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日本認知科学会

入会のご案内

時間順向性から体験を考える

〇開催日時

2024年12月15日(日)13:30~17:00

〇参加方法

会員,非会員ともに,現地参加の場合,事前参加申込は不要です。当日ご来場ください。
オンライン参加をご希望の場合は,ZOOM事前登録用のURLをお送りいたします。問い合わせ先(winter_sympo@jcss.gr.jp)までご連絡ください。

〇会場

東京大学本郷キャンパス
赤門総合研究棟 A200号教室
https://www.e.u-tokyo.ac.jp/fservice/address/map-j.html

〇企画趣旨

 認知科学を含む,人間を対象とする科学においては,調査にせよ,実験にせよ,人々の体験が主要な研究の対象となる。
 人々の体験を扱う研究において,体験した当人ではない他者としての研究者がそれを記述しようとしたり,体験した当人がそれを記述したりするとき,出来事が完結した時点に立って語ってしまいがちである。
 しかし,実際には,何がどうなるか分からない,先の見えない時間の中で私たちは体験を積み重ねていくはずである。体験を積み重ねていくそのようなプロセスそのものにせまるにはどのような理論,あるいは方法論が必要なのか。
 本シンポジウムでは,常に進む時間の最先端に立ちながら体験を紡ぐ人々のありようを「時間順向性」と呼び,認知科学がそうした人間の性質をどのように利用してきたのか反省的に検討するとともに,人間の意識の本質とも言えるそうした性質についてどのように理論化し,方法に組み込むべきかを議論したい。さらに,研究者と体験する当人が同じ時空の中で共同の体験を積み重ねていくことや,研究者が体験する当人でもある自己の体験を紡ぐことが,認知科学における調査法にとってどのような意義をもつのかについても議論をしたい。

〇タイムテーブル


13:30-13:35 「時間順向性から体験を考える」開会,諸連絡
13:35-13:40 SIG-DEEから企画意図説明
13:40-14:10 話題提供1 高木先生(14:10から5分,質問への返答)
「日常・出来事・事件 〜体験する身体が定位する3つの時間層〜」
14:15-14:45 話題提供2 田中先生(14:45から5分,質問への返答)
「即興パフォーマンスの時間的展開を考える」
(10分休憩)
15:00-15:05 SIG-Maaiから企画意図説明
15:05-15:35 話題提供3 大塚先生(15:35から5分,質問への返答)
「保育者が子どもの姿を記録するとき」
15:40-16:10 話題提供4 細馬先生(16:10から5分,質問への返答)
「マンガのテキストはいかに読まれうるか 『ちいかわ』のことばの時間」
16:15-16:55 議論
16:55-17:00 閉会

〇話題提供者と概要

高木光太郎先生(青山学院大学)
日常・出来事・事件 〜体験する身体が定位する3つの時間層〜

私はDEEの企画で,今年7月から「体験」に関する3つのセッションに参加してきた。本シンポジウムでは,そこでの議論をふまえ,「体験」を捉えるためのいくつかの視座を素描する。一つは「日常」である。これは相対的に長い持続をもつ自然と人工物の重層によって構成される「環境」と,そこに流入する「社会的諸力」の流動に対して,諸個人の身体が反復的に定位する過程である。もう一つは「出来事」であり,「日常」の反復的定位において偶発的に生じる混乱から起動される,時間順行的で投企的な身体的探索と,出来事認知の時間逆行的な過程から成る。体験した出来事の想起はこの過程の遅延的な反復である。最後が「事件」であり,「日常」が死,暴力,事故,自然災害などによって持続不能になった状態での「出来事」への定位の過程である。当日はここまでのセッションでの議論を紹介しつつ,このアイデアのより具体的な説明を試みたい。

田中 彰吾先生(東海大学)
即興パフォーマンスの時間的展開を考える

人と人とが出会う対人場面では,表情・ジェスチャー・対人距離・姿勢など,非言語的シグナルを始めとするさまざまな身体的相互行為を通じて対人的な協調が生じる。また,こうした非言語の次元での協調は言語的レベルでのやり取りにも影響を与え,会話の進展を促進したり阻害したり,さらにはその場面に特有の情動性を帯びた気分(いわゆる「空気」)を生み出す。この報告では,(1)こうした対人協調を理解するうえでの現象学的な理論的枠組みについて紹介するとともに,(2)報告者が過去に手がけた即興の描画パフォーマンスを事例として時間順向的に描画が構成されていく様子を検討する。描画を題材とすることによって,即興のパフォーマンスに伴う独特の性質に接近することがこの報告の目標である。

大塚 裕子先生(子中保育園)
保育者が子どもの姿を記録するとき

私たち現場の保育者は,子どもたちひとり一人の特性や状況を鑑みたうえで,子ども同士や保育者,物との関わり,ひとり一人の気になる一瞬や変化,行動のプロセスを記録する。記録の種類には,写真,動画,音声,図解や文章があり,これらの記録は,クラス担任が自分のクラスの子どもについて日誌のような形式で行うだけでなく,担任以外の複数の保育者がひとりの子どもに対して多角的視点で行うことがある。また,記録物は,保育者間で共有するだけでなく,子どもたち自身にフィードバックする場合,保護者に示す場合もある。記録の目的は,短期的には現状を共有することによって子どもの問題や保育者の課題を解決すること,あるいは,子どもの可能性を広げることである。長期的には,子ども理解の促進や保育実践の向上など保育技術の熟達化を目的にしている。発表では,とくに,ダウン症児,いわゆるグレーゾーンの子どもたち,0歳児の記録を中心に取り上げる。

細馬 宏通先生(早稲田大学)
マンガのテキストはいかに読まれうるか

『ちいかわ』のことばの時間
 わたしたちは,あるメディア作品を読むときに,そのメディアを読み解くためのおおよそのルールを携えている。たとえばマンガのテキストを読むとき,独話として読む,という具合に。しかし,こうしたルールは,必ずしもすべての作品で守られているとは限らず,読者はルールから逸脱した表現に出会うたびに,逸脱箇所に注目し,逸脱がなぜ生じたか,逸脱が一時的なものでないとしたら,どのように読みのルールを更新すればよいかを考える。本発表では『ちいかわ』第一話「ピザまん」のテキストを第1コマから第9コマへと順序を追って読んでいきながら,そこで読者がどのようなルール変更を迫られるか,その結果,この作品の読みがどう変化するかを検討し,時間順向性を考慮したメディア読解の可能性を考える。

〇企画

教育環境のデザイン分科会
間合い―時空間インタラクション分科会

〇問い合わせ先

winter_sympo[あっと]jcss.gr.jp
[あっと]を@に変えてください。