大会情報・スケジュール

以下は暫定スケジュールです.
同時期に静岡大学浜松キャンパスで他の学会が予定されていますので,ご宿泊先は早めに確保いただくことをおすすめいたします.
ご滞在先を探される際には,浜松・浜名湖ツーリズムビューローによる宿泊施設一覧が大変便利です.


9月5日(木)[大会第1日]
9月6日(金)[大会第2日]
  • 口頭発表
  • プログラム委員会企画シンポジウム「深層学習時代に認知科学の歴史と価値を見つめなおす-主観を扱う科学としての認知モデリングの未来-(予定)」
  • フェロー講演
  • ポスター発表
  • 懇親会
9月7日(土)[大会第3日]

オーガナイズド・セッション

OS01: 圏論による認知モデリングの可能性:ホモ・クオリタスとしての人間理解へ向けて

オーガナイザ:日高昇平(北陸先端科学技術大学院大学),高橋康介(中京大学)
日程:9月5日(木)
公募:なし
概要: 圏論とはどんな数学的な理論であるかを一言でいうならば、数学的な概念がなぜそのように名前が付けられているか、その理由を記述する理論であると言えるだろう。あるいは我々が名前を付けたくなるような数学的な概念が共通して持つ構造を記述する理論が圏論と言ってもよいだろう。圏論(の一つの解釈)によれば、名前を付けたくなるのは「何らかの構造が存在し、かつ一意的に定まるから」であり、その性質を普遍性(universal property)と呼ぶ(普遍性を主題とした圏論の入門書として「ベーシック圏論」(T. Leinster著, 土岡訳・斎藤監修))。こうした「一意に存在する」構造が決まるとき、その多くが“自然な”関係性を持っており、これを自然変換と呼ぶ。圏論はこの自然変換を定義するために、その基礎となる圏、射や関手と言う概念を整備し、それらの関係を明示するための理論である(Mac Lane 著, 三好・高木訳「圏論の基礎」)。
 数学者の中にも圏論は抽象的でつかみどころのない理論という評価もある一方で、近年、意識のメカニズムの試み(Tsuchiya, Taguchi & Saigo, 2016)や比喩の理論化(Fuyama & Saigo, 2018)、など認知科学分野の研究対象への応用も試みられつつある。こうした潮流をうけて、2019年1月に本OSの前段として同名のワークショップ(WS)「圏論による認知モデリングの可能性」を開催した。このWSでは圏論を用いたモデリングを試みる認知科学・人工知能・数学の研究者を招き、認知科学・認知心理学などの知見を説明する枠組みとしての圏論の可能性を議論し、好評を博した。
 本オーガナイズドセッション(OS)は、企画者の日髙・高橋が第34回大会より開催してきた「ホモ・クオリタスとしての人間理解に向けて」の第3弾であり、引き続き人の知覚、錯覚、幻覚、物体認識、などの「意味を見出す本性を持つ者」としての研究に焦点を当てる。今回は特に、この方向性で認知現象をとらえるために、圏論を基礎とする認知モデリングが、既存の方法論に比べてどのような利点があり得るか探り、議論を深める事を目的とする。
 本OSでは、こうした問題意識を念頭に、圏論のチュートリアル講演を含め、数学、認知計算論、人工知能、心理学、などの分野における気鋭の論客を招待し、テーマを絞ったオープンディスカッションを行う。

OS02: JDM: Social perspectives and issues

オーガナイザ:本田秀仁(安田女子大学),中村國則(成城大学)
日程:9月5日(木)
公募:4件
概要: 判断・意思決定(Judgment and Decision Making; JDM)の研究は,個人の心理・認知プロセスに焦点をあてた研究が多いが,「社会」という視点からも様々な研究が行われている.例えば,集団意思決定や集合知といった個が集まった集団のダイナミクスを扱う研究,また社会的な問題について判断や意思決定文脈で考える研究なども例として挙げられる.本セッションでは,このように広い意味で「社会」を捉える.
 「社会」という視点は,個の認知に焦点をあてただけでは見えにくい人間の認知メカニズムを明らかにし,また現実世界で生じている社会的問題に対して重要な知見を与えている.例えば,集団のダイナミクスに関して,近年はクラウドソーシングなどを用いた大規模な行動実験が実施できるようになり,今まで検討が難しかった問題を議論できるようになった.また,社会的な問題に関して,裁判員制度により司法の場に立って量刑判断を行う,レビューサイトを通じて商品やサービスを評価するなど,これまでは一部の専門家のみが判断や評価を行なっていた場面に専門家ではない一般の人の判断や評価が反映されることが増えてきている.
 これらの判断の多くは直感的であり,そのため「根拠は持たないがはっきりとした考えがある」ものであることが多い.考えようによっては重要な社会的判断が有象無象の“素人考え”の寄せ集めになってしまっているとも受け取れる.しかし,「認知の社会性」という観点からすると,それはある意味認知の本質だと捉えることができるという見方もある.例えば昨年話題を呼んだSloman & Feinbachの「Knowledge Illusion」(邦訳「知ってるつもり:無知の科学」)では,その見方が詳細に論じられている.
 「社会」という視点からの研究自体は古くから存在しており決して斬新なものではないが,新たな手法や視点からの知見が蓄積されつつある現在,その意義について改めて考えることで,さらなる可能性と限界について議論できるだろう.本セッションでは,広い意味での「社会」という視点から,人間の行う判断や意思決定を通じて認知について議論を行い,認知科学研究が現実世界で生じる問題についてどのような貢献ができるのか,考える場としたい.
 本セッションでは,公募発表として3~4件を募集する.上での述べたような,広い意味での「社会」を考えるきっかけになるようなトピックであれば,扱う研究内容は限定せず,歓迎する.また研究手法(実験研究,フィールドワーク,理論的考察等)も特に問わない.

OS03: 日本の物語論と美を感じる心

オーガナイザ:福島宙輝(九州女子大学),小野淳平(デジタルアーツ仙台),只木琴音(千葉大学),小方 孝(岩手県立大学)
日程:9月5日(木)
公募:5件
概要:
●セッションの概要と目的
本セッションでは,物語論や芸能,芸術,人文学的な文脈での感性や美に関する意識に関する研究者が,若手研究者に向けて各自の研究領域の動向を話題提供する場を企画する.
本セッションの目的は,認知科学,人工知能領域の若手研究者が,人文領域の知見をフォローし,自身の研究に批判的に応用できるようにすることである.
物語論や感性,芸術,美を感じる心を研究しようとするとき,認知心理学あるいは実験心理学的なアプローチだけでは片手落ちである.認知科学がより豊穣な研究領域として発展するためには,美学や哲学,文学をはじめとする人文領域の研究の蓄積を積極的に取り入れる必要がある.
しかし認知科学や人工知能研究の周辺を主戦場とする若手研究者にとって,広範かつ長い研究の蓄積を持つ人文知をフォローすることは容易ではない.本OSは,認知科学会の若手研究者が人文知を自家薬籠中の物として用いることができるようにすることを目指し,物語論を中心として人文学の諸領域の研究動向を紹介する場を企画する.
セッションの構成は弁証法的な議論とする.すなわち数件の研究発表にたいして,周辺分野の研究者が積極的に反論と新たな研究の展開の指摘を行う,物語生成の認知科学のための議論の場を目論むものである.

●セッションについて
本セッションは,各自の研究発表よりも,むしろ認知科学による物語研究や人文科学領域に関する議論の場となることを重視し,150分間のセッションを通じて,弁証法的な議論展開を行うことを目指す.
前提として,本セッションは聴衆および反論陣からの反対論評を中心にするため,参加者は事前に発表者の原稿を熟読していることを求める.発表者は聴衆が自身の原稿を読んでいることを踏まえ,通常の研究の説明的発表ではなく,研究のキモと課題を中心に発表を行う.
以下にセッションの流れを示す.

【第1ターム(正)】発表者は各15分の持ち時間で,自身の研究のキモの報告に加え,研究上抱えている課題や,新たな展開を難しくしている点を洗いざらい提示する.なお発表順は当日抽選とし,2人目以降の発表者は,それ以前の発表者の発表を踏まえ,関連性や思想の差異を論じるものとする.
発表中の野次は可とするが個別の質疑は行わず,次のセクションにおいて全体質疑を行う.ここでは会場を中心に質疑を募り,とくに異分野からの切れ味鋭い論評を期待したい.

【第2ターム(反)】気鋭の若手反論陣営が一人5分の持ち時間で発表に対して建設的な攻撃,研究としての不足点の提示を行う.ここでは1人の発表者に対して攻撃をしても良いし,全体に対するコメントを投げかけることも可とする.ここでは,反論パネル6名に加え,指名反論者としてキュレーターもしくは発表者が当日の聴衆から数名を指名し,合計8名の陣営で発表者を土俵際に追い詰める.

最後に【第3ターム(合)】として,再び発表者が登壇し,セッションの議論を通じて得た新たな研究の視座,展開の表明,あるいは反省の弁を論じる.

●発表者
発表者:小方 孝(岩手県立大学:物語論), 福島宙輝(九州女子大学),新田義彦(日本大学:文学),小野淳平 (デジタルアーツ仙台:日本的物語生成), 佐々木淳(AOI TYO Holdings)
反論パネル:阿部明典(千葉大学),荒木健治(北海道大学),福島宙輝(九州女子大学),林侑輝(千葉大学大学院),伊藤拓哉(岩手県立大学),佐山公一(小樽商科大学)
キュレーター:只木琴音(千葉大学大学院)
※発表者は予定であり,変更の可能性が大いにあります.
※上記以外の発表者,および反論パネルもひろく募集しております.奮ってご投稿ください.

OS04: 実践しながら研究する:認知科学とソーシャルデザイン

オーガナイザ:岡部大介(東京都市大学),郡司菜津美(国士舘大学),青山征彦(成城大学)
日程:9月5日(木)
公募:3件
概要: 各大学,研究機関において,知の応用は大きなテーマのひとつになっている.「実践をしながら研究する」ことが広がり,それぞれの研究者がユニークな活動(=研究)をデザインしている.そのような取り組みを見ると,問題解決のために研究者が出向いて,単に現場に知見をあてはめるだけにとどまらない.研究者自身も当事者として参加し,コミュニティの中に新しい価値や希望をつくりあげる実践が展開されている.
以上のような背景をふまえ,本OSでは,研究者自身がモノ,システム,プログラムなどのデザインに加わり,その効果や意義をコミュニティのなかで確かめる研究に焦点をあてる.認知科学は,人の認知過程を探究する上で,その黎明期からわたしたちの「人的ネットワーク」や「暮らし」のデザインに寄り添ってきた.「ソーシャルデザイン」という言葉が人口に膾炙しつつある今,認知科学の知がどのような価値を提供できるのかを議論する意義は大きいと考える.私たちのソーシャルな活動に認知科学はどのように切り込めるのか.本OSを通して議論する.
本OSでは「実践をしながら研究すること」や「ソーシャルデザイン」に関わる発表を期待する.これらに関心を寄せる研究者が集い,実践に関する情報,組織やコミュニティへの還元の方法,実践に基づいた学術論文の執筆といったことがらの交換ができる場を組織することで,発展的な「縁」が形成されることが期待される.(なお本OSは,認知科学会教育環境のデザイン研究分科会の主催で実施する.)

OS05: 脳・身体・感情

オーガナイザ:大平英樹(名古屋大学),竹内秀明(岡山大学),高橋英之(大坂大学),源河 亨(慶應義塾大学),中村靖子(名古屋大学)
日程:9月5日(木)
公募:なし
概要: James(1884)の情動末梢起源説やSchachterとSinger(1962)の情動二要因説などのように、身体を感情の基盤に置く発想は心理学においては一般的である。また、哲学におけるPrinz(2004)の情動身体知覚説や、神経科学におけるDamasio(2004)のソマティック・マーカー仮説などでも、感情における身体の役割が重視されている。近年、こうした感情の身体性に関する議論は、Barrett(2015, 2016, 2017)の心理学的構成主義とFristonとSeth(2012)の内受容感覚の予測的符号化説が結びつくことにより、新たな展開を見せている。これらの理論家は、身体状態の変化が脳におけるベイズ的計算により符号化されることにより感情の原初状態ともいうべき表象が生じ、それを主として言語の機能により概念化することで主観的に経験される情動が生じると主張している。
 こうした新たな感情観は壮大な理論的視野を持つので、既存の個別の研究分野だけでは、そこにアプローチすることは難しい。そこで本企画では、学際的な視点から、脳と身体の相互作用から如何にして感情という現象が創発され、それが如何に我々の精神状態や行動を規定するのかを考えることを目的としている。大平(心理学)は、身体内部の信号である内受容感覚の処理により、行動や意思決定が制御され感情が創発される現象を紹介する。竹内(神経科学)は、広範な動物種の脳において感覚・認知・運動を共通に制御する行動状態系と呼ばれる神経系の機能を紹介し、それが愛憎の感情を生むメカニズムを検討する。高橋(認知科学)は、“エージェント”による系への触媒的介入に注目することで、社会と感情をつなぐモデル構築のための新しい方法論について議論する。源河(哲学)は、身体反応よりも感情に伴う認知的要素(思考や判断)が重視されてきた哲学において、感情の身体性と認知性を調停させようとする近年の動向をPrinzの理論を中心に説明する。中村(文学)は、現実にはあり得ない状況設定であっても登場人物に感情移入し非日常な感情が惹起される文学経験を例として、文学による感情の創作、精緻化、拡張について考察する。

OS06: 新しい認知科学には何が必要か

オーガナイザ:諏訪正樹(慶應義塾大学),青山征彦(成城大学),伝 康晴(千葉大学)
日程:9月7日(土)
公募:2件
概要: 認知科学は、果敢に実践の場に出て、人が生きているフィールドや現場にしかと向き合うことに挑戦すべきであると感じる(理由は後述)。フィールドや現場に出るや否や、研究者は、現実世界の複雑系に向き合うことを余儀なくされ、研究方法論上の様々な課題に直面するはずである。研究者自ら、リアルな実践とともに生きる存在として、その実践の経験をどう観察し、振り返り、記述するのがよいか?そもそも、実践における何を研究の対象として焦点化し、どういった様相や側面に着眼するのか? 従来頻繁に取りあげられてきた研究対象や、従来型の研究方法論に固執せず、今、新しい認知科学のあり方を模索することが本OSの目的である。
20世紀初頭の行動主義への批判を経て確立された認知主義は、情報処理モデルに基づく条件統制された実験と計算機シミュレーションによって人間の認知を探究する「科学」的な方法論を手にしたと考えられてきた。こうした方法論によって明らかにされた知見が多くあるのも、事実である。
しかし、この方法論は、そのようなパラダイムにうまくあてはまらない認知の現象を切り捨ててきたとも言える。そこで切り捨てられたのは、日々の生活の中に埋め込まれた知の姿であり、人生の長期間に亘って学習される知の様相であり、フィールドや現場における実践で発揮される知である。別の言い方をすれば、状況依存性、個別具体性、個人固有性、一回性、偶然性、突発性など、人が生きていく中で向きあわざるを得ない現実世界の多くの要因が見過ごされてきたとも言える。これらを切り捨てたまま、「知」の豊かな諸相を解きあかすことはできないであろうし、ひいては、よりよく生きることに資することにもつながらないであろう。
こうした問題意識は、ブルーナーによるナラティブモードおよび民俗心理学の提唱、サッチマンやレイヴによる状況への注目などにその原型を見てとれる。特に、ブルーナーは、生きることの意味や価値を問うこと、そのために生きる人が自らの生を語ることが、学問の礎を為すはずであると説いた。IT、ビッグデータ分析、AIなどコンピュータ技術革新が凄まじく進展する潮流の中で、ややもすると、その一元的な価値観で心の世界をも扱おうとする傾向も現れ始めている。今、この世の中だからこそ、生身の人の生きる姿に真摯に向き合う学問的方法論が求められるのではないか?
近年の認知科学はこうした指摘とは別の方向へ向かっているように感じられる。本大会のOSを通じて、この問題意識を共有し、議論することは意義が大きいと考える。

OS07: ドラえもんを題材とした日常になじむ知能の探索

オーガナイザ:大澤正彦(慶應義塾大学),大澤博隆(筑波大学)
日程:9月7日(土)
公募:なし
概要: 「ドラえもん」はほとんどの日本国民に知られる国民的なSFであり、未来世界から来たロボットや、未来の道具を元にした物語が描かれている。本OSは「ドラえもん」を題材とすることで、日常になじむ知能の探索の足がかりを作る事を目指す。
作品で描かれる世界観は、作者の藤子・F・不二雄氏が “すこし” “ふしぎ”(SF)の世界だと述べているように、現実世界から飛躍している点が限定的である。例えばストーリーは人間の欲求充足に沿っており、多くの読者に共感を得られやすく、受け入れられやすい形で想像力のアップデートをはかれる。転じて現代の我々の生活になじむような知能の在り方、インタフェースの在り方を議論することが可能である。
今回の開催においては主に2つ立場から議論を展開する。1つは、ドラえもんに触発されて作成した人工物と人とのインタラクションデザインに関する議論を展開する。例えば、”ドラえもんをつくる”と言った場合に、それはどのような意味合いで、どのような営みであるかを議論する。もう1つは、SFから実世界の知能研究に与えられる示唆について、研究者とSF作家を交えたパネルディスカッションによって広く議論する。当該パネルディスカッションはSF作家クラブの協力を得て行う。

OS08: プロジェクションの理論とモデルへ向けて

オーガナイザ:嶋田総太郎(明治大学),久保南海子(愛知淑徳大学),川合伸幸(名古屋大学)
日程:9月7日(土)
公募:4件
概要: 「心的表象がいかにして世界の中の何かを『意味する』ことができるのか」ということは、認知科学の重要な問題の一つである。これまでにもさまざまな認知モデルが提案されてきたが、プロジェクションは、主体が積極的に世界に意味を与えるという、内から外への能動的な認知プロセスを強調する点でこれまでの認知モデルとは異なる。過去の大会においても、プロジェクション・サイエンスに関する企画を行ってきたが、本大会では「プロジェクション(投射)」という概念を用いるとよりよい説明ができそうな現象は何か,あるいはプロジェクションでなければ説明できない現象は何かを中心的なテーマに取り上げる。
 「プロジェクションでなければ説明できない現象」として、たとえばお墓参りが挙げられる。通常、墓石は何の変哲もない直方体の石であるにも関わらず、われわれはそこに先祖の霊を感じ、手を合わせて祈る。ここには従来の認知理論(特に知覚から認識へというボトムアップの考え方)では説明できないヒトの心に特有の認知があり、プロジェクション、すなわち自己の脳内にある表象(=意味)を外界に投射することによって世界を認知するというプロセスの関与が認められる。他にも、モノマネやカリスマ、自己イメージ、物語、フェティシズム等々、そのような認知現象は多く存在する。本OSでは、このような現象についての研究・試論などを公募し、そこでどのようなプロジェクションが行われているのかについての考察を加えることによって、プロジェクションの理論とモデルの構築というプロジェクション・サイエンスの次なるステージへの発展を目指す。
 本OSでは、企画者発表と4件程度の口頭発表(公募)の構成とする。さらに、「プロジェクションの理論とモデルへ向けて」というタイトルでパネルディスカッションを企画する。ディスカッサントには横澤一彦先生(東京大学)、鈴木宏昭先生(青山学院大学)を迎え、それ以外に公募発表者を含めて6人程度で考えている。ディスカッサントには、理論・モデルという観点から、発表全体に対するコメントをもらい、そこから聴衆を含めた全体討論へ広げていきたい。

OS09: ゲーム研究の新展開と認知科学

オーガナイザ:伊藤毅志(電気通信大学),松原仁(はこだて未来大学),山本雅人(北海道大学),狩野芳伸(静岡大学),大澤博隆(筑波大学)
日程:9月7日(土)
公募:3件
概要: パズルやゲームを題材とした研究は、問題解決や社会心理学などの認知科学の分野において重要なベンチマークとして機能してきた。これらの知見は、人工知能の分野でも応用され、人間の思考と人工物の思考の比較や相互作用について議論するツールとしても重要な役割を果たしている。AlphaGoの登場で、ほとんどの二人完全情報確定ゼロ和ゲームで人間を上回るパフォーマンスを見せるAIが実現できることが示されたことで、ゲームAIの研究にとって、非常に大きな革新がもたらされている。これによって、ゲーム研究は大きく2つの方向性に分化しつつある。
 一つは、まだ人間の知能に及ばない不確定ゲームや不完全情報ゲームなどのより実環境に近いゲームを対象にしたゲームAIの研究であり、もう一つは、十分に強くなったゲームAIを学習支援や理解促進などの分野に応用しようとする研究である。
 前者の研究では、「人狼」に代表されるような高度なコミュニケーション能力を必要とするゲームや「カーリング」のように実環境に対する体感と戦略的思考を組み合わせたゲームなどが挙げられる。これらの研究分野ではプレイヤの発話や仕草に焦点を当てた研究やプレイ中に体感したことを戦略に活かしていく高度な身体的スキル獲得に関する研究も求められている。また、後者の研究分野においては、AIが導く思考過程をどのように人間のプレイヤにわかりやすく提示するのか、人間と高度なAIとのコミュニケーションに求められる認知的な課題も必要とされている。
 本セッションでは、上述の人狼やカーリングなどの新しいゲーム研究を例に挙げて、近年のゲームAIの発展に伴う新たな認知科学的研究テーマについて議論していく。また、広い意味でのゲーム(ボードゲームに限らないデジタルゲームやスポーツなど)を題材とした認知科学研究についても展望していく。

OS10: 言語コミュニケーションにおける階層性と意図共有の統合:人間性の進化的理解へ向けて

オーガナイザ:橋本 敬(北陸先端科学技術大学院大学),小林春美(東京電機大学),岡ノ谷一夫(東京大学)
日程:9月7日(土)
公募:2件
概要: 人間の言語コミュニケーションは.階層的に構造化された記号列により複合的概念を構築し,他者と意図を共有するという特性を持つ.
 前者はたとえばunlockableという単語に端的に表れる.この単語をunlock+ableと考えると「解錠可能」,un+lockableとすると「施錠不可能」という異なる意味になる.解釈する側からは,これは{{un, lock}, able}か{un, {lock, able}}のどちらの階層構造と見るかによるが,発する側はlockにun(否定),able(可能)を合わせて複合的概念を作っている.これは複数の単語で文を作る場合でも同様である.すなわち,言語を用いることは複合的で複雑な概念を階層的に構築していることになる.
 後者の端的な例は「醤油取れる?」という発話である.これは字義通りには「醤油を取る能力があるか」という質問だが,通常そのようには解釈されない.この発話を受けた人は「醤油を取って渡して欲しい」という言外にある話者の意図を理解し,それに添って行動するだろう.すなわち話者の意図は聞き手と共有される.実際には指差しや視線によっても意図を共有できる場合が多く,意図共有は言語というよりコミュニケーション全般の問題である.だが,言語によって複雑な意図を伝達できるという点が人間の言語コミュニケーションを特徴づけている.
 階層性と意図共有が合わさって言語コミュニケーションを実現させていることは,一種の人間の本性であろう.両者はそれぞれ様々な観点から研究されて来ており,その解明は認知科学にとっても課題であるが,両者の統合的理解はまだ不十分である.たとえば,人間は自他の心の入れ子構造をある程度の深さまで理解できるが,言語の階層性によって心の入れ子構造が理解可能になるのか,あるいは,後者の理解が前者を可能にしたのかも未解明である.
 階層性と意図共有がいかに現れヒトにおいて統合されたかを言語の起源・進化の最重要問題と捉える共創言語進化学(http://evolinguistics.net)では,この統合により累積的な概念構築すなわち共創が可能になったと考える.本OSでは,階層性 and/or 意図共有の研究に関わる,または興味を持つ様々な分野の研究者が,両特性の統合的理解について,自身の研究に基づきつつスペキュレーションも含めて検討する.そして,両特性とその統合に至る生物進化,およびその統合による言語とコミュニケーションの構造・形態の文化進化という進化的観点から,人間性の本質に迫る議論を行いたい.

OS11: 認知科学のモデル論 ―神経表象からダイナミクスまで―

オーガナイザ:林 勇吾(立命館大学),寺田和憲(岐阜大学),大森隆司(玉川大学)
日程:9月7日(土)
公募:なし
概要: 認知科学における近年の認知モデリングの研究は,大きく変化してきている.実績が多くあるACT-Rなどプロダクションシステムにもとづく研究に加え,脳神経系の特性を模擬するニューラルネット,ベイズなどの確率モデルによる人間の認知機能の解明の流れ,さらにはより数理的な機械学習を用いたモデル構築手法もあり,認知科学の周辺領域外とも連携しながら発展している.その応用は,神経表象から意思決定,さらに対人のインタラクション,集団のダイナミクス記述といったよりマクロなレベルにまで広がっている.一方で,認知科学におけるモデル構築には,実験データに基づく検証も重要である.先にモデルを作りそれをサポートするエビデンスを通じて収集・検証するモデルベースのアプローチと,行動実験からのエビデンスを一般化してモデルを構築して計算機上で再現するボトムアップのアプローチがあり,このような方法論の議論もまた必要である.今回のOSでは,個体の領域から社会性の領域まで,認知モデルの範囲をやや広めに設定し,実験デザイン・データ収集・分析・モデル化・数理モデルまでの範囲を数人の招待講演者および依頼ポジションによるトークでカバーし,聴衆に認知モデルの範囲と手法を認識していだたく機会となることを目的としたい.

OS12: 共創認知科学に向けた研究者と当事者の対話:当事者参加型研究と先端研究戦略

オーガナイザ:伴 睦久(東京大学),熊谷晋一郎(東京大学)
日程:9月7日(土)
公募:2件
概要: 近代科学は経験的な方法論による普遍的な知の創出を企図したした方法論的イノベーションであり,認知科学も科学的アプローチを駆使することで,その知のフロンティアを切り拓いてきた.しかし科学哲学者であるサンドラ・ハーディングは科学的手法のみによって得られる客観性をあえて「弱い客観性」と呼び,これに加えて多様な視座からの検証を経た客観性を「強い客観性」と呼んだ.この主眼は共通の近代科学においては掬い取ることが困難な「理解」を恢復を試み,現代における新たな方法論的イノベーションを志向するものと考えることもできよう.
本OSでは認知科学における方法論的パラダイムシフトに向けた,近年大きな発展を見せている「当事者主導型研究」(User-led Research)や「参加型研究」 (Participatory Research) に関するリサーチ・オン・リサーチを題材として,研究者と被験者の壁を超克した対話の場である.従来型の科学において,科学者が観測・分析に主体的に取り組んで客観的な知識を供給し,被験者はあくまでもその営みの対象・客体と位置づけられてきたが,しかしひとりひとりの人生においてまさにそのひと自身が主体であり,当事者もまた問題や仮説に関するエキスパートである.それぞれを自律的な個人,自律的な研究者とみなしたときに,どのような共同創造が可能となるか.本研究セッションにおいては当事者・科学者・実務家によるクロストーク,公募研究者とのダイアローグ,会場の参加者も参加してのオープントークを通じて,共創認知科学の確立に向けた研究戦略及び方法論的イノベーションの方策をともに探求する.

OS13: 正解のない問題にいかに対処するか

オーガナイザ:小橋康章(株式会社大化社),齋藤洋典(中部大学)
日程:9月7日(土)
公募:3件
概要: 日本認知科学会も社会の超々高齢化の波の中にあり、創立時の会員も多くが高齢者となっている。
高齢化と情報化の進展する社会にあって、例えば認知症になった親の幸福を子としてはどう考えたらよいか、言ってもわかってくれない相手にどう対処したらよいかといった、認知科学の中でもこれまで全く触れられていなかった問題が生じる。こうした問題は認知科学研究者自身の身にも降りかかっており、一方では通常の、あるいはこれまで常識とされてきた研究や学会活動を困難にする反面、研究や認知的な活動一般への今までになかったアプローチを追求する新たな動機づけと機会を提供している。
高齢の研究者が研究者コミュニティにどう貢献できるかは今後極めて重要な問題になると思われるがこれといった答えは得られていない。
こうしたことを背景に「みんなの認知症情報学会」の理事長である竹林洋一氏をお招きして市民情報学のアプローチをご紹介いただくとともに企画提案者らが考える認知科学の難問を投げかけ、様々な意味で正解のない問題にどう対応対処していくかを公募発表者や一般参加者を交えて議論したい。
全体構成
1.依頼発表(2件)25分発表+5分質疑 60分
 齋藤洋典(中部大学)正解のない問題を考える意味
 竹林洋一(静岡大学)「市民情報学の方法(仮題)」
2.公募発表(3件)15分発表+5分質疑 60分
3.参加者ディスカッション 30分
 公募でもこのような趣旨に合う発表を歓迎する。
 以下のようなテーマはその具体的な例だが、これらに限定されるわけではない。
 ○正解のない問題への挑戦に誘う方法
 ○深く知りたいと願う心の動き
 ○意見や主観的な記述の相互関連づけ
 ○対立する意見のデータベース
 ○高齢者と若年者の傍目八目的な関係
 ○高齢者と若年者の協働がもたらす異質の融合による創造性
 ○IoTによる高齢者支援の正当性
 ○高齢者自身による加齢と長寿社会の一人称研究と若年者によるレビュー
 ○高齢化の進展によって向上する認知能力

OS14: インバウンド観光客の情報環境(言語景観・意味景観)とのインタラクション:多言語・多文化社会における ICT 支援を視野に

オーガナイザ:原田康也(早稲田大学),伊藤 篤(宇都宮大学),平松裕子(中央大学),森下美和(神戸学院大学)
日程:9月7日(土)
公募:2件
概要: 人は視覚・聴覚・触覚などの五感を通じて外界から情報を得て、過去の経験と記憶に依拠しつつ情動的あるいは言語的解釈を交えて、自分の行動を調整し決定する。同一の環境に置かれても、個人がそこから得る情報はそれぞれ異なる可能性がある。同一の教科書を用いて一斉授業の教室で学んでいても、学習者によって何をどれだけ深く学ぶか異なっていることは、教員のよく知るところである。環境と人間との関係を単なる情報の受容ではなく、行動主体としての人間の外部環境とのインタラクションとして理解する必要がある。
 2019年に東京・神戸を含む国内12都市で開催されるラグビーワールドカップ・2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック・2025年に大阪で開催される万国博覧会などさまざまな国際的イベントが予定されているが、いわゆるインバウンド旅行者は2018年に3000万人を超え、2020年には政府の目標である4000万人に届くことが見込まれる。環境庁は国立公園満喫プロジェクトを開始し、日本の豊かな自然をインバウンド旅行者に紹介する試みを開始した。インバウンド観光客の中にはリピータも着実に増えており、定番の観光地だけでなく、日本各地の食事・風景・スポーツイベント・芸術展示・体験的イベントなどを求める外国人も多い。駅などの公的空間や飲食店・店舗などの案内板やサイネージなどに多言語による表示やピクトグラムを目にし、複数言語による列車アナウンスを聞く機会も増えている。人工知能に対する期待と関心も含めて自動翻訳の質的な向上も期待され、スマホやタブレットを使って日本語による掲示や飲食メニューを自国語に翻訳して理解しようとする旅行者も多く、音声翻訳機も各種宣伝される時代となっている。しかし、日本語から英語への翻訳であっても様々な点で不正確・不適切な結果が表示されることがあるが、日本語から中国語の翻訳では、意味が通じない・内容的に間違っているなど、本質的に使い物にならない・使ってはいけない翻訳結果が得られる場合もある。地元の住民にとっても国内旅行者にとってもインバウンド観光客にとっても安全・安心で快適な情報提供とは何か、ホスピタリティー・コミュニケーションのあり方について、観光開発の観点からの知見に加えて認知科学的検討を加えることは、実務的に有効な成果が期待でき、認知科学の新しい応用的・実践的研究分野の開拓につながることも期待できる。
 本OSでは、多言語情報を含む町並みや屋内デザインの見え方などの言語景観・意味景観、飲食物のメニューや緊急避難時のインストラクションの翻訳の正確さと適切さ、ハラール・ベジタリアン等に代表される食文化の差異や禁忌・忌避との共存のありかたとICTによる支援を認知科学的アプローチから検討する。宗教的戒律や食物禁忌に関連して、飲食物の内容・成分が不明であったり、表示・提供されている情報が不正確・不十分であると、購入・飲食に際して大きな支障が生じるだけでなく、誤った情報に基づく意思決定が深刻な結果をもたらすこともあり得る。規模の大きくない飲食店においては、さまざまな宗教的戒律・食物禁忌・食物に関する信念に対応する余裕はなく、多言語・多文化に対応した情報提供さえままならない。一方で、伝統的な食材や製法を見直して、ハラールやベジタリアンに対応する日本食料理店もあるが、そうして提供される料理が観光客の期待する「日本の食事」であるかどうかは、意味論的・認知科学的な検討課題となりえる。
 観光地の写真を留学生に見せたところ、英語を読む学生、日本語を読む学生、英語と日本語を読む学生、日本語も英語もあまり読めない学生など、それぞれの学生が見ている・理解する内容が異なり、それが重なって少し違う印象を作るように思われる。読める方が読めないより良い印象を持つとは限られず、英語を読む学生は間違いを正したくなり、英語と日本語のわかる学生は内容の相違が気になるが、双方あまり得意でない学生は写真やイラストで自分の興味を惹きつける対象を見つけ、わからないなりに楽しんでいるような印象を与える場合もある。ものの価値を自国におけるそのものの価値に準じて考える場合は、どの国から来たのかで魅力的に見える店や商品が違ったりすることにつながる。このように、同じ景色の中にいながらも、人によって見ているものは同じではない。留学生を対象としたこれまでの調査から、観光地の同じ写真を見ても、あるいは同じ道を歩いても、英語圏からの留学生とそれ以外の留学生とでは考えること・感じることが同じではなく、観光地を歩くと印象が異なってくるという当たり前のことが明らかとなっている。
 本 OS では言語景観・意味景観などが織りなす意味環境・情報環境と人とのインタラクションについて、インバウンド観光客への対応をひとつの契機として検討する。人が環境から何を読み取り、どう行動するかは個人によって異なることは当然であるが、自国の環境・母語の環境では潜在しているさまざまな課題が、異文化環境・他言語環境において顕在化する部分も大きいことが予想される。こうした点で、本 OS 企画は教育・学習・発達・インタラクションなどに関心を持つ認知科学研究者に限らず、認知科学会の会員一般に広く関心を持ってもらえる課題設定となっていると考える。