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[S6] 会長講演

9月18日(日) 12:30 - 13:30 会場:レクチャーホール(フロンティア応用科学研究棟2階)
    対人インタラクション知能の解明に向けて
    大森 隆司(玉川大学)
     人同士のコミュニケーションは単なる情報の伝達ではなく,それによって他者の心の状態や行動を変える働きかけである.そこには,相手の認識状態や意図の推定,目的の理解といった,直接には観測できない他者の心的状態の推定があり,さらに自身の働きかけの効果を予測して適切なものを探索するプランニングの過程が含まれているように見える.このような認知的インタラクションは少なくない.例えば,高齢者ケアや保育の場面では介護士や保育士は日常的にこのような働きかけを行って職務を遂行しており,その実践にはそれ相応の知的情報処理が必要とされるであろう.これを対人インタラクション知能と呼ぼう.ではこのような対人インタラクション知能の背後にはどのような認知過程があるのだろうか.それは人工知能として実現できるのだろうか,そして社会はどういう対人インタラクション知能を求めているのだろうか?この最後の問いは,最近の人工知能ブームという文脈だけでなく,研究が社会に定着して継続できるエコシステムの構築にむけた,重要な問いである.
     本講演では,講演者が行ってきた対人インタラクションのモデル化研究について述べ,その過程で明らかになってきた対人インタラクションの内部過程について論じる.また,その研究の出口としての保育への社会実装の試みについて紹介する.