日程 9月14日(日) 15:20 - 17:20

オーガナイズドセッション (OS3-4)

会場:14号館4F(403)
ナラティブで切り拓く認知研究の新たなアプローチ
オーガナイザー:
西田 知史(情報通信研究機構)
須田 永遠(名古屋大学)
武富 有香(ZEN大学)
小林 勇輝(情報通信研究機構)
  • OS3-4-1
    ナラティブに基づく現象的意識の探究
    招待講演
    西田 知史 (情報通信研究機構)
    質的な内容を持った主観的経験である現象的意識には、様々な構造的・時間的特性がある。しかし、従来の行動主義的な意識の科学では、現象的意識の諸特性に関わるメカニズムの探究が困難である。我々のグループは、現象的意識についての言語報告を一般被験者から信頼できる形で取り出し、量的に分析したうえで脳内メカニズムの理解へとつなげる新たな研究アプローチを提唱する。本発表では、この研究アプローチを用いた新しい意識研究「ナラティブ意識学」ついて紹介する。
  • OS3-4-2
    AnalysisとSynthesisによる認知とナラティブのダイナミクスの探究
    招待講演
    石川 翔吾 (静岡大学)
    ヘルスケアにおいて当事者のナラティブは,本人の苦痛を和らげる手がかりになるとともに同じ課題を抱える人々の道標となる機能的側面が重視されてきた.一方,人工知能研究では,知識表現のミッシングリンクを繋ぐ役割として構造的側面が探求されてきた.本発表では,認知症当事者のナラティブに着目して,よりよく生きる状況を理解するための分析的アプローチと,認知世界を再構築するための取り組みについて紹介し,機能と構造を統合的に考察する.
  • OS3-4-3
    ナラティブは「何」を変えるのか?対象を考慮した物語説得への多角的アプローチの必要性
    招待講演
    小森 めぐみ (東京女子大学)
    物語を通じて他者に働きかける試みは物語説得と呼ばれ、近年研究が蓄積されている。しかし、物語で何が変わるのか、という問いの検討は不十分である。物語説得研究の従属変数には、知識・態度・行動などがありえるが、これらは心理学では異なる枠組みで扱われており、それぞれに特有の変容プロセスや影響要因が想定される。そこで本発表では、主に社会心理学の観点から、物語説得の対象となる概念の特徴や測定手法に言及しつつ、より精緻な理論構築の可能性を探る。
  • OS3-4-4
    認知とナラティブ:物語論の視座
    招待講演
    須田 永遠 (名古屋大学)
    武富 有香 (ZEN大学)
    質的で多様な「ナラティブ」をいかに体系的に分析するか。この問いに対し、文学研究は物語論という理論的アプローチを構築してきた。物語論は20世紀後半までの構造分析を経て、90年代以降には物語と認知の関係が扱われるようになる。認知物語論の代表的な論者フルダニクは、人間の「関心」に根ざす物語の基本的性質として「経験性」という概念を提唱し、これを物語の要件とした。本発表では物語論の理論的背景、認知科学の影響、両者の現在の接点について考察する。