ゲーム・プレイヤのエクスパティーズ
パネリストの紹介
実近憲昭 (電子技術総合研究所)

私のゲーム(囲碁)プログラム作りは、常に次の二つの動機で駆動されている。
[表の動機]研究の手段として用いる。ゲームにおける人間の思考・意思決定過程を解明することを目的とし、そのプロセスのモデル化を試みる。モデルの正当性を間接的に証明するためにモデルに基づくプログラムを作成し、その効果を検証する。
[裏の動機]強いプログラムを目指す。(手段を選ばず、なりふりかまわず。)

裏の動機は、研究者にとって、直接の目的ではないが、常に、表の動機を推進する原動力となっている。しかし、危険な要素もはらんでいる。
(例)チェスの歴史:
全幅探索の成功は、チェスに関する多くのAI研究の芽を摘み取ってしまった (planning/learning)。幸か不幸か、碁では、このような、コロンブスの卵的な突破口はまだ発見されていない。このことは、AIや認知科学研究者にとって祝福すべきこと(?)かも知れない。

「おいしいところだけ研究したい」について
囲碁プログラムに限らず、AIがらみのプログラムは一般にモジュール化しにくい。すなわち、開発の段階で試行錯誤がくり返されるため、各部が有機的に絡んできて分離しにくくなる。他人の書いたモジュールは、連絡を密にしないと、使いものにならない。このことが、多くの人にプログラムつくりに着手することを躊躇させる最大の原因となっているようだ。

意識下のプロセスのモデル化
生の盤面の石の配置から、着手決定に至るプロセス(局面認識、候補手生成、候補手評価)の大部分は、意識下で行われていると考えられる。この部分のモデル化は、必然的に仮説に頼らざるを得ない。このことが、百人百様のプログラムを生む原因となっている。
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