「PROGRAMを比鹸として説明される心の全貌モデル・及び意識のモデルについて」I
0.0 要約
これは、「認知科学」「人工知能」「心理学」「哲学」の領域に関する論文である。その内容は、心という概念に含まれる全ての機能がPROGRAMで表現可能であるかどうかについての考察を主とする。よって、その取り扱う範囲があまりに広いため、通常の論文より長編とならざるを得なかった。しかも各編が相互にリンクしているために、分割できなかったのである。さてここで説明される心の機能とは「理解」に始まり、「感覚」、「直観」、「思考」、「感情」、「自由意志」そして「意識」機能を指す。これら全てがPROGRAMで表現可能であるとすれば心はPROGRAMであると言える。この論文では、脳のfMRIやニューロン発火はほとんど取り上げられない。あくまで入力されているものと出力されているもの(心の内部表現)との因果関係に焦点を定め、それがこれまでの実験による知見に矛盾がないかを確認しながら論理展開を進めている。第一部で最初に取り挙げられるのは、初歩的な「PROGRAM」の定義や「理解」といった言葉の定義の確認である。そして次に力テゴリ理論といった新たな概念の提案がなされる。このカテゴリ理論はこれまでの人工知能研究や認知科学が提出してきたフレームやスキームなどのモデルに類するものである。地味な展開であるが、基礎となるこの部分に紙数を費やしていることは実は極めて重要である。筆者はこれまで心のモデル化ができなかったのは、この部分が不充分であったためと考えているのである。当然、この論文は「理解」における、この研究領域において最高の難問とされるクオリア問題にも触れている。このディヴィッド・チャ一マーズによる「クオリア」とは従来「質感」という表現で訳されているものである。その「クリア」はここでは「神経記号」と呼び直され、赤のクオリアは「○」、青のクオリアは「●」という記述表現が提案されることとなる。しかしこのなんでもない工夫がこれまでの議論をみごとに整理することになるのである。そして基本機能の整理に成功すると第二部においてこれまで抽象的概念であった「感覚」、「直観」、「思考」、「感情」、「自由意志」機能も次々に説明されることになる。そして最後に残つた「意識」機能という難問についても第三部においてこれまでの知見により独特のアプローチをとることを試みている。さらにこの難問に真正面から取り組んで出した、その結論に対して検証方法をも提示している。さて材料とした入力内容と出力内容に誤りがなく、その相関関係を解くための論理展開に逸脱がないならぱ、それは純粋な思考実験の集積に相違なく、それは理論認知科学が示す研究方法の成果といってよいと思われる。
KEYWORD
PROGRAM 理解 感情 自由意思 意識 クオリア
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