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: 6. 実験データとその分析 : あいづちを統制したコミュニケーションにおける 助詞 ねの頻度の変化 : 4. 仮説の設定


5. 実験内容

5.1 グループの編成

実験会議には,学生16名が被験者として,また教員1名が実験を行なうもの として,さらに学生1名が時間管理などを行なうものとして参加した.実験会 議を行なうメンバーを,学生2人 (以下,会議参加者と呼ぶ) と教員1人 (以 下,司会者と呼ぶ) とし,これら3名を1グループとして,全部で8グループ を編成した.各会議参加者が所属するグループは1つだけであるが,司会者は すべてのグループに所属する.実験会議において,会議参加者はある議題に関 連して意見を述べる役割を担い,司会者は実験会議の進行役,意見の聞き手, および,あいづちを統制する役割を担う.

5.2 議題の設定

実験会議の議題は「〜はどうあるべきか」という形式のもので,「〜」の部分 はあらかじめ各グループ毎に決めてもらい,議題として事前に司会者へ提出し てもらった.また,実験会議で述べる意見を,実験会議の実施日までにあらか じめ考えておくよう会議参加者に依頼した.

5.3 統制条件

計8つのグループは,それぞれが4つのグループからなるあいづちあり群とあい づちなし群とに分けた.あいづちあり群に所属するグループに対しては,実験会議 の最中,司会者が可能な限りTRP6にあいづちを入れることとした.一方,あいづちなし群に所属するグループに は,発話が一区切りした時だけに司会者があいづちを入れることとした.この 条件はすべての実験会議が終了するまで,会議参加者には知らせなかった.

なお,実験会議を通じて会議参加者に統制条件を知られないようにするために, 各会議参加者をあいづちあり群かあいづちなし群かのどちらかだけに配置した. なぜならば,もし同一会議参加者に両方のタスクを経験させると,統制条件が 知られて有効に作用しなくなる可能性が高くなり,したがって実験に支障をき たす可能性が高くなるからである.

5.4 司会者に許されるあいづち以外の反応

実験会議中,あいづち以外に司会者に許される反応は,以下のように制限され た.

司会者は話題展開に対しては,話題の掘り下げ・話題の転換・話題の統制すべ てに積極的には介入しない.会話が円滑に運んでいない時に,発言の少ない人 に発言を促したり,テーマについて確認したりすることにとどめた.また,司 会者と会議参加者のコミュニケーションを密にとり,会議参加者同士のコミュ ニケーションを疎にし,統制条件が生きるようにするために,必ず挙手を促し, 司会者の方を向いて話すことを適宜示唆した.

5.5 実験会議回数と実験時間

実験会議は,5日連続して行なった.1日につき,8グループすべてがそれぞれ設 定した議題のもとで10分間ずつ実験会議を行なった.ほんの数秒の誤差はあるも のの,会議参加者が意見を述べている途中であっても,10分経過した時点で 実験会議は打ち切った.

最初の2日に行なわれた計16回の実験会議は,会議参加者を実験に慣れさせ るためと,実験実施上の不備を検討するための予備的なものとして位置付け, それらの実験会議内容をデータとしては採用しないこととした.したがって実 質的な実験会議回数は,あいづちあり群とあいづちなし群ともに,それぞれ12回 である.結果として,全実験会議時間は,それぞれ120分,合計240分である.



日本認知科学会論文誌『認知科学』