プログラム順

[S1] 特別企画

9月17日(土) 10:30 - 11:50 会場:レクチャーホール(フロンティア応用科学研究棟2階)
    ヒト/動物/人工物の社会性の認知基盤:解明と応用
    長谷川壽一 (東京大学)
    開一夫 (東京大学)
    植田一博 (東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
    企画:
    長谷川壽一・開一夫・植田一博
     社会性動物であるヒトにとって,他者とコミュニケーションやインタラクションを行い,社会を構築し,社会生活を営むことは必須である。インタラクションが何に基づいて円滑に行われ,その結果ヒトにとってどのような効用がもたらされるのかに関する分析,すなわちインタラクション研究は,これまで主に社会心理学でなされてきたが,近年の認知科学や認知脳科学の発達により,社会性認知を高次レベルの認知機能としてだけではなく,低次(感覚・運動に近い)レベルの認知機能として捉えなおす機運が高まってきている。特に,インタラクションにおいて相手が発する非言語情報(表情,視線,しぐさやジェスチャー,姿勢,音声に含まれる韻律など),つまり社会的シグナルの読み取りから,ボトムアップに社会性認知が実現されていると考えられるようになってきた。このような事情を背景に,認知科学とその関連領域において,低次レベルと高次レベルの認知機能の接点としてのインタラクションの分析ならびにその人工物デザインへの応用に関する大型研究プロジェクトが推進されている。すなわち,『共感性の進化・神経基盤』(科学研究費補助金・新学術領域研究),『ペダゴジカル・マシン:教え教えられる人工物の発達認知科学的基盤』(JST・CREST),『認知的インタラクションデザイン学』(科学研究費補助金・新学術領域研究)の3つである。本特別企画では,研究代表者がそれぞれの研究プロジェクトのエッセンスを紹介し,インタラクション研究として何が重要だと考えられるのか,今後さらにどのような事柄を研究していく必要があるのかについて講演を行う。
     具体的には,『共感性の進化・神経基盤』では,自己と他者との協力および協調,相互理解を成立させる上で重要で,社会の秩序や公平性,助けあい,暴動やデモなどの集団行動の基盤となる心的基盤となる「共感性」に焦点を当てている。そして共感性が,社会集団を安定させ発展させることで個々の生存と適応度を上昇させるために発達した心的機能の一つで,ヒト特有の高次な共感性も動物にも認められる原始的な共感性(情動伝染)を元に発展を遂げたものであるという仮説に基づき,ヒト社会における共感性の成り立ちや共感性の起源を,認知レベルのみならず,神経回路,ニューロン,分子,遺伝子レベルで解明を行っている。それらの研究のエッセンスを,研究代表者の長谷川が紹介する。
     『ペダゴジカル・マシン:教え教えられる人工物の発達認知科学的基盤』では,急速に発展する情報基盤技術を背景に,発達認知科学を基軸とした融合的アプローチによってヒトの学習を支援・促進する人工物を構成し,学習の本質を解明している。特に,乳幼児と学童を対象とした行動実験や脳活動の計測,インターネットを用いた大規模調査など複合的手法を駆使して,人間の学習を支援・促進する人工物-ペダゴジカル・マシン-が持つべき様相を明確にし,実践的な教育場面に真に役立たせることを企図している。それらの研究のエッセンスを,研究代表者の開が紹介する。
     『認知的インタラクションデザイン学』では,他者の行動を理解・予測するために必要で,状況に応じて変化する認知モデルである他者モデルを認知科学的に検討し,それを人に自然かつ持続的に適応できる人工物の設計と構築に応用することを研究している。特に,人対人,人対動物,人対人工物に共通する認知プロセスを解明し,他者モデルをアルゴリズムレベルで実現し,最終的に人と自然にかつ持続的に適応できる人工物設計のデザイン原理を確立することを目指している。それらの研究のエッセンスを,研究代表者の植田が紹介する。
     これらの研究紹介を通して,ヒトのインタラクションを分析するにも様々なレベルや方法があること,それらをうまく組み合わせることで,ヒトの社会性を支えるインタラクションの本質に迫れることを説明する。