研究分野
注意
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O2-3本研究は,日本の伝統宮廷舞踊である舞楽の美的鑑賞における文化差を検証した初の実証研究である。質的・量的手法を用いて日本人とドイツ人参加者を比較した結果,日本人は選好,超越的体験,優美さ,調和と構造において一貫して高い評価を示した。この文化差は,日本の美的概念「間」と,東アジアの全体的認知処理対西洋の分析的認知処理の違いで説明される。文化特有の認知スキーマが複雑な美的刺激の受容を形成することが明らかになった。
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P1-26本研究において実施したプライミング課題では,先行する聴覚刺激と後続の視覚刺激との間に直接的な意味的関係がある場合,直接的な意味的関係がないが間接的に意味的な結びつきがある場合,意味的な関係がほとんどまたは全くない場合の3条件について比較を行った.その結果,先行刺激と後続刺激との間に直接的な関係がある場合のみならず,間接的な結びつきのみがある場合においても反応が一定促進されることが示唆された.
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P1-36痒みという感覚は、個人的な現象だと考えられがちであるが、痒みに伴う発話や掻き行動を始めとする緩和行動によって痒みは会話の中で顕在化し、社会相互行為を引き起こす可能性がある。本論では日本語日常会話コーパスから痒み発話が発せられた例を抽出し、発話と緩和行動のタイミングを調べるとともに、それらが話題の進行を妨げない形で会話にタイミングよく埋め込まれている例を示し、痒みが相互行為に用いられる可能性を示した。
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P1-37不安は,将来的に生じる危険を予測し,回避するうえで重要な役割を果たす.不安による環境への適応は,時間認知などの個別の認知機能への作用によって実現されると考える.本研究では,ACT-Rを用いて,時間の経過に伴う不安の増幅を組み入れたモデルを構築した.そのモデルを利用したシミュレーションにより,現実よりも過大な接近の知覚が生じるルーミング(looming)が発生する条件が明らかになった.
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P1-66自己接触行動とは,自分の手で自分自身の体に触れる行動のことである。本研究では,幼児の遅延性課題中における自己接触行動の発達的変化を検討した。3~5歳児を対象に,遅延性課題中に行われた自己接触行動の接触時間や接触部位を分析した結果,接触時間の割合に年齢による有意差はなく3歳の時点で多くの自己接触行動がみられた。特に手や顔への接触が多く,自己接触行動を行うことで,目の前の報酬から注意を逸らしていたのではないかと考えられる。
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P2-2本研究は,Leeら (1974) による「Swinging Room」をVRで再現することで,呈示する光学的情報を自由に変更しつつ,それらと姿勢制御との関係を詳細に検討することを目的とする.結果として,部屋の揺れる幅であるAmplitudeが実験参加者の姿勢動揺量に影響を与えることが明らかになり,VR swinging roomの実験パラダイムが,現実空間と類似した身体動揺を誘発することが明らかになった.
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P2-13正中面上の前後に位置する音源の間では、同じ音であっても後方から提示する時と前方から提示する時では喚起する感情が異なるとこれまでに報告されている。研究ではこの効果を確認し、同時にこの方向の効果に関わる身体の座標系について研究することを目的とした。本稿では、後方に提示することの効果が正中面から離れた音源に及ぶことを新たに確認したと同時に、方向の効果に関わる身体座標系の役割については明らかにならなかった。
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P2-27虫嫌いの増大が生活の都市化に起因するとされる中,虫に対する嫌悪感と対人的嫌悪感との関係が変化しているとの仮説に対し,行動レベルで検討するため,高齢者‐若年成人を異なるコホートの参加者として,虫模型に対する殺虫スプレー噴射のデータに対してストップ・ディスタンス法に模した分析を行った.若年・虫恐怖感高群は高齢者群に比べ,虫への距離が長く,後部からスプレー噴射をすることが多かった.虫に対する攻撃行動の変化とコホートの関係について考察する.
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P2-32本研究は大学生を対象に,創造性(客観的・主観的・創造的体験)と自己の意思決定評価がQOLに与える影響を調査した.その結果,客観的・主観的創造性と意思決定評価がQOL向上に有意な影響を持つことが示された.創造性の認知的側面と意思決定能力の強化がQOLに重要であると示唆された.
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P2-37U理論は,7つのステップより構成されるイノベーションとリーダーシップの方法論である.その7ステップのうちのプレゼンシングと呼ばれる第4ステップは,個人あるいは集団が, 未来へ向けた新しい目的, 意志を見出すステップである.本稿では,U理論をモデル化するためには,人間の認知過程と知覚・感情過程を総合的にモデル化する必要があり,その為には通常の身体性認知科学でも足りず,新たな研究手法が必要であることを明らかにし,その端緒を紹介する.
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P2-42本研究では,環境の視覚的な複雑さが歩行に及ぼす影響について,加齢要因を含めて検討した.具体的には,VR内で人混みを再現し,参加者はヘッドマウントディスプレイを装着した状態で足踏みするよう求められた.人混みが少ない単純条件と多い複雑条件を比較した結果,若齢者と同様に中高年者でも,複雑条件にて歩行リズムがランダムに近づき身体自由度が増加したと解釈された.今後,高齢者の歩行訓練への応用などが期待される.
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P2-52実験1では、音楽を聴きながら計算課題や認知課題を行うと、音楽のBPMが正答数に影響を与えるという仮説を検証したが、支持されなかった。実験2では、BPMと心拍数の関係に着目し、参加者の心拍数を基準にBPMを変化させ、音楽を単一の楽器のみに変更して同様な仮説を検証したが、仮説は支持されなかった。今後の研究では、今回の実験で用いた音楽自体に問題がある可能性を考え、参加者が自身で選んだ音楽を聴きながら課題を行うという方法で実験を行う予定である。
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P3-7近年AI利用など人間以外のアナウンサーによるニュースの読み上げが広がっている.本研究では,ニュース映像に登場するアバターの数や種類(人間,動物)が視聴者のニュースで使用された語に関する記憶に与える影響を調べた.アバターの種類や数に関わらず,使用された語に関する記憶は比較的よく保たれていた.一方,1体のアバターで伝える場合に比べ,4体のアバターが次々に登場する場合は,視覚的注意が分散し映像に関係する語も誤って選ばれやすくなる傾向がみられた
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P3-34文化は認知バイアスに沿って変化する場合がある.本研究では,文化変化の要因として「可愛さ」の認知バイアスであるベイビースキーマに基づき,目の大きさに着目し分析した.分析にはYOLOを用いて6誌から1,406枚の顔画像を抽出した結果,低年齢層向けほど目が大きい傾向が確認された.また,登場人物の性別の影響も見られた.今後の展望として,可愛さの表現が性別や年齢でどのように異なるかを理解することで,より多様なデザインへの展開も期待される.