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[OS01] 記号接地の原動力としての仮説形成推論

9月16日(金) 9:30 - 12:00 会場:A11(情報科学研究科棟1階)
感覚・運動と記号がどのように統合されるのかを問う記号接地問題は,認知科学における中心的問題の一つである(今井,2014).2015年度認知科学会大会OS「身体と記号」では,特に身体の役割を中心にこの問題に迫った.一方でこの問題をより一般的に“grounded cognition”(接地)の問題として捉えるならば,認知主体と環境との関係性や(e.g., Spivey,2007),多感覚情報の内的なシミュレーションとしての記号システム(e.g., Barsalau,1999)等,より広い視点から議論する必要があることも見えてきた(Barsalau, 2008. Annu. Rev.Psychol.59:617–45も参照).昨年のOSを含め,これらの議論は,人間の認知システムが多様で連続的な感覚運動情報をどのように離散的な記号・概念を結びつけるかを説明しようとするものであるが,それを現実世界で可能とするためには,主体が何らかの仮説を生成し認知を行う必要がある.たとえば,子どもは言語習得の過程では,色,形,触感などモノの多様な属性の中でもその命名基準は「形」であるという仮説を持つことが知られている.このような仮説形成の機能が,感覚運動情報と記号・概念とを接地させることを可能にし,言語体系を構築する原動力となる.仮説形成推論と接地との関係をこのように捉えることは,言語習得のみならず,技能の熟達,科学的発見等,多様な議論を記号接地問題として捉えることを可能にする.本セッションでは哲学,比較認知科学,実験記号論,スキルサイエンス,発達心理学と多様な分野の気鋭の研究者をスピーカーに迎え,多様な視点から感覚・運動の接地に関する諸問題を議論する.その背景として仮説形成推論をとりあげ,統一的理解の視点を提供することを目指す.

キーワード:記号接地問題,仮説形成推論,記号過程,言語習得,熟達