相互行為において，相手が何を見ているかをそれぞれの相互行為参加者が見ることは，決定的に重要である．が，相互行為における知覚の組織そのものは，分析の対象となることはあまりなく，むしろ，前提とされてきた．本報告では，相互行為のなかで行なわれている「活動」に関連した形で，知覚がそのつどどう組織されるのか，さらに，視覚と触覚の複様式的な知覚がどう組織されるか，などを，具体的な事例とともに検討する．

知覚をめぐるやりとりが重要な役割を果たす相互行為場面の映像データを用いて，会場全体でデータセッションを行う．データセッションとは，相互行為を収録した音声や映像を繰り返し観察して意見を述べ合い，当該データの分析の可能性や記述の妥当性を検討する議論形式である．知覚と相互行為にまつわる先駆的研究を進められてきた招待講演者，人間行動学がご専門で相互行為研究に造詣が深い指定討論者にも議論に参加いただく．