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: 参考文献 : あいづちを統制したコミュニケーションにおける 助詞 ねの頻度の変化 : 6. 実験データとその分析

7. おわりに

あいづちを統制対象とした実験会議を行なうことによって, 司会者 (聞き手側) のあいづちが多い場合と少ない場合で,会議参加者 (話し手側) が 発する助詞の出現数に差異が生じるかどうかを調べた. その結果,司会者があいづちをあまり打たないと,会議参加 者は助詞を多用する傾向にあることがわかった.助詞の出現数は, あいづちだけではなく,議論の話題や発話された文の長さ,個人差などにも依存する のではないかと思われる.しかし,今回の実験からはそれらの要因よりもあ いづちの影響の方が顕著であると言える.

助詞は,コミュニケーションを密にしようとする働きを持つ.司会者 があいづちをあまり打たないことにより,会議参加者には様々な心理的な負担 (例え ば,伝達に対する不安や疎外感) が生じ,それを解消するためにコミュニケーション を密にしようとする心理 が働いて,助詞を多用するものと推察される.

会議参加者に様々な心理的負担を生じさせないためには,司会者には適度にあ いづちを打つことが望まれる.心理的負担を生じさせないことによって,会 議参加者は了解・情報の共有にもっと専念でき,コミュニケーションの質 が向上するものと考えられる.

今後は,本研究で扱ったコミュニケーションの現象と,その背後にある心理的なメカ ニズムとの関係を解明していきたい.



日本認知科学会論文誌『認知科学』