研究分野
人とコンピュータのインタフェース
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P1-2玩具の中には電子音声を発するものがある。本研究では,現実の幼児とその家族がそうした電子玩具とどのように関与するのかを明らかにする準備として,通信教育講座のダイレクトメールに付属したマンガの中での電子玩具の描かれ方を分析した。その結果,機械からの音声は幼児が1人で遊ぶことを可能にするとともに,家族がそのことを利用して家事の遂行を行っている様子が描かれていた。
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P1-6本稿では、SNS上の情報探索を通じたユーザの信念形成過程、特に確証バイアスを、能動的推論としてモデル化する。モデルは、投稿の観測による信念更新量と信念に適合する投稿の観測で得られる満足のバランスとして、確証バイアスを定量的に説明する。仮想SNSを用いたユーザ実験では、参加者が確証バイアスにより信念を維持・強化する傾向が確認された。さらに、仮想SNSにモデルを適用した結果、初期信念の偏りと学習率が確証バイアスを再現する可能性が示唆された。
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P1-13本発表では,注視情報提示による衝突回避における相手の役割選択の誘導,すなわち注視ナッジを提案し,その妥当性を検証する実験悔過について報告する.実験では,衝突回避における役割(先行・後行)に一致した注視パターンを提示することで,先行後行判断を誘導する可能性が示された.
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P1-25近年, ロボットやバーチャルアバターなどの人工エージェントの外見や挙動を人間に近づける試みが多くされている。本研究では, 人工エージェントの顔に人間由来の脈拍情報に伴う皮膚色の変化を実装した刺激と実装しなかった刺激に対する人間らしさ評価の違いについて検討した。その結果, 人間に近い外見を持つERICAにおいて, 脈拍情報に伴う皮膚色の変化を実装したことにより知覚される人間らしさが増幅された。
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P1-28本研究では、VRプレゼンテーションにおける自身のVRアバターの表情が緊張緩和に与える影響を検証した。ポジティブ表情アバターを提示された群は、ネガティブ表情アバター群と比較して心拍間隔(RRI)の有意な増大を示し、よりリラックスした状態にあることが示唆された。この結果は、VRアバターの表情操作がプレゼンテーション時の生理的緊張を緩和する可能性を示しており、今後のVRを用いたコミュニケーション支援への応用が期待される。
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P1-59本研究では,情報処理速度の向上と時間知覚の変調の関連性を解明するための実験課題を開発する.その課題は,情報処理速度が適度に向上した,フロー状態に準ずる状態を誘発するものである必要がある.課題では,難易度を操作可能なシステムを構築し,モデルから個々人に最適な難易度を推定する.実験では,難易度変化のパターンと情報処理能力の関係を調査した.
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P1-68本研究は、特定の場所に対して人々が連想する語を大規模に収集・分析し、連想表現からの場所推定に資するデータを構築することを目的とする。関東地方の7都県を対象に、「おすすめの場所」に関する連想表現を収集した。また、得られた語から場所を推定する実験を実施し、どのような語が推定に有効かを検証した。さらに、人手によるラベル付けを通して語の分類と傾向を分析した。これにより、場所に関する語の認知的特徴と、場所同定に寄与する語の性質を明らかにした。
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P1-70京都独自の言語文化である京ことばは、京都に馴染みのない観光客などにはその真意が伝わりにくいと考えられる。本稿では、京ことばを分かりやすい表現にし、京ことばの持つ意味を補足することで京ことばの理解及び円滑なコミュニケーションを支援し、更に補足情報も付加することで京ことばへの理解を深めることを目的としたアプリケーションの開発について述べる。
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P1-71本稿では、身体性に着目したナレーション技術の向上支援について提案する。本稿執筆時点では構想の域を出ないが、従来余り注目されたなかった身体性や認知的な側面からナレーション技術を捉えてみたい。研究手法としては、主にフィールドワークと行動実験を併用する事を計画している。最終的に、ナレーション技術を定量的・定性的に記述する事と、プロの技術を参照しながらアマチュアの技術を向上させる事が目標である。
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P2-11視線インターフェースによる直感的な機械操作には,注視点の動的な情報に基づく行為の意図推定が不可欠であると考えられる.本研究では,操作および探索の二つの意図を条件づけた課題で視線動作を収集し,その移動速度と方向を抽出して機械学習による識別を試みた.オフラインでの識別率は全体で約6割,個別では9割を超える場合があることを確認した.これは,視線に含まれる行為意図の推定がリアルタイムにも可能であることを示唆する結果であると考えられる.
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P2-14近年、過剰最適化対策として偶然性を加味した検索推薦が注目される.本研究は,検索時の偶然性を求める行動(偶然性希求行動)への製品の快楽・功利的属性と検索目標の具体性の影響を検討した. 結果,製品の快楽性と目標具体性の間に交互作用を確認した.目標具体性が低い場合は快楽的な製品ほど偶然性希求が高まるが、高い場合は快楽性に関わらず偶然性希求が低下した.これは,偶然性を加味した推薦で,ユーザーの目標とアイテムの快楽性を考慮する重要性を示唆する.
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P2-19認知モデルを搭載したロボットとのインタラクションを通じて,特別支援教育における子どもの認知的特徴を推定する手法の構築を目指し,注意傾向と受容性に関するアノテーション指針を検討した.展示実験の一部を対象とした予備的分析では,視線・発話・教員支援との関連が観察され,行動パターンの抽出可能性が示唆された.今後は行動定義の精緻化や信頼性の確保を図り,全体データに展開して分析を進める.
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P2-30本研究の目的は探究学習において教育者が学習者の思考を促すために行うメンタリングの自動化である. 著者らは先行研究として,学習者の発話に応じて対話戦略を選択するメンタリングシステムを開発したが,評価実験において比較条件と対話時間の設定に課題があった.そこで本研究では,比較条件を修正し1週間の期間を設けて実験を行った. 実験の結果,条件間で差は見られなかったが,メンタリング前後で探究的衝動が強まった.
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P2-31対話型AIをゲームに導入することは、単に新たな遊び方を提供するだけでなく、人間と人工知能との新たな交流様式を提案する試みである。特定の環境設定や機能設計によって、ゲーム内での対話型AIとの会話において、ユーザが入力時に「訂正」という修復行動を行う場面が観察される。この修復行動は、自然会話における聞き手の注意喚起を目的とするものではなく、むしろゲームAIの理解能力の限界を考慮し、誤解を最小化することを意図しているものである。
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P2-38人間の声による読み聞かせの印象と合成音声による読み聞かせの印象とを比較し,合成音声における「人間らしさ」が読み聞かせ場面に適しているのかを検討した. その結果,読み聞かせ場面では,合成音声よりも人間の声の方が適していると感じられることがわかった.また, 合成音声の「人間らしさ」を評価する際には,「生きていると感じられるかどうか」,「感情があるかどうか」,「肯定・芸術・弾力性」といった概念が関係していることが示された.
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P2-45本研究では,対話エージェント設計で従来軽視されてきた構造的要素がユーザー評価に与える影響を検証した.キャラクターの向き・吹き出しサイズ・背景PC配置の3要因を操作し,1000名の参加者の信頼性評価を測定した.その結果,女性参加者においてキャラクター向きによりPC配置の最適位置が反転する現象を発見した.この知見は対話エージェント設計における構造的要素への配慮の必要性を示している.
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P2-59ウェブ検索を用いて情報を集める際,検索意図の異なる複数のクエリを用いることがある。特に,単純な事実への参照を目的とした情報探索の中で生じる試行錯誤の解明に向けて,検索意図の再構成を要求する検索課題の条件や,クエリの変化から検索意図の変化を推定する方法の検討が求められる。本研究では,そのような検討に対し, Field et al. (2010) で収集された情報探索行動データが有用であるかを調べた。
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P2-63老人ホーム遠隔就労を想定し、65〜81歳の高齢者26名がテレプレゼンスロボットTemiの操作を3週間学習した。単独群12名と交流群14名を比較した。コース走行課題は両群とも週を追うごとに迅速化したが,交流群は単独群よりも所要時間が長かった。御用聞き課題は交流群3週目で遅延増大した。交流に伴う目標水準上昇や評価懸念が慎重操作を招いた可能性がある。所要時間のみでは学習成果判定が困難で質的指標が必要である。
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P2-65大規模言語モデル(LLM)にパーソナリティを付与すると、LLMはそれに応じてふるまえる。本研究では、LLM自身のパーソナリティ評価と、LLMが生成した文章から推定されるパーソナリティの他者評価を比較した。その結果、外向性、勤勉性、開放性は、おおむね自己・他者評価が一貫した。また、協調性と神経症傾向の評価間には、人間同士の場合と一致した齟齬が見られた。つまり、特定のパーソナリティを付与したLLMは、人間に類似した言語表現を出力できる。
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P2-68本研究では,VR空間においてアバタの見た目が行動や認知に影響を与えるプロテウス効果が,MR空間においても生起するか検証した.標準アバタ・筋肉質アバタ・アバタなしの3条件をそれぞれ身体に重ねて表示し,ダンベルの重さの知覚量を測定した.その結果,標準アバタ条件では重さの錯覚が確認されたが,筋肉質アバタ条件では確認されなかった.また,課題後に行った主観評価の結果,アバタに対する身体化感覚は生起していなかったことが分かった.
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P3-6本研究は,人工物の動きの質がユーザの感情評価に与える影響を実験的に検討した.参加者は7種類の異なる緩急パターンで動く2本の線を観察し,感情評価を行った.主成分分析とクラスター分析の結果,動作の緩急が覚醒度や快感情の評価に影響を及ぼすことが示された.この結果は,動きの設計が,人間と人工物とのインタラクションにおいて,感情的反応に影響する要因となることを示している.
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P3-8体験者自身の能動的な運動意思が指の伸縮錯覚の強度にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため, 身体部位に対する受動的・能動的伸縮の提示条件, および触覚刺激の有無について比較を行った. 結果, ジェスチャーおよびボタン入力といった体験者の能動的な指の伸縮操作の有無による錯覚強度の差異は見られず, 視覚刺激と共に触覚刺激を与えることが, 最も錯覚を強固にすることが示唆された.
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P3-29大量のモノに囲まれて暮らしている現代社会の私たちにとって,「モノのかたづけ」は,生活の質(QOL)やウェルビーイングにも直結するきわめて重要,かつ認知的な負荷の高い行為である.本研究では,老老介護の家庭を対象としたフィールド調査にもとづき,モノ・他者・活動などがどのように組織されているのか,ケアのための空間と生活がどのようにデザインされているのかを,認知科学の人工物研究と情報デザインの観点から分析した.
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P3-31VR 空間でのコミュニケーションにおいてアバターの表現様式が与える影響を、fNIRS を用いたハイパースキャニングと主観的評価により検討した。実写的アバターではアニメ調アバターより注意配分と右縁上回の機能的結合が有意に高かった。アニメ調アバターで は実写的アバターより左上頭頂小葉で有意に高い機能的結合を示した。これらの結果は、表現様式の違いによって異なる認知プロセスが誘発された可能性を示唆している。
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P3-32本研究では、触覚刺激によって上肢の固有受容感覚に錯誤を生じさせ、その影響が重量感覚および視覚が重量感覚に作用する現象であるPseudo-haptics(Ph)の強度に及ぼす効果を検証した。実験の結果、固有受容感覚によって重量感覚が変化することが示唆され、さらにPhの強度にも影響を与えることが明らかとなった。これにより、従来は視覚中心に行われてきたPhの制御に対し、身体側からの感覚操作によってもその強度を制御できる可能性が示された。
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P3-39高齢者のメンタルヘルス支援が求められており,高齢者はポジティブな情報に注意を向けやすいことが分かっている.実験1では,傾聴エージェントによるポジティブな情報に着目する解決志向アプローチとネガティブな情報に着目する問題志向アプローチを比較したが,対話性や没入感の課題から効果は認められなかった.実験2ではメタバース環境を用いることで,メンタルヘルスが改善された.この結果は,傾聴エージェントの心理療法における没入感の重要性を示している.
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P3-45試験への取り組み報告に対し,同一のメッセージを「人」または「チャットボット」が返信する条件を用意し,メッセージ受信後の,受信者自身の感情的評価と取り組み姿勢の評価を,調査開始時,開始1週間後,開始2週間後(調査終了時)に測定した.参加者の得点は,「人条件」と「ボット条件」に依らず推移し,各条件に共通する傾向は現れなかった.インタビュー結果から,送り手の属性に相応しい特徴を持つメッセージが,受信者の評価向上へ繋がることが示唆された.
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P3-57本研究では,参与構造に基づく複数の対話に同時参与可能なオンライン対話環境の開発を目的とする.具体的にはGoffman(1981)によって提案された参与構造をグラフ構造で表現し,参与者がこのグラフを操作することで相互に参与の程度を視覚的に表現したり,認識したりすることができるようにした.本稿では開発システムの設計・実装の概要を報告し,多重参与,対話場の可動性,および参与の可視化という三点から,新しいオンライン対話環境の可能性を議論する.
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P3-65本研究では、合成音声による五十音の音読と説明文の音読に対する印象評価実験の結果の比較を通じて、授業動画や動画教材における教師役アバターの音声に対する印象評価を五十音の読み上げのみで簡易に実施する方法の有効性を検討した。実験結果から、通常の授業動画が扱う類の内容であれば、音読内容によって合成音声の印象が大きく変化することはなく、五十音の読み上げ音声を利用してアバター音声の印象を簡易的に測定することは有効であると考えられる。
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P3-67本研究では,異なる行動戦略をとるエージェントとの最後通牒ゲームにおいて,個人の意思決定を提案行動の選択確率とその遷移確率から検討した.実験の結果,個人は利他的なエージェントに対しては自己の利得を最大化しようとする合理的な戦略をとる一方で,利己的・適応的なエージェントに対しては経済的な合理性から逸脱した反応を示した.この背景として,エージェントの行動戦略に対する予測可能性と,社会的文脈における解釈可能性の2点が重要であることを指摘する.