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「認知科学」特集(第28巻第3号・2021年9月号)論文募集のお知らせ

特集タイトル戸田正直『心理学の将来』から半世紀
掲載予定巻号2021年9月号(Vol. 28 No.3)
担当編集者高橋康介(中京大学)・青山征彦(成城大学)

企画趣旨

 遡ること半世紀,1960年代終わりから1970年代のはじめにかけて,戸田正直氏による”Possible roles of psychology in the very distant future” [1]という講演が行われ,直後に(日本語訳ではなく,大幅に加筆された)日本語版「心理学の将来」 [2]が発表された。内容については各自で一読して頂きたいのだが,その冒頭で戸田先生はまず「人類の未来は心理学の未来とともにある」と述べ,そしてそのことが「不幸」とりわけ「子どもがおとなにならなければならないのが不幸だという意味あいで不幸」と述べている。1970年前後という時代を考えればここで「心理学」は素直に「認知科学」と大部分オーバーラップすると考えて差し支えないだろう。その後の日本認知科学会の設立(補足の必要もないだろうが,戸田先生は日本認知科学会初代会長である)や1980年代のIBM天城シンポジウムあたりの雰囲気から想像するに,「(人間ではなく)人類」の成長に寄り添う学問としての認知科学に期待を込めていたのかもしれない。

 日本語版「心理学の将来」で語られていることは,個々人というよりは社会,さらには人類が今後直面するであろう(一部やや過激な)社会問題である。特に自然科学技術の進化に人間社会科学が大幅に遅れていることを危機感とともに指摘し,「現代文明と多分人類自身をも救う唯一の道は,人間社会科学を非常に精度の高い厳密科学にまで急速に発展させること」と論じている。翻って現代,我々人類は情報通信技術や機械学習(人工知能)の爆発的進歩の中,右往左往する赤子のようである。ネット上には差別や嘘が蔓延し,シンギュラリティの不安に怯える。高度化した移動手段も同様で,グローバルな人的交流が多くのコンフリクトを引き起こし,超小型ドローンが爆弾を落とす。大規模災害や未知のウィルスにより社会システムは大打撃を受け,個々人は行動の拠り所を失う。

 あれから50年。自然環境が大きく変動し,科学技術がさらなる爆発的進歩を遂げる中,認知科学,人間社会科学はどれだけ追いついたのだろうか。あるいは置いていかれたのだろうか。社会環境も大幅に変化し,認知科学が問うべき具体的問題も変わってきている。しかし一方で,戸田先生が50年前に「心理学の将来」の中で語ったことは今も全く色褪せていないように思える。

 「心理学の将来」が含み置く認知科学に関するメタな議論に加えて,感情システムについての理論であるアージ理論の研究や,感情を持つ人工知能システムの構築を目指した1980年代のNENEプロジェクトなど,戸田認知科学に感じる時代の先取り感はとてつもない。これらの研究は「心理学の将来」の戸田先生自身による実践と捉えることもできるだろう。

 そこで「心理学の将来」から50年の節目に,(1)戸田認知科学に関連する論文と人物としての戸田先生についての論考・エッセイ,(2)「心理学の将来」で語られたような認知科学という学問についての展望・論考,そして(3)戸田先生が重視していたように思える認知科学における理論と実証(実装)のあり方 [4],を中心に扱う特集号として,この戸田特集号を企画した。

 同時に「心理学の将来」に対する波多野誼余夫氏の批判論文 [3]も見逃せない。戸田先生が謳う「人間社会科学を非常に精度の高い厳密科学」へすすめるということの背景には,人間社会そのものを客体として理解し予測し制御するという意味が込められているのだろう。少なくとも波多野先生はそう受け止めて,ある意味で強権的な心理学(認知科学)のあり方に不安(不満)を覚え,心理学者の任務を「むしろ無意識的に制御される可能性を低めていくこと」と論じている。50年前のこの議論は今も決着しないまま我々にのこされている。そのような意味で戸田特集号は決して戸田認知科学を称える集いではなく,どのようなアイデアやどのような批判に対しても「開いた」ものであることを付しておく。

[1] Toda, M. (1971) “Possible roles of psychology in the very distant future,” Proceedings of the XIXth International Congress of Psychology, pp. 70-75.
[2] 戸田正直 (1971) 「心理学の将来」依田新監修・日本児童研究所編『児童心理学の進歩』金子書房, pp.335-356
[3] 波多野誼余夫(1971)「コメント―特別論文「心理学の将来」について―」依田新監修・日本児童研究所編『児童心理学の進歩』金子書房, pp.357-362.

以上3点,日本認知科学会第24回大会「2007/03/24 戸田シンポジウム資料」にて入手できる。
https://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2007/weblog/20070324.html

[4] 高橋康介 (2020) 新しくて古い心理学のかたち, 心理学評論, https://psyarxiv.com/5pzy7/

特集号で扱う論文

 本特集は論文(研究論文,展望論文,短報論文)と記事(エッセイなど)で構成する。論文・記事ともに、以下の内容の日本語または英語で書かれた依頼原稿と一般公募原稿を募る。

1)関連する研究論文および記事

 戸田先生の研究(例えばアージ理論やNENEプロジェクト)を発展させた,戸田先生の研究と関連した,あるいは戸田先生の研究を批判する論文。実験・理論・シミュレーション・モデルによる研究論文・展望論文・短報論文のいずれも可。ただし,いずれのカテゴリにしても理論に関する深い洞察を期待する。

 また,これまで,日本認知科学会大会(2007年第24回「来るべき認知科学の姿:戸田正直の夢から」),特集(Vol 13 (4) 2006「戸田正直氏を送る」),中京大学人工知能高等研究所のニュースレター(2006年12月 No. 19「戸田正直先生追悼号」)などで,たびたび戸田先生の人となりが紹介されている。本特集においても,上記企画で触れられていないことを中心に戸田先生という人物についての記事(エッセイなど)を募りたい。

2)認知科学の過去・現在・未来

 主に戸田先生,波多野先生の論考[1-3]を踏まえて,認知科学の過去(特に論考からの50年),現在,未来(近い未来から遠い未来まで)を論じるもの。50年前に戸田先生が見た風景を踏まえて,移りゆく時代背景の中で認知科学が人間社会の中で果たすべき役割,学問としてのゴール,扱うべきテーマなどを議論したい。

3)これからの認知科学における理論と実証(実装)のあり方

 これからの認知科学における理論と実証(実装)のあり方を論じるもの。現代の認知科学はやや現象重視で理論負荷が低くなっているようにも思える。その帰結として,現会長植田氏も指摘するように[5]認知科学研究の再現可能性の低下も危惧される。素早い出版サイクルの弊害,ストーリー重視の研究評価,数理理論から人間行動を予測することの難しさなど,多くの問題が関わっているだろう。この現状を踏まえて,戸田先生が目指したであろう理論と実証(実装)の循環による認知科学の進展について広く議論したい。必ずしも戸田先生の議論を踏まえる必要はない。少し関係する参考文献として高橋(2020)[4]。

[5] 植田一博 (2019) 会長就任のご挨拶: 認知科学研究の質を高めることに向けて, 認知科学, 26(1), 3-5.

応募方法

 投稿資格・・・投稿原稿の著者のうち少なくとも一人は日本認知科学会の会員であるか,または入会手続き中でなければならない(詳しくは『認知科学』の投稿規定を参照)。ただし依頼原稿はこの限りではない。

 本特集では,プロポーザル方式で原稿・企画を募集する。論文(研究論文,展望論文,短報論文)の執筆を希望する場合は,1000字から3000字程度のプロポーザルを期日までに投稿する。記事(戸田先生の人となりなどを紹介するエッセイなどで,刷り上がり3ページ以内とし,査読はなく閲読のみ行う)の執筆を希望する場合は,400字程度のプロポーザルを期日までに投稿する。また,その他の企画案もプロポーザルとして受け付ける(文字数・フォーマットは自由)。プロポーザルが採択された場合は,期日までに原稿を送付する必要がある。

 プロポーザル投稿は,2020年10月31日(土)までに,タイトル,種別(研究論文,展望論文,短報論文,記事),著者氏名・所属・連絡先(住所,電話番号,e-mailアドレス),プロポーザル(論文は1000字から3000字程度,記事は400字程度),キーワード(5個程度,記事は不要)を電子メールにて提出する。投稿する原稿は,『認知科学』の投稿規定,執筆要領にしたがうものとする。

提出先

 プロポーザルは,以下のアドレスに提出するものとする。一般公募原稿は,投稿査読システムから投稿する。その要領は,原稿執筆依頼時に案内する。

   jcss2021toda [at] gmail.com

なお,提出後,一週間以内に,受領確認のメールを著者に送付する。

スケジュール

おおむね下記のスケジュールを予定している.諸事情により変更の可能性がある.
2020年10月31日(土)プロポーザル締切
2020年11月10日(火)原稿執筆可否の決定と執筆依頼
2020年12月20日(日)原稿投稿締切
2021年1月24日(日)査読結果の返送
2021年3月31日(水)修正原稿の提出締切
2021年4月30日(金)再査読結果の返送(採否決定)
2021年5月31日(月)最終原稿の提出締切
2021年9月1日(火)『認知科学』第28巻3号掲載