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: 4. 考    察 : 手がかり刺激の非空間的属性にもとづく 視覚的注意捕捉 : 2. 方    法

3. 結    果

結果の分析には,得られたデータのうち反応時間が150msec未満の反応を誤反応として 除外した上で,素データを対数変換したデータを用いた.なお,キャッチトライアルに 対する正否定 (correct rejection) は,平均93.72%だった.

位置 (Location; LC)18#18手がかり刺激とターゲット刺激の 属性関係 (Property; PR)18#18手がかり刺激先行時間 (CLT) の3要因分散分析を 行ったところ,全ての主効果が有意だった (それぞれ, 19#19, 20#20; 21#21, 22#22; 23#23, 22#22).主効果の下位検定 では,LCにおいては同側24#24両側24#24反対側,PRでは 属性一致24#24統制24#24属性不一致の順に反応時間が 長くなり,CLTではMiddle CLT24#24Long CLT, Long CLT24#24Short CLTという差がみられることが確認された.

また,LC18#18PRの交互作用に有意差がみられ, PR18#18CLTの交互作用では有意傾向が 示されたが,LC18#18CLTでは交互作用が 見られなかった (それぞれ,25#25, 26#26; 27#27, 28#28, 29#29, n.s.).

図: 属性関係とCLTの交互作用
30#30

PR18#18CLTの交互作用の下位検定では,Short CLTの反応時間が他と比較して 有意に長いこと,属性要因の3水準間における差がCLTの延長にともなって 小さくなっていることが示された (図2).

属性要因とCLTの交互作用の詳細な検討のために,統制条件と一致・不一致条件との 差を損失-利得分析法 (Cost-Benefit Analysis; Posner, 1978) により分析した. 統制条件と一致条件との差を抑制 (損失),統制条件と不一致条件との差を 促進 (利得) として,これらのデータを属性効果 (抑制・促進)18#18CLTの2要因 分散分析により検定した.この結果,属性効果の主効果および両要因の交互作用が 有意であった (それぞれ,31#31, 26#26, 32#32, 33#33). 交互作用の下位検定により,促進条件ではLong CLT条件が他の2水準と比較して 促進効果が小さかった.これに対して,抑制条件ではすべてのCLT間に有意な差があり, CLTの延長にともなって抑制効果が急速に減少することが示された (図3).

図: 属性関係とCLTの損失-利得分析
34#34

図: 属性関係と位置関係の交互作用
30#30

また,PR18#18LCの交互作用の下位検定によると,位置要因のうち反対側水準に おいては属性要因の統制水準と不一致水準との間に有意な差が見られないことが わかった (図4).



日本認知科学会論文誌『認知科学』