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日本認知科学会

入会のご案内

知の専門家/専門性のこれから 変容と可能性

〇開催日時
2021年12月19日(日) 13:00-17:30
Zoom Webinar開催
参加費:無料

〇企画主旨
 近年、知に関する専門知識をめぐる状況が大きく変化しつつある。
例えば、専門家の知識を、専門家でない人たちが共有しやすい環境やインフラが整ってきたことにより、いわば「専門知のフラット化」と呼べる状況が出てきた。Wikipediaのような知識共有のプラットフォームの形成、専門性の高いアプリケーションのオープンソース化による知識共有の他、長期にわたる経験や訓練を必要としなくても、手軽に映像コンテンツを作成し配信できるツールの普及、さらに、近年は3Dプリンターの普及とともに、デザイナーとしての経験や訓練を経ずに手軽に「モノづくり」することできる環境ができつつあることなど、「専門知のフラット化」の例は枚挙にいとまがない。
 また、科学技術に関する知を一般の人たちに伝えるサイエンスコミュニケーションの取り組みが普及し、専門家と一般の人のあいだでの交流が図られるようになってきた。美術鑑賞においても、専門知識の伝達よりも一般鑑賞者の主体的・能動的な鑑賞に重点を置く鑑賞手法が広く実践されるようになってきた。さらに、芸術創作においては、専門的なスキルを持つアーティストが、一般市民と共同で作品制作を行う、という実践も数多く行われている。これらは専門知を一般の人々に開放し、さらには新たな知を協働して生み出そうとする、という流れの一つととらえることもできよう。
 さらには、近年のAIの進展により、人間の持つ高度な専門的な能力の一部でさえも、AIによって代行されるようになるなど、専門知と社会とのあり方も大きく変わっていく可能性もある。
 こうした変化は、専門家が独占していた専門知が、より一般社会へと開かれていくという点で、「知の民主化」と呼ぶことができるだろう。一方、非常に長期にわたる習熟を要し、必ずしも「だれでも手軽に」というわけにはいかない高度な身体的スキルの姿についても明らかになりつつある。
 こうした点から、専門知とその在り方の変容は、今、認知科学の多くのフィールドが関わる問題となりつつあるのかもしれない。今回のシンポジウムでは、こうした知の専門性・専門家のあり方と社会の関わり方の変化をめぐる様々な問題を取り上げ、知の専門家である我々認知科学者にとっての知のあり方について、考えるきっかけとしたい。

〇タイムテーブル(敬称略)

司会:髙木紀久子(東京大学)、荷方邦夫(金沢美術工芸大学)、土倉英志(法政大学)

13:00-13:10 主旨説明 田中吉史(金沢工業大学)

13:10-13:55 招待講演1 上平崇仁(専修大学)
「Design withの多元性―コ・デザインが問いかけるもの」

13:55-14:40 招待講演2 小池一子(武蔵野美術大学名誉教授・クリエイティブディレクター)
「アートと社会の間をひらくオルタナティブに向けて」

14:40-14:50 休憩

14:50-15:20 話題提供1 岡部大介(東京都市大学)
「コンヴィヴィアルな知の生成:ファンと紡ぐ民衆知と専門知」

15:20-15:50 話題提供2 中村雅子(東京都市大学)
「地域デジタルアーカイブの担い手にとっての専門性:まちを学ぶ市民コミュニティの事例」

15:50-16:20 話題提供3 白水始(国立教育政策研究所)
「学び続ける教師のために:新しい学習科学を模索する」

16:20-16:30 休憩

16:30-17:30 全体討論

*招待講演、話題提供の時間には簡単な質疑応答を含みます
*招待講演、話題提供の順番は変更されることがあります。予めご了承ください。