日時: | 2014年9月1日(月)13:00 ~ 9月3日(水)15:30 |
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場所: | 神奈川県箱根市 箱根湯本富士屋ホテル |
小田急線箱根湯本駅より徒歩可能 |
定員: | 60名(その内、学生・PDの定員を40名とし若手研究者を優先します) |
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対象: | 広く認知科学に興味を持つ学生・研究者。日本認知科学会の会員には限りません。 |
参加費: | 25000円 |
宿泊費: | 13000円(3名~5名での相部屋) |
シングル・ツインは 26500円 | |
*宿泊費には夕食および朝食が含まれます。 | |
*学生の参加者には日本認知科学会から10000円の参加費の補助があります。 | |
*学生の参加定員は併せて30名です。 | |
*相部屋の部屋割りは事務局にお任せいただきますが、ご要望があれば下記問い合わせ先までメールでお知らせ下さい。 | |
主催: | 日本認知科学会 |
認知科学は様々な学問領域の最先端の理論、手法、知見を融合させ、人類が2000年を超える歴史の中で考えてきた認識、知の問題を解決、発展させる学問であります。この目的の達成のためには、多くの分野の研究者の共同が必要になることは言うまでもありません。 しかしながら、認知科学を構成する諸学問は近年著しく発展し、複数の分野の知を融合させる試みは徐々に難しさを増しているように思われます。加えて近年の成果主義的な動向は、本源的な問題をじっくりと考える時間を研究者から奪っているようにも思われます。こうした現状は若手研究者の成長の妨げになることは間違いありません。こうした現状を打破するため、認知科学会では2011年からサマースクールを開催してきました。そこでは、若手研究者が、知の根源的な問題に対して最先端で探求を行う講師との対話を通して、自らの研究の発展の可能性を探求することが目的となっています。本年も安西元会長、担当常任運営委員の岡田浩之氏らの努力により、魅力的なプログラムのサマースクールを企画することができました。多くの大学院生、若手・中堅研究者の方々がこのサマースクールに参加し、自らの研究を問い直し、さらなる発展の契機とされることを期待します。
日本認知科学会・会長
鈴木宏昭
世界的に見て優れた研究の多くが、多様な背景(研究方法、研究分野、文化、国籍、その他)を持つ研究者同士が対話を重ね、刺激しあう場から生まれるようになってきたように思います。
行動実験、脳機能研究、ビッグデータ処理などの方法に通じた研究者の共同研究が増えていることはご存じの通り、被引用回数の多い論文が国際共同研究から生まれる割合も急速に高くなっています(文科省科学技術政策研究所調査)。最近では、複数の研究方法をマスターした一人の研究者が、世界に先駆けた成果を次々と挙げることも目につくようになりました。
しかし、とくに日本の国内では、いまだに若手研究者や院生の多くが、何年も同じような人たちと過ごし、限られた所属分野、お仕着せの研究方法、自分の周囲の先生や学会の狭い研究人脈といった、「多様性のない研究の場」に生きているように見えます。
世界の研究環境の変化と無縁のガラパゴス的生活をしていれば、ストレスもそれほど感じなくて済み、表面的には有意義な研究をしている気になれるのかもしれません。しかし、研究の方法や考え方の似た者同士からは、世界の第一線から見ると重箱の隅をつついた結果しか出てこない、世界はすでにそういう時代に入っているのです。
認知科学に関心を持つ若い研究者や院生には、内輪に籠った分野ごとの研究文化や各分野の伝統的な研究法に囚われず、新しい研究方法を開拓していってほしい。そして、多様な研究者と刺激しあって、ワクワクするような学術の世界を創り出してほしい。とくに、世界の第一線に飛び込んで力いっぱい頑張ってほしい。それが私の願いです。
サマースクールの創設に尽力された横澤一彦前会長は、自らの研究として視覚の「科学」を標榜しておられます。また、鈴木宏昭会長は、本学会が「対話」の場であってほしいと言っておられます。4回目になるサマースクールが、世界の学術動向にも沿った、多様性に基づく開かれた研究へのステップになること、「科学」の方法論を開拓しつつ「対話」を通して新しい学術の世界を創り上げていくエネルギー源になることを、心から期待しています。
独立行政法人日本学術振興会
安西祐一郎
12:30 | 受付開始 |
13:00 | サマースクール開講挨拶 鈴木宏昭 |
13:10 | セッション(1)「記号接地問題──抽象的記号はどのように生まれうるのか」 |
企画:今井むつみ(慶應義塾大学) | |
講師:今井むつみ(慶應義塾大学)・安西祐一郎(日本学術振興会) | |
話題提供:河合祐司(大阪大学) | |
記号接地問題は、認知科学の中心的な問題として長い間取り組まれてきた。言語に用いられる記号の体系は、身体を経て得られる感覚、知覚、運動、感情などの情報に由来した意味を持っているはずである。他方、その記号体系は、身体性から離れた抽象的な記号や記号体系として独自の意味をも持ち得る。記号体系のこの二面性が生じるのはなぜか。子どもはどのように記号を身体、感覚、感情に結びつけ、言語という巨大な抽象的な記号の体系を構築することができるのだろうか。記号接地問題を考えることは、人がなぜ、コミュニケーションの主たる手段として言語という記号体系を用いるのかという問題につながる。それはさらに、記号接地を可能にする(生物的)能力とはどのようなものか、という問題にも突き当たる。さらに、記号接地問題に示された二面性を持つ言語の体系を持つことによって人間の知性はどのように進化したのか、子どもの知性はどのように発達するのか、人間はどのようにして言語を習得しているのか、言語を用いてどのように知識の体系を構築しているのか、といった、人間の知性の根幹に位置するたくさんの興味深い問題群を考えることにもつながる。このセッションでは記号接地問題をあらためて問いなおし、この問題にアプローチするために何を明らかにしなければならないのか、そのための方法論としてどのようなものがありうるのかを発達心理学の観点(今井)とモデルアプローチ(実験・観察とモデルの両立)の観点(安西)から議論し、実験的アプローチとモデルアプローチがどのようにしたら建設的に互いを補いあうことができるかを考える。河合は言語習得、特に語の意味の習得の研究において実験アプローチに示唆を与えうるモデル研究の事例を提供する。 | |
17:30- | 夕食 |
19:00 | イブニングセッション(1)「記号接地問題を考える上で派生する研究トピックと方法論」 |
22:00 |
9:00- | 若手研究者プレゼンテーション(1) |
10:20 | 「人間の主観的プロセスを再現する試みと可能性」 |
水内郁夫(東京農工大学) | |
人間の主観的評価を再現して、ロボットの動的動作の上達や、個人の嗜好に応じた気の利く行動の決定などに利用することを研究している。また、好奇心をキーワードに、新奇な感覚状態を得られることを期待するロボットの行動決定法に関する研究も紹介する。このような、人間の主観的プロセスをロボットで再現することを試みを通して、見えてくる可能性に関して議論できればと考えている。 いわゆる「運動神経が良い」と言われる人は、適切な感覚運動系を構築・発見するの速いと思う。感覚運動系の向上過程で、人間は何をどように変えているのだろうか。そしてその「変え方」を決める仕組みはどのようになっているのだろうか。このような直感的・主観的な「系を把握する能力」とでも言う力を、個人差こそあれ、人間は持っている。そこに迫るような議論ができればと思う。 | |
10:30- | 若手研究者プレゼンテーション(2) |
12:00 | 「身体に根ざした社会的認知の神経基盤とその発達」 |
平井真洋(自治医医科大学) | |
顔・視線・体の動きなど他者への選好は生後すぐに見られ,後の社会性の萌芽となることが示唆されている.本発表では,他者知覚の知覚特性とその神経メカニズム,視点取得などの身体に根ざした他者理解に関する定型・非定型発達変化,二者相互作用などこれまでの一連の研究成果を取り上げる.更に関連する話題について概観し,議論を深めたい. | |
13:00 | セッション(2)「認知科学における計算論的アプローチの新展開」 |
企画:内海 彰(電気通信大学) | |
講師:三輪 和久(名古屋大学) | |
松香 敏彦(千葉大学) | |
内海 彰(電気通信大学) | |
ビッグデータと豊富な計算資源が利用できるようになった現在において,Googleの画像認識で注目されているディープ・ラーニング,解析的に解けない複雑な確率分布の近似手法に基づくベイズ推定モデル,大規模テキストから言語の意味を自動的に獲得する統計的意味空間モデル,複雑システムの振る舞いを解析するネットワーク科学など,さまざまな計算論的手法が注目されている.このような状況で,計算モデルを構築して認知現象をシミュレートする計算論的アプローチは,人間の心や知のメカニズムを解明しようとする認知科学において,ますます重要な位置を占めるようになった.そこで,本セッションでは,3名の講師によって,認知科学における様々な計算モデル・パラダイムの概説をはじめ,計算論的アプローチの意義や役割,最新の研究事例,内在する課題などについて話題提供を行うとともに,計算論的アプローチについて議論する機会を設ける.より具体的には,三輪が学習支援システム,松香が学習,内海が言語理解に関する計算論的アプローチに関する話題提供を行った後に,講師および参加者間で認知科学における計算論的アプローチの意義や現状,今後について議論する.本セッションを通じて,多くの若手研究者が計算論的アプローチに興味を持ち,各自の研究活動に役立てることを期待したい. | |
17:30 | 夕食 |
19:00- | イブニングセッション(2)「認知科学における計算論的アプローチによる研究事例」 |
22:00 | 猪原 敬介(電気通信大学) |
9:00- | 若手研究者プレゼンテーション(3) |
10:20 | 「生き物らしさ認知研究の最前線」 |
高橋康介(東京大学) | |
我々は時として、生き物ではないモノに対してありありとした生き物らしさを感じる。雲や岩が顔に見えるパレイドリア現象、無意味な物体の動きに対して意図を感じてしまうアニマシー知覚、数個の点の運動情報から人間や動物の姿を読み取ってしまうバイオロジカルモーション現象など、関連する現象について多くの認知科学的な研究が行われている。本発表では、触覚による生き物らしさ認知、パレイドリア現象がもたらす知覚・行動の変化、無意味なパターンに対する意図と生き物らしさの認知など、過去の研究事例や最近の研究成果を紹介しながら、生き物らしさ認知の本質とは何なのか、社会の中でどのように応用できるのかを議論したい。 | |
10:30- | セッション(3)「HAIにおける他者モデルとは?」 |
12:00 | 企画:小野 哲雄(北海道大学) |
講師:植田 一博(東京大学) | |
大澤 博隆(筑波大学) | |
飯塚 博幸(北海道大学) | |
近年、人とエージェント(ロボットを含む)とのインタラクションに関する研究分野であるHAI (Human-Agent Interaction)が、日本を中心に活発な研究活動を行っている。この分野における今後の研究の進展を考えるとき、認知科学における本質的な研究課題である、コミュニケーションにおける「他者モデル」の分析・設計・構築を避けてとおることはできない。本セッションでは、3人の講師がそれぞれ異なる立場からこの「他者モデル」に関する話題提供を行う。具体的にはまず、植田が幅広い視点から、「他者モデル」に関する学際的な研究領域である「認知的インタラクションデザイン学」を紹介する。次に、大澤が「社会脳仮説」に基づき、HAI研究における社会的知能への取り組み(軍拡競争ゲーム、人狼)や社会的労働代替(擬人化眼鏡)の研究を紹介する。さらに、飯塚は複雑系研究の立場から、他者の認識とコミュニケーションの創発過程の関係を明らかにするために行った実験の結果を紹介する。3人の講演後、「HAIにおける他者モデルとは?」に関する議論を、講師と参加者により行いたい。 | |
「認知的インタラクションデザイン学における他者モデル」 | |
植田一博(東京大学) | |
「相手を欺く・信頼する知能の応用:HAI技術による社会的知能の応用」 | |
大澤博隆(筑波大学) | |
13:00 | セッション(3)「HAIにおける他者モデルとは?」(続き) |
「非言語相互作用における他者の認識とコミュニケーションの創発」 | |
飯塚博幸(北海道大学) | |
15:00 | クロージング |
15:30 | 終了 |