯誤の一種である満足化を再現した Risk-sensitive Satisficing (RS) では,最適な目標値を事前知識として与えた場合に高い性能が確認されていた.本研究では最適な目標値が未知の実数値になりうる場合でも,エージェントがオンライン情報から自律的に推定する方法を検討した.
  • P1-61
    杉本 海里 (早稲田大学)
    中村 航洋 (早稲田大学)
    尾野 嘉邦 (早稲田大学)
    浅野 正彦 (拓殖大学)
    渡邊 克巳 (早稲田大学 理工学術院)
    画像分類逆相関法によって生成された,日本人の政治家へのふさわしさのステレオタイプを反映した顔の特徴を明らかにし,その特徴の政治的意思決定への影響と個人特性との関連を調べた.政治家にふさわしいとされた顔は,親しみやすく,若々しく魅力的で,支配的であると評価された.この評価は総理大臣顔と防衛大臣顔の間で異なり,役職特異性が見られた.また,政治家にふさわしいとされた顔は選挙で有利と判断され,この傾向は政治関心が低い人で見られやすかった.
  • P1-62
    樋口 滉規 (中部大学)
    市野 弘人 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    本研究では、無向グラフの枠組みに対して「因果の対称性」と「事象の稀少性」を組み込むことで、人間の因果帰納推論を記述するモデルを導出した。メタ分析の結果は、提案モデルが高い記述性能を有することを示し、新たに実施した認知実験の結果は、参加者の回答が無向モデル型と有向モデル型に二分されることを示した。これらの結果は、人間の因果推論の認知モデリングにおいて「規範モデル」と「記述モデル」が相互排他的な仮説ではない可能性を示唆している。
  • P1-63
    徐 キョウテツ (弘前大学)
    本研究は、AIベースの表情分析技術であるDeepFaceを活用し、他者の感情表情を観察中の観察者自身の微細な表情変化が性格特性とどのように関連するかを検証した。その結果、協調性および神経質性が高い人ほど、怒り、嫌悪、喜び、驚きといった感情の表情強度が抑制されることが明らかになった。この現象は、協調性の高い人が対人関係における調和を維持するため、また神経質性の高い人が否定的な評価を回避するために、自身の情動表出を調整していると解釈できる。
  • P1-65
    池田 恵悟 (千葉大学大学院人文公共学府)
    伝 康晴 (千葉大学)
    運転日記と車載映像を手がかりに,筆者自身が運転中に何を見て何を考えているのかを一人称研究の手法で分析した.得られた気づきを生タグにまとめ六つのカテゴリで整理し,定量化では捉え切れない運転体験の細部を浮かび上がらせた.また,視界外の車体情報を心的に補完し,車を身体の延長として操る過程を分析した.
  • P1-66
    西東 理花 (早稲田大学大学院)
    関根 和生 (早稲田大学)
    自己接触行動とは,自分の手で自分自身の体に触れる行動のことである。本研究では,幼児の遅延性課題中における自己接触行動の発達的変化を検討した。3~5歳児を対象に,遅延性課題中に行われた自己接触行動の接触時間や接触部位を分析した結果,接触時間の割合に年齢による有意差はなく3歳の時点で多くの自己接触行動がみられた。特に手や顔への接触が多く,自己接触行動を行うことで,目の前の報酬から注意を逸らしていたのではないかと考えられる。
  • P2-14
    曽根 悠太郎 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    鷲見 優一郎 (トヨタ自動車株式会社)
    中西 亮輔 (トヨタ自動車株式会社)
    光田 英司 (トヨタ自動車株式会社)
    佐藤 浩司 (トヨタ自動車株式会社)
    小田島 正 (トヨタ自動車株式会社 )
    近年、過剰最適化対策として偶然性を加味した検索推薦が注目される.本研究は,検索時の偶然性を求める行動(偶然性希求行動)への製品の快楽・功利的属性と検索目標の具体性の影響を検討した. 結果,製品の快楽性と目標具体性の間に交互作用を確認した.目標具体性が低い場合は快楽的な製品ほど偶然性希求が高まるが、高い場合は快楽性に関わらず偶然性希求が低下した.これは,偶然性を加味した推薦で,ユーザーの目標とアイテムの快楽性を考慮する重要性を示唆する.
  • P2-17
    冨田 貴央 (東京電機大学)
    市野 弘人 (東京電機大学)
    青木 颯大 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    樋口 滉規 (中部大学)
    本研究では,観察から因果関係の強さを推定する認知課題において,情報の提示形式(オンライン/サマリー)と否定の対称性(非対称/対称)が推論の形式に与える影響を検証した.実験参加者の平均回答値をクラスタリングし,それぞれ因果の方向性を考慮するモデル CS と考慮しないモデル UCS との適合を分析した結果,情報の提示形式や否定の対称性を操作することで因果の方向性を考慮した推論が促進されることが示唆された.
  • P2-23
    光武 里菜 (日本体育大学荏原高等学校)
    清河 幸子 (東京大学)
    本研究は、ネガティブ感情とリスク推定の有無がリスクテイクに与える影響を検討した。成人128名が4条件に割り当てられ、ギャンブル課題を実施した。予測では、ネガティブ感情はリスク推定がない場合にリスク追求を促し、推定がある場合には回避的になるとされたが、一致する結果は得られなかった。一方、序盤ではネガティブ感情が一時的にリスク追求的行動を促す傾向が示唆された。
  • P2-32
    渡辺 裕生 (大和大学保健医療学部)
    服部 雅史 (立命館大学)
    本研究は大学生を対象に,創造性(客観的・主観的・創造的体験)と自己の意思決定評価がQOLに与える影響を調査した.その結果,客観的・主観的創造性と意思決定評価がQOL向上に有意な影響を持つことが示された.創造性の認知的側面と意思決定能力の強化がQOLに重要であると示唆された.
  • P2-33
    深田 康太 (長岡技術科学大学修士課程工学研究科情報・経営システム工学分野1年)
    柏井 美貴子 (長岡技術科学大学)
    梶川 祥世 (玉川大学 大学院 脳科学研究科)
    土居 裕和 (国立大学法人 長岡技術科学大学    大学院 情報・経営システム工学分野)
    身体運動の感性評価に関する研究は, 日常的な動きから, スポーツなどのパフォーマンス動作まで, 多岐にわたる分野で進められている. 本研究は, 少林寺拳法の演武動作を題材として, 運動経験が感性評価に与える影響を検討し, 身体運動経験の観点から, 身体運動の感性評価メカニズムに検討を加えることを目的とする. 脳波・瞳孔径計測実験を実施し, 感性評価時の脳活動の違いを探ることで, 感性評価メカニズムの解明を目指す.
  • P2-46
    宮内 万彩 (明治大学大学院 理工学研究科)
    都地 裕樹 (明治大学 研究・知的財産戦略機構)
    嶋田 総太郎 (明治大学)
    本研究では、マインドフルネス瞑想の手法である呼吸の瞑想と慈悲の瞑想が社会的意思決定に及ぼす影響の違いを明らかにするために、両瞑想法のトレーニング前後における最後通牒ゲーム遂行中の事象関連電位(P200)を比較した。その結果、正中前頭部におけるP200の振幅が慈悲の瞑想群でのみトレーニング後に減少していた。この結果は、瞑想の手法によって社会的意思決定に関する脳活動に異なる影響を与える可能性を示唆している。
  • P2-49
    杉本 幸大 (追手門学院大学大学院 心理学研究科心理学専攻)
    白砂 大 (静岡大学)
    香川 璃奈 (産業技術総合研究所)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    本研究は、リスク下の意思決定におけるヒューリスティックの適応的使用をアイトラッキングで検証した。課題の難易度が高いほどヒューリスティックによる選択が増え、難易度が低いと期待値に基づく選択が多くなった。視線データの分析から、期待値に基づく選択は難易度に応じて認知的コストが変動するのに対し、ヒューリスティックは一貫して低コストであることが示され、コストを抑える適応的戦略であることが示唆された。
  • P2-51
    櫻 哲郎 (東京大学)
    渋谷 友紀 (障害者職業総合センター)
    植田 一博 (東京大学)
    本研究では文楽における三人遣いの協調操作に着目し,主遣いの意図(次に行う“型”動作)を左遣いがどのように人形動作から読み取るのかを分析した.具体的には,左遣いが取りうる型の候補を絞り込む仮説を立て,現役の人形遣いによる型判別課題と人形動作の解析によって検討を行った.その結果,左遣いの判断は固定的なルールに依存せず,人形動作に内在する情報をもとに柔軟に行われている可能性が示唆された.これは文楽の持つ即興性に適応した仕組みと考えられる.
  • P2-70
    松崎 由幸 (北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻)
    橋本 敬 (北陸先端大学)
    コミュニケーションにおいて,発話の背後にある意図の理解は円滑な対話や誤解の回避に不可欠である.本研究では,聞き手が推意の解釈の生成・選択を検討するための実験を行った.そして,代表的な語用論的推論の理論のどれと整合的かをインタビューで検討した.また,演繹・帰納・アブダクションのどの推論形式を用いるのかを分析した結果,3つすべての推論形式が用いられていることを示した.
  • P3-15
    多田 由彦 (中央大学経済学部)
    本研究はサブプライムローン金融危機が発生したにもかかわらずそれに気づくことができなかった人々やCOVID-19に感染したにもかかわらず症状が出なかったためにそれに気づくことができなかった人々の認知的状況を表す数理モデルの提案を行う。通常の可能性対応モデルでは「気づかない」を適切に解釈できるようなモデルを作れないので、本研究では新たに認知対応のモデルを提案した。そして認知対応モデルに基づいた不可知の数理的特徴づけについても検討を行った。
  • P3-41
    高坂 悠花 (近畿大学)
    大井 京 (近畿大学)
    本研究は, 日本人を対象に, 顔の魅力的な比率に関わる男女差を検討した. 異なる顔比率の画像を用いた選択課題を実施し, 評価者と画像の性別の組み合わせによる選好傾向を分析した. その結果, 男女とも「1:1:1」や「顔幅が目幅の5倍」の比率が好まれる傾向があったが, 女性の顔ではその傾向が弱まることから, 顔の魅力評価には性差があることが示唆された.
  • P3-58
    佐々木 健矢 (静岡大学)
    長島 一真 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    ソーシャルメディアのなかで局所的に発生するエコーチェンバーの要因を模倣の観点から検討する.模倣は言語獲得に重要な役割を果たし,閉じた集団内でのコミュニケーション体系の形成と関連する.ここから,大規模ネットワーク内のミクロな模倣関係が,ローカルなエコーチェンバーを形成するという仮説を考えることができる.本稿はこの仮説を検討するモデルとして,単純な事例ベース学習の変形によって,2者間のコミュニケーションを類似させる模倣の仕組みを示す.
  • P3-67
    大麻 紀真 (立命館大学)
    下條 志厳 (立命館グローバル・イノベーション研究機構)
    林 勇吾 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,異なる行動戦略をとるエージェントとの最後通牒ゲームにおいて,個人の意思決定を提案行動の選択確率とその遷移確率から検討した.実験の結果,個人は利他的なエージェントに対しては自己の利得を最大化しようとする合理的な戦略をとる一方で,利己的・適応的なエージェントに対しては経済的な合理性から逸脱した反応を示した.この背景として,エージェントの行動戦略に対する予測可能性と,社会的文脈における解釈可能性の2点が重要であることを指摘する.