日程 9月10日(土) 9:30 - 11:30

オーガナイズドセッション03 (OS03)

認知フィーリングと認知的ダイバーシティ:当事者研究と認知科学の共同によるインクルーシブ社会の構築
オーガナイザー:
熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術研究センター)
勝谷紀子(東京大学先端科学技術研究センター)
  • OS03-1
    知覚と感情を媒介する認知フィーリングの原理解明
    招待講演
    長井 志江 (東京⼤学ニューロインテリジェンス国際研究機構)
    認知フィーリングとは,知覚体験をどのくらい知っているのか(熟知感),それを流暢に処理できるのか(処理可能感)などの,知覚に付随する感覚を指す.発表者らは,知覚に対する感情は認知フィーリングを媒介として生じるという仮説を立て,脳の一般原理である「予測情報処理」理論に基づいて動作原理の解明を目指している.本講演では,発表者が代表を務めるCREST「認知フィーリング」の取り組みを紹介し,インクルーシブ社会の実現に向けた可能性を議論する.
  • OS03-2
    計算論的現象学へ向けて
    招待講演
    鈴木 啓介 (北海道大学 人間知×脳×AI研究教育センター)
    近年の深層学習の発展により、これまで知覚や認知の客観的な性能を説明するために用いられた計算モデルを、意識的現象性をシミュレートするのに使えるほどモデルの出力画像の高品質・高解像度化が進んでいる。本講演では、そのような試みの1つとして、深層学習モデルによって幻覚体験の現象性を再現した「幻覚機械」を紹介する。さらに、現在進行中の幻覚体験のインタビュー結果と合わせて、幻覚知覚の現象学的特徴を生み出す計算論的メカニズムについて議論したい。
  • OS03-3
    当事者研究によってどんなふうに「気分」が変わるのか
    招待講演
    向谷地 生良 (北海道医療⼤学看護福祉学部)
    当事者研究は、統合失調症などを抱える人たちによる自助的な研究活動であり、生活体験や日常的出来事をテーマに、仲間の先行研究を活用しながら仲間と共に研究的対話を重ね、出来事や現象の持つ意味や可能性、パターン等を見極めて、自分らしい発想で新たな“自分の助け方”や理解を見出す営みである。本講演では、浦河べてるの家での約40年の経験を踏まえ、当事者研究によって起きる、幻覚や妄想に伴う「気分」の変化について紹介する。
  • OS03-4
    クロストーク・公開議論
    パネルディスカッション
    熊谷 晋一郎 (東京大学先端科学技術研究センター)
    長井 志江 (東京⼤学ニューロインテリジェンス国際研究機構)
    鈴木 啓介 (北海道大学 人間知×脳×AI研究教育センター)
    向谷地 生良 (北海道医療⼤学看護福祉学部)
    勝谷 紀子 (東京大学先端科学技術研究センター)
    認知フィーリングという構成概念を蝶番にしつつ,当事者のウェルビーイングとインクルーシブ社会の実現という共通の目標に向け,当事者研究,認知発達ロボティクス,計算論的精神医学,身体性認知科学からのアプローチと共同の可能性を登壇者全員で議論する.