ゲーム・プレイヤのエクスパティーズ
パネリストの紹介
松原 仁 (電子技術総合研究所)

将棋の強いプログラム、具体的には名人を破るようなプログラムを作りたい。チェスでは全数探索による力任せ手法が成功した。チェスより分岐因子が大きい将棋や囲碁では力任せ手法は有効ではないと思う(松原, 1994)が、それを確認するためには、力任せでどこまで強くなるかを実際に試みる必要がある。これまでにはそういう試みがなされていないので、現在の時点では仮説にすぎない。その仮説が正しいとしたときに力任せの代わりになり得るのが前向き枝刈り手法である。可能な指し手をすべて数え上げ、その一つ一つを評価して評価値が上位のものだけを残して先を読み進めるという前向き枝刈りの手法では、強くするのに限界があると感じている。人間のプロ棋士はそもそも見込みの薄い手は最初から考えない。計算機上でプロ棋士のような(見込みのない手は最初から読まないという)候補手の絞り込みをするためのアルゴリズムを実現したい。その実現のためには局面の認識のプロセスと候補手選択のプロセスを連動させることが必要と思われる。将棋に関する人工知能的な研究は遅ればせながら広まってきた(松原, 1996)が、今後は認知心理学的な研究によってプロ棋士の候補手絞り込みのアルゴリズムに関する知見が得られることを強く期待したい。
松原仁:将棋とコンピュータ, 共立出版 (1994).

松原仁(編著):コンピュータ将棋の進歩, 共立出版 (1996).

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