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「認知科学」特集(第28巻第1号)論文募集のお知らせ

特集タイトル圏論は認知科学に貢献できるか
掲載予定巻号第28巻1号(2021年3月発行)
担当編集者高橋達二(東京電機大学)・布山美慕(早稲田大学)

企画趣旨

コミュニケーションから言語の意味まで,認知科学の研究対象はなんらかの関係
性の中にある.この関係性というものを中心に系の記述を可能とする数学理論が
圏論である.「関係性を中心に」とは,複数の要素が先立って定義されて存在し,
それらの間の相互作用として関係性が定義されるのではなく,むしろ豊かな関係
性をこそ第一義的なものとして捉え,その関係性を満たすものとして対象が見返
される(措定されていた対象が改めて見出される),といった態度を指す.例え
て言えば、確実なアトムである点が動いて線ができるのではなく,線が交わった
場所(関係)が点として見出され,またボタンとボタン穴は,両者が「ボタンを
留める」という関係を持って初めてボタンとボタン穴という対象として存在する.
このような態度変更,すなわち理論フレームの転換は,集合論的・要素還元的な
見方から,圏論的・システム論的な見方への転換と見なせよう.

このフレームの転換によって,多くの認知科学の対象の捉え方も変化しうると思
われる.たとえば統計的アプローチや分散表現による言語の意味の表現(語の意
味は他の語との関係性と見なす)なども、ある意味ではすでにその端緒の一例と
して考えることができる.加えて圏論では,関係性の関係性といったメタ的な関
係性の記述もスマートに行うことができ,階層的なシステムを記述する言語とし
ても期待できる.このように、関係性の記述に強い圏論を用いて,システム性・
関係性・階層性が本質と捉えられるような対象の研究を推進することによって,
認知科学研究に新しい世界観と広がりを加えうる.

さらにもう一つの圏論の認知科学に対する重要性として,モデリングの共通言語
としての可能性がある.圏論は複数の構造同士の間に様々な強さの「同じさ」を
定式化でき,このことを用いて代数学,幾何学,論理学などの間の相互翻訳関係
の確立に成功している.ここから,認知モデルの共通言語としての将来的な有効
性も期待できるだろう.たとえば,既存の認知モデルには論理的・記号処理的な
モデルと確率・統計的なモデルがあり,前者は推論や問題解決,後者は知覚や学
習の分野で成功を収めてきた.これら両者の適用範囲を拡げるため,また両モデ
リング手法の関係を明らかにしてより一般的・統合的な記述を行うためには,よ
り統一的な言語が必要であり,圏論にはその可能性があると我々は考える.

圏論は,数学と計算機科学においては理論構築に大きく貢献したが,その外側で
は例えば前世紀に,理論生物学における非実体論的・関係論的な生命の描像や自
己言及的なロジックの定式化において注目を集めた.近年では神経科学や哲学に
まで適用範囲が広がり,その有効性と可能性に注目が集まっている.国内の認知
科学に限って言えば,2017年の日本認知科学会第34回大会オーガナイズドセッショ
ン「同じさの諸相:認知科学・数学・哲学からの示唆」では,関係性から対象の
同じさを見返す議論に圏論が用いられた.2019年1月にはワークショップ「圏論に
よる認知モデリングの可能性」,同年日本認知科学会第36回大会オーガナイズド
セッション「圏論による認知モデリングの可能性:ホモ・クオリタスとしての人
間理解に向けて」も開催された.今後,日本の認知科学の特色の一つとして発展
していく可能性がある.

本特集号は,こういった理論的背景と近年の圏論の認知科学への応用の期待を踏
まえ,圏論を用いた認知科学研究の論文を募集するものである.新規かつ挑戦的
な分野であるため,今後の可能性を重視し萌芽的な論文や,圏論の適用に批判的
な論文も歓迎する.

特集号で扱う論文

日本語または英語で書かれた研究論文,展望論文,短報論文,あるいは資料論文
を募集する.圏論を用いることによる新規な研究成果を含む実験,理論,シミュ
レーション,機械学習,AI,工学応用研究,あるいはフィールド観察研究など,
認知科学に貢献しうる研究を対象とする.たとえば,認知科学の研究対象に対す
るモデリングに圏論を直接用いるものだけでなく,圏論固有の概念に発想を得た
モデルや議論も受け付ける.

また,圏論は純粋な数学理論であるのに対し,現実のデータは多くの雑音を排し
がたい.加えて,現時点では圏論を用いた動的過程の記述方法は未解明であり,
系の時間発展の記述が課題である.今後の認知科学への圏論の応用の発展を目指
し,現実のノイジーで動的なデータに対し,いかに圏論を利用した研究を行いう
るかを探求する基礎的な論文も受け付ける.

更に,批判的な論文も歓迎する.圏論に対しては,理論的に,また経験科学にお
ける適用についても,以前から根強い批判がある.認知の理解における圏論のキ
ラーアプリケーションはまだ存在していないと思われるので,その有効性と可能
性についてこそ本特集で批判的に吟味したい.

応募方法

 投稿資格:
投稿原稿の著者のうち少なくとも一人は日本認知科学会の会員であるか,または
入会手続き中でなければならない(詳しくは「認知科学」の投稿規程を参照).

本特集では,プロポーザル方式で原稿を募集する.執筆を希望する場合は,プロ
ポーザル投稿をすませた上,期日までに論文原稿を送付する必要がある.プロポー
ザル投稿は,2020年4月13日(月)までに,論文タイトル,論文種別(研究論文,
展望論文,短報論文,あるいは資料論文),著者氏名・所属・連絡先(住所,電
話番号,e-mailアドレス),1000字程度のアブストラクト,キーワード(5個程度)
を電子メールにて提出する.投稿する論文は,「認知科学」の投稿規程と執筆要
領にしたがうものとする.

提出先

プロポーザル投稿は以下のアドレスに提出するものとする.

jcss2020.category.cognition[at]gmail.com
[at]を@に置き換えること


なお,提出後,一週間以内に,受領確認のメールを著者に送付する.
論文投稿は電子投稿システムで行う.投稿方法の詳細はプロポーザル採択者にメールで通知
する.

スケジュール

おおむね下記のスケジュールを予定している.諸事情により変更の可能性がある.
2020年04月13日(月)プロポーザル投稿締切
2020年05月01日(金)プロポーザル採択通知(執筆依頼)
2020年07月03日(金)論文投稿締切
2020年08月末頃   第一回査読結果返送
2020年11月上旬頃  第二回査読結果返送
2020年12月11日(金)最終稿提出締切
2021年03月初旬   28巻1号掲載