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研究成果の社会還元ー医療応用を具体例としてー (Sem)

9月7日(土) 10:10 - 11:00
会場:共21
講演者:
田中悟志(浜松医科大学)
司会:井藤 寛志(愛知大学)
研究成果の社会還元 -医療応用を具体例として-
その他
田中悟志 (浜松医科大学)
認知科学は,主に情報処理の視点からこころの仕組みを明らかにすることを目指す基礎分野である.一方,こころの諸問題を科学の力によって解決できないかという社会側からの期待は高まっており,また実社会の問題を科学的方法論で アプローチしたいという志を持った研究者も年々多くなっている印象を受ける.しかし,認知機能のメカニズムは未だ未解明な部分も多く,またヒトのこころの多様性と個人差の大きさを踏まえれば,認知科学の成果を実社会に還元して成功を収めることは,なかなか容易ではないだろう.
本講演では,医療応用における方法論をモデルとして,認知科学の研究成果をいかにして社会還元することができるか,その可能性を論じたい.医療分野は,患者のアウトカムを改善することが目的であり,研究成果と社会還元が密にリンクしているため,この問題に対して比較的良いモデルとなり得ると考えらえる.医療分野では,科学的な方法で得られたエビデンスを目の前の患者の医療に適用していくための手続きとして「根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)」が推奨されている.エビデンスは,記述的研究,ランダム化比較試験,メタアナリシスなど研究方法によっていくつかのレベルに分けられるが,EBM は単に“エビデンスに基づいた医療を実施する”という意味ではない.エビデンスと共に,現在の臨床環境,目の前の患者の嗜好と行動特性,また治療者自身のこれまでの臨床経験をバランスよく考慮した上で,最良の医療を選択することが EBM の肝なのである.EBM のような,研究で得られた科学的エビデンスを目の前の対象者に落とし込むようなシステマチックなステップを持つ方法論が,認知科学の社会還元には重要ではないかと考えられる.
また,目の前の対象者に対しエビデンスに基づいた知見や介入法が本当に有効であるかどうかを知るためには,実際 にその対象者に対して実施してみなければわからない,という点も忘れてはならない.特に,ヒトのこころや行動の多 様性を考えれば,グループ実験デザインで得られた知見が,目の前の対象者に何の疑いもなく当てはまるという保証は 全くない.その点に関して,今後,シングルケース実験デザインを用いた研究の重要性が認識されるべきと考えられ る.本講演では,このように医療分野における方法論を参考にしながら,認知科学の研究成果の社会還元について論じ ていく予定である.

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