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: 3. 結    果 : 手がかり刺激の非空間的属性にもとづく 視覚的注意捕捉 : 1. 本研究の背景および目的


2. 方    法

2.1 被験者

正常な視覚 (矯正を含む) および正常な色覚を持つ大学生8名.すべての被験者は実験 の目的を知らされずに実験に参加した.

2.2 刺激と装置

刺激には緑・水色・灰色を使用し,黒色 (0.07cdm1#1) 背景上に 提示した. 実験で使用する全ての色刺激は,20cd/m1#1 の灰色を基準色とした 交照法 (Flicker Photometry; Ives, 1912) により, 被験者ごとにあらかじめ主観的等輝度を測定した.その結果, 刺激に用いた緑,水色,灰色の平均輝度は, それぞれ,20.11cd/m1#1 (2#2, 3#3, 4#4),22.32cd/m1#1 (5#5, 6#6, 7#7), 20.43cd/m1#1 (8#8, 9#9) となった. なお,刺激に緑および水色を選択したのは,交照法による主観的等輝度の決定 が他の色よりも容易に行うことができ,被験者間のばらつきが小さいためで ある (大橋, 1997).

注視点は視角 10#10 の 灰色の正方形でディスプレイ中央に 提示され,その左右いずれかの視角約 11#11 離れた位置にターゲット刺激が 提示された.ターゲット刺激は、緑または水色の正方形 (視角 10#10) であり,手がかり刺激はターゲット刺激を上下左右に囲む位置に,4つ の正方形 (それぞれ視角 12#12,ターゲット刺激の 輪郭線との相対距離 13#13) で構成された (図1参照).手がかり刺激の 色には,ターゲット 刺激と同じ緑,水色に加えて,統制条件として灰色の刺激も用いた.これらの刺激 は17インチディスプレイ (MITSUBISHI RD-17G II) に提示し, パソコン (NEC PC-9801 RX) で制御した. 多階調 (R,G,Bそれぞれの256階調) の色刺激を提示するために, カノープス社製CVI-98を使用した.反応時間はJAC製タイマボードを用い,1msec単位 で測定した.被験者の頭部はあご台により固定され,被験者からディスプレイまでの 観察距離は約60cmであった.

図: 刺激布置と実験手続き
14#14

2.3 手続き

被験者の課題はターゲット刺激の色の弁別である.ターゲット刺激は緑,水色の いずれかで,注視点を挟んで左右どちらかの特定の位置にランダムに提示した (図1). 被験者はターゲット刺激の色に応じて左右どちらかのキーを押すように指示された. 色とキーとの組み合わせには被験者ごとにカウンターバランスをとった.ターゲット 刺激は全試行中90.3%提示され,残りの試行はキャッチトライアルとして提示し なかった.緑,水色のターゲット刺激は等確率に提示された.手がかり刺激と ターゲット刺激の提示位置は同側提示と反対側提示が 15#15 で 構成され,両側に手がかり 刺激が提示される条件を中立条件として,反対側提示と同比率で加えた.

各試行は,まず短い警告音と同時に注視点が1500〜2500msec間提示された.続いて 左右のどちらかの位置に手がかり刺激が53.19msec提示され,16#16, 17#17, または,656.01msecの刺激提示時間間隔 (ISI) をおいて,ターゲット刺激が 提示された.したがって,ターゲット刺激提示に対して手がかり刺激が先行する 時間間隔 (CLT) は,それぞれ159.57msec (short CLT),460.98msec (middle CLT),709.2msec (long CLT)であった.ターゲット刺激は被験者の 反応まで最大2000msec提示した.いずれの提示時間も,PC-9801の 垂直同期周波数 (56.4Hz) に同期させて設定した.



日本認知科学会論文誌『認知科学』