鈴木宏昭さんが2023年3月8日に永眠されました.ご存じの通り,認知科学を心から愛していた方で,2013年から2年間,本学会の会長を務められました.会長時には大会に初めてオーガナイズド・セッション(OS) を導入することを提案され,いまも多くのOS が大会で実施されています.2018年には本学会のフェローに選出されています.昨年は日本認知科学会第39 回大会を大会委員長として成功に導かれました.
鈴木さんは,1981年に東京大学大学院教育学研究科の佐伯胖研究室に入り,第一世代として日本の認知科学を牽引してこられました.日本学術振興会の特別研究員を経て,1989年に東京工業大学大学院総合理工学研究科助手に就任後,1993年に青山学院大学文学部専任講師となられ,1996年に同助教授,2002年に同教授,2009年に教育人間科学部教授となられました.その著書の影響力は甚大であり,代表的なものだけでも以下のものがあります.
「私たちはどう学んでいるのか:創発から見る認知の変化」2022年
「認知バイアス:心に潜むふしぎな働き」2020年
「プロジェクション・サイエンス:心と身体を世界につなぐ第三世代の認知科学」2020年
「類似と思考 改訂版」2020年
「教養としての認知科学」2016年
この他にも,日本認知科学会から編集代表として「越境する認知科学」シリーズを刊行,昨年は全体を企画された「認知科学講座」1–4巻が刊行され、第3巻「心と社会」の編著をされました.最近も書きかけの原稿を見せていただいていたので,少なくとも1冊は出版される準備をされていました.これらはいずれも驚くほど多くの人に読まれており,認知科学を社会に発信することに大きく貢献してくださいました.鈴木さんの業績や貢献は,この追悼記事ではとても伝えきれないので,『認知科学』30巻4号において,その業績やお人柄を振り返る追悼特集を掲載します.
まずはお知らせとともに,ご冥福をお祈り致します.
日本認知科学会 会長 川合伸幸(名古屋大学)
副会長 嶋田総太郎(明治大学)
事務局長 宮崎美智子(大妻女子大学)