研究分野

学習

  • OS1-1-3
    公募発表
    石田 喜美 (横浜国立大学)
    本発表ではIngold(2011=2021)の「クモ(SPIDER)」という比喩を手掛かりにしながら,対立や葛藤をはらむフィールドにおける記述・分析のありかたを考察する,具体的には,石田・半沢(2004)で示した事例を,新たに記述し直す試みを行った結果を報告する.当日は,この事例を通じて,葛藤が渦巻くフィールドにおいて見出される知を記述する方法について,参加者とともに議論したい.
  • O3-3
    中野 優子 (東京大学大学院教育学研究科)
    清水 美紗都 (一般社団法人イロタピア)
    岡田 猛 (東京大学大学院教育学研究科)
    本研究では,ダンスを専門としない大学生が,自然とダンス表現を創作してしまうような教育プログラムのデザイン原則を明らかにするために,熟達者の近藤良平氏の授業実践を対象に,近藤氏の授業展開を分析した.その結果明らかになったデザイン原則は,講師も参加者も童心で向き合い,人と人が接触により動く活動を中心に,身体が持つ物質的側面と社会的側面を使い分けながら他者とやりとりする中で,探索中心の活動から徐々に発信を見据えるようにすることであった.
  • P1-4
    髙岸 悟 (放送大学)
    本研究の目的は,6歳と76歳の創造性の特徴を比較検討したうえで,両者の協働活動で創造性がどのように変化するかを探ることである.幼児と高齢者の協働活動で創造性がどのように変化するかをテーマにした論文は,管見の限りみあたらない.本研究では,6歳児と76歳の創造性を測定するために,新たな幼児用の描画テストを創り,さらに新たな指標として「奇抜性」と「魅力性」の2軸を採用した.その結果, 協働 > 6歳 ・ 76歳,という傾向がみられた.
  • P1-19
    村上 瞳 (神戸大学大学院 人間発達環境学研究科)
    鎌田 紗弓 (東京文化財研究所 無形文化遺産部 無形文化財研究室 研究員)
    野中 哲士 (神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 教授)
    日本の伝統芸能のひとつである雅楽では,まず楽器を持たずに擬音化した曲の旋律を声に出す「唱歌」(しょうが)を通じて,師匠から弟子に楽曲および楽器の演奏技能が伝えられる。なぜ音楽や楽器の演奏技能が主に唱歌によって習得されるのか、唱歌でなければ伝えられないものとは何なのかについて明らかにすることを本研究は目的としている。
  • P1-21
    関 大也 (東京大学)
    清河 幸子 (東京大学)
    本研究では,ザイガルニク効果と心理的リアクタンス理論を活用し,課題の先延ばしを軽減する新しい介入法の効果を検証した.時間制限を設けて課題への着手を促し,課題が中途半端である状態を作り出す実験群とそのような促しのない統制群を設定し,課題の提出率を比較した.その結果,実験群の参加者の方が提出率が高く,先延ばしの軽減に対する介入の有効性が示唆された.
  • P1-30
    野月 そよか (青山学院大学社会情報学研究科)
    シェアハウスの共用空間において, 居住者の私物が他者と共同使用される過程をエスノグラフィにより記述した. ストリーミングデバイスとこたつの二事例を分析した結果, 空間への配置を起点に一時的な共同使用が成立し, その後, モノの使用に関する規範のズレの顕在化を経て, シェアが維持, 変容, 解消する過程が明らかになった. この過程では, 提供者の私物に対する裁量, 複数の規範, 物理的環境が複雑に関係していた.
  • P1-44
    松田 新史 (青山学院大学社会情報学研究科)
    本発表は、現在執筆中の修士論文の一部に基づき、地域的音環境に対する記憶想起と語りにおける意味構成プロセスを検討するものである。2024年10月に愛知県A市J町で実施した山車祭りワークショップを対象に、参加者の語りを質的に分析し、特に囃子(音)の知覚がいかに記憶・情動・身体性と結びつき、語りの中で再構成・意味づけされるのかを明らかにすることを目指す。音経験の記憶的・語用的機能を通じて、文化継承における認知的過程を考察する。
  • P1-47
    松永 和也 (青山学院大学社会情報学研究科)
    本研究は、文学授業における学習者の対話に着目し、集団的な読解がどのように生成・変容するかを質的に明らかにすることを目的とする。中学校の文学授業の映像記録を談話分析し、「わからなさ」の共有が読解の方向性に及ぼす影響を分析した。その結果、学習者は曖昧さを受け入れ、問いを保留しながら解釈可能性を開くという生成的・応答的な解釈戦略を共有していたことが示された。本研究は、読解の認知的・社会的構成プロセスに対する理解を深めるものである。
  • P1-53
    平野 智紀 (公立はこだて未来大学)
    前田 ことみ (公立はこだて未来大学)
    島影 圭佑 (公立はこだて未来大学)
    芸術経験は認知や感情を変容させるものであり,芸術を鑑賞することは作品と鑑賞者の日常経験をつなぐイマジネーションのやりとりとして捉えられる.対話型鑑賞は,鑑賞者間の協働的理解を促す手法として注目されているが,現代アート展での実践例は多くない.本研究では,現代アート展「FAYM2024」での対話型鑑賞場面のプロトコル分析を通じて,芸術と日常認知の架橋を探った.作家自身も他の鑑賞者と同じ立場で関わり,作品を中心とする対話が成立していた.
  • P1-62
    樋口 滉規 (中部大学)
    市野 弘人 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    本研究では、無向グラフの枠組みに対して「因果の対称性」と「事象の稀少性」を組み込むことで、人間の因果帰納推論を記述するモデルを導出した。メタ分析の結果は、提案モデルが高い記述性能を有することを示し、新たに実施した認知実験の結果は、参加者の回答が無向モデル型と有向モデル型に二分されることを示した。これらの結果は、人間の因果推論の認知モデリングにおいて「規範モデル」と「記述モデル」が相互排他的な仮説ではない可能性を示唆している。
  • P2-29
    佐々木 一洋 (東京大学)
    清河 幸子 (東京大学)
    本研究では,歴史上の事件についての文章を用いて,知的選好によって内容に見出す面白さにどのような違いがあるかを検討した.知的選好尺度にオンラインで回答した成人341名のうち,メカニズム選好とフレーバー選好のいずれか一方に偏った参加者11名を対象として,インタビュー調査を行った.文章を読んだうえで,面白いと感じた内容について尋ねた結果,選好によって同じ内容でも面白いと感じる側面が異なった.また,知りたいと感じる情報にも異なる傾向が見られた.
  • P2-35
    山田 和佳 (東京大学大学院工学系研究科)
    上田 一貴 (東京大学大学院工学系研究科)
    長藤 圭介 (東京大学大学院工学系研究科)
    新奇な製品に対する理解に至るユーザの情報獲得時の認知プロセスを明らかにするため,製品観察中の認知的気づきに伴う脳波を計測した.脳波のマイクロステート解析により,視覚/言語処理,注意,内省,感情の4つの認知プロセスが特定された.これらの認知プロセスは,獲得した気づきの種類によって異なる傾向を持つことが明らかになった.この知見は新奇な製品に対する気づきが多層的な認知プロセスであることを示している.
  • P2-52
    稲村 隆之介 (大阪公立大学院現代システム科学研究科現代システム科学専攻認知行動科学分野)
    牧岡 省吾 (大阪公立大学 現代システム科学研究科)
    実験1では、音楽を聴きながら計算課題や認知課題を行うと、音楽のBPMが正答数に影響を与えるという仮説を検証したが、支持されなかった。実験2では、BPMと心拍数の関係に着目し、参加者の心拍数を基準にBPMを変化させ、音楽を単一の楽器のみに変更して同様な仮説を検証したが、仮説は支持されなかった。今後の研究では、今回の実験で用いた音楽自体に問題がある可能性を考え、参加者が自身で選んだ音楽を聴きながら課題を行うという方法で実験を行う予定である。
  • P2-63
    渡辺 謙仁 (静岡大学)
    坂本 孝丈 (静岡大学)
    須藤 智 (静岡大学)
    老人ホーム遠隔就労を想定し、65〜81歳の高齢者26名がテレプレゼンスロボットTemiの操作を3週間学習した。単独群12名と交流群14名を比較した。コース走行課題は両群とも週を追うごとに迅速化したが,交流群は単独群よりも所要時間が長かった。御用聞き課題は交流群3週目で遅延増大した。交流に伴う目標水準上昇や評価懸念が慎重操作を招いた可能性がある。所要時間のみでは学習成果判定が困難で質的指標が必要である。
  • P2-67
    小日向 黎 (関東学院大学大学院 工学研究科)
    吉川 厚 (関東学院大学 理工学部)
    本研究は、似非科学への耐性とネットリテラシー向上に効果的な教育手法を検証した。漫画教材を用い、大学生28名を対象に分散学習と集中学習の効果を比較した。その結果、既存の信念の変容を要する似非科学への耐性には、内省を促す分散学習が有効だった。一方、手続き的スキルの習得が中心のネットリテラシー向上には集中学習がより高い効果を示した。学習内容の認知的性質により、最適な学習スケジュールは異なると示唆される。
  • P3-1
    大井 京 (近畿大学)
    藤田 脩人 (近畿大学)
    本研究では,背景音が記憶に与える影響を検討した.実験では,DRM (Deese-Roediger-McDermott) パラダイムを用いて,単語リスト記銘時の背景音が異なると,記憶対象が正しく想起される頻度(正再生率)と,記憶対象でないものが想起される頻度(虚偽記憶生成率)が変化するのかを検証した.その結果,背景音の違いによる正再生率と虚偽記憶生成率の有意な差は認められなかった.
  • P3-14
    大滝 文一 (静岡大学 創造科学技術大学院)
    大島 律子 (静岡大学 創造科学技術大学院)
    大島 純 (静岡大学 創造科学技術大学院)
    本研究は,生成AIを活用した協調的問題解決における論証過程の差異を分析した.情報系学部生20名10組を対象に,品種改良食物をテーマとした課題に取り組ませ,トゥールミンモデルと談話分析を用いて議論構造と知識構築過程を比較した.高論証グループでは,生成AIの多面的な出力を批判的に統合し,議論を深化させたが,低論証グループでは解決志向に偏った結果,情報活用が限定的であった.AIを用いた学習支援の設計的工夫の重要性が示唆された.
  • P3-20
    本名 貴喜 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院)
    発達性書字障害の書字特徴を明らかにすることを目的として,漢字書き取り課題を実施し,誤答の分析を行ってきた.従来は音韻・意味・形態の大分類に基づく方法を用いていたが,多様な誤答の構成的特徴を捉えるには限界があった.今後は,各誤答を複数の評価軸に基づいて記述する分析枠組みを導入し,より精緻な把握を目指す.
  • P3-23
    川原 名見 (東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程))
    髙橋 麻衣子 (早稲田大学)
    犬塚 美輪 (東京学芸大学)
    本研究では,手書き文字の評価の観点を探索的に検討することを目的とし,中学生の手書き文字(n=174)への書写指導者(エキスパート)1名と一般成人(ノービス)1名の評価を分析した。両者の総括的評価には中程度の相関があった。エキスパートの分析的評価8観点のうち,字形と配字観点が総括的評価を有意に予測した。一方,「今後伸びる生徒」の判断と総括的・分析的評価には関連が見られなかった。結果を元にエキスパートとノービスの観点の異同について議論した。
  • P3-29
    南部 美砂子 (公立はこだて未来大学)
    原田 泰 (公立はこだて未来大学)
    大量のモノに囲まれて暮らしている現代社会の私たちにとって,「モノのかたづけ」は,生活の質(QOL)やウェルビーイングにも直結するきわめて重要,かつ認知的な負荷の高い行為である.本研究では,老老介護の家庭を対象としたフィールド調査にもとづき,モノ・他者・活動などがどのように組織されているのか,ケアのための空間と生活がどのようにデザインされているのかを,認知科学の人工物研究と情報デザインの観点から分析した.
  • P3-33
    善本 悠介 (立命館大学人間科学研究科)
    高橋 康介 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では視覚イメージの個人差が生じる要因の解明を目的に、将棋有段者10名と非熟達者約90名にVVIQと独自の画像マッチング課題を実施し、視覚イメージ鮮明性を比較した。マッチング課題の全体ぼかしでは熟達者が統計的に有意に低得点を示した。VVIQと周辺ぼかしにおいても、統計的な有意差はみられなかったが、すべての課題で一貫して熟達者は非熟達者よりも鮮明性得点が低かった。このことから、熟達者でイメージ鮮明性が低下する可能性が示唆された。
  • P3-44
    山田 雅之 (九州工業大学)
    大海 悠太 (東京工芸大学)
    遠山 紗矢香 (静岡大学大学院総合科学技術研究科)
    本研究ではアイスホッケーのシュートスキルを対象に,オンラインでの建設的な相互作用がどのような場面において引き起こされるのかについて検討した.分析対象のデータは,実験期間終了後に実施されたアンケートの回答である.結果から,多くの選手が他者の動画を閲覧し,コメントを行っている様子が見受けられた.一方で,他者が自分についてコメントしているかどうかを確認している選手は少なかった.
  • P3-47
    高橋 浩一 (東京学芸大学)
    犬塚 美輪 (東京学芸大学)
    本研究は,部下の成長を促進する「環境設計」の視点から,営業組織におけるOJT経験の構造と,営業スキルとの関連を探索的に検討した.1041名を対象に質問紙調査を実施し,因子分析を行った結果,過去のOJT経験について「強みが活きる経験」「試行錯誤の経験」「内省と学習の支援」「やる気への刺激」の4因子が得られた.4因子に基づいて算出した尺度得点と営業スキル得点は中程度の相関を示し,これらのOJT経験が営業スキルの高さと関連することが示された.
  • P3-63
    原田 康也 (早稲田大学)
    森下 美和 (神戸学院大学)
    今世紀に入ってからのインターネット上での学習資源のあり方や学生の動向と社会の要請などを前提として、本研究では、生成人工知能と大規模言語モデルの活用が日常的になった現在の日本の社会状況の中で、大学での英語学習の目的・あり方・進め方について検討することを目指している。
  • P3-66
    福田 大年 (札幌市立大学)
    深見 嘉明 (東京理科大学)
    寺本 直城 (東京経済大学)
    中村 暁子 (北海学園大学)
    西 大輔 (拓殖大学)
    丸山 洋平 (札幌市立大学)
    本研究の目的は,小規模ワイン事業者(作り手)と消費者(受け手)が,ワインの味の感覚的な印象の違いを相互学習できるビジュアル・コミュニケーション手法を構築することである.ワインの味の感覚的な印象を環世界と捉え,描画と対話を繰り返して味覚の環世界を相互学習するテイスティング・スケッチを考案・試行した.本稿ではその特徴,内容,試行例,限界,発展性を示した.本試行によって,味覚の環世界を学び合う場づくりのヒントを得た.