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日本認知科学会

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入会のご案内

サマースクール2016

開催要領


箱根湯本富士屋ホテル
日時:2016年8月31日(水)13:00 ~
9月2日(金)15:30
場所:神奈川県箱根市
箱根湯本富士屋ホテル
小田急線箱根湯本駅より徒歩可能

定員:60名(若手研究者を優先します)
対象:広く認知科学に興味を持つ学生・研究者。日本認知科学会の会員には限りません。
参加費:25000円(一日あるいは二日の部分参加の場合は15000円)
宿泊費:14000円(3名~5名での相部屋)
26000円(シングル)
*宿泊費には夕食および朝食が含まれます。
*学生の参加者には日本認知科学会から10000円の参加費の補助があります。
*学生の参加定員は併せて30名です。
*相部屋の部屋割りは事務局にお任せいただきますが、ご要望があれば下記問い合わせ先までメールでお知らせ下さい。
* 宿泊は東武トップツアーズ(株)の実施する募集型企画旅行となります。お申込みはこちらから
問合せ先:日本認知科学会事務局 jcss@jcss.gr.jp
主催:日本認知科学会

開催の趣旨


認知科学会のサマースクールは2011年から始まり,今年で第6回となりました。これまで,安西先生のレクチャーをはじめ,シニアの先生方の解説、若手研究者の発表とシニアの方々とのディスカッション,学生・若手・中堅・シニアの方々の忌憚のない交流,などが実現されてきました。シニアの先生方の長い経験に培われた深い事象の理解や考え方がこのような交流を通じて伝えられることは,若手の方々の研究のスタートに極めて有用であり,それを組織的に行うことをサマースクールは目指しています。研究者は往々にして先端的な知識を得ることこそが,より発展した研究につながると考えます。しかし実際には,先端的な知識もまた基礎的な知識の延長であり,基礎的な事象の深い理解がなければ先端に行きつくことはできません。また,他分野の研究者との深い議論は,私達の頭をゆさぶり,一人ではローカルミニマムにはまっていた思考を新しい領域に引き出してくれます。実際には,このような議論や交流が,先端を切り開く新しい発想につながるのだと思います。
異分野についての学習,特に深い理解は心的な負担が大きいのは事実です。本サマースクールの参加者には,そのような壁を乗り越え,多くの方々との深い議論を通じて,新しい研究分野を開拓してほしい。認知科学会はそのようなチャレンジを積極的に支援します.


日本認知科学会・会長
大森隆司

サマースクール2016への期待


世界的に見て優れた研究の多くが、多様な背景(研究方法、研究分野、文化、国籍、その他)を持つ研究者同士が対話を重ね、刺激しあう場から生まれるようになってきたように思います。
行動実験、脳機能研究、ビッグデータ処理などの方法に通じた研究者の共同研究が増えていることはご存じの通り、被引用回数の多い論文が国際共同研究から生まれる割合も急速に高くなっています(文科省科学技術政策研究所調査)。最近では、複数の研究方法をマスターした一人の研究者が、世界に先駆けた成果を次々と挙げることも目につくようになりました。
しかし、とくに日本の国内では、いまだに若手研究者や院生の多くが、何年も同じような人たちと過ごし、限られた所属分野、お仕着せの研究方法、自分の周囲の先生や学会の狭い研究人脈といった、「多様性のない研究の場」に生きているように見えます。
世界の研究環境の変化と無縁のガラパゴス的生活をしていれば、ストレスもそれほど感じなくて済み、表面的には有意義な研究をしている気になれるのかもしれません。しかし、研究の方法や考え方の似た者同士からは、世界の第一線から見ると重箱の隅をつついた結果しか出てこない、世界はすでにそういう時代に入っているのです。
認知科学に関心を持つ若い研究者や院生には、内輪に籠った分野ごとの研究文化や各分野の伝統的な研究法に囚われず、新しい研究方法を開拓していってほしい。そして、多様な研究者と刺激しあって、ワクワクするような学術の世界を創り出してほしい。とくに、世界の第一線に飛び込んで力いっぱい頑張ってほしい。それが私の願いです。
サマースクールの創設に尽力された横澤一彦元会長は、自らの研究として視覚の「科学」を標榜しておられます。また、鈴木宏昭前会長は、本学会が「対話」の場であってほしいと言っておられます。6回目になるサマースクールが、世界の学術動向にも沿った、多様性に基づく開かれた研究へのステップになること、「科学」の方法論を開拓しつつ「対話」を通して新しい学術の世界を創り上げていくエネルギー源になることを、心から期待しています。

独立行政法人日本学術振興会
安西祐一郎

スケジュール

8月31日(水)

12:30受付開始
13:00サマースクール開講挨拶 大森隆司
13:10セッション(1)
「視線から分かること、分からないこと」
企画:横澤一彦(東京大学人文社会系研究科)
眼球運動が比較的簡単に測れるようになり、眼球運動を計れば視覚研究がなんとかなるかもしれないという幻想を抱いている方が少なからずいることを危惧している。眼球運動自体はS/N比が悪く、測定した視線に関する生のデータは往々にして使いものにならないのが常識ではないかと思う。視線もしくは眼球運動を否定的に扱うのではなく、しかし一方安易に考えず、きちんと位置付ける機会にしたい。
河原先生には注視と注意の問題について、中島先生には視線と認知の関係について、金沢先生には発達心理学で利用されてきた選好注視法について、ご自身の最近の研究成果を含めて、視線や眼球運動から何を読み取れるのか、視線を扱うことにおいて何を過信してはいけないのかという点を講義していただく。
「視線・顔と注意制御」
講師:河原純一郎(北海道大学文学研究科)
注意は意図的にも非意図的にも向けられるだけでなく,過去の履歴や報酬によっても駆動されることが知られている。視線方向や顔といった社会的な意味を持つ情報も注意制御に影響を及ぼす。講義では,顔と視線方向と注意捕捉に関わる研究例を紹介しながら,注意制御にかかわる諸成分を整理する。
「頭部方向に基づく視線位置の推定と視覚的認知」
講師:中島亮一(東京大学大学院人文社会系研究科)
人は視覚情報を処理するために、注意を様々な領域に向ける。人の注意状態を知るためには、視線・眼や、視線方向だけでは視覚的認知が説明できない例として、頭部方向に基づく視覚的認知の変容に関する実験結果について述べる。
「乳児の実験心理学はどのように可能となったのか」
講師:金沢創(日本女子大学人間社会学部)
乳児の実験心理学的アプローチは、すべて注視行動を指標としており教科書的にはFantzの選好注視法の発見に始まるとされている。しかし当時の文献を検討してみると、これは正しくないことがわかる。Fantzには何が足りなかったのか。乳児の自発的な注視行動を引き起こすには何が必要なのか。講義では、視線計測装置を用いた我々自身の研究も含めて報告する。
19:00夕食・懇親会
20:00−イブニングセッション(1)
Tobiiジャパンによる視線計測装置のデモンストレーション
ディスカッション
22:00

9月1日(木)

9:00-若手研究者プレゼンテーション(1)
10:30「判断の非一貫性、ヒューリスティック、記憶に基づく誤信念:広い意味での「環境」から見る適応的性質」
本田秀仁(東京大学大学院総合文化研究科)
人間の認知には、非一貫した判断、ヒューリスティックに基づく誤った推論、記憶の誤りなど、様々な錯誤的現象が見られる。本発表では認知が機能する環境の性質を考察し、表面上は錯誤的に見られるこれらの現象の背景にある適応的性質について議論したい。
10:40-若手研究者プレゼンテーション(2)
12:10「脳内表象を調べるツールとしてのfMRI」
小川健二(北海道大学大学院文学研究科心理システム科学講座)
fMRIは近年の認知神経科学で使われる最もポピュラーな方法の1つだが、非侵襲という手軽さの反面、その時空間解像度の乏しさから認知科学で対象とする表象のレベルまで踏み込むには非力な面があった。一方で最近の機械学習や多変量解析を利用した新しい解析方法により、fMRIでも神経表象を調べることが可能になってきている。本講演は認知科学研究のツールとしてのfMRIの可能性について議論したい。
13:30-若手研究者プレゼンテーション(3)
15:00「人を変える読書体験:読者の熱中状態の同定と特徴づけ」
布山美慕(慶應義塾大学SFC研究所)
小説に熱中し我を忘れた経験は多くの読者が持つだろう.こういった読書への熱中は読者の理解や信念を変える機能を持つとされ注目されている.多くの先行研究は質問紙調査によってこの読者の熱中状態を分類し特徴づけてきたが,まさに我を忘れているはずの状態に対する報告の信頼性には疑問がある.発表者は読者の内観報告だけでなく,身体状態や読解処理の指標など複数指標の一貫した関係性によって熱中状態の同定を試み,それらの指標によって熱中状態の特徴づけを行ってきた.本発表では,こういった主観的で報告が難しい状態の研究方法の議論に加え,読者の変化と熱中状態の関係性について多分野の先行研究を紹介して議論したい.
15:30セッション(2)
「若手研究者のキャリアパス(仮)」
企画者:大森隆司
19:00夕食
20:00−イブニングセッション(2)「TBA」
22:00未定(未定)

9月2日(金)

9:00-セッション(3)
10:00「研究のレッスン」のための準備
企画者:川合伸幸・鈴木宏昭
企画のねらい:
質の高い研究は、適切に問題設定がなされています。認知科学が研究の対象とする人間の認知過程は、対象もアプローチもさまざまで、「定型的なスタイル」がありません。そのため問題の設定、あるいは自分の関心をもっていることを研究に落とし込むことがしばしば困難です。
このセッションでは、質の高い研究を紹介した文献紹介をいくつか読み、午後のセッションで行う「研究のレッスン」のための準備を行います。そして、選んだ論文ごとにいくつかのグループを構成し、午後のセッションの準備をします。
10:00「議論のレッスン:根拠・論拠・主張のつなぎ方(仮題)」
企画者:川合伸幸
講師:板口典弘 先生(日本学術振興会:札幌医科大学)
研究者は、実験によって事実を集め、自分の考えが正しいことを証明しようとします。あるいは事実を積み重ねることで帰納的に仮説を構築します。研究者が行っている活動は、事実に基づいた主張(結論)をすることです。しかし、ある事実が得られれば、自動的に主張(結論)が決まるわけではありません。たんに事実だけを提示しても、それだけでは議論として不十分です。そこには、かならず暗黙の仮定(論拠)が必要です。事実(根拠)と論拠が合わせて提示されることで、はじめて主張(結論)が受け入れられます。
研究者としてさらに一歩踏み出すためには、自身が行っている議論のうち、なにが事実・論拠・主張であるかを明確に意識し、それらをうまくつなぐスキルが必要です。
このセッションでは、神経心理学を専門とされていますが、トゥールミンのロジックに造形の深い、板口典弘先生をお招きし、事実・論拠・主張とはなにか、それらをどう考えればよいか、ということを解説していただきます。
12:00
13:00-
「研究のレッスン:根拠・論証・主張の発見と、問題設定の捉え方」
企画者:川合伸幸・鈴木宏昭
「認知科学」には、文献紹介というカテゴリの論文があります。あるテーマにそって総説やインパクトの高い論文をまとめ、日本語で簡単に紹介するのが目的です。
午前中のセッションで選んだ文献紹介論文(寺井18.清河16.川合14. 21)を読み、そこで紹介されている論文の根拠(データ)、論拠、主張は何かを午前の板口先生の講演をもとに「批判的に」読み解いてもらいます。そのことから、その論文はそもそも何を問題として設定していたか、「またその研究をさらに進展させるための新たな研究の計画」を数人のグループごとに議論し、発表してもらいます。かならずしも、その分野に詳しいわけではないと思いますが、むしろ領域固有の知識がないことで自由に発想することができるかもしれません。立派な研究計画を打ち立てることが目的ではありません。グループで議論することによって、これまでの知見に何を加えると、あらたな発見が生まれるのか、またその発見は、はたしてどの程度の意義があるのか、ということを考えることが目的です。年長者のメンターはアドバイスはしますが、議論には加わりません。
このような作業を通じ、先行研究として何気なく読んでいた論文を、よりシャープに読み解くスキルを身につける(少なくともその意識を持つ)ことを目指します。
15:00クロージング
15:30終了