研究分野

コミュニケーションとネットワーク

  • OS1-1-1
    公募発表
    新原 将義 (武蔵大学)
    本研究では沖縄の米軍基地反対運動におけるフィールドワークをもとに,研究者が純粋な参加者ではないという“第1の外部性”と,問題の“歴史的当事者”ではないという“第2の外部性”について議論した。前者については,研究者が啓蒙的な役割を引き受けることで,知的権威を帯び,発達的な関係から疎外されるという危険性を指摘した.また後者の外部性が様々な立場からどのように構成されるのかを検討し,これへの直面化が政治的発達の契機となる可能性を指摘した.
  • O2-2
    中野 珠実 (大阪大学大学院情報科学研究科)
    粟田 里恵 (大阪大学大学院情報科学研究科)
    大泉 匡史 (東京大学大学院総合文化研究科)
    桑野 大輔 (公益財団法人 神経研究所)
    佐治 伸郎 (早稲田大学大学院人間科学研究科)
    丹治 和世 (公益財団法人 神経研究所)
    加藤 進昌 (公益財団法人 神経研究所)
    本研究は、日本語オノマトペの意味理解と、実際の触感体験をオノマトペでどう表現するかを成人の自閉スペクトラム症(ASD)群と定型発達(TD)群で比較した。心理評価に基づくオノマトペの意味理解に両群で違いはなかった。一方、TD群と比べてASD群は布の感触に適合するオノマトペの選択がより限定的かつ独自的であった。これは、ASDにおいてオノマトペの語彙知識に問題はないが、感覚経験の言語表現に特異性があることを示唆する。
  • P1-4
    髙岸 悟 (放送大学)
    本研究の目的は,6歳と76歳の創造性の特徴を比較検討したうえで,両者の協働活動で創造性がどのように変化するかを探ることである.幼児と高齢者の協働活動で創造性がどのように変化するかをテーマにした論文は,管見の限りみあたらない.本研究では,6歳児と76歳の創造性を測定するために,新たな幼児用の描画テストを創り,さらに新たな指標として「奇抜性」と「魅力性」の2軸を採用した.その結果, 協働 > 6歳 ・ 76歳,という傾向がみられた.
  • P1-14
    牧野 遼作 (早稲田大学)
    山本 敦 (早稲田大学)
    門田 圭祐 (早稲田大学)
    八木 崇行 (静清リハビリテーション病院)
    高田 勇 (加賀市医療センター)
    安田和弘 (東京保健医療専門職大学 )
    児玉 謙太郎 (東京都立大学)
    本稿は、PTによる「揺すり運動」の指導を通じて、身体の帰属が相互行為の中でどのように構成されるかを分析する。PTは発話・動作・接触を用いて動作を段階的に提示・調整し、状況に応じて主導と補助を使い分けることで、患者の自律的な動作生成を支援していた。身体の動きの帰属先は固定的でなく、相互行為的に動的に構成されていた。リハビリにおける身体の操作と学習を相互行為的達成として捉える視点を提案する。
  • P1-15
    崎山 加奈子 (株式会社 明治 研究本部 物性・感性研究ユニット 感性工学G)
    橋本 佳穂里 (株式会社 明治 研究本部 物性・感性研究ユニット 感性工学G)
    外山 義雄 (株式会社 明治 研究本部 物性・感性研究ユニット)
    松原 正樹 (筑波大学)
    インタビュアーと対象者の関係性は,デプスインタビューの成功に影響を与える.本研究は社員を対象とした社員によるデプスインタビュー手法を,企業内での関係性の継続を考慮した制約の下,構成的に開発した.発話を分類する項目の定義付け,発話整理シートの作成,手法の改善,分類項目の見直しによって,インタビュアーのメタ認知の促進や負担軽減,認識の更新に寄与し,対象者の感情の表出を促し,質の高い情報取得に貢献した.
  • P1-16
    大髙 愛 (札幌学院大学心理学部臨床心理学科)
    森 直久 (札幌学院大学)
    大髙(2024)はティッシュ配りの観察研究により、受け手が誰かが不確定で受け手に複数の行為選択が可能な状況での受け渡しの達成が➀視線交絡による受け手特定と不確定性の縮減②適切な位置やタイミングによる差出・受取行為の連鎖を経て実現されるとした。本研究は仮説中の「視線交絡の前提となる視線送り」と「差出のタイミング」が受け渡しの実現に寄与する変数かを実験的に検証した。受け渡しが最も成功しやすい差出のタイミングが受取の2秒弱前であると推定した。
  • P1-20
    山本 輝太郎 (金沢星稜大学)
    本研究ではマイサイドバイアスの抑制方法として誤びゅうに着目し,誤びゅう教材の閲覧の有無によるマイサイドバイアスの低減効果について実証的に検討した.テキストアニメーションでの解説を実装したオンライン教材,およびネットコメント風の実験用の刺激課題を用意し,介入実験を実施した(非ランダム化比較試験).実験の結果,誤びゅうの学習によってマイサイドバイアスに対する一定の低減効果がみられた(全体効果量-0.72).
  • P1-32
    坂井田 瑠衣 (公立はこだて未来大学)
    岡野 真衣 (公立はこだて未来大学)
    本研究では,共在状態においてそれまでの相互行為とは無関係に産出される発話が,どのように発話者自身によって独り言として構成され,共在している他者によって独り言として扱われるかを,相互行為分析を用いて明らかにする.分析の結果,発話者は,自身の発話が独り言であることを,発話の連鎖上の位置や身体の志向性によって示していた.共在している他者は,その発話が独り言であることを理解し,反応を示さないか,反応を示すとしても最小限に留めていた.
  • P1-36
    細馬 宏通 (早稲田大学)
    飯山 陸 (早稲田大学)
    痒みという感覚は、個人的な現象だと考えられがちであるが、痒みに伴う発話や掻き行動を始めとする緩和行動によって痒みは会話の中で顕在化し、社会相互行為を引き起こす可能性がある。本論では日本語日常会話コーパスから痒み発話が発せられた例を抽出し、発話と緩和行動のタイミングを調べるとともに、それらが話題の進行を妨げない形で会話にタイミングよく埋め込まれている例を示し、痒みが相互行為に用いられる可能性を示した。
  • P1-39
    関根 和生 (早稲田大学)
    大隈 玲志 (早稲田大学)
    番 浩志 (情報通信研究機構)
    ジェスチャーが発話産出を促進させる神経基盤についてはよくわかっていない.本研究では日本語母語話者を対象に,ジェスチャー産出と抑制の条件下で30秒間のアニメーションを説明させ,MEG(脳磁図)で計測を行った.ジェスチャー使用条件よりも,ジェスチャー抑制条件において,発話開始直前に脳活動(RMS値)が上昇し,両側前側頭葉の強い活動がみられた.この結果からは,ジェスチャーが発話処理の負荷を軽減させていることが示唆された.
  • P1-42
    家永 直人 (筑波大学)
    関根 和生 (早稲田大学)
    身振り研究において三次元計測は重要であるが、モーションキャプチャ(MoCap)には限界がある。本研究では、4つの人物姿勢推定手法(HPE)を、MoCapと比較することで身振りの三次元推定精度を検証した。結果、2台のカメラとHPEによる手法がもっとも高精度であり、誤差は50mm程度であった。また、クラウド上で利用可能な三次元解析ツールも提案する。本手法はMoCapの代替手段として有望である。
  • P2-14
    曽根 悠太郎 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    鷲見 優一郎 (トヨタ自動車株式会社)
    中西 亮輔 (トヨタ自動車株式会社)
    光田 英司 (トヨタ自動車株式会社)
    佐藤 浩司 (トヨタ自動車株式会社)
    小田島 正 (トヨタ自動車株式会社 )
    近年、過剰最適化対策として偶然性を加味した検索推薦が注目される.本研究は,検索時の偶然性を求める行動(偶然性希求行動)への製品の快楽・功利的属性と検索目標の具体性の影響を検討した. 結果,製品の快楽性と目標具体性の間に交互作用を確認した.目標具体性が低い場合は快楽的な製品ほど偶然性希求が高まるが、高い場合は快楽性に関わらず偶然性希求が低下した.これは,偶然性を加味した推薦で,ユーザーの目標とアイテムの快楽性を考慮する重要性を示唆する.
  • P2-25
    齋藤 巴菜 (公立はこだて未来大学大学院)
    坂井田 瑠衣 (公立はこだて未来大学)
    本研究は,会話がなされていない共在状態において笑いがどのように産出されるのかを分析する.参与者らが笑いうる出来事を理解する際に参照する資源として,互いのあいだで共有された知識や築かれている関係性に着目した.相互行為分析を通じて,笑いは共在経験や個人の習慣に関する知識,日常的前提からの逸脱性を通じて見出され,参与者間の関係性や相互志向性とともに組織されていることが明らかとなった.
  • P2-26
    小島 直大 (明治大学大学院理工学研究科)
    水町 有里奈 (明治大学大学院理工学研究科)
    肥後 克己 (明治大学研究・知財戦略機構)
    嶋田 総太郎 (明治大学)
    テレプレゼンスロボットは新たな遠隔コミュニケーション手段として注目されている。本研究ではその操作訓練体験が身体化感覚に与える影響をfNIRSとアンケートにより検討した。その結果、右腕を挙げる動作映像視聴時の背側運動前野の活動増加および主観評価との正の相関が確認された。テレプレゼンスロボットの操作訓練体験は、操作者にとってロボットを「もうひとつの身体」として捉える感覚の形成に寄与する可能性がある。
  • P2-30
    大信田 和華 (日本大学文理学部)
    角森 穂佳 (日本大学文理学部)
    古賀 日南乃 (日本大学文理学部)
    奥岡 耕平 (日本大学文理学部)
    佐々木 康輔 (NECソリューションイノベータ株式会社)
    野田 尚志 (NECソリューションイノベータ株式会社)
    森口 昌和 (NECソリューションイノベータ株式会社)
    大澤 正彦 (日本大学文理学部)
    本研究の目的は探究学習において教育者が学習者の思考を促すために行うメンタリングの自動化である. 著者らは先行研究として,学習者の発話に応じて対話戦略を選択するメンタリングシステムを開発したが,評価実験において比較条件と対話時間の設定に課題があった.そこで本研究では,比較条件を修正し1週間の期間を設けて実験を行った. 実験の結果,条件間で差は見られなかったが,メンタリング前後で探究的衝動が強まった.
  • P2-70
    松崎 由幸 (北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻)
    橋本 敬 (北陸先端大学)
    コミュニケーションにおいて,発話の背後にある意図の理解は円滑な対話や誤解の回避に不可欠である.本研究では,聞き手が推意の解釈の生成・選択を検討するための実験を行った.そして,代表的な語用論的推論の理論のどれと整合的かをインタビューで検討した.また,演繹・帰納・アブダクションのどの推論形式を用いるのかを分析した結果,3つすべての推論形式が用いられていることを示した.
  • P3-3
    巽 智子 (Max Planck Institute for Psycholinguistics)
    関根 和生 (早稲田大学)
    3歳児と5歳児を対象とした遮蔽状況下でのイラストのマッチング課題を行い, 物体の位置情報を相手に伝えるターンにおける指差しと言語表現の発達的変化を分析した. その結果, 5歳児と比べて3歳児は参照点 よりも対象点を指差す傾向があり, また対象を叩いたり擦ったり, 接触する指差し, 参照点と対象点をつなぐ指差しが多かった. 発達と共に, 指差しに頼らずとも言語表現が可能になり, やりとりの共通基盤や効率性についての認識が増すと示唆される.
  • P3-10
    眞嶋 良全 (北星学園大学)
    永澤 昴希 (北星学園大学)
    本研究は,Capraro & Celadin (2023) の研究2について日本人参加者を対象とした追試を行った。その結果,真のニュースはフェイクニュースより共有されやすい傾向が見られたものの,正確性プロンプトによる真情報の共有促進と誤情報の抑制について明確な効果は確認されなかった。一方,偽警告プロンプトは全体的なエンゲージメントを低下させること,日本人参加者のエンゲージメントは先行研究よりも低い傾向にあることが示された。
  • P3-21
    東江 祭利 (近畿大学)
    大井 京 (近畿大学)
    本研究は,パッケージ・デザインにおいて成分表と商 品画像の要素を変化させると商品に対する好ましさや 購買意欲が変化するのか検討した.実験では, 成分表の 要素量(多・小)と成分表の大きさ(大・小)と商品画 像の見せ方(全体・部分)の3要素を変化させた.その 結果,好ましさと購買意欲の判断は,成分表の要素数が 多い方,成分表の大きさが小さい方,そして画像は全体 である方が高いことが確認された.
  • P3-22
    田中 美優 (近畿大学)
    大井 京 (近畿大学)
    本研究では,大学生・大学院生を対象に,対人関係に関する相談行動と自尊感情の関連を調査した.自尊感情が高い群ほど他者に相談する傾向が低く,役に立った返答として「留学」「受験」など将来や学業に関する内容が多く挙げられた.自尊感情の程度により,相談傾向や有用とされる返答の内容が異なることが示唆された.今後は自由記述の詳細な分析を通じて検討を深める必要がある.
  • P3-28
    椎名 琉翔 (東京都市大学メディア情報学部)
    千田 真緒 (千葉大学大学院融合理工学府)
    岡部 大介 (東京都市大学メディア情報学部)
    本研究は,オーダー・コール・システムを備えた飲食店において,大学生グループによる注文決定の過程を映像データ6本を用いて分析した.注文前には「決まった?」などの決定確認発話が平均4回以上交わされ,ベルスターを押す直前には押下の意思を明示する発話が確認された.注文決定に至るまでの反復的な確認は,不可逆な注文プロセスの直前における,参与者どうしの慎重なすり合わせとして機能していた.
  • P3-31
    泉澤 行太 (明治大学大学院理工学研究科)
    肥後 克己 (明治大学研究・知財戦略機構)
    嶋田 総太郎 (明治大学)
    VR 空間でのコミュニケーションにおいてアバターの表現様式が与える影響を、fNIRS を用いたハイパースキャニングと主観的評価により検討した。実写的アバターではアニメ調アバターより注意配分と右縁上回の機能的結合が有意に高かった。アニメ調アバターで は実写的アバターより左上頭頂小葉で有意に高い機能的結合を示した。これらの結果は、表現様式の違いによって異なる認知プロセスが誘発された可能性を示唆している。
  • P3-38
    松岡(初田) 響子 (神戸大学人間発達環境学研究科)
    清水 大地 (神戸大学)
    共同行為は,複数人が共通の目標を達成するために協調する行為である.本研究では,ラテンダンス熟達者ペアを対象に,身体接触が動作協調と一体感に与える影響を検討した.接触条件では,フォロワーがリーダーにわずかに遅れるまたはほぼ同時の協調が多く,非接触条件ではこの傾向が崩れた.また,接触条件の方が非接触条件よりも一体感の主観評価が有意に高かった.
  • P3-46
    西 匠 (近畿大学)
    大井 京 (近畿大学)
    本研究は,デジタルデトックスアプリの開発を最終的な目標として,SNS利用における承認欲求とインターネット依存の関係性を検証した. 成人男女100名が,承認欲求尺度,インターネット依存尺度,SNS利用とその動機に関する質問に回答する調査に参加した.その結果, 承認欲求が高いほどインターネット依存傾向も高い中程度の有意な正の相関が確認された. 承認欲求の高低とSNS閲覧・投稿頻度の有意な関連性は確認されなかった.
  • P3-57
    市川 雅也 (静岡大学)
    竹内 勇剛 (静岡大学)
    本研究では,参与構造に基づく複数の対話に同時参与可能なオンライン対話環境の開発を目的とする.具体的にはGoffman(1981)によって提案された参与構造をグラフ構造で表現し,参与者がこのグラフを操作することで相互に参与の程度を視覚的に表現したり,認識したりすることができるようにした.本稿では開発システムの設計・実装の概要を報告し,多重参与,対話場の可動性,および参与の可視化という三点から,新しいオンライン対話環境の可能性を議論する.
  • P3-58
    佐々木 健矢 (静岡大学)
    長島 一真 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    ソーシャルメディアのなかで局所的に発生するエコーチェンバーの要因を模倣の観点から検討する.模倣は言語獲得に重要な役割を果たし,閉じた集団内でのコミュニケーション体系の形成と関連する.ここから,大規模ネットワーク内のミクロな模倣関係が,ローカルなエコーチェンバーを形成するという仮説を考えることができる.本稿はこの仮説を検討するモデルとして,単純な事例ベース学習の変形によって,2者間のコミュニケーションを類似させる模倣の仕組みを示す.