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スケジュール

9月18日(金)Organized Sessions
9月19日(土)口頭、シンポジウム、フェロー講演、フラッシュポスター、懇親会
9月20日(日)口頭、特別講演、三宅なほみ氏追悼企画、ポスター

特別講演(9月20日)

題目:からだと短歌
講演者:川野里子氏(歌人)
概要:現代短歌には、身体の五感の参加が欠かせない。近代短歌が、「写生」という方法に象徴されるように、視覚に大きく依存した時代だとすると、現代短歌は触れる、味わう、嗅ぐ、聞く、といったもっと多くの感覚によって多様な表現 が開拓されている。そうした作品を読みながら、身体と言葉の今を探ってみたい。

三宅なほみ氏追悼企画(9月20日)

題目:「すぐ,そばにある夢」
企画趣旨:今年5月29日に逝去した元認知科学会会長,フェローの三宅なほみ氏を追悼しながら,氏の遺した研究の種を紹介し,それを育てるネットワークに聴衆を誘う会にできれば幸いです。最後は6年間の闘病生活でしたが,その中でも氏の夢は広がり続け,もうあと少しで具体化できそうなところまで来ていたものもありました。当日は,それを「すぐ,そばにある夢」として幾つかの側面から紹介し,みなさんの研究の発展に少しでも貢献できるような前向きな追悼の会にしたいと考えております。
構成
  • 学会・大会側趣旨説明   
      大森隆司 日本認知科学会会長
  • 故人紹介・企画概観  
      「すぐ,そばにある夢」白水始
      「なほみと理論」三宅芳雄
  • 『なほみ先生と実践』
      「持続可能な実践のために」杉山二季
      「ネットワークのネットワークという考え方」飯窪真也
      「理解の評価で実践を育てる」齊籐萌木
  • 『なほみ先生とテクノロジ』
      「電子文房具という考え方:ReCoNote」益川弘如
      「ロボットからキーワード検索システムへ」中山隆弘
      「前向きな学びを創る学習科学ポータル」遠山紗矢香
  • 御礼:今後に向けて    
      白水始

公開シンポジウム(9月19日)

題目:大学教育改革と認知科学
概要:大学は大きな変革を迫られてきています.その中でも入学者選抜を含む教育の改革は社会からの強い関心を集めています.このセッションでは,前中央教育審議会の会長を務め,2014年度末の答申をまとめた安西祐一郎氏,大学教育改革の最前線で活躍され,現在大学入試センターで入試制度の責任者を務める大塚雄作氏,批判的思考を含む次世代の思考力研究をリードしてきた楠見孝氏を招き,これからの大学教育の姿を議論し,そこにおける課題を特定し,認知科学がそれらの課題にどのように貢献できるのかを参加者とともに探りたいと考えています
企画:三輪和久(名古屋大学),鈴木宏昭(青山学院大学)
司会:三輪和久(名古屋大学)
スピーカ:安西祐一郎(日本学術振興会)
     大塚雄作(大学入試センター)
     楠見孝(京都大学)


フェロー講演(9月19日)

題目:アンビエント・コグニションについて
講演者:佐々木正人

Organized Sessions (9月18日)

OS01二重過程理論
企画: 島田英昭 (信州大学)
話題提供:二重過程理論(dual process theory)は、情報処理プロセスを意識と無意識 に分類する理論の総称である。2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマン が、二重過程理論に関する一般書(Thinking, fast & slow)を出版したことを契 機に、さまざまな学問領域で注目が集まっている。この中で、二重過程理論に関 係するさまざまな現象を統合的に整理し、今後の発展につなげることを意図して 本セッションを計画した。
 本セッションは、心理実験・調査といった現象面からのアプローチに偏りがち な二重過程理論に関連する諸研究に対して、認知科学の学際性を生かし、モデル 論的なアプローチから現象の再解釈と統合的説明を与えようとする立場をとる。 まず、依頼講演として、二重過程理論に基づく認知モデルを新たに提案し、国際 的に評価を受けている北島宗雄氏(長岡技術科学大学)に依頼し、氏の提案する 認知モデルの概要と、そのモデルに基づく研究例の講演を行う。また、二重過程 理論に関係する講演を2件公募する。ここでは、二重過程理論というラベル付け は必ずしも必要なく、無意識の行動選択、意識の役割等について言及できそうな、 データ駆動型の研究を期待している。複数の既発表データをまとめ直し、新たに 二重過程の枠組みで解釈した発表も可能である。
 最後に、その講演に対して、北島氏から、氏らの提案するモデルにおける解釈 を求め、今後の研究に対して、講演者およびフロアーとディスカッションを行う。 モデル論的なアプローチとデータ駆動型アプローチがやりとりする場を設けるこ とで、認知科学研究の学際性を際立たせようという点が、本セッションの特徴で ある。

OS02記号と身体性
企画: 佐治伸郎(鎌倉女子大学) 渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
概要:認知科学における身体論 (embodied theories) は,概念や知識などの高次の表象を非感覚的 (amodal) なモジュールとして捉えず,むしろ他の感覚表象や身体経験にどのように積極的に接地 (ground) しているのかを問うてきた.このアプローチは今日では発達心理学 (Smith, 2005),生態心理学 (Gibon, 1979) ,言語学(Lakoff, 1987) など分野を越えた幅広い広がりを見せている.
  本セッションでは,このような身体論的立場から,伝統的には非感覚的表象の代表のように考えられてきた記号や言語の「意味」が,「何と」「どのように」接地しているのかを議論する.「何と」の点においては,これまで非常に幅広く語られてきた「身体」について,次の二つの面から整理し議論を進めたい.第一に「感覚表象と記号接地」では,人間が身体経験として持つ様々な感覚表象が,概念を志向する「記号」へとどのように接地するのかを議論する.第二に,「コミュニケーションと記号生成」では,他者や文化的環境を含めた外界とのやり取りを身体と捉え,その中で記号の意味がどのように生成されるのかを議論する.このように人間が身体を通じて得られる経験を幅広く考え,それらが「どのように」記号に接地しているのかを考えることで,記号の身体論に新たな視点を提供したいと考える


OS03バイリンガルと認知
企画: 田浦秀幸(立命館大学)井狩幸男(大阪市立大学)森(三品)聡美(立教大学)
概要:オーガナイザによるロングトーク3本(30分×3本=90分)に一般公募講演を2本(15分講演+質疑応答5分を2本で40分)を加えて、最後に総合討議に20分をあてる。
ロングトーク内容:最初に井狩からバイリンガルの子供の認知的発達に関する研究紹介を行い、このセッションの基調講演とする。バイリンガル児の認知発達研究について、まず、先行研究を概観し、次に、脳機能イメージングの観点から、関連分野の研究可能性を展望する。次に森から、日英同時バイリンガル幼児における時制概念の発達について紹介する。言語発達初期の長期的自然発話データにおいて、日本語と英語で時制形態素の出現時期に大きなずれがあることに基づき、概念と形態素発達との関係について考察する。3番目に田浦から、メタ言語能力の獲得に関して日本人モノリンガルと日英バイリンガルの比較研究を紹介する。幼稚園児対象に認知的葛藤をともなうタスクを課し、その行動データの比較を年齢別で行い、更にタスク遂行時の脳賦活データの分析結果も紹介する。
 公募の一般講演を2本。できるだけバラエティーに富むセッションにしたいので、上記とは内容の異なる発表を選択したい。全発表を受けて、全発表者による(座長は田浦)総合討論を20分間行う。


0S04学校の学びを捉え直す:これからの学校教育に向けて
企画:青山征彦(駿河台大学) 香川秀太(青山学院大学) 有元典文(横浜国立大学) 岡部大介(東京都市大学)
概要: 従来、認知科学では、学習を、より上手にできるようになる熟達とか、新しい ことを覚える知識獲得として捉えてきた。しかし、近年、新たな視点から学習を捉え 直そうとする動きが見られるようになっている。一つは、学習科学である。21世 紀スキルなど、コラボレーションや問題解決を重視した学習が唱道されるようになっている。 もう一つが、ヴィゴツキーに端を発するホルツマンらのアプローチである。彼女 は、ヴィゴツキーのZPD概念を捉え直して、集合的な学習=発達の場を生み出すた めにパフォーマンスを利用している。ここでは、学習とは、すでにあるものを学 ぶことではなく、いわば新しい自分になることである。
 このセッションでは、学習科学やホルツマンのアプローチのように、近年 起こりつつある新しい学習研究をもとに、これからの学校教育について考えてみ たい。学習科学は、学校教育を組み替えていくことを狙っているが、ホルツマンらのア プローチは学校とは異なる場を創出するというものであり、学習科学のスタンスとは根本的に 異なっている。学校教育に対して、認知科学的な見地から、学校という場の持つ 意義や改善すべき点について、議論したい。そのことを通して、認知科学からの学習研 究をどのように変えていくべきかが見えてくるだろう。


0S05自己・他者認識の脳メカニズム
企画:樋田浩一 (明治大学)  嶋田総太郎 (明治大学)
概要: 我々はどのようにして自己自身を認識し,他者を他者として認識しているだろうか.哲学をはじめとする諸科学の基本問題でもある「自己と他者」の認識の問題は,社会性認知の基礎となる能力であるにも関わらず,そのメカニズムは未だ明らかでない部分が多い.こうした中で認知神経科学研究および実験心理学研究により、自己と他者認識の脳内処理機構が徐々に明らかにされつつある。本セッションでは,自己身体認識・他者認識・社会性認知・コミュニケーションなどのトピックに関して,その認知モデルを探るための脳機能イメージング研究、行動・心理実験研究、計算モデル研究などを広く募り,最新の知見を題材に自己・他者認識の脳メカニズムについて議論を行いたい.
 具体的なトピックとしては、たとえば、自己身体認識、ラバーハンド錯覚、身体保持感、運動主体感(エージェンシー)、自己顔認識、表情認識、鏡像認識、心の理論、アニマシー知覚、ミラーシステム、模倣、共感、コミュニケーションなどが挙げられるが、これに限定することはない。また近年では自己・他者認識に関して得られた知見をリハビリテーション医療へ応用する動きも活発になってきており、それらの関連分野からの研究発表も歓迎する。


0S06J・D・M:Issues in the real world
企画:本田秀仁 (東京大学) 中村國則 (成城大学)
概要:JDMとはJudgment and Decision Makingの略であり、英語圏でしばしば用いられる表現である。判断や意思決定を専門分野と掲げる認知科学研究者の数は決して多くはないが、判断や意思決定は多くの認知や行動と関係があり、潜在的には多くの研究者が興味を持つトピックを扱っている。
  そこで本セッションでは、(1)判断や意思決定は狭い内容を扱う研究分野ではなく、人間の本質的な認知を垣間見ることができるトピックを扱っていること、また同時に、(2)判断や意思決定研究の中には広い意味での人間の認知を考えていく上でも、多くの興味深い現象に溢れていること、これら2点について、認知科学コミュニティーの研究者に知っていただく機会にしたいと考えている。
  これらの目的を達成するために、以下のようなセッションを計画している。まず、実際場面での判断や意思決定に関わる研究を行っている2名の研究者に講演を依頼し、実際場面の文脈から、人間の判断や意思決定について考える場を設ける。また会員による通常の通常発表では、扱うトピック・研究手法を含め、幅広い内容をできる限り扱う。


0S07生活者に寄り添う認知科学:超々高齢社会に向けて
企画:小橋康章(大化社・成城大学)齋藤洋典(名古屋大学)
概要:今後30年の日本(および欧州,東アジアなど世界のいくつかの地域)の社会的変化を考えたとき,ひとつだけ間違いのないことがある.それは社会の超々高齢化である.その構成員の高齢化に伴い,社会そのものが従来の機能を失いかねない.この現象は年金制度の崩壊や医療費の爆発的増大など社会・経済的な諸問題を引き起こすだけでなく,比較的高齢な者が若者を教育して一人前の市民や職業人(研究者も含む)に育てるというこれまでの常識的な世代間分担が正常に機能しなくなるリスクも生む.
 いっぽう高齢者の健康を保ち,社会の中で有意義な目標のある活動を継続させる(この2つには相関がある)ためには,高齢者の運動機能と認知機能の制約に見合った活動を発見するとともに,その支援が欠かせない.育児などもそうした活動の一例であるが,ここでは広義の「研究」という活動がそうした制約を充たし,あるいは乗り越える可能性を検討したい.
 高齢者に研究という活動を軸に社会に貢献させるためには,彼らの知識や経験をありがたがるだけでは十分ではない.高齢者自身の不適切な学習の修正(unlearning)も必要だろうし,高齢者と若年者,高齢者と高齢者を組み合わせて(広義の)研究コミュニティの中に位置づける社会的な再構築も必要だろう.
 以上のような問題の解決には,認知科学が暗黙の前提としてきた認知の個別性,均質性といった仮定を再考するとともに,「前例のない仕事を構想し実行する創造性」が要求される.「モノを作り上げる創造性を生活者の手に取り戻そう」という主張がある(e.g., 野口・井上,2014)が,モノに限らず、サービスやネットワーキングなどのコトにおいてもこの主張は有効であると思われる.こうした実践的構想力の有効性を検証するためにもオーガナイズドセッションでJCSS会員と問題意識を共有し,関連する研究の現状を展望したい


0S08グループワークの創造性
企画:近藤健次 (北陸先端科学技術大学院大学) 石井成郎 (愛知きわみ看護短期大学)
概要: 創造性は,経済の発展や社会問題の解決にとって重要な基盤であると考えられ,グループによる創造性を発揮するために,現在,様々なところでグループワークが行われている. 創造性が社会に還元されるためには,創造的なアイデアが創造され,評価・選択され,実施される必要がある.先行研究においては,ブレインストーミング研究を中心にこれまでグループによる創造的なアイデアの生成について多くの研究がなされてきた一方,その後のプロセスであるグループによる創造的なアイデアの評価,選択及び実施についての研究は多くなく,これらの数少ない研究においては,創造的なアイデアを選択することが必ずしも上手くないことが示されているに過ぎない.
  また,グループワークに関する研究には,ブレインストーミング研究のように主としてグループワークの産物に焦点を当てたものと,ワークショップ研究のように主としてグループワークの参加者に焦点を当てたものとに分類される.
 本セッションでは,主にアイデア生成以降のプロセスにも焦点をあて,これまで別個に研究されてきた,アイデア生成・評価・選択・実施のプロセスを統合的に検討し,グループの創造性について認知科学の観点からさまざまな検討を行うとともに,グループワークの創造性自体の評価についても検討を行う.


0S09創造性のキモをつかむ
企画:阿部慶賀(岐阜聖徳学園大学)清河幸子(名古屋大学)寺井 仁(名古屋大学)
概要: 新しいものを生み出す,これまでにないやり方で問題を解決するなど,創造性が関わる認知活動は,認知科学において常に関心を集めてきました。これまで,行動実験,神経科学的検討,計算機モデリング,フィールドワーク,インタビューなどの様々なアプローチにより,洞察,アイデア生成,芸術,デザイン,発見等,多様なテーマについて研究が蓄積されてきました。その結果,創造性が関わる認知活動を促進する,あるいは妨害する要因や,その生起メカニズムなどが徐々に明らかにされてきています。しかし,方法論やテーマの異なる研究領域間の交流は比較的乏しい状況にあります。そこで,本オーガナイズドセッションでは,研究領域間の交流に重点を置き,研究間の関係性を明らかにすること,また,新たな協同の可能性を探ることを目的とします。
 具体的には,洞察,アイデア生成,芸術,デザイン,発見など,広く創造性に関わるテーマを扱う研究発表を募集します。タイトルにある「キモ」とは,「創造性とは何か」「創造性を生み出す認知プロセスとはどのようなものか」「創造性を高めるのに必要な要因は何か」など,創造性を考えるにあたって各自が重要と考える問いとその答えを意味しています。それぞれがキモと考えるテーマについて発表していただくとともに,(a) 創造性をどのように捉えるのか,(b) 創造性を高める上でどのような要因・条件が必要かの2点を共通の問いとし,発表時に,各自の研究を報告することに加えて,問いへの回答を明示していただきます。多様な背景をもつ研究者が,創造性に関する共通の問いを足場として議論を行う中で,それぞれが考える創造性のキモをつかむきっかけとなることを期待しています。


0S10相互作用(インタラクション)を通じた英語の学習効果に関する認知科学的観点からの検討
企画:森下美和(神戸学院大学) 坪田康(京都大学) 横森大輔(九州大学) 原田康也(早稲田大学)
概要: 近年の日本の英語教育では,文科省の学習指導要領も含めて,コミュニケー ション能力育成にはコミュニケーション活動が必須であるという考え方が支配 的であるが,一見合理的に思えるこの考え方を支持・証明する理論的・実証的 な研究結果は必ずしも多くない。
 第二言語習得研究研究の分野では,「理解可能な大量のインプットが言語習 得を促進する」というインプット仮説 (Krashen, 1980),「アウトプットが言 語運用の自動性を高める」というアウトプット仮説 (Swain, 1985) に加えて, 「コミュニケーション場面における意味のやりとりが特定の言語形式の習得を 促す」というインタラクション仮説 (Long, 1988, 1996) が提唱されてきた。
 一方,心理言語学の分野では,プライミングを利用した実験が多用されるが, プライミングは対話の中では話し手の使用した語彙・構文を聞き手が使用する 傾向 (Levelt & Kelter, 1982) として現れるため,第二言語・外国語学習者 の言語産出における統語構造の学習や統語処理能力の向上に利用できる可能性 が指摘されている(McDonough, 2006; Morishita, 2013ほか)。英語教育の現 場で近年広く採用されているコミュニケーション活動には,相互作用(インタ ラクション)の同調効果を利用したプライミングに基づく学習効果が期待され るが,この点を教室での調査で明らかにすることが今後の課題である。
 本セッションでは,上記のような観点から,相互作用を通じた英語の学習効 果について,認知科学的観点からデータに基づく検証を行いたい。


0S11前衛表現の理論・実装・認知
企画:小川 有希子 (法政大学) 小方 孝 (岩手県立大学)
概要: 前衛とは、「先頭に立つ部隊、最前線、先駆的」という字義を持つ一般用語であるが、これを意味する「アヴァンギャルド」というフランス語が日本においても芸術や文化の文脈では普及しており、これは実験的な創作を試みた作家群や作品群を指す、思想的なニュアンスを含んだ言葉である。本セッションにおける「前衛」は、その正統な意味合いを基調としながらそれを敷衍し、何らかの点で「異彩を放つ・際立つ」要素・側面を持った表現、「並ではない」効果を生じさせる表現の全てを、議論の射程に入れる。例えば、異彩を放つ「ことば(文学・演劇)」、異彩を放つ「造形(美術)」、異彩を放つ「演技・演出(映像・演劇・芸能)」、際立つ「構図(絵画・写真・映像)」、際立つ「音色(音楽)」、際立つ「形式(文学・映像・演劇・音楽・芸能)」などが考えられるが、表現媒体や表現手段(アナログ・デジタル)は問わないので、切り口はこれらには限定されない。例えば、異彩を放つ「ソフトウェア(ゲーム,アート,教育,物語生成システム)」なども含まれる。
 並ではない効果とは、表現の受け手の知識構造や情動が極めて大きく揺り動かされる、という意味であり、これが議論の主要な主題の一つとなる「認知」である。表現が肌から染み渡り、細胞が振動するような身体感覚を伴うこの認知を、パッション、制御不能感と仮に言語化する。現代においては、このような認知を引き起こす前衛表現の多くが、テクノロジーと結びついて実現されている点には特に着眼しつつ、「前衛」と「人間」及び「知」の関係を総合的に議論する場を創出したい。
 なお、発表者は必ず作品(研究対象にしている作品、あるいは研究として創作している作品・システムなど)を具体的に提示し、
(1) それはどのような点で、本セッションが含意する「前衛」であるのか。
(2) それはどのような意味で、恒久的な「知」の核心部、あるいは周辺部を
 (a) 構成する必然性が高いと考えられるのか。あるいは、
 (b) 構成することが予見されたり、期待されたりするのか。
について言及すること。作品が「実装」に当たる。これを発表の要件とする。また、以上のような問題構制に対する批評・批判を含む論考も歓迎する。


0S12フィールドに出た認知科学
企画:諏訪正樹 (慶應義塾大学) 伝康晴 (千葉大学) 藤井晴行 (東京工業大学)
概要: 従来の認知科学は、知能に関するモデルを心理学的実験やコンピュータシミュレーションによって検証することを方法論としてきた。しかし、実験室実験やシミュレーションは、立てたモデルにおいて予め想定される特定要因のみに着目したものにならざるを得ず、実環境や実生活の状況に依存した知の姿を明らかにするためには限界があるという批判も叫ばれていた。
  知能はそれ自体独立して存立するのではなく、主体の身体、身体を取り囲む環境(他者を含む)、社会や時代とともにある。環境の中で物事を認識し、行動し、他者と交わりを持ち、社会の中で影響を受けながら、知は発現し、進化する。したがって、実環境や実生活になかにある知の姿を観察、記述、分析しないと、知の本質には迫れない。  
 2014年度には、同じ問題意識のもとで、学会の機関誌「認知科学」に同名の特集号が企画された(フィールドに出た認知科学)。本特集号は2015年3月発行の学会誌に掲載予定である。本オーガナイズドセッションは、学会誌の企画にタイアップして、大会で同じ趣旨のセッションを開催しようと目論むものである。  
 「フィールド」とは研究者によって設定された人工的活動や統制された実験環境ではなく、当事者たちの生活におけるリアルな動機や目的に基づく自発的な活動が繰り広げられる場を指す。生活のなかにはそのような場が溢れている。例えば、スポーツ・演劇・ダンス・音楽・料理・教育・介護・制作などである。こういった現場を研究対象にして、ひとの行動をつぶさに記録・観察し、フィールドの文脈を切り離さずに、知の姿についての新しい研究仮説や、ひいては理論構築につながる知見を得るような萌芽的研究を募集したい。  
 必ずしも客観的な方法論に基づき普遍的な知見を得ることに縛られる必要はなく、個別具体性、主観性、状況依存性を捨象しない研究態度を高く評価するセッションとしたい。


0S13同調,共感,そして社会性をつなぐ
企画:高橋英之 (大阪大学) 小森政嗣 (大阪電気通信大学) 村田藍子 (北海道大学)
概要: 近年の研究により,社会性の根幹には個体間の潜在的な運動や感情の同調が重要な機能を担っていることが明らかになりつつある.同調と社会性をつなぐ一つのキーワードが「共感」であると思われるが,運動の同調がどのように共感に結びつき,それが社会形成に結ぶ着くのか,その道筋については明らかにされていない.本オーガナイズドセッションにおいては,主に同調や共感という観点から社会性の研究をされている研究者の方々に御講演いただくことで,個体間同調が社会性に結びつくメカニズムについて議論を深めたい.脳間の神経同調を調べたハイパースキャニング,ヒト以外の動物の同調や群れ形成,オキシトシンなどの神経内分泌の機能などのトピックも歓迎したい.

日本認知科学会
第32回大会委員会

大会委員長
伝 康晴(千葉大学)

実行委員長
松香敏彦(千葉大学)

プログラム委員長
大西 仁(放送大学)

実行委員
牛谷智一(千葉大学)
川端良子(千葉大学)
本田秀仁(東京大学)

プログラム委員
黒田航 (杏林大学)
小磯花絵 (国立国語研究所)
小松孝徳 (明治大学)
永井淳一 (聖心女子大学)
中村國則 (成城大学)
平石界 (慶応大学)

運営委員
TBA

賛助団体御芳名

(2015/7/20現在)

<展示・広告>

トビーテクノロジー株式会社
株式会社近代科学社
株式会社ひつじ書房
株式会社アイアール・アルト
株式会社北大路書房
株式会社紀伊國屋書店洋書部
SAGE Publications日本支社
(財)放送大学教育振興会
株式会社北樹出版
共立出版株式会社
株式会社内田洋行
株式会社クレアクト・インターナショナル

<協力>

過去の大会のホームページ

2014年 名古屋大学
2013年 玉川大学
2012年 仙台国際センター
2011年 東京大学
2010年 神戸大学


大会事務局

〒263-8522
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33
千葉大学文学部
日本認知科学会
第32回大会委員長 伝康晴


学会事務局

〒464-8601
愛知県名古屋市千種区不老町
名古屋大学
大学院教育発達科学研究科内
日本認知科学会事務局
代表 清河幸子