研究分野
音楽
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OS2-1-2公募発表本研究は,幼児教育や療法における音楽実践を対象に,演奏者の即興的な応答の様相とその背景にある音楽の性質を検討した.3つの事例を分析し,模倣・補完・展開・同期といった応答の型や,音楽的・身体的・文脈的資源の活用が確認された.あわせて,音楽の曖昧性・同時性・連続性が,意味の共創を支える変数として機能している可能性が示唆された.
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P1-19日本の伝統芸能のひとつである雅楽では,まず楽器を持たずに擬音化した曲の旋律を声に出す「唱歌」(しょうが)を通じて,師匠から弟子に楽曲および楽器の演奏技能が伝えられる。なぜ音楽や楽器の演奏技能が主に唱歌によって習得されるのか、唱歌でなければ伝えられないものとは何なのかについて明らかにすることを本研究は目的としている。
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P2-47本研究では,パーソナルミュージックである「人生で最も重要な曲」と「お気に入りの曲」に結びつくエピソードの違いを検討した.多くの楽曲が重複せず,流行曲が多かったことから,楽曲が個人の経験や記憶と結びつくことで固有のものになることが示された.また,選ばれた年齢はレミニセンス・バンプ期と一致していた.楽曲のエピソードは,重要な曲は自己の経験や記憶との結びつき,好きな曲は感情や印象,メディアの影響など外的要因も関与していることが示唆された.
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P2-52実験1では、音楽を聴きながら計算課題や認知課題を行うと、音楽のBPMが正答数に影響を与えるという仮説を検証したが、支持されなかった。実験2では、BPMと心拍数の関係に着目し、参加者の心拍数を基準にBPMを変化させ、音楽を単一の楽器のみに変更して同様な仮説を検証したが、仮説は支持されなかった。今後の研究では、今回の実験で用いた音楽自体に問題がある可能性を考え、参加者が自身で選んだ音楽を聴きながら課題を行うという方法で実験を行う予定である。
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P2-66本研究では,音楽聴取時に生起する主観的時間の感覚と楽曲構造との関連性を明らかにすることを目的として,一対比較法および再生法による聴取実験を実施した.分析の結果,音高推移,和声進行,休符位置といった構造的要素が主観的時間に一定の影響を及ぼす可能性が示唆された.しかしながら,再生法において統計的に有意な差は認められず,本研究のような操作による時間の伸縮効果は限定的であるにとどまった.
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P3-1本研究では,背景音が記憶に与える影響を検討した.実験では,DRM (Deese-Roediger-McDermott) パラダイムを用いて,単語リスト記銘時の背景音が異なると,記憶対象が正しく想起される頻度(正再生率)と,記憶対象でないものが想起される頻度(虚偽記憶生成率)が変化するのかを検証した.その結果,背景音の違いによる正再生率と虚偽記憶生成率の有意な差は認められなかった.
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P3-12本研究では,視覚情報なしで,人が歌声を聴きながらそれに合わせて一緒に歌うとき,その歌声が人間か歌声合成ソフトかによって,歌声の協調パターンが異なるのかどうかを調べた.相互相関分析で,相手と参加者の各歌声の振幅包絡線の時系列相関を比較し,グレンジャー因果性検定で,予期的なダイナミクスを調べた.その結果,視覚情報がなくても,参加者は,人間と歌う方がより先読みして歌唱行動を同期させることが示された.
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P3-18本研究では、クラシックバレエの公演に向けた練習過程における呼吸パターンの変化を分析した。プロの女性バレエダンサー1名に、本番の舞台に向けた約1カ月の練習期間中の前半の1日と本番直前の1日に、バリエーションを踊ってもらった。その際の呼吸音と動作の動画を取得し、吸気、呼気、動作のタイミングを符号化した。その結果、振付の特性や練習の回数に応じて呼吸の長さや動作に変化が見られ、呼吸がバレエ中の表現的な技術と関連する可能性が示唆された。
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P3-42サックスを含む管楽器は音楽様式によって求められる音色が異なることが知られている。本研究では、ジャズおよび吹奏楽をバックグラウンドとする複数の奏者から演奏音を採取し、これらの音色に対する類似度評定実験を実施した。結果、奏者の音楽的バックグラウンドによって音色が顕著に異なることが明らかになった上で、これが8次以上の倍音成分における含有強度と倍音の立ち上がりの時間特性に起因するものであることが示唆された。
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P3-43本研究では、簡素で抽象的な映像素材を音楽に付与することにより、感情にどのような影響を及ぼすかについて調査している。光の粒が画面の上部と下部との間,あるいは画面の周囲と中心との間を移動する映像素材2種について、それぞれ方向と速度を変化させた12種をポピュラー音楽と同時に視聴し、これらに対する覚醒度、感情価、期待感を評定する心理実験を実施している。結果、映像素材を付与によって音楽聴取時に覚える感情をある程度制御できることを示唆している。