研究分野

視覚・聴覚・音声

  • OS3-1-3
    公募発表
    猪股 健太郎 (熊本学園大学)
    本研究では,測定尺度の作成をとおして,決定的瞬間とはどのように定義されるのか明確にするための検討を行った。予備調査では,300名の参加者から自由記述を収集し,その内容にもとづいて29項目の決定的瞬間を写した写真の特徴を抽出した。本調査では,これらの項目を用いて,参加者に写真の評価を求めた結果,決定的瞬間は “予測不可能性”,“刹那性”,“表象性”,“無意図性”の4因子で構成される概念であり,18項目で測定される可能性が示唆された。
  • O1-3
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    スライムハンド錯覚の原理を耳介に応用した「ブッダの耳錯覚」において、耳介上部を自らつまむ操作が錯覚の強度に与える影響を検討した。実験の結果、耳たぶを引っ張る条件下では、上部をつまむことで耳たぶの伸長感や透明な皮膚感が有意に増大した。これは、自己接触が参照点として機能し、錯覚を強化することを示唆しており、皮膚変形錯覚に共通する構成原理となる可能性がある。
  • O3-4
    田中 みゆき (早稲田大学)
    本研究は, 映画『ラジオ下神白』の音声描写検討会を通じて, 視覚障害者の映画体験を分析する. 視覚障害者がどのように音から映像空間を構築し, 主体的に鑑賞しているかを, 会話・ジェスチャー分析から明らかにした. 本発表では, 視覚障害者の映画体験が視覚中心の認知とどのように異なるかを示す. その上で, 視覚障害者と晴眼者による検討会が, 映像の意味を再構築する創造的・批評的場であることを提起する.
  • P1-26
    成川 額史 (九州大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    本研究において実施したプライミング課題では,先行する聴覚刺激と後続の視覚刺激との間に直接的な意味的関係がある場合,直接的な意味的関係がないが間接的に意味的な結びつきがある場合,意味的な関係がほとんどまたは全くない場合の3条件について比較を行った.その結果,先行刺激と後続刺激との間に直接的な関係がある場合のみならず,間接的な結びつきのみがある場合においても反応が一定促進されることが示唆された.
  • P1-36
    細馬 宏通 (早稲田大学)
    飯山 陸 (早稲田大学)
    痒みという感覚は、個人的な現象だと考えられがちであるが、痒みに伴う発話や掻き行動を始めとする緩和行動によって痒みは会話の中で顕在化し、社会相互行為を引き起こす可能性がある。本論では日本語日常会話コーパスから痒み発話が発せられた例を抽出し、発話と緩和行動のタイミングを調べるとともに、それらが話題の進行を妨げない形で会話にタイミングよく埋め込まれている例を示し、痒みが相互行為に用いられる可能性を示した。
  • P1-44
    松田 新史 (青山学院大学社会情報学研究科)
    本発表は、現在執筆中の修士論文の一部に基づき、地域的音環境に対する記憶想起と語りにおける意味構成プロセスを検討するものである。2024年10月に愛知県A市J町で実施した山車祭りワークショップを対象に、参加者の語りを質的に分析し、特に囃子(音)の知覚がいかに記憶・情動・身体性と結びつき、語りの中で再構成・意味づけされるのかを明らかにすることを目指す。音経験の記憶的・語用的機能を通じて、文化継承における認知的過程を考察する。
  • P1-45
    佐藤 恵助 (東京大学大学院総合研究科)
    植田 一博 (東京大学)
    本研究では,生物でない対象の動きに生物らしさを見出す現象であるアニマシー知覚の個人差が,動きの観察時に想起する生物種の違いに起因するとの仮説を検証した.点の動きが「アリ」「ヘビ」であると事前に参加者に教示する2つの条件を設定し,点の進行方向の変化の角度の大きさとアニマシーの強さの評価の関係を条件間で比較した.その結果,仮説通りの結果は得られなかったものの,教示によってアニマシーの評価の傾向に違いが生まれている可能性が確認できた.
  • P1-56
    大槻 正伸 (福島工業高等専門学校(非常勤講師))
    小泉 康一 (福島工業高等専門学校 電気電子システム工学科)
    縦格子を通して,制御されたドット平面や地面を自然に両眼視すると,立体縞模様,トーラス,波打った地面などの立体錯視像が得られる. 本研究では,上記以外の図形を錯視像として得られるように,制御ドット平面を設計するための支援プログラムを設計した.さらにこれを用いて,いくつか今までに知られていない錯視像を得ることができた.
  • P1-59
    長谷川 大 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院)
    本研究では,情報処理速度の向上と時間知覚の変調の関連性を解明するための実験課題を開発する.その課題は,情報処理速度が適度に向上した,フロー状態に準ずる状態を誘発するものである必要がある.課題では,難易度を操作可能なシステムを構築し,モデルから個々人に最適な難易度を推定する.実験では,難易度変化のパターンと情報処理能力の関係を調査した.
  • P2-2
    畑 美緒 (早稲田大学)
    三嶋 博之 (早稲田大学)
    本研究は,Leeら (1974) による「Swinging Room」をVRで再現することで,呈示する光学的情報を自由に変更しつつ,それらと姿勢制御との関係を詳細に検討することを目的とする.結果として,部屋の揺れる幅であるAmplitudeが実験参加者の姿勢動揺量に影響を与えることが明らかになり,VR swinging roomの実験パラダイムが,現実空間と類似した身体動揺を誘発することが明らかになった.
  • P2-3
    宮本 真希 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院)
    本研究では,図形から感じられる硬度の印象が,マンガの描き文字の特性によってどのように変化するのかを調査した.実験では,白い正方形が落下して地面と衝突する際に,衝突音を表す描き文字が正方形付近に表示されるアニメーションを参加者に提示し,衝突時の正方形の硬度印象を参加者に評価させた.実験の結果,図形に対する硬度印象の変化には,テキスト内容,文字輪郭の直線性,線の波打ち度合い(周波数)の影響が示唆された.
  • P2-13
    川島 尊之 (帝京平成大学健康メディカル学部)
    正中面上の前後に位置する音源の間では、同じ音であっても後方から提示する時と前方から提示する時では喚起する感情が異なるとこれまでに報告されている。研究ではこの効果を確認し、同時にこの方向の効果に関わる身体の座標系について研究することを目的とした。本稿では、後方に提示することの効果が正中面から離れた音源に及ぶことを新たに確認したと同時に、方向の効果に関わる身体座標系の役割については明らかにならなかった。
  • P2-16
    安永 大地 (金沢大学)
    高井 瑞季 (金沢大学)
    本研究では日本語語彙の音声認知におけるアクセント逸脱と分節音逸脱の脳内処理の違いをN400を指標に検討した.アクセントによって意味が区別されるオノマトペを用い、4条件(統制,分節音逸脱,アクセント逸脱,二重逸脱)を呈示して脳波を計測した結果、分節音逸脱では520ms以降、アクセント逸脱では680–840msにN400効果が観察され、処理のタイミングが異なることが示された。また、分節音情報の方が意味認知への影響が大きい可能性が示唆された。
  • P2-21
    宮本 健史 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    視覚短期記憶 (VSTM) は,記憶保持中のディストラクタにより偏ることがある.通説では,このバイアスはディストラクタが意識的に知覚される場合のみ生じるとされるが,根拠となる行動実験では,刺激の統制など方法論的課題が残されている.本研究では眼球運動を用い,同一の網膜入力から異なる知覚を誘発するディストラクタ刺激を構築することで,先行研究の課題を克服した.その結果,VSTMバイアスは知覚が抑制されたディストラクタでも生じることを見出した.
  • P2-33
    深田 康太 (長岡技術科学大学修士課程工学研究科情報・経営システム工学分野1年)
    柏井 美貴子 (長岡技術科学大学)
    梶川 祥世 (玉川大学 大学院 脳科学研究科)
    土居 裕和 (国立大学法人 長岡技術科学大学    大学院 情報・経営システム工学分野)
    身体運動の感性評価に関する研究は, 日常的な動きから, スポーツなどのパフォーマンス動作まで, 多岐にわたる分野で進められている. 本研究は, 少林寺拳法の演武動作を題材として, 運動経験が感性評価に与える影響を検討し, 身体運動経験の観点から, 身体運動の感性評価メカニズムに検討を加えることを目的とする. 脳波・瞳孔径計測実験を実施し, 感性評価時の脳活動の違いを探ることで, 感性評価メカニズムの解明を目指す.
  • P2-35
    山田 和佳 (東京大学大学院工学系研究科)
    上田 一貴 (東京大学大学院工学系研究科)
    長藤 圭介 (東京大学大学院工学系研究科)
    新奇な製品に対する理解に至るユーザの情報獲得時の認知プロセスを明らかにするため,製品観察中の認知的気づきに伴う脳波を計測した.脳波のマイクロステート解析により,視覚/言語処理,注意,内省,感情の4つの認知プロセスが特定された.これらの認知プロセスは,獲得した気づきの種類によって異なる傾向を持つことが明らかになった.この知見は新奇な製品に対する気づきが多層的な認知プロセスであることを示している.
  • P2-38
    持舘 康太 (札幌学院大学心理学部)
    友野 貴之 (札幌学院大学心理学部)
    人間の声による読み聞かせの印象と合成音声による読み聞かせの印象とを比較し,合成音声における「人間らしさ」が読み聞かせ場面に適しているのかを検討した. その結果,読み聞かせ場面では,合成音声よりも人間の声の方が適していると感じられることがわかった.また, 合成音声の「人間らしさ」を評価する際には,「生きていると感じられるかどうか」,「感情があるかどうか」,「肯定・芸術・弾力性」といった概念が関係していることが示された.
  • P2-39
    原島 小也可 (東京大学大学院人文社会系研究科)
    浅野 倫子 (東京大学大学院人文社会系研究科)
    日本語母語話者を対象に,母音に感じられる色を選択する課題を行った。その結果,母音の音響特徴(フォルマント)に加えて音韻カテゴリが色選択に強く影響すること,過半数の参加者で音と色の空間構造に同型性が見られること,マッピングが構造的に同型な人ほどマッピングが時間的に安定していることが明らかになった。この結果は,母音と色の感覚間協応が音韻カテゴリという知覚者の認知構造を反映する形で形成されている可能性を示唆する。
  • P2-43
    加賀美 果歩 (名古屋市立大学大学院)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    本研究では,音の周波数に同期した触覚刺激を4つの身体部位に提示し,音響マグネット効果の部位特異性について検討した.その結果,頭部および頭部上に置かれた手への刺激において,音が触覚の位置から鳴っているように感じられる効果が顕著であった.行動指標も同様の傾向を示し,音響マグネット効果が頭部という身体部位に特有の知覚的特性に基づいて生じる可能性が示唆された.
  • P2-44
    秋葉 直人 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    松下 彩夏 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    森田 磨里絵 (立命館情報理工学部)
    松室 美紀 (立命館大学OIC総合研究機構)
    柴田 史久 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    木村 朝子 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    身体表象とは,人間が自身の身体について持つイメージである.本研究では, 個人内での感覚モダリティの確からしさと身体表象との関係を,視覚と固有受容感覚に着目し検討した.実験では, 身体部位を視覚的にずらして表示したときの身体表象の変化と,個人の固有受容感覚の正確性を測定した.その結果,固有受容感覚が正確でない個人ほど身体表象が変化し,個人内での相対的な確からしさが身体表象変化に影響することを示した.
  • P2-48
    神岡 拓真 (立命館大学大学院 文学研究科)
    布山 美慕 (立命館大学 文学部)
    本研究は,恋愛感情の想起による視知覚への影響を,色の温度感を通して検討した.温度感と恋愛感情想起の関係がどのようなものか検討するため,想起時の感情状態を9感情で質問した.他の親密な感情想起と比較するため,友情想起を比較条件とした.調査の結果,重回帰分析により,情熱と興奮の2感情が,色温度感の高低に対し,恋愛感情と友情の間で逆の効果を持つと示された.これにより,恋愛と友人関係が,色知覚への影響において異なる文脈となりうることが示唆された.
  • P2-50
    氏家 悠太 (立教大学現代心理学部)
    高橋 康介 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,McGurk効果における話者の顔と声の属性(成人・子供)の影響を,CIMSモデルを用いて検討した。主な結果として,子供の声が提示された条件では因果推定確率と錯覚率が低下し,視聴覚情報を同一の原因と判断する傾向が弱まることが示された。一方で,知覚精度には差が見られず,視聴覚統合の判断は話者属性などのより高次な因果的意味づけの影響を受ける可能性が示された。
  • P2-53
    松室 美紀 (ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン)
    松下 彩夏 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    森田 磨里絵 (立命館情報理工学部)
    柴田 史久 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    木村 朝子 (立命館大学大学院情報理工学研究科)
    視覚情報が操作された状態で身体を動かすことにより,固有受容感覚の調整が生じ,身体を実際の位置とは異なる場所に知覚する現象が生じる.先行研究では参加者は操作された身体部位を直接的に観察していた.本研究では,視点の位置を操作することにより,体幹位置を間接的に操作した.直接的な視覚情報が与えられた腕との比較から,直接的な視覚情報がない体幹の固有受容感覚の調整は,腕よりも弱いことが示唆された.
  • P2-54
    平野 達也 (東海大学)
    中谷 裕教 (東海大学)
    本研究では、合成音声における日本語の聞き取りやすさ向上を目的に、抑揚の大きさが聞き取りやすさおよび自然性に与える影響を被験者10人で検討した。聴取実験とアンケート調査を通じて、抑揚の変化による聞き取りやすさの違いを確認した。また、抑揚が大きい条件では音声の好ましさが聞き取りやすさに強く関与する傾向が見られた。話し方から受ける印象を評価した好悪という因子は、自然性に対しても有意な影響を与えていた。
  • P2-55
    平田 貴士 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    山中 都史美 (中部大学 大学院工学研究科)
    田所 慎 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    宮本 健史 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    暗闇での直進歩行は困難であり,これは視覚以外の感覚,特に前庭感覚から進行方向を正確に推定できていないことを示唆している.進行方向の推定に用いられる前庭感覚は,歩行中の頭部回転と逆側に眼を動かす前庭動眼反射(VOR)の誘発にも関与している.本研究では歩行中の前庭感覚から推定される進行方向の結果がVORに現れることを示した.具体的には左右のVOR精度(ゲイン)に非対称性が見られ,ゲインが低い頭部回転側へ軌道が逸れることが明らかとなった.
  • P2-66
    山口 星香 (放送大学大学院文化科学研究科)
    小野 貴史 (信州大学学術研究院教育学系)
    大西 仁 (放送大学教養学部)
    本研究では,音楽聴取時に生起する主観的時間の感覚と楽曲構造との関連性を明らかにすることを目的として,一対比較法および再生法による聴取実験を実施した.分析の結果,音高推移,和声進行,休符位置といった構造的要素が主観的時間に一定の影響を及ぼす可能性が示唆された.しかしながら,再生法において統計的に有意な差は認められず,本研究のような操作による時間の伸縮効果は限定的であるにとどまった.
  • P3-2
    稲見 悠 (札幌学院大学)
    大髙 愛 (札幌学院大学心理学部臨床心理学科)
    森 直久 (札幌学院大学)
    「あっち向いてホイ」におけるゆび指し回避行為が情報に基づいて選択されているのか,情報に基づくならば,それはどのような情報であるかを検討した.その結果,ゆび指し回避行為を相手行為の知覚に基づいて選択する場合には失敗することが分かった.この結果から,知覚に基づいてこの回避行為を選択する際に利用可能な情報があるとすれば,相手動作が行われない「スペース」であるという仮説が導き出された.そして,回避行為における「地」の情報の関与の可能性を示した.
  • P3-7
    瀬島 章仁 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    近年AI利用など人間以外のアナウンサーによるニュースの読み上げが広がっている.本研究では,ニュース映像に登場するアバターの数や種類(人間,動物)が視聴者のニュースで使用された語に関する記憶に与える影響を調べた.アバターの種類や数に関わらず,使用された語に関する記憶は比較的よく保たれていた.一方,1体のアバターで伝える場合に比べ,4体のアバターが次々に登場する場合は,視覚的注意が分散し映像に関係する語も誤って選ばれやすくなる傾向がみられた
  • P3-8
    石原 由貴 (徳島大学)
    体験者自身の能動的な運動意思が指の伸縮錯覚の強度にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため, 身体部位に対する受動的・能動的伸縮の提示条件, および触覚刺激の有無について比較を行った. 結果, ジェスチャーおよびボタン入力といった体験者の能動的な指の伸縮操作の有無による錯覚強度の差異は見られず, 視覚刺激と共に触覚刺激を与えることが, 最も錯覚を強固にすることが示唆された.
  • P3-12
    西山 理奈 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
    野中 哲士 (神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 教授)
    本研究では,視覚情報なしで,人が歌声を聴きながらそれに合わせて一緒に歌うとき,その歌声が人間か歌声合成ソフトかによって,歌声の協調パターンが異なるのかどうかを調べた.相互相関分析で,相手と参加者の各歌声の振幅包絡線の時系列相関を比較し,グレンジャー因果性検定で,予期的なダイナミクスを調べた.その結果,視覚情報がなくても,参加者は,人間と歌う方がより先読みして歌唱行動を同期させることが示された.
  • P3-24
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院)
    鳥居 拓馬 (東京電機大学)
    高橋 康介 (立命館大学総合心理学部)
    人の心的立体の認知過程を調べる課題の一つとして、一対の画像上の立体の回転合同性を判断する心的回転課題がある。画像上の立体には奥行情報が欠損する不良設定性があるため、無数の可能立体の対を特定する潜在的な計算複雑さがある。しかし、経験的には心的回転の反応時間が立体対の最小回転角に比例するため、認知計算上はそうした対応問題を直接は解いていないと考えられる。本研究は、こうした理論と経験の乖離を解消するため、心的回転の計算論的モデルを提示する。
  • P3-30
    野中 郁子 (早稲田大学 人間科学研究科 関根研究室)
    関根 和生 (早稲田大学)
    非対面コミュニケーションや携帯電話普及など電話応対機会が増えている。電話でお辞儀をしながら発話をすると感じの良い応対になると言われ,企業では指導をしている。それらは経験則と知識の継承であり,明らかにされてはいない。本研究では,音声のみからお辞儀の有無を聞き手が知覚できるかを検証した。平均正答率はチャンスレベルを有意に上回り,視覚情報がなくても身体動作が音声に反映され伝達される可能性が示された。
  • P3-32
    小松 拓豊 (香川大学)
    福森 聡 (香川大学)
    本研究では、触覚刺激によって上肢の固有受容感覚に錯誤を生じさせ、その影響が重量感覚および視覚が重量感覚に作用する現象であるPseudo-haptics(Ph)の強度に及ぼす効果を検証した。実験の結果、固有受容感覚によって重量感覚が変化することが示唆され、さらにPhの強度にも影響を与えることが明らかとなった。これにより、従来は視覚中心に行われてきたPhの制御に対し、身体側からの感覚操作によってもその強度を制御できる可能性が示された。
  • P3-33
    善本 悠介 (立命館大学人間科学研究科)
    高橋 康介 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では視覚イメージの個人差が生じる要因の解明を目的に、将棋有段者10名と非熟達者約90名にVVIQと独自の画像マッチング課題を実施し、視覚イメージ鮮明性を比較した。マッチング課題の全体ぼかしでは熟達者が統計的に有意に低得点を示した。VVIQと周辺ぼかしにおいても、統計的な有意差はみられなかったが、すべての課題で一貫して熟達者は非熟達者よりも鮮明性得点が低かった。このことから、熟達者でイメージ鮮明性が低下する可能性が示唆された。
  • P3-36
    渡邊 咲花 (立命館大学大学院人間科学研究科)
    下條 志厳 (立命館グローバル・イノベーション研究機構)
    林 勇吾 (立命館大学総合心理学部)
    生理的反応を生じさせない要因が認知処理を高める現象は,記憶の影響を受けていると考える.本実験は,スキーマに伴う感情喚起が人の認知処理を高めるかを知覚反応に焦点を当てて検討した.実験の結果,反応時間と瞳孔径に差はなかったが,スキーマ活性化刺激があるとき,一部で反応時間と瞳孔径に負の相関が見られ,瞳孔が散大するほど反応時間が短縮したことがわかった.これより,スキーマの活性化に伴う感情喚起が注意を焦点化し知覚反応を高める可能性が示唆された.
  • P3-41
    高坂 悠花 (近畿大学)
    大井 京 (近畿大学)
    本研究は, 日本人を対象に, 顔の魅力的な比率に関わる男女差を検討した. 異なる顔比率の画像を用いた選択課題を実施し, 評価者と画像の性別の組み合わせによる選好傾向を分析した. その結果, 男女とも「1:1:1」や「顔幅が目幅の5倍」の比率が好まれる傾向があったが, 女性の顔ではその傾向が弱まることから, 顔の魅力評価には性差があることが示唆された.
  • P3-42
    西 賢汰 (金沢工業大学工学研究科システム設計工学専攻)
    江村 伯夫 (金沢工業大学)
    田中 吉史 (金沢工業大学)
    サックスを含む管楽器は音楽様式によって求められる音色が異なることが知られている。本研究では、ジャズおよび吹奏楽をバックグラウンドとする複数の奏者から演奏音を採取し、これらの音色に対する類似度評定実験を実施した。結果、奏者の音楽的バックグラウンドによって音色が顕著に異なることが明らかになった上で、これが8次以上の倍音成分における含有強度と倍音の立ち上がりの時間特性に起因するものであることが示唆された。
  • P3-43
    舩坂 壮汰 (金沢工業大学)
    江村 伯夫 (金沢工業大学)
    田中 吉史 (金沢工業大学)
    本研究では、簡素で抽象的な映像素材を音楽に付与することにより、感情にどのような影響を及ぼすかについて調査している。光の粒が画面の上部と下部との間,あるいは画面の周囲と中心との間を移動する映像素材2種について、それぞれ方向と速度を変化させた12種をポピュラー音楽と同時に視聴し、これらに対する覚醒度、感情価、期待感を評定する心理実験を実施している。結果、映像素材を付与によって音楽聴取時に覚える感情をある程度制御できることを示唆している。
  • P3-51
    木村 慧一 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    川合 伸幸 (名古屋大学 大学院情報学研究科)
    集合体に気持ち悪さや怖さを感じることはよく知られている現象であるにもかかわらず,なぜ集合体に気持ち悪さを感じるのかはよくわかっていない.本研究では,集合体を構成する要素の数,凹凸,配置不規則性といった視覚的特徴やその組み合わせが,集合体への気持ち悪さを増幅させるかどうかを検討した.実験の結果,要素の数,凹凸,配置不規則性はそれぞれ独立して集合体への気持ち悪さを増幅させることが示された.
  • P3-53
    髙橋 麻衣子 (早稲田大学)
    川﨑 弥生 (早稲田大学 人間科学学術院)
    読みに困難をもつ学習者は視覚よりも聴覚提示された文字情報によって学習が進むことが考えられるが,その情報処理過程は十分に明らかにされていない.本研究ではDRMパラダイムを用いて,読みへの困り感と視覚もしくは聴覚提示された単語リストの学習過程の関係性について検討した.中学生64名に対して視聴覚提示された単語リストの学習と再認・再生課題を課したところ,読みに困り感のある学習者ほど視覚よりも聴覚によって虚記憶が生成されることが示唆された.
  • P3-54
    大倉 なつ美 (株式会社オカムラ)
    清水 大地 (神戸大学)
    本研究は、鏡像と実像の視覚情報の差異と双方に対する心理バイアスにより生じる見え方の差異について、評価実験を行い、t検定・二要因分散分析・相関分析で比較した。結果、鏡像と実像では知覚・認知に有意な差異が認められ、その差は視覚情報の相違に強く左右されること、さらにこれらの差異は無自覚的に生じることが示された。以上は、鏡像と実像の単体としての見え方の差異自体を探索的に検証した意義深い知見と考えられた。
  • P3-57
    市川 雅也 (静岡大学)
    竹内 勇剛 (静岡大学)
    本研究では,参与構造に基づく複数の対話に同時参与可能なオンライン対話環境の開発を目的とする.具体的にはGoffman(1981)によって提案された参与構造をグラフ構造で表現し,参与者がこのグラフを操作することで相互に参与の程度を視覚的に表現したり,認識したりすることができるようにした.本稿では開発システムの設計・実装の概要を報告し,多重参与,対話場の可動性,および参与の可視化という三点から,新しいオンライン対話環境の可能性を議論する.
  • P3-59
    鎌田 昂明 (東京電機大学大学院)
    小林 春美 (東京電機大学)
    安田 哲也 (東京大学)
    マンガにおける集中線が物体の運動速度を速く印象づける場合があると報告されている.本研究では,場面の状況とともに解釈したとき反対に遅く感じられる場合がある可能性について調べた.実験参加者は一連の流れを表す3枚の絵を見て,これを映像化するときそれぞれの絵の描写にどの程度の時間をかけるかを想像し,回答した.結果として,集中線の有無による移動速度解釈への影響は少なく,主に運動種目や時間経過による影響が見られた.
  • P3-64
    齋藤 五大 (東北大学)
    高木 源 (東北福祉大学)
    不思議の国のアリス症候群(AIWS)は,周囲の視覚対象や自己の身体に対する知覚の歪みを特徴とする知覚の障害である。本研究では,その身体知覚の特徴を調べるために,AIWSの被験者に視覚および体性感覚ラバーハンド錯覚を実施した。実験の結果,AIWSの被験者は,両ラバーハンド錯覚の生起中に自身の手が大きく感じることを示した。この結果はAIWSの体性感覚症状が手の所有感ではなく手の大きさや形状の変容に起因して生じることを示唆する。
  • P3-65
    小島 隆次 (滋賀医科大学)
    本研究では、合成音声による五十音の音読と説明文の音読に対する印象評価実験の結果の比較を通じて、授業動画や動画教材における教師役アバターの音声に対する印象評価を五十音の読み上げのみで簡易に実施する方法の有効性を検討した。実験結果から、通常の授業動画が扱う類の内容であれば、音読内容によって合成音声の印象が大きく変化することはなく、五十音の読み上げ音声を利用してアバター音声の印象を簡易的に測定することは有効であると考えられる。
  • P3-66
    福田 大年 (札幌市立大学)
    深見 嘉明 (東京理科大学)
    寺本 直城 (東京経済大学)
    中村 暁子 (北海学園大学)
    西 大輔 (拓殖大学)
    丸山 洋平 (札幌市立大学)
    本研究の目的は,小規模ワイン事業者(作り手)と消費者(受け手)が,ワインの味の感覚的な印象の違いを相互学習できるビジュアル・コミュニケーション手法を構築することである.ワインの味の感覚的な印象を環世界と捉え,描画と対話を繰り返して味覚の環世界を相互学習するテイスティング・スケッチを考案・試行した.本稿ではその特徴,内容,試行例,限界,発展性を示した.本試行によって,味覚の環世界を学び合う場づくりのヒントを得た.