研究分野
神経生理
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P1-39ジェスチャーが発話産出を促進させる神経基盤についてはよくわかっていない.本研究では日本語母語話者を対象に,ジェスチャー産出と抑制の条件下で30秒間のアニメーションを説明させ,MEG(脳磁図)で計測を行った.ジェスチャー使用条件よりも,ジェスチャー抑制条件において,発話開始直前に脳活動(RMS値)が上昇し,両側前側頭葉の強い活動がみられた.この結果からは,ジェスチャーが発話処理の負荷を軽減させていることが示唆された.
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P1-64本研究では視覚探索課題を2回実施し,その間に幼くてかわいい刺激、幼くはないがかわいい刺激、かわいいとも幼いとも喚起されない刺激を提示して成績を比較した。その結果幼くてかわいい刺激を提示した場合だけでなく幼くはないがかわいい刺激を提示した場合でも2回の課題間に有意な成績の向上がみられた。かわいいと感じる刺激だけでなく幼さのないかわいいと感じる刺激でも視覚的注意課題の成績を上げる効果があることがわかった。
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P2-21視覚短期記憶 (VSTM) は,記憶保持中のディストラクタにより偏ることがある.通説では,このバイアスはディストラクタが意識的に知覚される場合のみ生じるとされるが,根拠となる行動実験では,刺激の統制など方法論的課題が残されている.本研究では眼球運動を用い,同一の網膜入力から異なる知覚を誘発するディストラクタ刺激を構築することで,先行研究の課題を克服した.その結果,VSTMバイアスは知覚が抑制されたディストラクタでも生じることを見出した.
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P2-26テレプレゼンスロボットは新たな遠隔コミュニケーション手段として注目されている。本研究ではその操作訓練体験が身体化感覚に与える影響をfNIRSとアンケートにより検討した。その結果、右腕を挙げる動作映像視聴時の背側運動前野の活動増加および主観評価との正の相関が確認された。テレプレゼンスロボットの操作訓練体験は、操作者にとってロボットを「もうひとつの身体」として捉える感覚の形成に寄与する可能性がある。
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P2-46本研究では、マインドフルネス瞑想の手法である呼吸の瞑想と慈悲の瞑想が社会的意思決定に及ぼす影響の違いを明らかにするために、両瞑想法のトレーニング前後における最後通牒ゲーム遂行中の事象関連電位(P200)を比較した。その結果、正中前頭部におけるP200の振幅が慈悲の瞑想群でのみトレーニング後に減少していた。この結果は、瞑想の手法によって社会的意思決定に関する脳活動に異なる影響を与える可能性を示唆している。
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P2-55暗闇での直進歩行は困難であり,これは視覚以外の感覚,特に前庭感覚から進行方向を正確に推定できていないことを示唆している.進行方向の推定に用いられる前庭感覚は,歩行中の頭部回転と逆側に眼を動かす前庭動眼反射(VOR)の誘発にも関与している.本研究では歩行中の前庭感覚から推定される進行方向の結果がVORに現れることを示した.具体的には左右のVOR精度(ゲイン)に非対称性が見られ,ゲインが低い頭部回転側へ軌道が逸れることが明らかとなった.
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P3-60視覚的視点取得(VPT)は、意図的と自発的に分類される。本研究では、特性共感と状態共感がそれぞれのVPTに与える影響を、4つの実験で検討した。その結果、特性共感は意図的・自発的いずれのVPTにも影響しなかった。一方、状態共感は意図的VPTにのみ影響した。この結果から、個人の持つ共感性よりも、共感する相手によって変化する共感性の強さが、意図を持って対象の視点を取ることのしやすさに影響することが示された。