研究分野
運動
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P1-7全身連動性は,野生動物などにも見られるものであるが,舞踊の動きの質的な側面に着目してみると,こうした独特の滑らかな全身連動性の動きを伴うものが多い. 本研究では,介入前後で行った3次元動作解析の結果から,「全身連動性ムーブメント・アプローチ」体験は,被験者の柔軟性や心理的側面を高め,パフォーマンスの向上を促進する可能性があることが示唆された.
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P1-42身振り研究において三次元計測は重要であるが、モーションキャプチャ(MoCap)には限界がある。本研究では、4つの人物姿勢推定手法(HPE)を、MoCapと比較することで身振りの三次元推定精度を検証した。結果、2台のカメラとHPEによる手法がもっとも高精度であり、誤差は50mm程度であった。また、クラウド上で利用可能な三次元解析ツールも提案する。本手法はMoCapの代替手段として有望である。
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P1-59本研究では,情報処理速度の向上と時間知覚の変調の関連性を解明するための実験課題を開発する.その課題は,情報処理速度が適度に向上した,フロー状態に準ずる状態を誘発するものである必要がある.課題では,難易度を操作可能なシステムを構築し,モデルから個々人に最適な難易度を推定する.実験では,難易度変化のパターンと情報処理能力の関係を調査した.
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P1-71本稿では、身体性に着目したナレーション技術の向上支援について提案する。本稿執筆時点では構想の域を出ないが、従来余り注目されたなかった身体性や認知的な側面からナレーション技術を捉えてみたい。研究手法としては、主にフィールドワークと行動実験を併用する事を計画している。最終的に、ナレーション技術を定量的・定性的に記述する事と、プロの技術を参照しながらアマチュアの技術を向上させる事が目標である。
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P2-2本研究は,Leeら (1974) による「Swinging Room」をVRで再現することで,呈示する光学的情報を自由に変更しつつ,それらと姿勢制御との関係を詳細に検討することを目的とする.結果として,部屋の揺れる幅であるAmplitudeが実験参加者の姿勢動揺量に影響を与えることが明らかになり,VR swinging roomの実験パラダイムが,現実空間と類似した身体動揺を誘発することが明らかになった.
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P2-7本研究の目的は、健常若年者および高齢者を対象に、トレッドミル歩行中の視覚遅延フィードバック課題を用いた自己身体認知において、感覚運動不一致検出感度および視線行動の特徴を検証することである。結果、健常若年者群と健常高齢者群では感覚運動不一致検出感度に有意差が無く、一方で、視線行動には有意差を認め、健常高齢者群の方が注視時間は短かく、注視回数が多かった。
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P2-10本研究は,集団スポーツを題材に,協調的インタラクションにおける情報処理特性を探索的に検討した.静岡県国体成年女子選抜を対象に3 on 3バスケットボールのフィールド実験を行い,選手間の距離の変動を東海学生連盟三部リーグと比較した.結果,一見混沌とする中でエキスパートのオフェンスチームは,複数の戦術計画に関する集団のトップダウン処理と状況に応じて戦術を柔軟に選択するボトムアップ処理がバランスよく機能していることが示唆された.
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P2-21視覚短期記憶 (VSTM) は,記憶保持中のディストラクタにより偏ることがある.通説では,このバイアスはディストラクタが意識的に知覚される場合のみ生じるとされるが,根拠となる行動実験では,刺激の統制など方法論的課題が残されている.本研究では眼球運動を用い,同一の網膜入力から異なる知覚を誘発するディストラクタ刺激を構築することで,先行研究の課題を克服した.その結果,VSTMバイアスは知覚が抑制されたディストラクタでも生じることを見出した.
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P2-33身体運動の感性評価に関する研究は, 日常的な動きから, スポーツなどのパフォーマンス動作まで, 多岐にわたる分野で進められている. 本研究は, 少林寺拳法の演武動作を題材として, 運動経験が感性評価に与える影響を検討し, 身体運動経験の観点から, 身体運動の感性評価メカニズムに検討を加えることを目的とする. 脳波・瞳孔径計測実験を実施し, 感性評価時の脳活動の違いを探ることで, 感性評価メカニズムの解明を目指す.
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P2-42本研究では,環境の視覚的な複雑さが歩行に及ぼす影響について,加齢要因を含めて検討した.具体的には,VR内で人混みを再現し,参加者はヘッドマウントディスプレイを装着した状態で足踏みするよう求められた.人混みが少ない単純条件と多い複雑条件を比較した結果,若齢者と同様に中高年者でも,複雑条件にて歩行リズムがランダムに近づき身体自由度が増加したと解釈された.今後,高齢者の歩行訓練への応用などが期待される.
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P2-44身体表象とは,人間が自身の身体について持つイメージである.本研究では, 個人内での感覚モダリティの確からしさと身体表象との関係を,視覚と固有受容感覚に着目し検討した.実験では, 身体部位を視覚的にずらして表示したときの身体表象の変化と,個人の固有受容感覚の正確性を測定した.その結果,固有受容感覚が正確でない個人ほど身体表象が変化し,個人内での相対的な確からしさが身体表象変化に影響することを示した.
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P2-51本研究では文楽における三人遣いの協調操作に着目し,主遣いの意図(次に行う“型”動作)を左遣いがどのように人形動作から読み取るのかを分析した.具体的には,左遣いが取りうる型の候補を絞り込む仮説を立て,現役の人形遣いによる型判別課題と人形動作の解析によって検討を行った.その結果,左遣いの判断は固定的なルールに依存せず,人形動作に内在する情報をもとに柔軟に行われている可能性が示唆された.これは文楽の持つ即興性に適応した仕組みと考えられる.
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P2-53視覚情報が操作された状態で身体を動かすことにより,固有受容感覚の調整が生じ,身体を実際の位置とは異なる場所に知覚する現象が生じる.先行研究では参加者は操作された身体部位を直接的に観察していた.本研究では,視点の位置を操作することにより,体幹位置を間接的に操作した.直接的な視覚情報が与えられた腕との比較から,直接的な視覚情報がない体幹の固有受容感覚の調整は,腕よりも弱いことが示唆された.
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P2-55暗闇での直進歩行は困難であり,これは視覚以外の感覚,特に前庭感覚から進行方向を正確に推定できていないことを示唆している.進行方向の推定に用いられる前庭感覚は,歩行中の頭部回転と逆側に眼を動かす前庭動眼反射(VOR)の誘発にも関与している.本研究では歩行中の前庭感覚から推定される進行方向の結果がVORに現れることを示した.具体的には左右のVOR精度(ゲイン)に非対称性が見られ,ゲインが低い頭部回転側へ軌道が逸れることが明らかとなった.
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P2-56本研究では、歌舞伎の女形の女らしさはどのように演出しているのかを現役の歌舞伎役者1名を実験対象者としてモーションキャプチャとインタビューを用いて実験を行った。実験結果をインタビューで得た演技の意識とモーションキャプチャで得たデータを比較し、インタビューで言及された基本姿勢、「振り」、「内股」のそれぞれについて仮説形成を目指した。
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P2-69リフティングの先行研究では,熟達者群・初心者群ともに足関節は底屈し,熟達者群は膝関節をより伸展させ,初心者群は足関節をより底屈させていた.本研究では,経験者5名と未経験者6名により実践的なリフティングを行わせ,Mediapipeを利用して身体動作解析を行った.その結果,熟達者は膝をより伸展させ,足関節を底屈させていた.また,認知的言語化をはじめとする熟達化過程の質を高める介入を検討する必要性が示された.
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P3-2「あっち向いてホイ」におけるゆび指し回避行為が情報に基づいて選択されているのか,情報に基づくならば,それはどのような情報であるかを検討した.その結果,ゆび指し回避行為を相手行為の知覚に基づいて選択する場合には失敗することが分かった.この結果から,知覚に基づいてこの回避行為を選択する際に利用可能な情報があるとすれば,相手動作が行われない「スペース」であるという仮説が導き出された.そして,回避行為における「地」の情報の関与の可能性を示した.
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P3-18本研究では、クラシックバレエの公演に向けた練習過程における呼吸パターンの変化を分析した。プロの女性バレエダンサー1名に、本番の舞台に向けた約1カ月の練習期間中の前半の1日と本番直前の1日に、バリエーションを踊ってもらった。その際の呼吸音と動作の動画を取得し、吸気、呼気、動作のタイミングを符号化した。その結果、振付の特性や練習の回数に応じて呼吸の長さや動作に変化が見られ、呼吸がバレエ中の表現的な技術と関連する可能性が示唆された。
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P3-32本研究では、触覚刺激によって上肢の固有受容感覚に錯誤を生じさせ、その影響が重量感覚および視覚が重量感覚に作用する現象であるPseudo-haptics(Ph)の強度に及ぼす効果を検証した。実験の結果、固有受容感覚によって重量感覚が変化することが示唆され、さらにPhの強度にも影響を与えることが明らかとなった。これにより、従来は視覚中心に行われてきたPhの制御に対し、身体側からの感覚操作によってもその強度を制御できる可能性が示された。
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P3-38共同行為は,複数人が共通の目標を達成するために協調する行為である.本研究では,ラテンダンス熟達者ペアを対象に,身体接触が動作協調と一体感に与える影響を検討した.接触条件では,フォロワーがリーダーにわずかに遅れるまたはほぼ同時の協調が多く,非接触条件ではこの傾向が崩れた.また,接触条件の方が非接触条件よりも一体感の主観評価が有意に高かった.
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P3-44本研究ではアイスホッケーのシュートスキルを対象に,オンラインでの建設的な相互作用がどのような場面において引き起こされるのかについて検討した.分析対象のデータは,実験期間終了後に実施されたアンケートの回答である.結果から,多くの選手が他者の動画を閲覧し,コメントを行っている様子が見受けられた.一方で,他者が自分についてコメントしているかどうかを確認している選手は少なかった.
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P3-49本研究では成人が身体部位や空間上の対象を定位する際の手の伸ばし方(リーチング方略)を系統的に調査した。動きを確認しつつ定位するフィードバック制御の出現頻度と体性感覚利用可能性との関係を明らかにし、幼児での検討の指標確立を目指す。身体・空間指し課題で、定位時間とリーチング方略を分析したところ、対象部位が身体の中心軸に近いほど予測的なフィードフォワード制御を使用し、距離や身体の中心軸から離れるほどフィードバック制御を使用する傾向がみられた。