日程

フェロー講演 (L1)

8月31日(金) 13:50 - 14:50
会場:B棟2F グランドホール
講演者:
市川伸一(東京大学)・鈴木宏昭(青山学院大学)
司会:三輪和久(名古屋大学)
認知の科学から教育の実践への展開
市川伸一 (東京大学)
鈴木宏昭 (青山学院大学教育人間科学部)
今年度フェローを受賞された2名の先生方に講演を行なっていただく。お二方とも認知・教育の基礎研究から実践にまで深く関わってこられたことから,「認知の科学から教育の実践への展開」というセッション・テーマを設定した。


「認知科学から大学『改革』を考える
講演者:鈴木宏昭

私はこれまで,主に学習と知識の転移,類推(メタファー),洞察などのメカニズムを通して,人の理解と学習についてアプローチしてきました。また近年は,ポランニーの影響の下でプロジェクション,プロセスベースの概念などへもアプローチしています。本講演では,これらの研究から得られた知見から,現在多くの大学でなされている「改革」とその姿勢を批判的に検討し,新たな大学像を作るための提案を行うとともに,認知科学の新たな課題にも迫ろうと思います。


「構造抽出から見た認知と教育:知覚,推論,学習をめぐって」
講演者:市川伸一

筆者が行ってきた,パターン知覚,直観的確率推論に関する基礎研究から,個別学習相談(認知カウンセリング),授業設計論(教えて考えさせる授業)という教育実践研究をまず概観的に紹介する。一見,散漫で広範囲にわたるように見えるが,そこに通底していたのは,「構造抽出」というキーワードだったように思える。
それは,あえて意味や構造を捨象して反復習熟による記憶・学習を追究してきたかつての行動主義的研究から,認知科学が方向転換した流れとも軌を一にしていた。構造抽出が人間の認知,とくに理解を伴った学習の本質だとすると,教育場面でそれがいかに達成されているか(あるいはいないか)ということが,実践上の大きな問題となる。
個別学習相談や学校教育の場に身を置いてみると,学習者や教師にとって,構造抽出という目標は必ずしも自明ではないことがわかる。その視点から,認知科学が教育に何ができるのか,何をすべきかを考えていきたい。