研究分野

視覚・聴覚・音声

  • OS04-4
    公募発表
    菊地 浩平 (筑波技術大学)
    本研究は,手話通訳場面と対象とした研究であり,従来のアクセシビリティ概念を相互行為的観点から検討し,その領域を拡張しようとするものである.本研究で扱う事例は従来の会話研究で指摘されてきた現象と共通する要素を持つ一方で,モダリティの輻輳による複雑かつ通訳場面に特有であると考えられる現象が多く見られる.こういった諸現象を相互行為的観点から解きほぐしていくことにより,アクセシビリティ研究の新たな可能性を開くことができると考えられる.
  • OS05-4
    公募発表
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    不可能立体とは、立体的な構成が不可能と判断される平面図形である。しかし、実際には立体として構成可能な不可能立体が存在する。こうした知見は、平面図が持つ制約条件より、強い条件下で立体知覚が成立することを示唆する。本研究は、その条件の一つとして知覚的な構造補完があり得ることを示す。具体的に、ある平面上の線画を射影として持つ任意の立体像を構成する方法を用い、ある種の知覚的補完にあたる制約を加えることで、立体的構造が構成不可能になる例を示す。
  • O3-002A
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    齋藤 五大 (東北大学)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    我々は, 自他の指を自ら同時に触れることで, 他人の指の接触点まで自身の指に感じ, 身体変形感覚を生起するDouble Touch Illusion(DTI)を考案し, 調査を進めている. 実験では, 本手法において, 相手の指への触れる指の本数が身体所有感にどのような影響をもたらすかを調べた. 被験者実験からは, 触れる指の本数が増えるほど所有感が強く生起する興味深い結果が得られたため報告する.
  • P1-004A
    齋藤 五大 (東北大学)
    高木 源 (東北福祉大学)
    不思議の国のアリス症候群(AIWS)は,視覚および体性感覚の知覚的変容を特徴とする症候群である。本研究では,AIWSの特徴を理解するためにその症状を呈する1名を対象に面接調査を実施した。その結果,AIWS被験者は主に他者の顔,自身の身体,周囲の音などの大きさの変容を体験することを報告した。本事例は,AIWSに関する先行研究と照らし合わせて考察することで,AIWSの理解を促進し得る。
  • P1-009
    浅川 香 (三菱電機 情報技術総合研究所)
    岡 隆之介 (三菱電機 情報技術総合研究所)
    片岡 竜成 (三菱電機 統合デザイン研究所)
    笹山 琴由 (三菱電機 情報技術総合研究所)
    西川 博文 (三菱電機 情報技術総合研究所)
    田内葉子 (三菱電機 情報技術総合研究所)
    駅構内における利用者の経路選択誘導へ向けた基礎的知見の獲得を目的とし,画像刺激・音刺激を用いた場合に,利用者の経路選択意欲がどのように影響を受けるかを机上で評価する実験を実施した。実験の結果,コンテンツにより設定した誘導の強さによって経路選択意欲の強さが変化し,画像コンテンツによる誘導効果が確認された。音の移動感の有無の効果については部分的に確認された。
  • P1-016
    粟津 俊二 (実践女子大学)
    古庄 歩未 (実践女子大学)
    女子大生を対象に,整形への関心度と,顔加工アプリの使用経験との関係を調べた.整形関心度によって,加工アプリの使用頻度,自身の顔に対する感じる違和感に差が見られた.また,アプリの使用頻度と違和感には正の相関が,加工程度と自身の外見に対する動機づけには,負の相関がみられた.自身の顔の加工というICT技術を用いた仮想的な知覚運動経験が,現実の自身の顔の認知に影響し,行動を通して現実の知覚運動経験も変容させていく例と考えられる.
  • P1-017
    中田 龍三郎 (北星学園大学社会福祉学部)
    松田 知優 (北星学園大学社会福祉学部)
    創作活動を経験することは経験した芸術以外の芸術作品評価にも影響するだろうか。創作折り紙の作成前後に創作折り紙作品、さらに別ジャンル作品(LEGO作品等)の評価を行わせた。創作後の作品評価において、美的印象に関係する項目で、創作折り紙条件だけでなくLEGO条件でも有意傾向ながら創作経験の効果が示された。創作経験はその経験とは直接関係しない芸術作品の評価についてもポジティブな影響を与えることが示唆された。
  • P1-027A
    稲継 晃大 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    本研究は文の読解時に内的な音声化の機能を解明することを目的とし,日本語文字形態の違いから,文字に対する音韻情報の処理にどのような影響を及ぼすのかを検討するものであった.実験では12名に文字形態の異なる課題文を内的な音声化をコントロールした読み方で読解させ,課題文に付随する正誤判断文に答えさせた.実験の結果と考察は大会の発表時に公開する予定である.
  • P1-028A
    李 林柏 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    恐怖症とは,正確な危険性がないにもかかわらず,人間が何かを極端に恐れる状態である.その中でも高所恐怖症は一般的な問題であり,その治療法は様々である.現在VRを用いたVR曝露療法が,その高い安全性から注目されている.VR曝露療法には現実感が低いなどの欠点がある.従って,本研究はその欠点の改善に向けて,ドローンを用いた新たな空撮VR曝露療法を提案した.結果として,提案方法がVR曝露療法に比べ,より高い没入感が得られることを示した.
  • P1-031A
    森本 優洸聖 (大阪府立大学 人間社会システム科学研究科)
    牧岡 省吾 (大阪公立大学 現代システム科学研究科)
    応答プライミングとはプライムとターゲットの特徴が一致する際,不一致の場合よりもターゲットへの反応時間が短くなる現象である.プライムが不可視の場合も反応時間に影響することから閾下プライミングとして捉えられているが,発生機序として知覚処理と反応選択処理のいずれで起きているのか解明されていない.本研究では同じ刺激に対して単純反応課題と強制二肢選択課題を行うことでこの現象の処理過程を検討した.
  • P1-035
    藤井 佑実子 (筑波大学図書館情報メディア系)
    森田 ひろみ (筑波大学図書館情報メディア系)
    携帯型情報端末の小さな画面上での視覚情報処理は,通常の視覚環境とは異なる特徴を持つが,それが画像の認知にどのような影響を与えるかは詳しく調べられていない.そこで本研究では心理学実験を用いて,スクロール表示が画像内の要素の位置記憶に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験の結果,画像内の要素の位置を記憶するときスクロール表示では,窓を通して観察することにより,また画像の絶対位置を移動することにより,観察時間が長くなることが示された.
  • P1-036
    林 美都子 (北海道教育大学函館校)
    本研究では、林(2022)に引き続き、顔アイコン画像を用いた心的回転実験を行った。大学生59名の協力を得て、個別にオンライン実験を実施した。真ん中に提示された顔アイコンの左右に、回転させた顔アイコンと反転回転させた顔アイコンを提示し、一致するものを選ばせ、反応時間と判断の正誤を測定した。正答の反応時間を分散分析したところ、笑顔や怒り顔では、女性よりも男性の反応時間が速かったが、真顔では性差は示されなかった。
  • P1-040A
    韓 旼池 (京都大学大学院)
    「強調」とは、メッセージの内容に関わる行為である。このことから考えられるのは、強調は対人関係とは関わらないということである。しかし実際には、強調は対人関係と関わる面を持っている。具体的には、現代日本語で母音の延伸による強調は、上位者に向かっての発話には現れにくい。母音の延伸による強調発話は、コミュニケーションの中でどういった特徴を持つため、対人関係に影響されるのだろうか? 本発表はこの問題を「母音の延伸」から考えてみる。
  • P1-042
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    今井 健人 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    The wide range of illusions of proprioception produced by hiding one hand behind a mirror and performing operations visible in that mirror have been recognized for some time. We report a similar effect using a putty-like substance, in which we refer to as the Slime Hand. In this setup, a flexible putty is manipulated by pinching and stretching from the center or an edge while the same pinching and stretching motion is performed on the hand behind the mirror. This operation has a quite high rate of success in causing the mapping of the participant's skin of the hand onto the putty.
  • P1-044
    松井 理直 (大阪保健医療大学)
    IPA における破裂音は,一定の長さを持つ閉鎖区間と破裂時点および急速な開放区間によって定義される.これに対し,閉鎖音は閉鎖区間のみを持ち,破裂時点と開放区間を持たない.英語音声の [p], [t], [k] は音節末子音の変異から破裂音と認定できるが,日本語音声では破裂音か閉鎖音か明確でない.本研究では実時間の点からこの問題について議論を行う.結論として,日本語の [t] 音は破裂音というより閉鎖音であることを述べる.
  • P1-049
    安念 保昌 (札幌保健医療大学)
    許諾を受けた72名の参加者に、睡眠時間、抑鬱の質問紙を埋めてもらい、10対の肯定・否定語及び、男女日本人の平均顔とその合成された喜び、笑い、怒り、驚き、悲しみの表情を対にしたスライドを5秒間ずつ、アイトラッカーを装着して見てもらった。0.1秒ごとに、どこを見ていたかを文字化して、視線遂構造を比較した。その結果、高鬱群が否定図にこだわるだけでなく、そこからの切り替え(即ち、注意解放)の困難さを示した。
  • P1-052
    西崎 友規子 (京都工芸繊維大学)
    深田 智 (京都工芸繊維大学)
    来田 宣幸 (京都工芸繊維大学)
    仮想現実空間内で普段とは異なる視点の高さを体験させると感情に変化が生じることが報告されているが,それは,自己の身体イメージの変化が起因するのだろうか。自己イメージが変化するとすれば,普段の自分の視点よりも低い視点を体験させると動作は小さくなり,高い視点では動作は大きくなる可能性が考えられる。実験の結果,低い視点では歩幅は狭くなり,高い視点では歩幅は広くなることが示された。
  • P1-063
    原田 悦子 (筑波大学)
    安久 絵里子 (筑波大学)
    鷹阪 龍太 (筑波大学)
    目黒 文乃 (筑波大学)
    葛岡 英明 (東京大学)
    アバター技術の新たな利用法として,仮想的な二者対話=腹話術型会話支援システムを構築するに当り,「かわいい」音声がアバター評価に与える影響を検討した.音声の物理的特性に対応した「かわいい」感情は若年成人には生起するが高齢者には見られないこと,音声のかわいい評価は高齢者でのみ外見のかわいい評価と相関を示すことが示された.音声の「かわいい」感情,かわいい感情と加齢の影響について検討が必要と考えられる.
  • P1-064
    寺地哲平 (大阪電気通信大学大学院工学研究科)
    城下 慧人 (株式会社ジール)
    小森政嗣 (大阪電気通信大学情報通信工学部)
    中村 航洋 (ウイーン大学)
    小林 麻衣子 (早稲田大学理工学術院)
    渡邊 克巳 (早稲田大学理工学術院)
    多次元の特徴をもつ刺激に対する感性評価関数の個人差をKLダイバージェンスにより評価することを試みた.StyleGAN2により生成された顔を提示し,魅力の判断する課題を行わせた.その結果にガウス過程選好学習を適用し各参加者の効用関数を推定した.さらに各実験参加者の効用関数のKLダイバージェンスを求め,これを判断の類似度の指標とした.KLダイバージェンスと判断の一致率,予測平均値の相関係数を比較し,判断の類似度の評価を検討した.
  • P2-001A
    田中 優希菜 (立命館大学大学院 人間科学研究科)
    永井 聖剛 (立命館大学 総合心理学部)
    服部 雅史 (立命館大学)
    文章読解時に情景が浮かぶ現象を,情景を視覚的イメージの想起と定義し調査を行った.物体イメージ尺度得点の高低が物語の印象評価に影響し,色や形の想起で文章の印象が変化すると言える.一方,空間イメージ尺度得点の高低は物語の印象評価に影響しなかった.文章の呈示方法にも差があり,黙読条件では物語の明るさが,音読条件では物語の好ましさが高く評価された.今後は,刺激とする物語の特性を踏まえた研究が必要である.
  • P2-003
    得丸 久文 (独立研究者)
    言語処理や複雑概念の認知モデリングについては,脳内における細胞・分子レベルの説明がない.本稿は脳脊髄液中を浮遊するBリンパ球,脳脊髄液接触ニューロン,マイクログリアによる脳室内免疫細胞ネットワークによる認知モデリングを提案する.これは哺乳類の条件反射の認知モデルであり,免疫細胞の内部論理が1対1の反射から1対全の群や全対全のネットワークに進化することで概念や複雑概念もモデル化できる.
  • P2-012
    徐 貺哲 (弘前大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    本研究では煩雑なデータ処理をおこなうことなく単純な眼球運動の指標を用いても、先行研究と同様に観察者の性格特性と眼球運動に関係性を示せるか否かを検討した。その結果、眼球運動の平均移動距離や(停留時を含む)平均移動角度のような単純な指標によっても顔の観察時の眼球運動から観察者の性格特性が推定できることが示された。
  • P2-027
    大槻 正伸 (福島工業高等専門学校)
    小泉 康一 (福島工業高等専門学校)
    視覚復号型秘密分散暗号は,元情報の画像を数枚の画像に分けて暗号化し,そのうち何枚かを集めて物理的に重ね合わせると元の情報が復元できる.元情報の認識は人間の視覚的な認知能力によりなされる.  今回,正統的なシートの重ね合わせ復号法の他に,立体視能力による脳内の重ね合わせにより復号が可能であることが分かった. この復号法について脳内計算を推定し,実験により,観察者-画像間距離と復号像の明確さについて測定した.
  • P2-040A
    宮本 真希 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    音声言語では,音声とその指示内容の結びつきは恣意的であると考えられている。しかし,ブーバ・キキ効果のように,音声と指示内容の関係が完全に恣意的とは限らない例もあり,このような例が体系的に存在するという仮説は音象徴と呼ばれている。オノマトペは自然言語における音象徴的な語彙の一つではないかと考えられており,本研究ではオノマトペが全体として音象徴的な体系を持つことを実験的に検証した。
  • P2-058A
    今井 健人 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    身体の錯覚研究では, 身体変形感を生起する錯覚が多数報告される. 我々は, 皮膚の変形感を生起する「Slime Hand (SH)」を発見した. SHは, 従来錯覚の空間的同期の制約を逸脱する操作を行なってもなお, 強力で即席に作用する興味深い錯覚である. 本研究では, SHにおける皮膚変形と固有感覚ドリフトを分離する被験者実験を行い, 皮膚変形距離が, 固有感覚ドリフトの理論的限界を超過していることを示唆する結果を得たので報告する.